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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2516件

プロフィール| 書評

No.1656 5点 スパイダーZ
霞流一
(2011/12/18 21:23登録)
本格パズラーと警察小説のハイブリッドというだけでなく、B級アクション、バカミス密室トリック、操りの構図(なにせ、スパイダーですから)など、多彩なミステリ趣向を盛り込んだなかなかの力作だと思います。
問題は、自分が信じる”正義”のためには手段を選ばない主人公の刑事・唐雲の人物造形にあって、この人物に感情移入することは難しいでしょう。
むしろ、ノワールまたはサイコミステリが好みの読者のほうが合うかも。


No.1655 6点 気どった死体
サイモン・ブレット
(2011/12/16 18:46登録)
裕福な高齢者限定の長期滞在型ホテルで起きた不審死と宝石盗難事件に遭遇したホテルの新しい住人パージェター未亡人は、亡き夫から伝授された”特殊技術”を使って探偵活動に乗り出すことに......。

サイモン・ブレットのもう一人のシリーズ・キャラクター、パージェター夫人が登場する第1作。俳優パリス・シリーズ同様に、シニカルな英国式ユーモアがちりばめられていますが、コージー系のミステリとはちょっと違います。
殺人者の独白をところどころで挿入したり、終盤に真犯人と思しき人物が次々と変転(二転三転どころか、五転六転)する非常にスリリングな展開で読者を翻弄させてくれます。ただ、推理して真相に至るには伏線不足の気がしますが。
日記や宝石などの小道具をミスリードに使う手法が巧妙で、心地いいヤラレタ感を味わえますよ。


No.1654 5点 帝王、死すべし
折原一
(2011/12/14 19:03登録)
いつもの折原流叙述ミステリ。しかし、これはちょっと微妙な出来かな。
復讐者の手記や父親が行動を起こすというプロット、タイトルから、ニコラス・ブレイクの「野獣死すべし」を意識させつつ、最後に・・・・という流れは、折原の通読者であれば仕掛けを察することは容易でしょう。もうひとヒネリ欲しかった。
今回の三面記事ネタ、京都伏見の「てるくはのる」事件は、あまり本筋と連動していないように思えるのも難点。


No.1653 6点 棺のない死体
クレイトン・ロースン
(2011/12/12 18:54登録)
奇術師探偵グレート・マーリニが登場する4作目で、シリーズ最後の長編。
墓場からよみがえる死者、心霊写真にポルターガイスト現象、密室状況からの人間消失など、ディクスン・カーをも凌駕するような怪奇趣向と不可能興味がテンコ盛りですが、ワトソン役で今回は主人公格のロス・ハートの軽い語り口と相殺されて、サスペンスはあまり感じません。色々な不可解な事象も拍子抜けする常識的な真相であったり、オリジナリティの点で問題があったりします。
それでも、終盤のフーダニットを巡っての二転三転する多重解決の部分は大いに楽しめました。
ワトソン役、担当警部補、探偵役の順に推理を披露する設定において、(細かいロジックは別にして)この結末の処理方法はなかなかユニークだと思う。


No.1652 5点 第四の男
石崎幸二
(2011/12/10 11:40登録)
会社員・石崎とミス研女子高生たちによる、お笑い&本格パズラーの第8弾。
女子高生にはいびられ、女性刑事にはビンタを浴びるという、作者の被虐趣味?が横溢するギャグはマンネリもあって今回はややトーン・ダウンぎみですが、誘拐未遂事件につづく犯行声明文の隠された企みや、密室内の血痕の謎など、ミステリの構成としてはよく出来ているのでは。


No.1651 5点 不自然な死体
P・D・ジェイムズ
(2011/12/08 18:24登録)
ダルグリッシュ警視シリーズの3作目。
”自然死に見せかけた殺人”を扱ったセイヤーズ「不自然な死」を意識しながらも、両手首切断という自然死を否定する死体を発端にもってきて、もう一段捻っています。その切断理由もまあ納得いくものです。
精緻な心情描写と重厚な筆致というジェイムスらしさは、半分を占める第1部までは覗えるのですが、休暇中で管轄外のダルグリッシュが本格的に捜査に乗り出した後半はやや駆け足ぎみかな。トリックはなかなか面白いのだけど、木に竹を接いだような感じを受けた。

