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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2463件

プロフィール| 書評

No.1423 6点 殺しの双曲線
西村京太郎
(2011/02/01 18:03登録)
作者の作品の中では、マニアックな趣向が施された本格ミステリですが、今回久々に再読してみて、下記の不満点が目につき初読時よりだいぶ評価が下がった。
以下はネタバレを含みますが、

①閉された雪の山荘の連続殺人という設定の割にあまりサスペンスが感じられない。(シーマスターさんに同じく、「りら荘事件」を読んだ時と似た印象)
②並行して語られる双子の兄弟による連続強盗事件は、そこまでやる必然性に欠ける。犯人による工作というより、単に作者の読者に対するミスディレクションの意味合いとしか受けとれない。
③重要人物の登場が後出し。新聞記者はともかく、顔のない死体の身代わりについては全く伏線もない。
④ラストシーンの、犯人に対する刑事の痛烈なひと言は、ゲーム性の強い全体のプロットから浮いていてチグハグな感じを受ける。


No.1422 6点 シャーロック・ホームズの功績
ジョン・ディクスン・カー
(2011/01/31 17:21登録)
コナン・ドイルの子息エードリアンとディクスン・カーの共著による贋作シャーロック・ホームズ譚。パロディではなく原典に忠実なパスティーシュになっています。
全12作いずれも、原典のなかで名前のみ触れられている、”語られざる事件”を新たに再現した構成で、有名どころでは「ソア橋事件」の中で言及された、”傘をとりに自宅に戻ったまま消えてしまったフィリモア氏の事件”を再現した人間消失もの「ハイゲイトの奇蹟事件」が、いちばん興味深く読めた。
ディクスン・カーが関与したのは前半の6編だけですが、蝋人形館の人形がもつトランプのカードの種類が変化する謎や、「密閉された部屋の事件」など、怪奇趣向や不可能トリックを扱った作品あたりに、カーの持ち味が出ているように思う。


No.1421 6点 透明な季節
梶龍雄
(2011/01/30 13:48登録)
後期の通俗的でB級感あふれる本格ミステリからは想像できない、文芸寄りで私小説風の青春ミステリでした。
戦時下の旧制中学の生徒・高志を主人公に、”ポケゴリ”こと配属将校の殺害事件が描かれていますが、主人公が推理するのではなく、真相も唐突に明らかになるので、ミステリの趣向は弱いと言わざるを得ません。
むしろ、作者の力点は、戦時下という世相ゆえの犯人の動機であったり、主人公・高志の将校の妻・薫に対する心情の変遷にあるのでしょう。


No.1420 5点 グラン・ギニョール
ジョン・ディクスン・カー
(2011/01/29 13:49登録)
ディクスン・カーの幻の初期作品を収めた中短編集。
目玉作品は、デビュー長編「夜歩く」の原型である表題作の中編「グラン・ギニョール」で、メインの密室トリックは同じですが、余分なエピソードがないぶんスッキリしています。終盤バンコランの謎解きで犯人を追いつめるシーンがスリリング。
その他の、怪奇譚、歴史ものなどの短編はいまいちでしたが、カーのミステリ論エッセイの完全版「地上最高のゲーム」は、マニアには嬉しいかも。


No.1419 5点 青春探偵団
山田風太郎
(2011/01/28 18:08登録)
学園ユーモア・ミステリの連作短編集。
ある高校の探偵小説愛好会のメンバー男女6名が、男子寮と女子寮の中間にある城山に集まって推理を楽しむという、レトロでほんわかした設定と雰囲気が読み心地いい。
巻き込まれる事件は、足跡のない殺人、雪の密室やダイイングメッセージなどのパズラー風のものからドタバタ劇までバラエティに富んでいますが、ラストシーンで余韻が残る最終話の「特に名を秘す」がよかった。
ライトノベル風の学園ミステリということで、文庫解説は米澤穂信氏。


No.1418 6点 殺人者の顔
ヘニング・マンケル
(2011/01/27 17:45登録)
スウェーデン製の警察小説といえば、四半世紀前に評判をとった「笑う警官」を代表作とする”マルティン・ベック”シリーズですが、本書から始まるクルト・ヴァランダー刑事シリーズも、スウェーデンの社会問題を題材に、年1冊ペースで出版という点で共通するものがあります。
相違点は、舞台が南部の小さな港町であることと、現代ミステリゆえに人物造形に深みがあること。特に、妻に離婚され、娘は家出、父親は認知症という、私生活崩壊寸前の主人公ヴァランダーの書き込みが重厚です。
登場人物一覧に犯人の名前がなかったり、最初から犯人が明らかにされている作品もあって、謎解き・犯人当てミステリとしては弱いので、好みが分かれるシリーズだと思う。


