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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2174件

プロフィール| 書評

No.2114 8点 HIPS 機械仕掛けの箱舟
岡崎琢磨
(2025/11/28 13:26登録)
 HIPS ……入会しちゃおっかなぁ? 働かずに給付ポイントで暮らしても腐らない自信はあるな。“仕事” じゃないことで一発当てても、その後に退会すれば特にペナルティは無いんだよね。でも “入会時にすべての私有財産を寄付” はキツい。コレクターには向かないかも。

 HIPS と言う大きな物語に引っ張り込まれて、個々のエピソードでミステリ的に頑張っていても目立たない嫌いはある。でも構造上それは止むを得ないかな~。面白かった。


No.2113 7点 皇后の碧
阿部智里
(2025/11/28 13:26登録)
 人間に似たものが住む異界の、支配階級に於ける勢力争い――ってことで、まず思ったのは “基本的に八咫烏シリーズと同じ路線じゃないか”。
 英語ベースのような固有名詞、妖精やドラゴンの存在などで差別化を図っているが、ぶっちゃけ文体が同じなので、八咫烏のイメージに引っ張られた和洋折衷の風景が思い浮かんでしまった(それはそれで面白い)。Naomi は英語にもある名前、と言うことを意識したネーミングだと思う。
 前半で示された謎。ミステリ的な反転では、ファンタジーの強みを生かしている(アンフェア?)。その後の王達の対決は阿部智里の作風そのもので感動。温室のエピソードも良かった。特設サイトには書籍に載っていないイラストも有。


No.2112 6点 スカーフェイク 暗黒街の殺人
霞流一
(2025/11/28 13:25登録)
 変則的な多重解決みたいなもの。繰り返しが過ぎて少々飽きてしまったが、最終的な真相がそれまでとは別の部分を掘り下げているので、“正答” としての説得力があり立派だ。その上で、探偵側の “仕掛け” には確かに驚かされた。
 ただ、コテコテのキャラクター設定や二つ名からして、この “暗黒街” はメタ的なギャグだとしか思えず、それが本作に於いてはマイナスに作用した。霞流一を読むのにそんなこと言ってちゃ駄目かなぁ。


No.2111 6点 口外禁止
下村敦史
(2025/11/28 13:25登録)
 後期クイーン問題の極北(笑)。こんなに直接的な操りがアリか。この先どういう展開だったら意外かな~と予想したら、その通りだった。動機はまぁ単純だけど、計算すれば割には合うんだろう。つい操られたがってしまう気持の危うさは判るし、社会批判も織り交ぜたライトな読み物として悪くはない。


No.2110 5点 虚池空白の自由律な事件簿
森晶麿
(2025/11/28 13:25登録)
 私は日本語マニアなので、この基本設定(“どうとでも解釈は出来る” と言う逃げ道無しで、言葉の論理にこだわる文章解読)にはかなり期待したのだが、実際に読んでみるとそれ程でもない。スッキリ納得出来る解釈になっていないし、野良句と現実との接続も強引。
 設定が悪いわけではなく、適切な野良句があればもっと面白くなったと思う。学生運動のエピソードは良かった。


No.2109 9点 探偵小石は恋しない
森バジル
(2025/11/22 12:33登録)
 いかにもチャラそうなタイトルに油断していた。巧妙な騙しが三重四重に張り巡らされた精密な本格ミステリ。小石の特殊能力も、設定の一部としてきちんと織り込まれているのでアリってことでいいや。
 そのくせ、近年の新本格マナーを器用になぞったような “出来過ぎ” な感じが希薄で、ピュアな佇まいを全編保っているのが素敵。それこそチャラさへの偏見がミスディレクションになった格好だ。嬉しい誤算である。
 再読したらこれがまた楽しい。グレイト!


