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ミステリの祭典

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文生さんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:510件

プロフィール| 書評

No.330 5点 戦物語
西尾維新
(2023/05/26 19:11登録)
物語シリーズが終物語で一応の完結をみたのが2014年。まさか、大学編を経て阿良木暦と戦場ヶ原ひたぎの結婚後も話が続くとは思いもしなかった。
今回は新婚旅行のエピソードであり、戦場ヶ原と忍野忍がシリーズ初の顔合わせといったファンにとってはうれしいイベントなどを含めつつ、キャラ同士の掛け合いは安定の面白さです。ただ、もう一つの柱である怪異譚の方はあまりにも薄味。このあたりは次回以降に期待ということかな?


No.329 7点 死と奇術師
トム・ミード
(2023/04/29 18:14登録)
7点か6点かで迷う作品。
連続密室殺人の謎に元奇術師の探偵していたが挑むという筋書きで、解決編までは非常に楽しい。1936年のロンドンでは不可能犯罪が流行している設定だったり、『三つの棺』の密室講義に言及したり、読者の挑戦付きの袋綴じ企画があったりと、マニアのためのザ・本格といった感じでまるで日本の新本格を読んでいるよう。解決編に入ってからも正体不明だった訪問客の正体についてはミスディレクションが効いていて唸らされました。ここまでなら文句なしの8点。ただし、肝心の密室トリックが小手先のテクニックだったり、推理しようのない機械トリックだったりしてどうも感心しない。JDCに捧ぐと書いていたからカーの代表作並みのトリックを期待していたらクレイトン・ロースンだったという感じ。まあ、探偵役が奇術師だったり、奇術の種は明かされてみるとつつまらなく感じるものだとか予防線を貼っていたりしていた時点で嫌な予感はしていたのだけど。それでも、密室トリック以外の部分では大いに楽しませてくれたのでトータル7点で。


No.328 7点 警部ヴィスティング 疑念
ヨルン・リーエル・ホルスト
(2023/04/07 09:26登録)
シリーズ第15弾(日本では5作目の翻訳)の北欧ミステリー。
ヴィスティング警部の自宅に送られてきた謎めいた手紙がきっかけで20年前に起きたレイプ殺人を再調査していくというものですが、当時はあまりにも犯人が明白だと思われていた故に見逃されていた事実が次々と明らかになっていく展開が面白い。これぞ捜査小説の醍醐味といった感じです。
ちなみに、本作は本格ミステリではないものの、本格でおなじみのある仕掛けが施されています。したがって、本格ミステリを読みなれている人なら途中で薄々真相に気づくのではないでしょうか。とはいえ、犯人を追い詰めていくミステリドラマとして読み応えがあるのでそのあたりは大きな瑕疵にはなっていません。人気作家による安定の佳品です


No.327 5点 孤島の十人
グレッチェン・マクニール
(2023/03/20 09:08登録)
孤島の別荘に10人の高校生が遊びに来たところ、突然、恨みを記した不気味な動画流れ始める。そして、惨劇が...。

現代のティーンエイジャー向けに書かれた『そして誰もいなくなった』といった趣の作品なのですが、サスペンスホラーとしては悪くありません。殺し方にも工夫を凝らし、テンポの良い物語を手なれた筆致で盛り上げていきます。一方、ミステリーとしてはそれなりにまとまってはいるものの、トリックなどがオマージュ元から1ミリも進歩していないのはいただけません。日本のクローズドサークルミステリーを読みなれているとどうしても物足りなさを覚えてしまいます。


No.326 7点 ガーンズバック変換
陸秋槎
(2023/03/16 13:34登録)
著者のミステリー作品はこれまですべて中国が舞台となっていましたが、SF短編集である本作は日本と欧米が中心で中国は全く出てきません。雰囲気も日本人好みのエモいものが多く、帯に書かれているように中国発の日本SFといった感じです。
SF小説としての完成度は素晴らしく、著者の代表作といえるのではないでしょうか。一方、ミステリーとしてみた場合もリソースの限界から記号的表現にならざるを得ないゲーム演出を、科学的にリアルであると強弁するための設定作りに悪戦苦闘する「開かれた、世界から有限宇宙へ」などは一種の多重解決ものとして楽しむことができます。また、機械翻訳の進化と女性学者の自殺の謎を追う「色のない緑」はSFミステリーとして秀逸です。
ちなみに、表題作は香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の行き着く先をサイバーパンク風にまとめたもので、恒例の百合要素などもあって個人的には収録作中一番のお気に入り。


