タイトルはそこにある |
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作家 | 堀内公太郎 |
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出版日 | 2018年05月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | 虫暮部 | |
(2018/08/01 12:00登録) まさかの東京創元社ミステリ・フロンティアということでつい手に取った一冊。軽妙さと軽薄さを混同したような作風は健在で苦笑。第一話のトリックは限り無くユメオチに近く褒められたものではないと私は考える。第四話、第五話は比較的軽さが上手く生きている内容か。 レーベル買いという観点で見ればミスマッチ。四六判で仰々しく刊行したせいで、私のように“期待し過ぎて落差が大きく結果的に必要以上に低評価”という事態が生じる。良くも悪くもB級作家、という事実にもっと開き直るべきでは。 あとがきの「編集者註」に、他作家に関する緩やかなネタバレ(作家名を挙げて、○○氏の作品にはこういう趣向のものがありますよ、と)が含まれるのは如何なものかと思う。特に重要なことが書かれているわけではないので、あとがきは読まなくてもいいかも。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2018/07/09 23:22登録) (ネタバレなし) 本書は作者が、編集部側から 第一話「演劇を扱った中編。登場人物は三、四人程度」 第二話「回想、場面変更、一行アキ一切なしのワンシチュエーション・ミステリ。登場人物は三人で」 第三話「会話文のみで書かれた作品」 第四話「三人の女性たちによる独白リレー。出番を終えた語り手はふたたび語ってはならない」 そして第五話…… という五つの「お題」を託され、それぞれそのクエストに応えて執筆した形式の書下ろし連作ミステリ。 評者はこの作者の著書は初めて読むが、とても遊び心のある連作集で、こういう企画そのものは大歓迎である。 ただし各編にどんでん返しやサプライズを設けるために用意されたミステリとしてのそれぞれのアイデアの方にはほとんど斬新なものはなく、どっかで読んだ&見たような感じのものが大半なのはちょっとキビしい。第1話からしていきなり「その手」かよ……であったし(むろん詳しくは書けないが)、第四話なんか作者的にはかなり自信作のようだが、評者などには早々に大ネタが察せられてしまった。だってこの30年の間にあの作品とアノ作品で、もうそのネタは……(中略)。 とはいえ編集者を巻き込んだメイキング記事風の長いあとがきを読むと、作者(&編集者)なりに過去のいろんなミステリを読み込んで、その上で本書をまとめたという経緯も語られている。評者なんか、このあとがきのなかで今まで知らなかったいろんなトリヴィアを教えられ、浅学の身としてはこれがなかなか楽しかった。前述した第1話なんか、評者が思い浮かべたものとはまったく別の作家の作品を、作者&編集者は同じネタのサンプルとして挙げていて、へえ~という感じである。該当作品を未読の読者にネタバレになりにくい書き方も配慮されていて、その辺の心遣いも良い。 ただし叙述トリックそのほかで、ここはこのように苦労した、このように配慮したという送り手のメイキング事情の開陳部分は、割と当たり前のことを得意がって書いているようで、あんまり面白くない(すみません~汗~)。 なお最終話はある有名な、海外連作短編ミステリシリーズへのリスペクトだが(これは数ページも読めばすぐわかるし、あとがきでもその旨、触れられている)解決まで本家の(中略)ぶりを模していて笑った。なかなかシャレがきいている。 趣向は良し。中味はちょっと弱し。でも枝葉の部分はなかなか楽しい。そんな感じの一冊だった。 |