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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2463件

プロフィール| 書評

No.1603 6点 クライム・マシン
ジャック・リッチー
(2011/10/08 17:19登録)
無駄な描写を削ぎ落としたシンプルかつ軽妙洒脱な文体で、短編ミステリの名手といわれるジャック・リッチーの傑作選。今回は河出文庫での再読ですが、シリーズものがカットされ単行本とは若干収録作が違います。

殺し屋のもとにタイムマシンで過去の殺しを目撃したという男が現れる表題作の「クライム・マシン」。奇抜な設定と意外な着地点が面白い。「エミリーがいない」は、妻殺しを疑われた男と従妹の対決もの。結末のツイストはまあこうなるだろうと予想がつくものの、そこまでの持って行き方が巧い。
その他、結末のインパクトが弱い作品も散見されますが、職人芸が発揮された好短編集という印象です。


No.1602 4点 密室殺人ゲーム・マニアックス
歌野晶午
(2011/10/07 17:43登録)
シリーズの番外編。
これまで5人の鬼畜メンバー内で閉じられていた密室ゲームをオープンにすることによって初めて意味を持つことになる作品全体に仕掛けられた本書のアイデアはそう悪いとは思わない。
しかしながら、個々の出題に対する真相はお寒い限り。ゲームだからトリックが巧く行ったものを出題したという趣旨の”メンバー”の発言があるが、それを言ったらオシマイだ。


No.1601 7点 ブラッド・ブラザー
ジャック・カーリイ
(2011/10/06 18:31登録)
サイコパスを兄に持つカーソン・ライダー刑事シリーズの4作目。
本書では、いままで登場シーンが少ないのに存在感が尋常でなかった実兄・連続殺人犯ジェレミーが主役。矯正施設から解き放たれ舞台を潜伏先のニューヨークに移し、連続して発生する惨殺事件を巡っての兄弟の知的対決が一番の読みどころでしょう。ジェレミーの他人を思いのまま操るテクニックや、カーソンにヒントを与える手法など、レクター博士とダブって見えてきた。
「すべては驚愕の真相のために」と題した解説の冒頭に、ジェフリー・ディーヴァーとマイクル・コナリーの代表作からの引用があるのだけど、確かに騙しの巧妙さは二人と比べても遜色ないように思える。


No.1600 6点 物の怪
鳥飼否宇
(2011/10/04 17:44登録)
動植物オタクの”観察者”鳶山と女性写真家コンビによる連作本格ミステリ。
最近は「~的」シリーズなどトンデモ系の作品が目立つ作者ですが、横溝正史賞のデビュー作「中空」で初登場の観察者シリーズは地味ながら端正な本格モノという印象です。

河童、天狗、鬼という”物の怪”を民俗学的なアプローチでその正体に迫る鳶山の蘊蓄が面白いし、ロジカルな推理で事件を収束させた後に来る不気味さがなんともいえない余韻を残します。
収録3編いずれも甲乙付け難いですが、伏線の張り方と回収の見事さで「天の狗」がベストかな。


No.1599 6点 追いつめられた天使
ロバート・クレイス
(2011/10/02 23:25登録)
ロサンジェルスの私立探偵エルヴィス・コール、シリーズの2作目。

 「くだらない冗談をきくために君を雇ったのじゃない」
 「これは無料のサービスです」

こんなジョークや減らず口がポンポン飛び出す序盤は気楽に読めるのですが、誘拐された少女ミミを巡る今回の事件の結末は予想に反してかなり悲劇的。
優しさと甘さがある探偵エルヴィスより、ストイックな相棒ジョー・パイクのほうが遥かにハードボイルドなのは作者の意図したものだろうか?


