死と奇術師 ジョセフ・スペクター |
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作家 | トム・ミード |
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出版日 | 2023年04月 |
平均点 | 6.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | 人並由真 | |
(2023/05/26 22:27登録) (ネタバレなし) それなり(以上)には楽しめた。 トリックがこの程度なのは、さほど減点要素にも失望の理由にもならない。 しかし感心するところもいくつか目につく一方、実は、特化してこれ、というポイントもそうなかった。 フーダニットパズラーとしては、伏線もオカルト? っぽい要素も、犯人側の(中略)も、あれもこれも一通りそろえた、幕の内弁当みたいな手ごたえの一冊であった。良くも悪くも。 7点でもいいかとも思うが、文生さんが6点か7点か迷って7点だそうなので、じゃあ同じ迷いの自分は、バランスをとって6点にしておこう。 |
No.3 | 7点 | ことは | |
(2023/05/13 17:42登録) ほんとに日本の新本格みたい。 「謎と議論と解決」以外の要素はきわめてすくない。キャラクターはスケッチ以上には掘り下げられないし、ドラマ要素も簡素に描写されるだけ。それに対して、謎の改めは、「三つの棺」の密室分類を引用してしっかりと行う。いやぁ、楽しいなぁ。 密室の解答は、あっけないものだけど、それを実現するための状況設定はじつに面白い。解決編で手がかり索引(xxページ参照)があるのも楽しい。惜しむらくは、解決シーンの演出がもっと「見得を切る」ようになっていれば、そそられたのになぁと思う。 「謎解きよりもドラマ重視」のような人にはまったく楽しめないだろうけど、謎解きファンは一読の価値あり。次作も翻訳されてほしいなぁ。 |
No.2 | 7点 | 文生 | |
(2023/04/29 18:14登録) 7点か6点かで迷う作品。 連続密室殺人の謎に元奇術師の探偵していたが挑むという筋書きで、解決編までは非常に楽しい。1936年のロンドンでは不可能犯罪が流行している設定だったり、『三つの棺』の密室講義に言及したり、読者の挑戦付きの袋綴じ企画があったりと、マニアのためのザ・本格といった感じでまるで日本の新本格を読んでいるよう。解決編に入ってからも正体不明だった訪問客の正体についてはミスディレクションが効いていて唸らされました。ここまでなら文句なしの8点。ただし、肝心の密室トリックが小手先のテクニックだったり、推理しようのない機械トリックだったりしてどうも感心しない。JDCに捧ぐと書いていたからカーの代表作並みのトリックを期待していたらクレイトン・ロースンだったという感じ。まあ、探偵役が奇術師だったり、奇術の種は明かされてみるとつつまらなく感じるものだとか予防線を貼っていたりしていた時点で嫌な予感はしていたのだけど。それでも、密室トリック以外の部分では大いに楽しませてくれたのでトータル7点で。 |
No.1 | 7点 | nukkam | |
(2023/04/20 09:35登録) (ネタバレなしです) ハヤカワポケットブック版に限定すればB・S・バリンジャーのサスペンス小説「消された時間」(1957年)の1959年邦訳版以来となる袋綴じ本です。英国のトム・ミードが2022年に発表した長編第1作の本格派推理小説ですが、冒頭に「父と母、そして亡きJDC(1906-1977)に捧ぐ」献呈文が置かれているではありませんか。本格派の熱心なファンならJDCがジョン・ディクスン・カーを指すことは容易に気づくでしょう。作中時代は1936年で密室殺人がありますし(しかもカーの「三つの棺」(1935年)の密室講義が引用される)、袋綴じの前には「読者への挑戦状」に相当する幕間「読者よ、心されたし」が挿入されるし、興奮で震えながら(変態だ)袋綴じを切り開くと手掛かり脚注付きで真相説明されるではありませんか。贅沢な注文としては現場見取り図があればと思わないではないし、(犯人ではないけど)重要人物が人物リストから抜けているとか、トリックに現代では通用しそうにないものがあるとか気になるところもあるけど実に楽しく読めた作品です。巻末解説で「フェアかどうか微妙なところがある」とほのめかされていますが凡庸読者の私は気にならなかったし(気づかなかったというのが正確)、なかなか巧妙に考えられたミスリードのアイデアだったと思います。 |