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ミステリの祭典

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豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
猫丸先輩もの ほか

作家 倉知淳
出版日2018年03月
平均点5.56点
書評数9人

No.9 6点 メルカトル
(2024/01/04 22:25登録)
戦争末期、帝國陸軍の研究所で、若い兵士が頭から血を流して倒れていた。屍体の周りの床には、なぜか豆腐の欠片が散らばっていた。どう見てもこの兵士は豆腐の角に頭をぶつけて死んだようにしか見えないないのだが……前代未聞の密室殺人の真相は!? ユーモア&本格満載、おなじみ猫丸先輩シリーズ作品も収録のぜいたくなミステリ・バラエティ!
Amazon内容紹介より。

平均的に面白い短編が続きます。それほど驚くようなトリックはないものの、ユーモアを交えたお手軽にサラッと読める物が多いです。例えば表題作や『薬味と甘味の殺人現場』はかなり風変わりな殺害方法と猟奇的とも言えない、訳の分からない装飾が施されており、謎めいた印象を植え付けます。しかし、真相はシンプルでやや物足りなさを覚えます。因みに私は表題作のダミーの推理は想定していた通りでしたので、おっ?と思いましたが、やはりそんな筈はありませんでした。

最後に猫丸先輩が登場します。ねこめろんくんが可愛い。やはり猫丸先輩が出ると和みますね、癒されます。風貌に似合わず頼もしい存在で話しぶりも楽しいし、久しぶりに短編集でも出したらどうですかね。
で本作品集、ファンは必読でしょうが、それ程思い入れのない読者にとっては読んでも読まなくてもいいんじゃないか程度。タイトルに惹かれて読むと拍子抜けするかも知れません。

No.8 5点 E-BANKER
(2023/05/12 13:57登録)
2011年より「月刊ジェイ・ノベル」誌に断続的に発表された作者の短編作品をまとめたもの。
全くのノンシリーズ短編集(1編だけ猫丸先輩が登場)だけど、タイトル作品がねぇ・・・インパクトは大だな。
2018年の発表。

①「変奏曲 ABCの殺人」=ABCといえば、「Aのつく町でAから始まる人が殺され・・・」というプロットがもはや自明。で、後発作品はこれを逆手に取ることが宿命となる。で、本作はラストにちょっと「ヒヤッ」とする。
②「社内偏愛」=大企業の人事・労務管理は大変なのです(実感あり)。で、登場したのが本作に出てくる「マイ・コン」というもの。いわばAIなのだが、コイツが大きなトラブルを引き起こしていく・・・。やはり人の心は複雑で一筋縄ではいかないということ。
③「薬味と甘味の殺人現場」=若い女性が殺害された現場。死体のそばには被害者が大好きだったケーキが置かれ、被害者の口には大嫌いだったネギが突っ込まれていた・・・。その状況に捜査を取り仕切る主任警部が大いに悩まされる・・・
④「夜を見る猫」=都会の喧騒を逃れ、久しぶりに訪れた田舎にある祖母の家。そしてその家に昔からいる「猫」が本編の影の主人公。ネコもやはり嗅覚は鋭いのだろうか? 犬じゃなく敢えて「猫」にしたのはなぜ?
⑤「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ殺人事件」=長いタイトル!! しかも中味は・・・かなり荒唐無稽な話。シャレのつもりで書いたのかな? 結局、「真の」真相は闇の中なのだろうか。
⑥「猫丸先輩の出張」=出張といっても「つくば市」です。建物からの人間消失がテーマにはなるけど、捻りはあまりなくて軽~いお話になってます。まっ、いつもの猫丸先輩シリーズらしいと言えばそれまでなのだが・・・

以上6編。
ノン・シリーズだけに“ごった煮”のような作品集になってる。
長編のような「作りこまれた」感は全然なくて、ワンアイデアを放り込みましたというような作品が並んでいる。

肩の凝らない「読み物」を欲する場合ならいいと思うけど、じっくり没入して読みたいという向きには全く歯応えのない作品に感じると思う。
私はというと・・・もうちょっと歯応えがあった方がいいかな。
(個人的ベストは・・・敢えてなら②。①もまずまず)

