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ミステリの祭典

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歩く亡者 怪民研に於ける記録と推理
刀城言耶シリーズ 番外編

作家 三津田信三
出版日2023年06月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 ALFA
(2024/07/06 09:04登録)
刀城言耶シリーズのスピンオフ短編集。
刀城の助手である天弓馬人が無類の怖がりで、持ち込まれる怪異話に必死に合理的な解決を見い出すという趣向。

正編のような緻密なミステリーとホラーのハイブリッドを期待してはいけない。気楽にスピンオフを楽しむのがいい。作者お得意の妙な人名、地名の当て漢字も笑える。
中では表題作がホラーファンタジーとしていい。黄昏の「亡者道」を思い浮かべると納涼になる。

No.3 7点 人並由真
(2024/03/02 03:54登録)
(ネタバレなし)
 怪異が基本的には合理的に解明されるが、しばし向こうの世界をちらりと覗く……基本軸は、正編世界と同じような物語の結構に思えた。
 
 メルカトルさんがおっしゃるように「真相はバカミスだったり脱力系だったり」ではあるが、こっちはそういうものを予期しているところもあるので、総じて楽しかった。無理だぁと呆れながらも笑ったのは第2話で、いちばんゾッとしたのは第1話。第3話のロケーション的なビジュアルの不気味さ、第4話の意外にマトモなミステリっぽさ、第5話のえー?! と思わず言いたくなるような動機面の真相もよい。なんだ佳作~秀作揃いではないか。

 正編シリーズと並行で、こっちの路線もまだまだ続くのかと思ったら、たぶんこれで一区切りみたいね。まあ続行しようと思えば可能だろうけど。ちなみにそんなに三津田作品の全域を読んでいる訳ではない当方は(以下略)。
 
 正編の長編が出なかった年の物足りなさを埋めてくれる一冊としては、なかなかの内容だとは思う。

No.2 6点 メルカトル
(2023/07/07 22:44登録)
瀬戸内にある波鳥町。その町にある、かつて亡者道と呼ばれた海沿いの道では、日の暮れかけた逢魔が時に、ふらふらと歩く亡者が目撃されたという。かつて体験した「亡者」についての忌まわしい出来事について話すため、大学生の瞳星愛は、刀城言耶という作家が講師を務める「怪異民俗学研究室」、通称「怪民研」を訪ねた。言耶は不在で、留守を任されている天弓馬人という若い作家にその話をすることに。こんな研究室に在籍していながらとても怖がりな馬人は、怪異譚を怪異譚のまま放置できず、現実的ないくつもの解釈を提示する。あの日、愛が遭遇したものはいったい何だったのか――(「第一話 歩く亡者」)。ホラー×ミステリの名手による戦慄の新シリーズ始動!
Amazon内容紹介より。

刀城言耶の助手天弓馬人が様々な怪異を恐れながら謎を解く、刀城言耶シリーズのスピンオフ短編集。取り敢えず見た目はシリーズ本編のミニ版で、因習や伝説の描き方は流石によく似ており、不気味さを際立たせています。しかし、本作にはそれらの要素が真相やトリックと上手く噛み合っていないのが気になるところ。要するに、折角の怪異譚だというのに、トリックが浮いてしまっているのです。

竜頭蛇尾というか、あり得ない現象や不可能犯罪は確かに魅力的ではありますが、真相はバカミスだったり脱力系だったりと、やや肩透かしを喰らいます。それでも第四話の『目貼りされる座敷婆』は個人的には最も不可解な謎に対して納得の行く解決で、面白かったですかね。
シリーズ本編の固有名詞が何度も繰り返されるのは、ファンには嬉しいところでしょう。又、馬人と語り手の愛のキャラが立っているのも好ましい点ではないかと思います。

No.1 6点 文生
(2023/06/09 11:22登録)
刀城言耶に代わって研究室の留守を預かる天弓馬人が探偵役を務めるスピンオフ作品。しかし、天弓は刀城の弟子なのに怖いものが大の苦手で、怪異の存在を否定するために推理をするというのがユニークです。また、そんな彼を怖がらせてからかう大学生・瞳星愛とのコンビも微笑ましい。本格ミステリとしては突出した出来ではありませんが、ホラーミステリとしてはなかなか読み応えあります。ディクソン・カーに関する言及が多い点も個人的に嬉しいところ。

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