No.1598 4点 五色沼黄緑館藍紫館多重殺人
倉阪鬼一郎
(2011/09/30 22:30登録)
今年も出ました!メタでおバカな叙述ミステリの第4弾。
唐草模様で彩られた雪中の館を舞台に4人の招待客が次々と殺されていく・・・・。多重構造の館で起こる多重殺人に探偵役の多重解決、おまけに犯人は多重●●だったという「多重」づくしですが、ミステリ的には早々に収束させ、またまた作者の労力は別の所へ向いています。
これまた文庫化不可能な仕掛けでした。うぅ~ん、唐草模様、からくさ、カラクサ・・かぁ(笑)。


No.1597 6点 謝罪代行社
ゾラン・ドヴェンカー
(2011/09/29 18:12登録)
ジョン・ハート「ラスト・チャイルド」に続いて"ポケミスと文庫版で同時出版"という鳴り物入りのドイツ・ミステリの異色作。
確かに構成が凝りに凝っている。
主人公たち謝罪代行社の男女4人それぞれの視点で語られるメイン・ストーリーの合間に、二人称「おまえ」のノワールな挿話、一人称「わたし」の意味深な独白、さらには”現場にいなかった男”三人称「彼」のエピソード。折原一もビックリの複数の正体不明の人物の叙述が交錯しながら意外な展開をみせるところは面白かったし、不思議と読みやすく混乱することはなかった。
でもねぇ、前半にあれだけ筆を費やした謝罪代行社メンバーと家族のエピソードは本筋とあまり絡んでこないし、無駄と思える記述が多すぎる。抽象的な動機もいまいちピンとこなかった。評価に迷う作品。


No.1596 4点 本当におもしろい警察小説ベスト100
事典・ガイド
(2011/09/27 22:01登録)
警察小説のガイド本。冒頭に”活況を呈する警察小説”とありますが、横山秀夫、今野敏、佐々木譲の御三家によるブームも現在だいぶ下火になってしまったように思います。ちょっと出版時期を逸した感がなきにしもあらず。

国産ものが7割という選定は、その読者人口から当然とはいえ、十津川警部や棟据刑事まで警察小説として出してくるのはどうなんだろうか。
海外ミステリは、’60~’70年代の忘れられかねない(すでに忘れられた?)作品を多く挙げているのはいいのだけど、紹介内容が薄くシリーズの第1作だけ取り上げ代表作を挙げないなど、あまりにも通り一遍で、その作品を読んでみようと思わせる魅力を表現できていないのが残念。


No.1595 6点 マスカレード・ホテル
東野圭吾
(2011/09/25 18:41登録)
当代人気作家・東野圭吾の新シリーズ第1作。
”刑事もの”といえば靴底をすり減らしての聞き込み捜査という定番を外して、超一流ホテルのフロント係に扮する潜入捜査という設定が気が効いている。ホテル内に舞台を限定し、怪しげな人物が次々現れる展開や、刑事の勘と女性フロント係のプロ意識との衝突などが面白く、さすがのストーリー・テラーぶりです。
ただ、本格ミステリとして見た場合、”犯人当て+被害者当て”ということになるのですが、前提となる連続殺人の構図の仕掛けが途中であっけなく開示されたり、最後は犯人によるその複雑な工作があまり意味がない様に思えてしまうのですが。


No.1594 5点 ミセス・ヴァン・ホーテンの秘密の仕事
パトリック・クェンティン
(2011/09/23 11:45登録)
ティモシー・トラント刑事シリーズの中篇。どうも、トラントが初登場する長編の短縮版らしい。これもおっさんさんからご教示いただいた翻訳道楽からのセレクトです。

作家の著作をアドヴァイスする会社の女経営者が事務所で殺される。事件当日の訪問者9名はいずれも潜在的殺人者で・・・というストーリー。9人もの訪問者という容疑者が多すぎて整理されていないのが難ですがが、端正な犯人当てミステリでした。トラントが若くて、いやにチャラいので後の作品とは別人に見える。

ところで、被害者であるクララ・ヴァン・ホーテン。「ヴァン」はvanでしょうか大文字のVanでしょうか。電話帳はVの位置?それともHのページ?・・・・われながらシツコイ(笑)