No.325 4点 疑惑の影
ジョン・ディクスン・カー
(2023/03/11 13:12登録)
カー後期の作品としてはミステリーの仕掛けは悪くないものの、探偵役のハドラーに魅力がなく、話が盛り上がらないのが致命的。フェル博士をわき役に配置したのも中途半端で、できれば純粋なフェル博士シリーズとして読みたかった。


No.324 5点 星くずの殺人
桃野雑派
(2023/03/11 08:52登録)
江戸川乱歩賞を受賞した前作『老虎残夢』が南宋を舞台にした武侠ミステリーだったのに対し、本作は180度作風を転換したSFミステリーです。
舞台は民間での宇宙旅行ツアーが試験的に組まれるようになった近未来で、宇宙ホテルで起きる連続殺人が描かれています。ライトな作風でさくさく読める反面、コロナ渦からわずか数年という設定なのにすでに宇宙ホテルが出来ているなど、SFとしてのリアリティのなさはやや気になるところ。また、宇宙が舞台という設定を活かした仕掛けが複数用意されているものの、豆知識に基づく物理トリックばかりでミステリーとして大きな驚きはありません。ちなみに、帯の煽りでは無重力下での首吊り死体がすごい謎のように書かれていますが、はっきり言って単なるこけおどしでした。ミステリーを読みなれていれば(具体的な方法までは推理できなくても)大まかな原理はすぐに分かるはずです。結局最大のサプライズといえるのはは「互いに面識のなかったツアー客の間で連続殺人が起きたのは何故か?」という動機の問題でしょうか。全く予想外のこの動機には驚かされました。ただ、驚きはしましたが、この動機が成立する背景がありえなさぎるという問題があります。
とはいえ、ミステリーとしては動機以外に大きな破綻もなく無難にまとまっていますし、話としてはそこそこ楽しめたので点数はこのくらいで。


No.323 6点 だからダスティンは死んだ
ピーター・スワンソン
(2023/03/09 18:53登録)
隣人の男性を殺人鬼だと確信しているが、精神に問題を抱えている故に警察にも夫にも信じてもらえない女性版画家。
隣人の女性に殺人の現場を目撃されて通報されたにも関わらず、彼女に興味を持って接触を図る高校教師。
2人の関係性がスリリングなうえに、彼らに巻き込まれて錯綜する人間模様もサスペンス小説として非常に読み応えがあります。ただ、メインの仕掛けがあまりにも見え透いていたのが残念。あのどんでん返しにサプライズ感は全くなく、答えがわかっている謎に付き合わされたおかげで後半が少々冗長に感じてしまいました。物語としてはかなり面白かっただけに、その点だけが惜しまれます。


No.322 4点 死時計
ジョン・ディクスン・カー
(2023/03/05 10:54登録)
眩惑的な雰囲気は悪くないのですが、とにかく描写や説明がわかりにくい。そのため、フェル博士の推理を聞いても全くピンときませんでした。自分の中では雰囲気だけの作品という評価。


No.321 8点 曲った蝶番
ジョン・ディクスン・カー
(2023/03/05 10:49登録)
周囲に誰もいない開けた空間で、男が突然喉を掻き切られて死亡するというとびきりの不可能犯罪が登場します。しかし、このトリックはいくら何でも無理ありすぎて到底うまくいくとは思えません。エドワード・D・ホックが行った密室長編ミステリーを対象とした人気ランキングでは『三つの棺』『魔の淵』『黄色い部屋の謎』に次いで4位にランクインされているものの(5位は『ユダの窓』)、不可能犯罪という部分だけを切り取ればカーの作品の中でも最低クラスです。その代り、ケレン味たっぷりに語られ、二転三転する物語の面白さはその欠点を補って余りあります。むしろ、物語の雰囲気に荒唐無稽なトリックがうまく溶け込んでおり、欠点が欠点でなくなっているほどです。カーのストーリーテリングのうまさが存分に発揮された傑作。