No.2108 8点 もつれ星は最果ての夢を見る
市川憂人
(2025/11/22 12:33登録)
 逆マトリョーシカと言うか、剥いても剥いても上には上があった。
 単なる装飾に留まらない結構本気のSF設定を受けて、“作者はフェア・プレイが身上のミステリ作家だ” と言う先入観が邪魔なのでは? と途中までは思っていたが、寧ろそれは強力なミスディレクションなのか。伏線の鏤め方はパズラーの流儀ながら、こちらの思い込みを軽々超える展開に呆然。
 ただ、情報量がトゥー・マッチな感はあって、終盤こうなっちゃうなら、殺人事件はもっとシンプルでも良かったかも。


No.2107 7点 神の光
北山猛邦
(2025/11/22 12:32登録)
 EQの原典の方でも書いた通り、私はこの謎、ハウよりホワイが重要だと思う。本書はその点なかなか悪くない。
 「一九四一年のモーゼル」、強引だが一応スジは通っているか。
 「神の光」、ハウとの絡みでもっともらしさは感じられた。
 「未完成月光 Unfinished moonshine」、ホワイを考慮しなくて良い設定を上手く作ってある。
 「藤色の鶴」、時代背景を付け加えればこのホワイも説得力を持つんだなぁ。
 「シンクロニシティ・セレナーデ」、更に強引だが個人の妄想力は無限大ってことで(?)。

 ハウについては、私は泡坂妻夫の某短編で感激したクチだが、そういう “自分の中でのスタンダード” を持ってしまうと、それ以上に驚けるトリックはそうそう成立しないのである。本書でも、アレとアレなどは泡坂トリックの改版だな、とか思ってしまう(それ自体は上手く避けているから、作者はEQのみならず泡坂も意識して書いたんだと思う)。
 強いて言えば「未完成月光 Unfinished moonshine」(辞書引くともう一つ意味があって、そっちも意味ありげ)のブツは面白く、しかもそういう実例があるってことで一転ゾクッと来た。


No.2106 7点 我孫子武丸犯人当て全集
我孫子武丸
(2025/11/22 12:32登録)
 全編がフーダニットと言うわけじゃないので看板に偽り有り。そうでなくともこの無骨な表題、“敢えて選んだ” のは判るけどもう少し頑張りましょうよ。
 「漂流者」が良かった。他の収録作も “犯人当て” とか関係無く粒が揃っているし、“通常の小説” 集として扱っても良いのでは?
 と思ったけど、挑戦状の文言で容疑者を限定しちゃうメタなヒントは “犯人当て” ならでは。そこは作者も楽してるね。


No.2105 6点 いちばんうつくしい王冠
荻堂顕
(2025/11/22 12:31登録)
 一体何が起きているのかさっぱり判らない気持悪さ。息を詰めてドミノを並べるような緊張感。
 やがて少しずつ状況が見えて来ると、きめ細かく編み上げられた群像劇に引き込まれたのは確かだ。不穏な演出も効果的で、総体として良く出来ている。
 しかし、“いつか” の希望を示していい話風(ともちょっと違うけれど)に纏めたけれど、これは同時に “中学生を洗脳する話” にも思えて気持悪さは消えない。心に変な染みが残されてしまった感じがする。


No.2104 8点 ファウンテンブルーの魔人たち
白石一文
(2025/11/15 13:54登録)
 人類の明後日を占うエンタテインメント。SF的ガジェットが作品の根幹に据えられている点を重視するなら本作はSF。
 とは言え、“パズラー的な謎と論理” ではないものの、不可解な要素が次から次へと繰り出され、思いがけない地点へ誘導されて、ハッと気付くとオセロのように黒白が鮮やかに逆転しているのは、変則的かつハイ・スケールなミステリの読み味にも通じるものがある。
 それ反則! と何度も突っ込み、しかしそれら全てがいつの間にかアリになっていた。分厚いのにちっとも重厚な印象を残さないのは、初出が週刊新潮だったせいか(偏見?)。


No.2103 6点 悪党たちは千里を走る
貫井徳郎
(2025/11/15 13:53登録)
 作者のイメージとあまりに違うので冒頭から面食らったが、スピード感にもユーモアにも素直に乗れた。こんな引き出しもあるのか……。
 ただ、犯人の設定は唐突で強引だと思う。今までのことを伏線として用いなきゃならないので既に登場している人物から犯人を選んだ、と言う感じ。


No.2102 6点 おれたちはブルースしか歌わない
西村京太郎
(2025/11/15 13:53登録)
 “9月23日が日曜日” なので舞台は1973年。ぴんからトリオ「女のみち」は72年なので合っているが、“グループサウンズ” なんて語はだいぶ流行遅れ。これは'73年の日本ではなく、架空の国・架空の時代の架空の青春であると考えた方が、微妙に変なセンスも許容し易い(笑)。
 簡単にポンポン殺し過ぎではあるが、ミステリ的ポイントは相応に押さえていると思う。そして、どこがどうとは言えないけれど、登場人物の血肉や息遣いによるプラス・アルファが感じられた。
 作者は当時40代半ば。書き方にズレはあっても “青春は青春” と言う的は外してないゼ。