そういえば、本日ついにメジャー挑戦を表明!・・・って、そっちは、ダルビッシュ(笑)。


No.1650 6点 ビブリア古書堂の事件手帖2
三上延
(2011/12/06 18:27登録)
北鎌倉にある古書店の美人店主・栞子さんと古書にまつわる日常の謎。ビブリオミステリの第2弾。

題材となった古書のトリビア・ネタに寄りかかっているもの(第2話など、その知識があればタイトル自体がネタバレ)があるが、青春恋愛ものの要素も加わり、今作も爽やかで読み心地が良かった。
ミステリの趣向では、第1話の「時計じかけのオレンジ」が面白い。前作までの流れがあるから、栞子さんの最後のオチが効いてくる。


No.1649 6点 雪どけの死体
ロバート・バーナード
(2011/12/05 18:11登録)
舞台はノルウェー北部の町トロムソ。雪の下から発見された旅行者らしき英国青年の殺害死体を巡る非シリーズもののミステリで、第1章が「真昼の黄昏」、最終章が「真夜中の太陽」と題されていて、この北極圏の町の季節の変遷を章題で表わすところがニクイです。
これまで読んだバーナード作品は家庭内の事件を扱ったものばかりでしたが、本書は、チャールズ・ブラウンと名乗っていた被害者の足跡をたどるファーゲルモ警部の捜査を中心に展開されていて、警察小説の趣きが強い。ノルウェー国内ならず英国まで飛んで証言を得る関係者一人一人のキャラクターがまた例によって変に個性的で、これがバーナードの一番の特徴でしょう。捜査過程も面白いが、終盤の真犯人との対峙、心理戦もなかなかスリリングでした。


No.1648 6点 要介護探偵の事件簿
中山七里
(2011/12/03 18:18登録)
下半身が不自由な車椅子の老社長が探偵役を務める連作短編集。
不動産会社を一代で興し名古屋の政財界で絶対的な影響力を持ちながら、警察や権力に対して反骨精神旺盛なこの主人公・香月玄太郎がなかなか面白い。ミステリとしては独創性に欠けるかなぁと思いつつ、キャラクター小説として楽しめました。
収録作のなかでは、銀行強盗の現場に巻き込まれる第4話「要介護探偵と四つの署名」が個人的にイチオシです。
主人公の玄太郎や介護士のみち子さんなど、登場人物の何人かは「さよならドビュッシー」からのスピン・オフですが、そっちを読んでおくと最終話「最後の挨拶」の趣向がより効いてきます。


No.1647 5点 トム・ブラウンの死体
グラディス・ミッチェル
(2011/12/01 18:29登録)
魔女の血を引く心理学者ブラッドリー夫人を探偵役に据えたシリーズの22作目。
魔女らしき老婆の存在というオカルト要素は、ブラッドリー夫人が事件に関わるキッカケでしかなく、宙に浮いている感じがするが、これはまあお約束のようなものか。
パブリック・スクールの学生寮を舞台に、教師たちとその家族の複雑な人間関係を紐解きながら、生徒たちの様々な生態が挿入されているのは、タイトルの元となった19世紀の英国小説「トム・ブラウンの学校生活」が念頭にあるのでしょう。いつもながら、子供を登場させると描写が活き活きしているように感じる。ただ、ミステリとしては徒に解決を先延ばししている感がありキレがないように思う(あの証言が出てこないから解決しないだけでは・・・・)。

このシリーズ1929年から84年にかけて66作も書かれているようで、現在7作の邦訳があるのですが、その版元が本書の早川書房をはじめ国書刊行会、晶文社、河出書房新社、長崎出版、論創社、原書房と、単行本クラシック・ミステリ出版社勢ぞろいというのがすごい。しかも、どの出版社も2冊目を出す気配がない(笑)。