No.320 7点 君のクイズ
小川哲
(2023/03/04 22:48登録)
クイズ番組で問題文を読み上げる前に正解を答えた謎を、番組を振り返りながら検討していく展開がよく出来ています。短い枚数のなかで勝負の推移、競技クイズのテクニック解説、クイズにのめり込んでいく主人公の半生などがバランよく描かれており、飽きさせません。冒頭の謎に対しても作中に散りばめられたヒントを結びつけて納得いく答えを提示しているのが見事。競技クイズを巡る人間模様を描いたヒューマンドラマ&日常の謎ミステリーとしてそつなくまとめられた佳品です。


No.319 7点 大雑把かつあやふやな怪盗の予告状: 警察庁特殊例外事案専従捜査課事件ファイル
倉知淳
(2023/03/04 06:54登録)
従来の捜査方法では解決できないミステリー小説のような難事件に対処すべく警察庁は名探偵を特別顧問として契約。ただ、警察組織に属さない探偵は単独で現場を捜査することができないので随行員として警察官を付けることになるが、ミステリー小説を嗜んでいるという理由だけそれに選ばれたのが、キャリア警察官として就任したばかりの主人公で...。

全3篇からなる中編集で、まず癖の強すぎる名探偵たち及び彼らに反目する叩き上げの刑事たちに主人公が振り回されるさまがユーモアミステリーとして秀逸です。ミステリーとしては不可解な犯行から犯人の意図を読み解いていくホワイダニットがメイン。刑事の常識的な視点と主人公のミステリマニアならではの視点とで重層的に事件を検証していく過程がよくできています。

最初のエピソードは小手調べとうこともあってまずまずといったところですが、第2話の表題作は笑いの中にさりげなく伏線を散りばめて最後に意外な真相を提示してみせる傑作です。最終話の見立て殺人も逆説的なロジックが素晴らしい。


No.318 6点 黒真珠 恋愛推理レアコレクション
連城三紀彦
(2023/03/04 05:49登録)
最初の数作は単行本未収録というのが信じられないほどの切れ味鋭い恋愛ミステリーが揃っていてこれはとんでもない傑作短編集なのでは?と思ったものの、その後はトーンダウン。恋愛ミステリーというよりもどんでん返しのある恋愛小説の色が強くなり、肝心の恋愛要素も自分の好みと合わず。
概ね前半の短編は良作で後半の掌編が今一つの印象。
7点が6点かで迷ったけど、尻すぼみだったのが残念ということで6点。


No.317 6点 60%
柴田祐紀
(2023/03/03 03:27登録)
第26回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
暴対法対策で堅気の恰好をしているやくざが絡んできた街の不良少年たちをボコボコにするシーンで一気に引き込まれました。世界中の映画を収集している若頭の柴原や職も家族も失って闇社会に居場所を見出す元銀行員の後藤といった登場人物も魅力的で少なくとも前半はノワールとしてかなりの面白さです。ただ、柴原が敵対するやくざたちを単身で瞬殺するあたりからリアリティがあまり感じられなくなります。それに、チャラすぎる組長のキャラにも違和感が。決してつまらなくはないのですが、本格的なノワール小説を期待していた身としては一部の描写や設定が漫画的で少々軽すぎる気がしました。


No.316 7点 11文字の檻
青崎有吾
(2023/03/02 21:15登録)
収録されている作品のジャンルがバラバラ過ぎて激しく読者を選ぶ作品十ですが、そのなかでミステリーファンにお勧めなのが表題作。
思想犯で捕まった囚人たちが自由を得るためのチャンスとして与えられる11文字のパスワード当て問題。これをいかにして正答するかというロジックが意外性に富んでいて楽しい。文句なしの傑作です。

「加速してゆく」は国内最悪の列車事故、JR福知山線脱線事故を背景にしたミステリーで、謎解きよりも生々しい事故の描写が印象的

「噤ヶ森の硝子屋敷」は密室ものだが、トリックは大したことない。一種のバカミスとしては楽しめた

「恋澤姉妹」は百合小説の傑作

「前髪は空を向いている」はアニメ化もされた漫画『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 』のパスティーシュなのですが、これだけ読んでも意味不明でしょう。通常の短編集には収録しない方がよかったと思う