No.2101 5点 異人たちの館
折原一
(2025/11/15 13:52登録)
 “複数の文体による云々” は誇大広告だなぁ。普通の小説でも、例えば三人称とインタヴューであのくらいの違いは当然だと思う。
 そして、構成によるトリックをやり過ぎて、末尾の部分が単なる “解説” になってしまった。あれを “物語” として自然に取り込めれば良いのだが。いっそ末尾を削除して不条理ホラーにした方がベターかも?


No.2100 5点 学ばない探偵たちの学園
東川篤哉
(2025/11/15 13:52登録)
 これは御気楽に過ぎるのではなかろうか。
 作中の台詞 “本格の議論に不謹慎だとか不健全だとかいうのはナシだ” には同意するが、あまりの当事者意識の欠如は別の問題を招くらしい。つまり、探偵部の三人と殺人事件が別のレイヤーに存在するような不整合な感じが、最後まで消えなかったのである。
 二つの密室トリックは面白いと思ったけどね。


No.2099 7点 戦争を演じた神々たち
大原まり子
(2025/11/07 12:10登録)
 基本的に整合性が求められるミステリは、それ故に時として大胆な破綻が一線を越える為の表現になり得る。それに対して、投げっ放しでも成立する(特にファンタジー寄りの)SFには、それ故にこそ何らかの糸を一本通して単なる断片集にならないよう繫ぎ止めて欲しいと私は思う。

 さて本作。どこまでも美しく奔放なイマジネーションを(結構シンプルに、無造作に)言語化しているのは間違いない。
 しかし私には、何故これらの短編群が共通の表題を戴くシリーズとして纏められているのか、ピンと来なかった。謎の軍団だけでは背景として弱い。寧ろ一つ一つ単独の短編として読んだ方が楽しめそう。作者の意図を受け止め切れなかったみたいで口惜しい。


No.2098 5点 私たちに残されたわずかな永遠
乾緑郎
(2025/11/07 12:10登録)
 二つのエピソードは、斬新と言う程ではないにせよ、しっかり組み立てられていてそれなりに読ませる。しかし本の真ん中辺りで両者の絡み方は見当が付き、そして捻りも無く予想通りに纏まってしまうのだ。これでは思わせ振りに二つ平行して語ったのが寧ろ逆効果。
 “ドゥマレ” の自然環境はもっと異界感たっぷりに設定しても良かったんじゃないか。タブレットを “石盤のような” と形容するのは皮肉っぽくてナイス。


No.2097 5点 作家の人たち
倉知淳
(2025/11/07 12:10登録)
 “作家はネタに困ったら出版業界ものを書く” と言う印象があるけど、どうなんだろう。
 多少の捻りはありつつ、劇毒ではなく許容範囲内の悪ふざけに留まっている点も、この人らしいと言えばらしい。が、さほど高評価出来ない理由でもある。

 有栖川有栖『作家小説』にはちょっと負けるか。あ、アレも同じ版元だ。節操無いな幻冬舎(笑)。


No.2096 5点 蝶たちは今…
日下圭介
(2025/11/07 12:09登録)
 結局、一番の焦点は(人死に自体よりも)芝居じみた “幽霊からの手紙” に関するホワイであって、そこが満足とは言いがたい。思いがけない真相ではあるが、他者を操るようなあの発想は好きではないなぁ。
 英語の遺書、車の中の蝶、ハンモック、と言った細かいネタは悪くないし、その人が被害者になる展開には呆然としたけどね。


No.2095 4点 ひげのある男たち
結城昌治
(2025/11/07 12:09登録)
 こういう設定の犯人について、例えばEQのあの作品には “アッ、やられた、成程” と納得した。ACや綾辻行人なら “うーむ、まぁ受け入れざるを得まい”。でも本作は “ズルい” と感じた。
 何が違うのか、自分でも線引きは出来ないが……その人の存在感が薄いせい? 事件に関わる蓋然性はそれなりにあってアンフェアだとは言えないが、論理が充分に緻密だとも思えない。第二の殺人のホワイが大胆な手掛かりになってはいるんだけどね。

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