No.1646 7点 アンドロギュノスの裔(ちすじ)
渡辺温
(2011/11/30 18:50登録)
戦前の探偵小説誌『新青年』で横溝正史の右腕として編集に携わりながら短編小説を執筆し、不慮の事故により27歳で夭折した伝説の作家・渡辺温の全集。

作風は幻想的と聞いていましたが、昭和初期の素朴でノスタルジーに満ちた、”影絵のごとき物語世界”という紹介文がピッタリです。その一方で、どんでん返し狙いのミステリ趣向の作品も結構あり楽しめました。
ミステリに限って感心した作品を挙げると、ラストのどんでん返しが意表を突く「象牙の牌」、二転三転するストーリーが楽しめる「遺書に就て」と「勝敗」など。なかでも、巧妙な伏線と唖然とする残酷なラストの「可哀相な姉」は最も印象に残った。
編集・装丁の素晴らしさと、これを文庫で出してくれた東京創元社に敬意を表して、採点にプラス1点献上。


No.1645 6点 ジョン・ブラウンの死体
E・C・R・ロラック
(2011/11/29 18:46登録)
いかにも英国’30年代の探偵小説といった地味で渋い作品。
瀕死の浮浪者・ジョン・ブラウンが目撃した謎の人物の怪しい行動と、隠棲するミステリ作家の盗作疑惑という、二つのエピソードが提示されるところまでは(そのつながりは、ある程度予想できるものの)惹きつけるものがありました。
難を言えば、やはりなかなか進まない中盤以降の展開と、マクドナルド警部の個性が全く見えず探偵役として魅力を感じなかったところでしょうか。
マクドナルド主任警部シリーズは全部で40作以上あるらしいのですが、他の作品もこういう感じなんだろうか。


No.1644 5点 邪馬台
北森鴻
(2011/11/27 21:34登録)
蓮丈那智フィールドファイルの4作目。作者の急逝で中断した作品を、氏の公私のパートナーだった女性が書き継いだ長編です。
邪馬台国の謎という手垢のついた題材ながら、民俗学的な観点で、”邪馬台国はどこか?”ではなく、”邪馬台国とは何か?”というアプローチが斬新。結論もなかなか説得力ありそう。ただ、出雲大社や吉備津神社の件など、高田崇史のQEDシリーズとネタがだいぶ被っていますが。
本筋はある古文書を巡るミステリで、冬狐堂や雅蘭堂、池尻大橋のバーの店主など、各シリーズのキャラクター総出演といったところですが、中盤以降は荒唐無稽な伝奇&陰謀ものの様相になっていてシラケました。


No.1643 6点 誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ
(2011/11/26 17:27登録)
セイヤーズの処女長編。
翻訳者の功績によるところもあるかも知れませんが、1923年出版のクラシック・ミステリとは思えない現代性を感じました。とくに、大戦で負ったトラウマにより突如発作を起すピーター卿の一面とか、最後の告白文で鮮明に浮かび上がる犯人の造形など、同時代の探偵小説とは一味違った新しさがあります。
ミステリのトリックに関しては、先代公妃(ピーター卿の母上)の存在がポイントとなる伏線が効いているのですが、わざわざ苦労して他人ちの浴室まで運び込む必然性がいまいち分からなかった。


No.1642 5点 謎解きの醍醐味
鮎川哲也
(2011/11/25 17:56登録)
光文社文庫の”ベストミステリ短編集”の第2弾で、シリーズ探偵が登場しない短編7作品収録。前作はアリバイ崩しをテーマにしたものでしたが、今回は内容的にあまり統一性が感じられない。
「矛盾する足跡」は推理作家・鮎川先生が謎解きをする異色作。ユーモアミステリではなく、雪の山荘での足跡トリックものという正統パズラーで最後のオチまで楽しめる。同じくコード型本格の「霧笛」は船上が舞台のフーダニットで、細かい伏線の張り方はさすがです。
「塗りつぶされたページ」が、”謎解きの醍醐味”という意味では個人的ベスト。日記を塗りつぶす理由が意外だし、真相解明までの過程が緻密で面白い。


