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ミステリの祭典

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あなたの人生の物語

作家 テッド・チャン
出版日2003年09月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 8点 糸色女少
(2021/07/13 22:59登録)
「人類とは本質的に異なる知性を、いかに異なるかが理解できるように描く」という難題を成し遂げたうえで全体を感動の物語に仕上げた表題作をはじめ、文字通りに天まで届く塔の建築現場を生活感あふれる筆致で描写する「バビロンの塔」、機械ではなくゴーレムにより産業革命が起きたもうひとつのイギリスを舞台とする「七十二文字」、神が顕現し奇蹟が日常のものとなっている世界における信仰のあり方を考察する「地獄とは神の不在なり」など全八篇。
どれもみな、一級の奇想に徹底した論理展開で肉付けし、ふさわしいドラマに乗せて適切な文体で語った隙のない作品ばかり。

No.2 7点 tider-tiger
(2019/11/16 20:51登録)
新作『息吹』がいよいよ来月刊行されるようです。買うのは文庫になってからと言いたいところですが、けっこう待たされそうですね。

純粋にエンタメとは言い切れない作風に感じます。そうかといっていわゆる文学ではありません。いかにもSFらしい書き方なんですが、SFど真ん中というよりはアヴラム・デイヴィッドスンみたいな奇想系に寄った人のように思えてなりません。私のようなSFを少しかじった人間ではなく、深いSFファンがすごいSFだとあちこちで言ってますのでもちろんSFなのでしょうが。
そんなわけで、個人的にはここまで広く人気があるのは少し不思議な気がしています。
私も天才とはあまり感じませんでした。天才というよりは奇才と呼ぶ方が合っているような気がします。

★バビロンの塔 どうやってオチをつけるのかと思っていたら、頭の体操(多湖輝)のようなオチで楽しかった。もう少し短くまとめても良かったのでは。6点
★理解 これはきちんとエンタメしてます。いわゆる高知能者の一人称小説はかなり厳しいものありますが、それほど違和感なくまとまっています。本短編集内でもっとも早く書かれた作品らしいですが、かなり若い頃の作品という印象が強くあります。7点  
★ゼロで割る 正直なところ話自体は大して面白いとは思いませんでしたが、サイエンスを物語にいかに絡めていくのか、作者の特徴がよく表れている作品のように感じました。5点
★あなたの人生の物語 テーマとアイデアはもろに『スローターハウス5』ですが、物語や書き方はまるで違うし、読み味もまるで異なります。スローターハウス5は胸中にジワジワと広がるなにかがありますが、こちらは胸に突き刺さりました。9点(客観評価8点、個人的嗜好で+1)
※虫暮部さんのご指摘は強引ではないと思います。
★七十二文字 これは面白かった。7点
★人類科学の進化 着眼点は面白いと思いました。もう少し頁数が欲しい。6点
★地獄とは神の不在なり これは合いませんでした。なぜか空々しく感じてしまったのです。4点 
★顔の美醜について――ドキュメンタリー 面白いんですけど、もう少し深堀りしたオチが欲しいと思うのは贅沢でしょうか。6点

No.1 6点 虫暮部
(2018/08/23 12:19登録)
 小林泰三の描く異世界の如き「バビロンの塔」。森博嗣の登場人物のカリカチュアみたいで面白い「理解」。表題作を叙述トリックの亜種だと主張するのは強引だろうか?
 寡作な米SF作家の第一作品集。収録作品全般的に、9割までは文句無しに面白いんだけどラスト1割での着地点がなんだか曖昧で肩透かしに感じる。“天才”とも謳われるが、そうまでは思わなかったなぁ。

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