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ミステリの祭典

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ゆがめられた昨日
黒人探偵トゥセント・モーア

作家 エド・レイシイ
出版日1958年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2016/12/22 22:58登録)
「さらばその歩むところに心せよ」が良かったので、余勢を買って本作。「さらば」の主人公も腕っぷしに自信ありのマッチョな警官だったが、本作の黒人私立探偵もシャフトみたいなカッコイイ私立探偵ではない。友人の探偵から回された警備員や月賦の取り立てみたいなセコイ仕事専門の、頭の回りにはあまり自信がないけど、これもまた腕っぷしは自信あり...と、言ってみれば、ボンクラな探偵なんだよね。ミステリ(とあとSF)って主人公のアタマの良さについて盛り盛りな設定がザラなジャンルなんだが、逆を突かれた評者は実に好感、だ。
この探偵がTVのドキュドラマな探偵番組の依頼で監視した男が殺され、その現場に居合わせたことで容疑がかかって、それを晴らすべく....という話。しかし、大した真相があるほどのことでもないし、「さらば」みたいな大掛かりなドンデンもない。けどね、本作はボンクラ魂が燃えに燃えるイイ小説なのだ。自分がかかった罠だから、ない知恵を必死で巡らして窮地から逃れようとする主人公の姿が何かすごく尊く感じられる。
まあ公民権運動真っ只中に発表された黒人主人公の作品というわけで、ミステリ界からの公民権運動へのエールみたいな側面(MWA受賞もそういう側面があるだろうな)もないわけじゃないだろうが....でも、いわゆる「社会派」にありがちな、観念的で偽善的な空気がまったくない。最後は周囲の人々の理解も得られて、白人を含む周りの人々に支えられてついには犯人をちゃんと捕まえる。声高に言い募ることのない、さりげない友情と理解が、いい。地に足のついた小説である。

No.1 5点 kanamori
(2011/01/23 12:09登録)
黒人の私立探偵トゥセント・モーアを主人公とした、1957年度MWA賞作品。
殺人の容疑を受けたモーアが、ニューヨークから逃亡し、人種的偏見あふれる南部の街で被害者の過去を探るというストーリーで、ハードボイルドの私立探偵小説というより、巻き込まれ型のサスペンスに近い作風です。
「さらばその歩むところに心せよ」がよかったので読んでみましたが、ミステリの趣向的には、真相の意外性はなくサスペンスもいまいちでした。テレビ界が背景で人種問題という社会性を取り入れたのが当時としては新鮮な題材だったことで、エドガー賞となったのでしょうか。

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