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ミステリの祭典

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黒真珠 恋愛推理レアコレクション
「新・細うで繁盛記」シリーズほか

作家 連城三紀彦
出版日2022年12月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 ALFA
(2023/03/07 08:37登録)
数か月前に出たばかりの、連城最後の新刊と銘打たれた単行本未発表の拾遺集。短編6編とショートショート8編。どれも連城らしいというか連城しか発想できないような作品ばかり。

お気に入りは恋愛ミステリ「黒真珠」と、ミステリ風味の「ひとつ蘭」。
「黒真珠」は真相が明かされると、それまでのセリフの一つ一つが一瞬にして色合いを変える、連城お得意の反転もの。
「ひとつ蘭」はあるきっかけでOLから旅館の若女将に転身した女の「恋愛根性ものミステリ風味」。昭和の人気ドラマ「細腕繁盛記」を連想する。と思ったら、掲載時の副題が「新・細うで繁盛記」だった。長編のような読みごたえ。
続く「紙の別れ」はその7年後を描く続編で面白い趣向だが、まあ余計かな。

ところで短編とショートショートでは小説作法が違うことに気づいた。
いい短編は起承転結あるいは起承結が手際よくまとまっているのに対し、いいショートショートは起承転としてあとは余韻となっているように思う。短歌と俳句の違いみたいなもんか。

ショートショートではあえてオチらしきもののない「花のない葉」が面白い。
どれも連城ファンなら読んで損はない。

No.2 6点 文生
(2023/03/04 05:49登録)
最初の数作は単行本未収録というのが信じられないほどの切れ味鋭い恋愛ミステリーが揃っていてこれはとんでもない傑作短編集なのでは?と思ったものの、その後はトーンダウン。恋愛ミステリーというよりもどんでん返しのある恋愛小説の色が強くなり、肝心の恋愛要素も自分の好みと合わず。
概ね前半の短編は良作で後半の掌編が今一つの印象。
7点が6点かで迷ったけど、尻すぼみだったのが残念ということで6点。

No.1 8点 人並由真
(2023/03/03 18:39登録)
(ネタバレなし)
 早くも今年で没後10年になる作者だが、連城研究家として知られる浅木原忍が全体を監修、作品のセレクトにも関わったらしい。
 これまで書籍化されてない短編、ショートショートが全部で24編も残っていたそうだが、その中から厳選で14編、出来の良いのを選抜して一冊にしてある。

 おそらく、これが連城の最後の新刊! という謳い文句に煽られてウハウハ気分で読んだが、なるほど、期待以上に面白い。
 巻頭に近い初期編などほとんどヘンリー・スレッサーの趣で、さらにページ数50頁前後の長めの作品から、いかにも連城作品らしい、あの独特の乾いたような湿ったような作風がうち出されてくる。

 最後の方のショートショートのなかには、いささか歯切れの悪いものもあるが、一冊まるごと総じて楽しめる。
 ひょっとしてこの人、短編の方が長編よりも良かったのではなかろうか。
(実際のところたぶんそうなのではないかと思うのだが、評者の場合、生前の著作全般に長いスパンで付き合った訳ではないので、そう言い切れるかどうか、ちょっとデリケートな面もある。)

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