No.1417 6点 システィーナ・スカル
柄刀一
(2011/01/26 17:29登録)
絵画修復士・御倉瞬介シリーズ、美術ミステリの第3弾。
今回は前2作から時代を遡って、修業時代のイタリアを舞台にした中短編4作が収録されています。
編中の個人的ベストは、やはり表題作。ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂にある天井画「最後の審判」を見た老婦人がショックを受けた理由の謎から、過去の2つの首切り死体の謎に迫る構成で、解決編に「最後の審判」のカラー絵を挿入し、真相に説得力がある。ミケランジェロや礼拝堂の由来とか、ルネサンス芸術と宗教の関係などの蘊蓄も知的好奇心を擽られる。


No.1416 5点 ディーン牧師の事件簿
ハル・ホワイト
(2011/01/25 18:41登録)
海外作品では今時珍しい正統派のパズラー短編集。
デビュー作の本書が出版された2008年は、エドワード・ホックが亡くなった年ですが、正にホックの短編を髣髴させ作風を継承したような不可能犯罪オンパレードの連作短編集でした。
三種類の”足跡のない殺人”を織り込んだものや、客船を始め色々な設定の密室など、6編とも謎の提示は魅力的で文句なしですが、機械的トリックが多く解法も鮮やかさに欠ける感じを受けるのが残念。
妻を亡くし涙もろい隠退した老牧師という探偵役は、ホックのキャラクターたちと比べて存在感があるように思います。


No.1415 8点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2011/01/25 17:22登録)
怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズ(と断言していいか微妙ですが)の3作目。
今回文庫版で再読しましたが、指摘されていた時間軸の矛盾などの不備な点を改稿するとともに、媛首村の略地図や事件現場のお堂の見取図が挿入されていて作品世界をイメージし易いのが良。
首無しのメイン・トリックを成立させるために、秘守家の伝承・儀式・祟りなどのエピソードが必要な訳で、正に”ホラーと本格ミステリの融合”の惹句どおりの傑作でしょう。
以下はネタバレになりますが、

首無し死体=被害者の入れ替りは定番ですが、さらに、語り手、真犯人、探偵役までもが入れ替るという趣向が、作者が一番やりたかった事かな、と再読して感じました。


No.1414 6点 死角 オーバールック
マイクル・コナリー
(2011/01/24 17:27登録)
ロス市警のハリー・ボッシュ刑事シリーズ13作目。
エコー・パーク事件後、殺人事件特捜班に配属されての初仕事は、放射性物質強奪が絡む殺人事件。コナリー版「24 Twenty Four」とも言える(実際は半日で解決されるが)捜査過程が分刻みでスピーディに描かれています。
珍しく上下巻でない分量なので、やや物語に深みが感じられない点がありますが、大掛かりなミスディレクションと伏線の妙は相変わらず健在で、充分満足できる内容でした。


No.1413 5点 幻の蝶殺人事件
梶龍雄
(2011/01/23 13:40登録)
”シラケ姫”こと女子大生・奈都子シリーズの第1作。
ある大学の学園祭のさなか、昆虫同好会部室での密室殺人を発端にした連続殺人を扱った本格編。
同じ学園ミステリでも、初期に書かれた旧制高校シリーズとは大いにテイストが異なる通俗風味の作品で、女子大生の会話口調が例によって酷いですが、その辺に目をつぶれば、連続殺人のホワイダニットに工夫があり、ミステリの仕掛けはそう悪いとは思わなかった。


No.1412 5点 ゆがめられた昨日
エド・レイシイ
(2011/01/23 12:09登録)
黒人の私立探偵トゥセント・モーアを主人公とした、1957年度MWA賞作品。
殺人の容疑を受けたモーアが、ニューヨークから逃亡し、人種的偏見あふれる南部の街で被害者の過去を探るというストーリーで、ハードボイルドの私立探偵小説というより、巻き込まれ型のサスペンスに近い作風です。
「さらばその歩むところに心せよ」がよかったので読んでみましたが、ミステリの趣向的には、真相の意外性はなくサスペンスもいまいちでした。テレビ界が背景で人種問題という社会性を取り入れたのが当時としては新鮮な題材だったことで、エドガー賞となったのでしょうか。


No.1411 6点 幻狼殺人事件
梶龍雄
(2011/01/22 16:27登録)
群馬県の山村を舞台に、幻のニホンオオカミの調査で訪れた研究員が巻き込まれる殺人事件。
戦前に村で発生した婦女暴行&大量殺戮事件、鍾乳洞の迷路、最後に屋敷の炎上など、これは明らかに「八つ墓村」のオマージュといえる作品で、作者にとっては異色のミステリでした。
ちょっと色々な素材を詰め込み過ぎで、まとまりを欠いた感じも受けますが、こういった伝奇風ミステリは好みなので良とします。


