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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.22点 書評数:1938件

プロフィール| 書評

No.1678 6点 見えないグリーン
ジョン・スラデック
(2024/04/04 14:36登録)
 解説の法月さんがいみじくも “ストーリーの不在” と記しているのを読んで “それだっ!” と膝を打った。
 第一の殺人は、何しろ第一だから何とかなる。しかし第二第三になると、連続殺人を “連続” たらしめるツナギが必要。その役割を果たす筈のミステリ読書会は存在感が薄く、穴だらけのCCと言うか、三つの事件がバラバラに見えた。個別に取り上げれば面白いんだけど。

 訳について。言葉遊びを日本語に置き換えてしまうのは好きではない。8章の回文とか。訳者は大変だったろうけど、それより原語の洒落を知りたい。


No.1677 7点 天正マクベス 修道士シャグスペアの華麗なる冒険
山田正紀
(2024/03/28 13:38登録)
 第一話のトリックは賛否両論ありそう。私は断固支持する。時代背景に認識論を絡めて、見たことの無い景色を見せてくれた。
 第二話のトリックは必然性が判りづらい。一方で事件の背景は非情な世の習いで唖然。

 で、歴史改変SFの如き肝心の「マクベス」の部分は単刀直入に過ぎる。あまりに短い断章で、単なる付け足しみたいになってしまっているのでは? それでもキャラクターの肉付けがしっかりしているので、決別には切ない余韻が残った。それで充分じゃないかと言う気もまぁする。


No.1676 7点 名探偵のはらわた
白井智之
(2024/03/28 13:36登録)
 連作長編を上手く転がしてパターン化からしっかり逃れている。冒頭で事件を七つ挙げておいて四話で終らせたのもちょうど良い判断。あと何と言うか、登場人物に血が通っている感じがして良かった。
 ところで「神咒寺」と言う名の寺は実在。恨みでもあるのか……?


No.1675 7点 クリムゾンの迷宮
貴志祐介
(2024/03/28 13:34登録)
 個人的には、この手のデス・ゲームは漫画だと大味に思えることが多いけど、小説なら興が乗るのである。本作はスピード感があるし、素材をしっかり集めて上手く使っている。しかし、乱暴な比較だが『バトル・ロワイアル』あたりに比べると、洗練されている反面、我武者羅な熱量は少なく優等生的にも見える。グルメ・ガイドはもっと突っ込んで欲しかったな~。


No.1674 6点 走馬灯のセトリは考えておいて
柴田勝家
(2024/03/28 13:32登録)
 小粒な印象の作品ばかり並んでいる。小粒が悪いわけではないが、それが引き立つ構成になっていないのでは。
 論文と言うかドキュメントと言うか、題材そのものから一歩引いて眺める体裁のものが多過ぎ。勿論意図的にそういう風に書いて同じ本に収めたのだろうが、逆効果だ。そこから外れた「絶滅の作法」が最も記憶に残る。ほらやっぱり。


No.1673 5点 ベートスンの鐘楼
愛川晶
(2024/03/28 13:31登録)
 ノベルス版で550ページの長大さが、物語のエッセンスに対してあまりに過剰。重複部分も少なくなく(敦己の葛藤とか)、整理が下手。普通サイズの長編なら残していい表現でも、この長さだと余計な装飾に思える。
 ただ、“ベートスンの鐘楼の鐘が鳴っている。あの老人が、生き返ったんだ”――この場面にはかなりびびった。そしてそれは300ページに亘る蓄積あってのことなのも確かで、悩ましいところではある。

 ところで死体消失の謎。目撃者が僅かしかいないし、現場をきちんと再調査するのは困る。つまり、読者は桐野の視点も持てるので驚けるが、それが社会の何処まで広がるかは不確定要素であり、目的と手段が噛み合っていないのではないか。


No.1672 7点 キョウコのキョウは恐怖の恐
諸星大二郎
(2024/03/21 11:34登録)
 小説である(念の為)。
 物凄く怖いわけではないが、寧ろこの程度の不条理な与太話の方が私は好みだったりする。事の真相は「狂犬」が面白いが話の余韻としては「秘仏」。
 挿画の場面選択による効果も、作者本人の筆であるだけに考えさせられた。キョウコがいかにも漫画作品に出て来そうなキャラクターなのは良いのか悪いのか。「貘」の大仰な絵は遊び、と言うか言葉と絵による重層的な夢の表現。「濁流」では、背景である闇と豪雨をそれだけ重視したかったんだろうな~。


No.1671 7点 横浜駅SF
柞刈湯葉
(2024/03/21 11:32登録)
 変貌した世界に於けるロード・ノヴェル。ただ、“横浜駅の増殖” なる設定ゆえに、世界を構築する素材が奇抜で、全体として脱力モノのコメディに見える。ストーリーとしては普通でも背景で勝ちに行く発想は有効。
 読みながら “あの漫画のパロディみたい” と思ったら本当にそうだったらしい。だよね!