No.7 7点 青い車
(2019/07/06 20:22登録)
 ノンシリーズものが多い短編集でありながら、作者の持ち味であるコミカルな筆致は共通しています。飛び抜けて高得点の短編はないのですが、久しぶりに猫丸先輩の飄々とした振る舞いと活躍が読めたため充足感がありました。

No.6 4点 いいちこ
(2019/06/26 18:42登録)
著者の日常の謎系作品は、真相が飛躍する衝撃とリアリティの絶妙なバランス、それを解明するプロセスの論理性が特色であるが、そのいずれにおいても本来のポテンシャルが発揮されていない。
最近の読了作は軒並み同様の評価であり、近年における低調ぶりを裏付ける作品

No.5 6点 HORNET
(2019/03/10 10:35登録)
 典型的な倉知淳の短編集という感じ。真面目な文体で書きながら、全体の内容としてユーモラス、というお得意の作風が並ぶ感じ。
 「薬味と甘味の殺人現場」は、犯行の様相に込められた犯人の意図を解釈することを主眼とした作品だったが、目の付け所が独特でなかなかに面白かった。表題作「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」は一瞬ぶっ飛んだSFバカミスと見せかけておいて、オチで本当の仕掛けが暴露される手際が上手い。「猫丸先輩の出張」は相変わらずの猫丸先輩の毒舌や奇矯な行動にユーモア度全開だが、その一方で真相の論理は一番しっかりしている気がした。
 「夜を見る猫」だけ、あまりにフツーな短編のように感じたが…

No.4 5点 VOLKS
(2018/12/07 08:49登録)
まぁ楽しめた、という評価が、まさにコレかも(笑)という一冊でした。
短編なので軽いノリでどれも読みきることが出来ますが、のめり込めませんね。

No.3 5点 まさむね
(2018/11/25 22:03登録)
 短編集で、うち1編に猫丸先輩が登場。
 全般的に読みやすく、いかにも作者らしい短編集と言えるのですが、脱力感はやや強めで、どの短編も真相自体は想定の範囲内。でも、それぞれの作品でちょっとした”良さ”を感じることができる、その按配は悪くないと思います。個人的には表題作のバカバカしさが好きかな。

No.2 7点 虫暮部
(2018/07/17 12:19登録)
 倉知淳の、特に短編の文章はまぁ普通である。軽妙なユーモアを交えてはいるもののほんの味付け程度で、可笑しくて笑いが止まらなくなったりはしない。逸脱があっても適度な範囲内に留まり、コレだ!と言う存在感を主張しない文体。邪推するなら、文体(ハード)の過度の主張はミステリ要素(ソフト)の妨げになると考えているフシがある。それはそれでひとつの見識だろう。
 殊更にそんなことを思ったのは「夜を見る猫」のせい。この話の文章だけ明らかに熱量が多い。猫ちゃんの愛らしさを読者に伝える為に一字一句でも多く奉仕させるべく脳細胞を総動員した跡が窺われる。そしてそれが、妨げどころか、謎と詩情と田舎の風景の融合を果たした濃厚猫萌えミステリとして見事に成立しているのである。この路線で行けば天下取れるかも?

 表題作で語られていない情報をひとつ。凍らせた豆腐を解凍すると水分が分離して、ボソボソした中途半端な高野豆腐の如き物体になるので、見た目や感触で区別出来るようになる。従って、否定するのにあんなロジックは不要。

No.1 5点 YMY
(2018/06/25 20:27登録)
思わず脱力してしまうユーモア作品。
どう見ても豆腐の角に頭ぶつけて死んだとしか思えない殺人事件を描く表題作、死体の枕元にケーキが三つ、口には長ネギが1本突っ込まれた殺人を追求する「薬味と甘味の殺人現場」、連続殺人事件に便乗する男の誤算を捉える「変奏曲・ABCの殺人」など6編が収録されている。ひねりがもう一つ足りない憾みがあるものの、ばかげた設定と奇妙な論理が笑える本格推理。猫丸先輩シリーズが好きな方にはおすすめ。

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