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ミステリの祭典

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クライム・マシン
ターンバックル部長刑事もの、私立探偵カーデュラもの(元版のみ) ほか

作家 ジャック・リッチー
出版日2005年09月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 E-BANKER
(2019/05/19 11:24登録)
探偵の正体が○○○○の「カーデュラ探偵社」で著名なJ.リッチー。
短編の名手とも称される作者のもうひとつの代表作。
それぞれの発表年は1960年代が大宗を占める模様。

①「クライム・マシン」=これは名作! タイムマシンが存在すると信じ込まされた殺し屋の“俺”。それもそのはず、“俺”の目の前でタイムマシンが消え去ってしまったのだから・・・。とにかくオチが秀逸。こういうのを短編のお手本というのだと思う。
②「ルーレット必勝法」=毎夜、同じ額をベットし、最終的には勝ち続ける男。このままでは破産させられるという恐怖に慄いた店主が取った行動はやはり・・・。ただし、これもラストには意外なオチが待ち受ける。
③「歳はいくつだ」=行儀の悪い男女をつぎつぎと拳銃で撃ち殺していく男。街は男を恐れ、人々は行儀よくし始めるのだが・・・。これは「風刺」かな?
④「日当22セント」=監獄から出所した男はすぐに銃を手に入れる。自分を無罪に出来なかった弁護士や罪に陥れた男を葬るために・・・。と、こう書くとシビアな話に見えるが、決してそんなことはない。人間の欲得は深いということ。
⑤「殺人哲学者」=ショート・ショート。
⑥「旅は道連れ」=これもごく短い作品なのだが、ふたりの「おばさん(?)」の会話とオチがなかなか笑える。結局、ラストは・・・?
⑦「エミリーがいない」=読者も作中人物までも騙して、最後は予想外のオチが炸裂。途中までは誰しも「○されたんだろう」って想像するよねぇ・・・
⑧「切り裂きジャックの末裔」=自分を切り裂きジャックの末裔だと信じている男と精神科医。何となく不穏な空気が流れるなか、事件が・・・
⑨「罪のない町」=ショート・ショート。エッジは効いてる。
⑩「記憶よ、さらば」=記憶喪失の男が実は大金持ちだと知らせたとき、彼にとっては陥穽のワナが始まった・・・。ラストはひたすらオロオロ。欲をかかなかったらね
⑪「こんな日もあるさ」=本編と次の⑫はミルウォーキー警察署刑事ヘンリー・S・ターンバンクルが探偵役を務める。探偵役といっても狂言回し的な役どころではあるが・・・。本編もなかなかの佳作。
⑫「縛り首の木」=ターンバンクルら二人が迷い込んだのは近世の雰囲気を模した村。その村で妙な光景を見たとか、見なかったとか・・・という話。(?)
⑬「デヴローの怪物」=全身毛むくじゃらの怪物を見たとか、見なかったとか・・・という話。(?)
以上13編。
いやいや。さすがに短編集で「このミス海外部門」第一位を取っただけのことはある。
「短編の名手」という称号を持つ作家は多いけど、リッチーも十分資格ありだろう。
「カーデュラ探偵社」もその”軽さ、軽妙さ”が利点だったけど、本作も同様。ひとことで言えば「面白い」。
(ベストは何といっても①。これはオールタイム級の水準。)

No.3 5点 蟷螂の斧
(2016/03/13 22:31登録)
(再読)なぜ手元にあるのかと思いましたら、2006年版海外編「このミステリーがすごい!」第1位との帯がありました。解説には「シンプルに書くことにこだわった作家・・・無駄な言葉や描写を徹底的にそぎ落とすこと・・・「軽さ」こそが身上である。」とあります。その「軽さ」を良しとするかどうかで評価が分かれてしまうと思います。常日頃、短編はあらすじを読んでいるようで味気ないとの思いがあり、オチにかなりのインパクトがないと高評価は付けづらいですね。決してつまらない作品集ではありませんが、ガツンとくるものが残念ながらありませんでした。MWA賞受賞作「エミリーがいない」も評価は6~7点くらいかな。

No.2 7点 mini
(2013/07/26 09:57登録)
昨日25日発売の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”魅惑の宝塚/作家特集ジャック・リッチー”
女性の現編集長に変わってからミスマガの傾向が変わったとは思っていたが、とうとう宝塚かよ(笑)
何の関連が?と思ったら、どうやら「ルパン最後の恋」絡みなんだな
怪盗ルパンの真正最後の作品として昨年に未発表原稿が発見された「ルパン最後の恋」は、今年既に早川文庫で刊行済だが、後を追うように明日27日も創元文庫版が予定されている
宝塚では月組公演として月組トップスターがルパンを演じるのだそうだ、まぁたしかにホームズより怪盗ルパンの方が宝塚向きだしな
国内作品で宝塚がテーマの作品て有るのかねえ?どなたか御存知でしょうか?
TVの2時間ドラマでさ、元宝塚っていう設定の女探偵って無かったっけ?主役候補の女優なんて天海・真矢とかそれこそいくらでも居そうだが
さてもう1つの特集はジャック・リッチー

リッチーの代表作的短編集「クライム・マシン」はそれまで大長編が有利と言われていた”このミス”を短編集で海外部門1位を取った初めての作だ、それも重厚長大とは対極の”軽さの極み”みたいな短編集だもんね
軽妙洒脱な短篇作家だとヘンリー・スレッサーなども居るが、リッチーはスレッサー流のアイデアとツイスト勝負な作風とはまた一味違う
一番らしいなと思うのは、読者には裏事情はミエミエなのだが、作中登場人物が全く気付いていない可笑しさだ
中でも「旅は道づれ」とかターンバックルものの「縛り首の木」なんて爆笑もので、お前ら早く気付けよ、と思わず忠告したくなる〈笑)
そんな読者の心理を逆手に取った「エミリーがいない」みたいなのも有るが
個人的にはちょっとリッチーらしからぬ重厚さが異色の「デヴローの怪物」なんかも好きだな

ところでkanamoriさんも述べられているように、当初”このミス”1位を採った時は晶文社版だったのだが、河出文庫への文庫化に際して収録作が一部変更された
探偵カーデュラもの数編をカーデュラシリーズ中心で纏める為に省き、代わりにノンシリーズ短編数編と入れ換えている
次回はカーデュラの短編集も書評せねばならんな

No.1 6点 kanamori
(2011/10/08 17:19登録)
無駄な描写を削ぎ落としたシンプルかつ軽妙洒脱な文体で、短編ミステリの名手といわれるジャック・リッチーの傑作選。今回は河出文庫での再読ですが、シリーズものがカットされ単行本とは若干収録作が違います。

殺し屋のもとにタイムマシンで過去の殺しを目撃したという男が現れる表題作の「クライム・マシン」。奇抜な設定と意外な着地点が面白い。「エミリーがいない」は、妻殺しを疑われた男と従妹の対決もの。結末のツイストはまあこうなるだろうと予想がつくものの、そこまでの持って行き方が巧い。
その他、結末のインパクトが弱い作品も散見されますが、職人芸が発揮された好短編集という印象です。

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