No.1593 6点 アリバイの彼方に
夏樹静子
(2011/09/22 18:06登録)
初期の作品8編収録された短編集。表題作をはじめ「滑走路灯」「止まれメロス」「特急”夕月”」など、いずれもタイトルに憶えはあるのだけど内容はすっかり忘れていました。

「アリバイの彼方に」は、解けそうで解けないアリバイ崩しもの。高校時代の同級生である犯人と刑事を対峙させ、過去のエピソードと現在の事件を交錯させた構成がうまい。
「滑走路灯」もアリバイが主題だが、アンチ・アリバイ崩しともいうべき意外な展開をみせる佳作。伏線が巧妙に敷かれており感心した。これが編中のベスト。
「特急”夕月”」は、時刻表トリックを駆使して犯行直前まできた犯人に予想外のトラブルが起こり・・・という半倒叙もの。状況が変わる毎に犯人の態度が二転三転するのが可笑しい。他の作家ならドタバタ・ミステリになるところを夏樹流に仕上げている。


No.1592 5点 ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻
P・G・ウッドハウス
(2011/09/20 18:12登録)
腹黒執事ジーヴズ・シリーズ、ユーモア連作短編集の2巻目。
なんといってもギャンブル・ネタ三連発の「トゥイング騒動記」がケッサクで笑える。牧師を競走馬に見立てて説教の長さを賭けのネタにしたり、村の変な運動会の勝者を当てるのだが、ジーヴスの策略によるどんでん返しがお見事。
このジーヴズ、「ご主人様はアホでいらっしゃいますか?」なんて本当のことは思っていても口に出さない。さすが本場英国の執事はちがう、いつのまにか主人を自分の思うように操るのである。


No.1591 6点
横溝正史
(2011/09/20 17:42登録)
金田一耕助シリーズの短編集。
好みで言えば編中唯一の岡山もの、表題作の「首」。撮影で滞在する映画スタッフと、300年前の村の一揆のエピソードを髣髴させる不連続首切り事件・・・王道ですね。猟奇的な事件も磯川警部のキャラクターで中和される。
通俗的エログロが突出した感のある「生ける死仮面」も骨格は本格編で、二転三転する展開が楽しめた。


No.1590 6点 白尾ウサギは死んだ
ジョン・ボール
(2011/09/18 23:55登録)
カリフォルニア州・パサディナ警察の”黒いホームズ”こと、黒人刑事ヴァージル・ティッブスを探偵役に据えたシリーズの2作目。
映画(タイトル「夜の大捜査線」)と原作ともにヒットしたデビュー作「夜の熱気の中で」のみ取り上げられることの多いジョン・ボールですが、本書も警察小説とフーダニット・ミステリの魅力を兼ね備えた佳作だと思います。ただ、終盤の関係者を集めたティッブス刑事の謎ときには、伏線の妙味はあるものの後出しデータもあり、フェアプレイに対する厳密さは感じられませんでした。
やはりこのシリーズの作者の意図する読みどころは、偏見と蔑視に耐えながら聡明さと人間的魅力で事件に挑む主人公の造形にあるのでしょう。


No.1589 6点 応家の人々
日影丈吉
(2011/09/16 22:59登録)
日本統治下の台湾を舞台背景にした異国情緒あふれるミステリ。
主人公で探偵役の元中尉の回想の形で、台湾の名家の出で美貌の未亡人・珊希を軸にした複数の不審死事件が語られていくが、物語が何重もの入れ子構造になっているので中盤読んでいてちょっと混乱しそうになった。
真相はこの時代この国ならではという感じはするが、伏線が不足気味で唐突感もある。