No.1670 6点 天保からくり船
山田正紀
(2024/03/21 11:30登録)
 これは受け取り方に迷う。
 どうしてもあの大ネタが印象に残ってしまうが、必ずしもそれが作品の本質と言うわけではないだろう。九合目までは普通の時代アクション小説で、それなりに手慣れた書きようで充分楽しめた(敵味方が曖昧でなかなか本題に入らない嫌いはある)。
 その上でアレをやるなら、もう少し仕掛けと話の筋とに有機的なつながりを仕込んで欲しいところ。伏線の乏しさからして、執筆後半に思い付きで付け加えた設定か、とも勘繰りたくなる。
 しかし一方で、山田正紀らしいと言えば非常にらしいネタであって、つい顔がほころんでしまいもするのである。


No.1669 6点 象は忘れない
アガサ・クリスティー
(2024/03/21 11:28登録)
 (多分ネタバレ)夫が妻を殺したのか、妻が夫を殺したのか。
 例えば夫の親類が “彼が加害者か被害者か知りたい” と言うのは判る。しかし娘を経由してその件を見ているなら、どちらでも大して違わないじゃないか。
 と思いつつ読み始めたが、真相に至るととんでもない大違いである。最初から答えを暗示する問いかけだったのである。本来の意図からすれば “第三者による殺人ではなかったことの確認” をこそ求めるべきだった筈で、依頼者はとても勘が鋭い(とでも解釈する他ない)。ヤブヘビになりかねない気もするが……それを踏まえて振り返れば、早々と真相に近付き過ぎないように、会話で或る部分を避けて通っているフシがあり苦しげだ(笑)。

 Elephants Can Remember.
 原題と邦題を見比べて中学校時代を思い出す。英和辞典で remember の意味として【覚えている】と【思い出す】が併記されていて、“それは別の意味では?” と戸惑ったものである。日本語なら “忘れねばこそ思い出ださず” と言うところなのに。

 カップルじゃないけどデズモンドとモリーが登場する(「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」)。


No.1668 5点 真冬の誘拐者
本岡類
(2024/03/21 11:27登録)
 プロローグや装画による仄めかしが過剰。そのくせなかなかそのポイントに話が辿り着かない。よって前半は、単なる手続きとして必要なことを書いただけ、と言った感じ。いっそ伏線が無ければ少々変わった誘拐ものとして素直に読めたかもしれないが、“これはまだ本題じゃないんだよね?” みたいな意識が勝ってしまった。
 かと言って本題に入っても、あのネタは実話の流用だし、全体的にアイデアの提示に留まり小説としてのふくらみに欠ける。
 えっ、直木賞候補作?


No.1667 7点 花面祭
山田正紀
(2024/03/16 12:55登録)
 華道と言う素材と山田正紀ブシを巧みに融合。浮世離れした異界ではなく現代日本の生活者を描きつつ、花の彩り・時の移ろい・輪廻転生を鮮やかに幻視させる言の葉の力を感じた。トリック云々より人の心が織り成すミステリ。特に夏のエピソードは良く出来ているのではないか。
 ただ、“天才華道家” の天才性をエキセントリシティだけで表現しちゃうのはちょっと不公平かな~。この人はココが凄い、と言うのを具体的に示して欲しかった。全編を貫く “しきの花” は、正体が判ってみれば詭弁だろう。華道の素養があれば受け取り方も違うのだろうか。


No.1666 7点 おやすみ人面瘡
白井智之
(2024/03/16 12:54登録)
 丁寧に読めばきちんとロジックが張り巡らされている、のかもしれないが疫病パニック小説、て感じでそれどころじゃないぞ。多重解決が難易度の低い順に提示されていて、ちゃんと驚きがアップしているのが良い。脳瘤の悲鳴が妙に愛らしくて困る。
 最後の最後のサプライズが謎。入院したのだから機会はあったにせよ、誰が何の為にそんな鑑定を行ったのだろう。


No.1665 5点 網にかかった悪夢
愛川晶
(2024/03/16 12:54登録)
 この真相は……一応許容範囲内だけれど、オカルトに足を踏み入れかねないし、恣意的な運用が可能なので、ロジック重視の世界観にはあまりそぐわない。代理探偵シリーズにねじ込む(しかも時系列を遡って)と言う使い方は失敗だったんじゃないか。“パラレルワールドの根津愛” と緩く捉えるのが吉?