「your name」「飽くまで」「クレープまでは終わらせない」については割愛

以上、表題作9点、「恋澤姉妹」8点、「前髪は空を向いている」採点不能、その他5~6点でトータル7点といったところ


No.315 7点 ニードレス通りの果ての家
カトリオナ・ウォード
(2023/02/24 06:50登録)
本作は英国幻想文学大賞のホラー長編部門(オーガスト・ダーレス賞)を受賞していますが、ホラーというよりもどちらかといえばサイコサスペンスに近い読み味です。物語は、11年前に森で行方不明になった少女の事件に端を発し、森に面した家で娘と一緒に暮らす怪しげな男&その男が失踪事件の犯人である証拠を掴もうと近所に引っ越してきた少女の姉を中心に展開していきます。そして、ユニークなのはその2人に加えて男の飼っている猫が語り手として絡んでいる点です。精神を病んでいるらしい男及び猫の視点で語られる物語は現実味に乏しく、幻想的描写が入り混じったものとなっています。それが凡百のミステリーと一線を画し、幻想文学として評価された点なのでしょう。さらに、驚愕の真相が明らかになる終盤の展開も見事です。仕掛けの根幹をなすアイディア自体はサイコサスペンスの世界ではよくある使い古されたもではあるものの、語り口が巧みで思わず引き込まれいきました。同時に、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよくわからない結末も味わい深いものがあります。ちなみに、著者の作品は本作で3作連続のオーガスト・ダーレス賞受賞とのことで、過去の2作も読んでみたいところです。


No.314 5点 悲鳴だけ聞こえない
織守きょうや
(2023/02/22 10:19登録)
木村&高塚弁護士シリーズ第3弾の連作短編。
民事の問題を専門家の観点から扱った物語はどれも興味深く、ためになります。ただ、ミステリーとしてはそれほどヒネリが効いているようには思えず、なんとなく着地点が想像できてしまう点が物足りませんでした。唯一例外なのは表題作で、会社でパワハラが行われているはずなのになぜか被害者が判明しないという謎と盲点を突いた真相はなかなか良かったです。それでもやはり、全体的には凡庸な印象。


No.313 6点 オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case
森博嗣
(2023/02/22 09:51登録)
『すべてがFになる』と同じ、クローズドサークルもので、クローズドサークルに対する固定概念を逆手にとったような仕掛けがユニークではあります。しかし、これを成立させるにはなかなか困難だし、その割に『すべてがFになる』ほどのスケール感はなくこじんまりしている点はものたりない。また、最後のサプライズに関しては描写に違和感を感じていたのでうすうす気がついてしまった。
悪くはないけれど、サプライズネタも含めてどちらかといえばファン向けの作品かな


No.312 6点 いけないII
道尾秀介
(2023/02/09 17:17登録)
連作ミステリーの底流をなすホラーテイストな味わいは悪くありません。しかし、各話のラストに用意された1枚の写真が何を意味するのか分かりにくいものが多かったのは残念。個人的には、明確な答えをあえて用意せずに読者に考えさせるタイプのミステリーは嫌いなので、写真を見た瞬間に衝撃的な事実がわかるような工夫がほしかったところです。
とはいえ、写真は謎解き要素の一部にすぎないのでそこがわからなくてもミステリーとして楽しむことは可能ですし、雰囲気的にはなかなか魅力的な作品ではあります。


No.311 5点 キドナプキディング
西尾維新
(2023/02/09 16:49登録)
戯言遣いの娘・玖渚盾(くなぎさ・じゅん)が主役の戯言遣いセカンドシーズン第1弾。

文字通り女の子版戯言遣いといった感じで、シリーズを最初に触れたときのようなインパクトには欠けるものの、キャラクター小説としては安定の面白さです。
しかし、ミステリーとしてはいささか物足りません。まず、事件が起きるのが本編の半分を過ぎてからで、その後もあまり盛り上がりもなく解決してしまうので体感的な満足度は短編ミステリーを1作読んだ程度です。また、本作はシリーズ第1弾の『クビキリサイクル』を意識して同じ首なし死体の事件を扱っているものの、やはり短編程度の小ネタといった感じで元ネタと比べると仕掛けの面白さは大きく劣ります。したがって、過大な期待はせず、今後続くであろう新シリーズのキャラクター紹介編だと割り切って読むのが吉でしょう。

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