No.1410 6点 ライノクス殺人事件
フィリップ・マクドナルド
(2011/01/22 16:02登録)
長らく幻の古典名作といわれ、”結末に始まり発端で終わる”構成の妙が取り上げられることの多い作品ですが、その構成自体は、逆に真相を分かり易くしていて、今では感心するほどのものではないでしょう。
むしろ、ライノクス社の社長ベネディックを始めとする登場人物が醸し出す牧歌的ユーモアや、後半のコンゲーム的展開が面白い。爽やかで後味のよいエンディングも◎です。


No.1409 7点 龍神池の小さな死体
梶龍雄
(2011/01/21 18:27登録)
戦時中の学童疎開中に池で溺死したという弟の不審死を、23年後に母親の臨終のひと言によって、兄の大学教授が調査に乗り出すというストーリー。
いわゆる”スリーピング・マーダー”ものの現代ミステリで、青春ミステリ三部作と比べると叙情性に欠けるものの、そのぶん本格ミステリに拘った力作です。同じ原理の古典的トリックを4連発で盛り込むところが凄い。(とくに、吉爺に関する”それ”は秀逸)。
ラストは、ドンデンの狙いすぎであざとさを感じますが、それも作者の本格ミステリに対する情熱の表れでしょう。


No.1408 7点 悪魔はすぐそこに
D・M・ディヴァイン
(2011/01/21 17:59登録)
大学の教授・講師らのドロドロとした人間関係を背景にして、過去の醜聞、現在の殺人と脅迫事件が錯綜したミステリ。
三人称多視点で語られるストーリーは、主要登場人物の内面描写を交えながら、巧妙なミスディレクションで真犯人を隠蔽しています。(読後にアンフェアな記述では?と思ったところも読み返してみると巧みに描写していることが分かります)
探偵役をはっきり設定したスタンダードなフーダニト・パズラーではないので、評価が分かれるかもしれませんが、個人的には結構ツボでした。


No.1407 5点 真夏の夜の黄金殺人
梶龍雄
(2011/01/21 17:23登録)
副題が”推理早慶戦!”とある通り、海水浴場ちかくの黄金屋敷に用心棒のアルバイトに来た早大生4人組と、近くに合宿中の慶応美術部員たちによる推理合戦という趣向。
初期の青春ミステリの味わいはあまりありませんが、恋の鞘当あり、不可解な殺人事件に細かな伏線ありで、軽本格ミステリとしてそれなりに楽しめました。


No.1406 4点 図説 密室ミステリの迷宮
事典・ガイド
(2011/01/20 18:16登録)
10年ぐらい前に「有栖川有栖の密室大図鑑」という似たコンセプトの企画本がありましたが、本書は40人以上の実作者・書評家などによるアンケートに基づき選定した40数作品の事件現場図付き読書ガイドが中心になっています。そのため、無難な作品が大勢を占め、密室ミステリの知られざる珍品のようなものは見当たらなかったのは個人的に物足りない。
あとがきに”密室のテーマパーク”とあるように、映像作品、ゲーム、漫画などを取り上げた総花的な構成も、嗜好に合わなかった。

ちなみに、歴代密室ミステリの個人的ベスト3は、
国内長編だと、「本陣」「刺青」「虚無への供物」、国内短編は、「赤い密室」「妖婦の宿」「高天原の犯罪」かな。
海外長編は、「黄色い部屋」「三つの棺」「ユダの窓」、海外短編が、「妖魔の森の家」「北イタリア物語」「有蓋橋の謎」といったところ。やはり、カーが多いな。


No.1405 5点 血塗られた映画祭
スチュアート・カミンスキー
(2011/01/19 17:46登録)
”旧ソ連の87分署”ロストニコフ主任捜査官シリーズの2作目。
モスクワ映画祭を狙った過激派グループのテロ計画がメインとなっているが、部下のカルポ、トカッチの捜査過程は若干サスペンスに欠け、フーダニット的興味がうすいこともあって、邦訳作品のなかでは一段落ちる出来だと思う。
ロストニコフ夫婦の”ある計画”とKGB大佐との駆け引きは、次作以降の伏線となっているが、残念ながら本シリーズも邦訳が本書で途切れています。


No.1404 7点 警官の紋章
佐々木譲
(2011/01/19 17:45登録)
北海道警シリーズの3作目。
今回は、部署が異なる3人のメイン・キャラクターが影の捜査チームを組むのではなく、津久井、佐伯、小島百合それぞれが別々の案件に関わりながら、洞爺湖サミット警護団結式というクライマックスで収斂するという図式です。
結末がややあっけないですが、それまでのリアルで緊迫感のある展開は読み応え充分。キャラクターではなくプロット重視のため、マンネリを感じさせない。
なお、第1作のネタバレ満載のため、本書から先に読むのは避けるべきでしょう。

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