No.1641 5点 忙しい死体
ドナルド・E・ウェストレイク
(2011/11/24 18:16登録)
死体消失や死体移動に伴う騒動は、スラップスティック・ミステリの定番のネタですし、タイトルから受ける印象からも単純にドタバタ・コメディだと思い込んでいたのですが、これは(ユーモアもありますが)軽めのノワール系クライムミステリといったほうが近いと思います。
また、謎解きミステリの要素もあり、「墓からヘロインだけ持ち出せばいいのに、なぜ死体まるごと掘り出したのか?」という謎の答はちょっと意表を突いてます。
事件に巻き込まれる主人公、ギャングの若手幹部エンジェルの個性はやや平凡なのですが、名前だけ登場する恋人ドリーの伝言メモがエスカレーション・ギャグとなっていてやたらと可笑しい。


No.1640 5点 定吉七は丁稚の番号
東郷隆
(2011/11/23 17:53登録)
殺人許可書をもつ丁稚、なにわの秘密諜報部員・定吉七シリーズの第1作。
タイトルは言うまでもなく007シリーズ映画化第1弾「007は殺しの番号」(原題「ドクター・ノオ」)のモジリで、本書の第1話「ドクター・不好」は、舞台をジャマイカから湘南に変えたスパイ・アクションもののパロディになってます。元ネタの見せ場の一つである人喰い蟹襲来のシーンが、カニ道楽の看板になっているのが笑える。
007のパロディをやりながら当時の世相を風刺しているのですが、そっちはさすがに今読むとピンとこない。


No.1639 6点 007 白紙委任状
ジェフリー・ディーヴァー
(2011/11/21 22:33登録)
現代によみがえる007シリーズ、ということで、ジェームズ・ボンドがスマートフォンのアプリを駆使しながら、世界各国を駆け巡ってます。
車と拳銃、酒と美女(いわゆるボンド・ガール)というシリーズ定番のガシェットを織り込みながらも、ボンドの内面描写が多く入り、映画のイメージとはだいぶ違う感じも受けました。
終盤の展開はやはりディーヴァーで、たたみ掛けるどんでん返しは今作も健在です。”活動的なリンカーン・ライム”とは言い得て妙。


No.1638 6点 味なしクッキー
岸田るり子
(2011/11/19 10:59登録)
タイトルは”味なし”ですが、収録作品はいずれも毒入りでブラックな味わいの短編集。
パリに住む男を訪れた女の目論みとは?男女の立ち位置が二転三転する「パリの壁」、冒頭の不可思議な謎とラストの構図の反転によるサプライズの表題作「味なしクッキー」。この2作はともに連城ミステリを思わせるプロットでなかなかの佳作。間違い電話を利用したアリバイ・トリックもの2作「愚かな決断」と「生命の電話」は、アイデアはいいがミステリの出来としては普通かな。
「決して忘れられない夜」を筆頭に、収録6編に共通するテーマは、”オンナの怖さ”と”オトコの愚かさ”ですかね。


No.1637 6点 ローラ・フェイとの最後の会話
トマス・H・クック
(2011/11/17 17:37登録)
主人公である冴えない歴史学者ルーカスと、20年前の殺人事件の中核にいた女性ローラ・フェイとの、男女二人の会話場面のみでポケミス2段組み300ページというユニークな構成ですが、ルーカスの回想が自然な形で挿入され、過去の人間関係の絡み合った糸が徐々に解かれていくプロットは、版元が変わっても、やはり90年代に書かれた”記憶シリーズ”の延長線上の作品という印象です。
ただ最後は、こういった構成のミステリから予想できる結末をあえて外しているのは意外でした。これは、あまりクックらしい終り方ではないように思う。

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