No.1664 5点 天啓の殺意
中町信
(2024/03/16 12:53登録)
 全編にまたがるトリックには見事に引っ掛かった。拍手を送りたい。
 一方、事件の様相は入り組んでいて疑問が残る。
 普段は東京で暮らす知り合い同士が偶然、福島県でニアミスしている。こういう偶然は嫌い。現実にはありえても、ミステリで用いると御都合主義に見えると言う意味で。
 そして、エピローグの手紙に書かれている、“あなたが○○殺しの犯人であることを見抜いていました”――犯人と○○殺しは表面上無関係である。どうやって見抜いたのか。


No.1663 5点 八ヶ岳「雪密室」の謎
アンソロジー(国内編集者)
(2024/03/16 12:53登録)
 本書だけでは完結せずネットも利用した企画。
 しかし、解答編読者公募の発表ページは版元(原書房)のサイトから削除されてしまった模様。辛うじて、入選作を筆者御本人がアップしているものを発見(「すべてを解き明かした(のか?)者の手記」)。こういうのはタイミングを逃すと今一つ楽しめないなぁ。

 作家本人が登場する小説は、作家が自身をどのように捉えているか自意識の発露と言う点で興味深い。
 勿論そのように読まれる前提で大なり小なり装飾が施されてはいるのだろう。とはいえ、そこには「このように思われたい」との自意識も反映されているわけでやはり興味深い。
 勿論そこまで深読みされる前提で大なり小なり装飾が施されてはいるのだろう。とはいえ、そこには「『このように思われたがっている』と深読みされたい」との自意識も反映されているわけでやはり興味深い。
 勿論そこまで深く深読みされる前提で大なり小なり装飾が施されてはいるのだろう。とはいえ、そこには「『「このように思われたがっている」と深読みされたがっている』と深読みされたい」との自意識も反映されているわけでやはり興味深い。
 勿論……


No.1662 7点 因業探偵 新藤礼都の事件簿
小林泰三
(2024/03/09 13:57登録)
 抜群の頭脳と最悪の性格。新感覚お仕事ミステリ(笑)。
 しかし本作の最も重要な売りは “何処に謎があるのかが謎” と言う構造だと思う。斜め上に向けて積み上げるロジックに気を取られていると、思いもかけぬところから読者を騙しに来る。
 と考えると、これは単なるキャラクターものではない。それをメインの要素に見せかけて実は煙幕の一つとして機能させているのである。読み易過ぎて実際以上に “小品” の印象が残ってしまうのが勿体無い。


No.1661 6点 月は無慈悲な夜の女王
ロバート・A・ハインライン
(2024/03/09 13:57登録)
 ハインラインは本作を書いたら左に転向したと言われた。さもありなん。
 “ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨編!” なんだけど、この “巨編” がネック。

 細かなエピソードを並べて大きな物語を進行させる構成。これだけ多くのエピソードの全てが絶品とは行かないのは仕方ないが、結果的に物語全体の進行が何とも歯痒く感じられた。
 革命思想や技術的情報の詳細は、どの程度なら斜め読みしても平気なんだろうか? 登場人物にお気に入りを見出せなかったのも痛い。

 決して “正義の戦い” ではない。規格外の存在であるマイクは置いておいても、色々ズルい手は使うし、必要に応じて語り手も(直接)人を殺している。と言うか、その件が目立って見えるのは、大々的な流血革命だけど首脳部を中心に描かれているので個々人としての死はあまり表面に出て来ないからだ。
 視点によって物事の見え方が随分変わる、と言う意味で非常に示唆的な戦争小説である。マイクが独断で動くのは、現在読むと甚だ危なっかしいな~。


No.1660 6点 鏡の国
岡崎琢磨
(2024/03/09 13:55登録)
 不自然な記述を見付けて下さいと最初に宣言しているわけで、そういうゲームとして楽しめた。メインの趣向には第一章で気付いたけど、それは “この設定にサプライズを仕込むとしたら何処か?” と言うメタ推理による。判り易いのでもう一つ裏(伊織の性別錯誤トリック等)があるのかと思ったが……。
 題材の精神症に関しては、蒙を啓かれた部分がある一方、正論で押し過ぎて却って説得力に欠けると感じたところもある。本書で読む限り、動画配信と言うフィールドは全然楽しそうじゃないなぁ。


No.1659 5点 第三の女
夏樹静子
(2024/03/09 13:55登録)
 実は私、結末の部分について、“リスクを省みず会いたがる男を見限って、口封じの為にランデヴーに応じた” のだと思った。そしたら……驚きが待っていた!
 しかしそこに至るまでに、犯行も捜査も都合良く行き過ぎだとか、独り合点の犯人が馬鹿みたいだとか、描き方が通俗的だとか、色々引っ掛かりがあって気持は殺がれ気味。
 愛は愚行かもしれないが、それならそれで愚行が美しく成り立つ世界観や文体が欲しい(栗本薫あたりの得意分野じゃないかな)。でないと、例えば最終章での彼女の行動があまりに意味不明。この物語に必要だったのは、捜査のリアリティとかではない筈だ。

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