手掛かりを求めて中尉が亜熱帯の台湾南部の町を巡る場面など情景描写が印象的だが、ミステリとしての完成度では同じ台湾ものの傑作「内部の真実」にはやや及ばないかな。


No.1588 6点 モンキーズ・レインコート
ロバート・クレイス
(2011/09/14 17:34登録)
「初しぐれ、猿も小蓑を欲しげなり」

ハードボイルド小説のタイトルを芭蕉の句から借用するなど、この作者タダモノではないなと思わせるのですが、ロスアンジェルスの探偵エルヴィス・コールが初登場する本作、内容のほうは案外と典型的な私立探偵小説でした。

エルヴィス・コールは屈折型の探偵が多いネオ・ハードボイルド派とは一味違って、優しさを兼ね備えた体育会系といったところ。スペンサーのコピーともいわれ、確かにホークに相当する凄腕の相棒ジョー・パイクの役割など似ていますね。(ちなみに、ジョー・パイクを主人公にしたスピンオフ作品が今年邦訳された)
シリーズを続けて読むことで味がでてくるタイプのハードボイルドのようなので暫く追いかけてみよう。


No.1587 5点 裏切りの第二楽章
由良三郎
(2011/09/13 22:48登録)
初期の”音楽ミステリ三部作”、白河警視&結城鉄平シリーズの第3弾。
第1作と同じ現場・地方都市の市民会館ホールで、アマチュア弦楽四重奏団メンバー内の毒殺事件を扱っていて、密室がらみの毒殺トリックを中心に、ダイイング・メッセージや暗号などを取り混ぜた愚直なまでの本格編でした。
音楽の素養が全くない身にとっては「ドビュッシーの弦楽四重奏第二楽章におけるバイオリンのピチカート」といわれてもピンとこない訳ですが、そうでない人には「おおっ!なるほど」のトリックかもしれません。


No.1586 6点 狩場の悲劇
アントン・チェーホフ
(2011/09/12 18:05登録)
チェーホフが初期に書き上げた唯一の長編ミステリ。ちくま文庫版”チェーホフ全集2”で読みました。
村の名士である伯爵の広大な領地を舞台に、複雑な恋愛模様の末の殺人事件の顛末が、事件に関わった元予審判事の持ち込み原稿という作中作の形式で語られます。

19世紀も末のロシア貴族の享楽的生活や、ある女性を巡る前時代的な人間模様など、主人公の予審判事の内面描写を交えた前半部は「さすが、ロシアの文豪」と思わせるのですが、殺人事件発生後(つまり本格的に探偵小説になったとたん)”ある事情”により急に文芸的にレベルダウンしてしまってますね(笑)。本書に仕掛けられた先駆的アイデアについては事前に知っていましたが、知らずに読んでもこれは分かってしまうでしょう。

なお、この作品は東都書房の世界推理小説体系5にも収録されているのですが、併録作品が「スミルノ博士の日記」というのが何ともシュールです。


No.1585 6点 鍵のかかった部屋
貴志祐介
(2011/09/07 22:46登録)
「硝子のハンマー」の防犯探偵&天然女性弁護士コンビ・シリーズの第3弾。例によって密室トリックのハウにのみ拘った4編が収録されています。
真正面から密室トリックに挑んだ前半2作では、多重トリックで複雑強固な密室を構築した表題作がなかなかの力作。犯人像はどこか”ハスミン”を思わせる。
後半2作は、ともにおバカなトリック。「歪んだ箱」は”巨人の星”のあの名シーンがトリック発想のヒントなんだろうか。なお、最後の「密室劇場」は自分のなかでは読まなかったものとしたい(笑)。


No.1584 7点 一日の悪
トマス・スターリング
(2011/09/05 22:20登録)
ヴェニスにある古い屋敷を舞台にした遺産相続を巡るミステリ。

これはかなり面白い。よく出来た騙し絵ミステリですが、内容を詳しく書こうとするとどうしても事実と異なるアンフェアな表現になってしまう困った作品。
途中までは心理サスペンス風でちょっと読みずらいところもありますが、終盤の構図の反転度合いがすごいです。遺産相続ものの登場人物達それぞれの役割・立ち位置をここまで逆転させた手際はお見事というしかありません。

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