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ミステリの祭典

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蝶たちは今…

作家 日下圭介
出版日1975年01月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 7点 クリスティ再読
(2025/05/23 20:08登録)
リアルタイムで乱歩賞を意識しだした頃の作品って、やはり印象が強いものだ。
評者の場合、本作とか「暗黒告知」がそういう「リアルタイム乱歩賞」の作品になってくる。とはいえ本作はパズラーマニアには評判がよくないだろうなあ。乱歩賞は比較的パズラー偏重の色彩があったわけだが、この時期には多様化を狙ったのか、伴野朗みたいなスパイスリラーの受賞もあるわけだ。本作のような、犯人当てを捨てたヴィジュアルのいいサスペンスだと、「本格」を期待するマニアの肩透かしになってしまったのかもしれない。

蝶を小道具に使った枠組みプロットとか、イメージに広がりがあって実にいいんだよ。小道具で印象的なものもいくつかあるし、そして探偵役を絞らない青春群像劇的な作劇。ちゃんとオリジナリティのあるトリックもあったりするわけで、受賞はそう不思議という印象はない。

そして短文を畳みかけていき、現在形を多用する独特の映画的文体。確かに印象的な作品だと思うよ。評者の好印象はやはり今回の再読でも根拠あるものだと感じた。
まあ連城三紀彦には及ばなかった作家かもしれないけども、「こういうミステリもありじゃない?」と70年代に提案してみせた作品というあたりで、斬新で意義もあると思っている。

No.3 6点 ◇・・
(2024/06/05 20:29登録)
第二十一回江戸川乱歩賞受賞作。
康雄は、急病で行けなくなった恋人和子の代わりに友人の拓也を誘って、飛騨路の旅に出た。途中のバスの中でバッグを取り違えてしまったことから、奇妙な事件に巻き込まれる。
バッグには、三年前に心中した娘から十七年前に事故死した男に宛てた一通の手紙が入っていた。過去の二つの事件を結び付ける鍵は果たしてどこに隠れているのか。
魅力的な謎の設定と起伏に富んだストーリー展開に加えて、歯切れのいい会話と文章に魅了された。

No.2 3点 TON2
(2012/12/11 21:03登録)
講談社文庫「江戸川乱歩賞全集10」
 昭和50年乱歩賞受賞作。
 旅行先で間違えたバッグの中から出てきた手紙の受取人は3年前に死んでいた。
 蝶の移動距離が殺人の謎を解くカギとなるのですが、あまり面白いとは思わなかったです。

No.1 6点 kanamori
(2010/10/01 18:41登録)
主人公の大学生が旅先の宿でボストンバックをすり替えられる。その中に入っていた手紙の謎を発端とするサスペンス・ミステリで、乱歩賞受賞作です。
手紙の差出人も宛名の人物も既に死んでいたという、”死者から死者への手紙”という謎はなかなか魅力的です。中盤の平板な展開と、真相が何となく察せられる技巧の拙さがありますが、フランス・ミステリを思わせる幻惑的な雰囲気は好みです。

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