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ミステリの祭典

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大雑把かつあやふやな怪盗の予告状: 警察庁特殊例外事案専従捜査課事件ファイル
警察庁特殊例外事案専従捜査課事件ファイル

作家 倉知淳
出版日2023年02月
平均点6.80点
書評数5人

No.5 6点 sophia
(2023/08/31 00:16登録)
「片桐大三郎とXYZの悲劇」と同様、どの話も内容に比して冗長で筆がくどいです。ページ数を稼ごうとしているのが見え見えで何とも嫌ですね。作品の本質とは関係ない部分かもしれませんが、どうしても密度が薄くなってしまっているように感じるのです。7割ぐらいの分量に収めてくれていればプラス1点したかもしれません。
主人公の属するよく分からない組織の設定も活かし切れているのかどうか。表題作だけはまあまあ面白かったと思いますが、人間の心理として果たして入れたままにしておくだろうかという疑問が残ります。

No.4 7点 蟷螂の斧
(2023/08/11 15:27登録)
三件の事件は、いづれも中途半端なものであった。
①古典的にして中途半端な密室 6点 館主が密室で殺害された。一見自殺のように見えるが、密室の工作跡(ピンセットやテグス)が残っていた・・・強風による桜の木の倒壊
②大雑把かつあやふやな怪盗の予告状 7点 成金社長が保有するブルーサファイア。怪盗石川五右衛門之助から宝石を頂戴に参上するとの予告状。金庫に保管し、その周りに警察官、探偵が見張る・・・参上する日時がいい加減
③手間暇かかった分かりやすい見立て殺人 8点 別荘の浴場で脚を切断された遺体が発見され、脚は湖畔に置かれていた。膝斬り姫の伝説の見立て殺人か?・・・不明のスーツケース

No.3 7点 まさむね
(2023/05/23 20:23登録)
 3つの中編で構成。タイトルと表紙の印象から、緩い感じの中編集かと勝手に思い込んでいたところ、ユーモラスな舞台・人物設定の裏で丁寧に作りこまれた作品が揃っていました。論理的に多少無理を感じるところもなくはないのだけれども、猫丸先輩っぽくて嫌いではない。得手勝手な探偵たち(特に勒恩寺探偵)と、警察庁に入庁したての気弱な官僚・木島クンの掛け合いも楽しい。続編があるような締め方だったし、今後も楽しみ。
①古典的にして中途半端な密室
 犯行現場には、糸と針による密室トリックの仕掛けが使われないまま残されていた。でも密室は中途半端ながら成り立っているようにも…。何かワクワクしますよねぇ。
②大雑把かつあやふやな怪盗の予告状
 怪盗が予告した犯行日時は、3週間以内の水曜日15時から20時までの間のいずれかというもの。ごみ収集っぽくて何か可笑しい。動機と犯人の特定が読みどころ。
③手間暇かかった判りやすい見立て殺人
 見立てを利用したロジック。その簡潔かつ明快さに感心。

No.2 7点 虫暮部
(2023/05/09 12:48登録)
 これはなかなか良く出来ている。良く出来ているだけ、と言う皮肉ではなく、素直な良い意味で。この違いはどこで生じるんだろうか。ぶっとんだような飛躍は無いが、基礎をきちんと備えた作者による端正な本格ミステリに仕上がっていると思う。

No.1 7点 文生
(2023/03/04 06:54登録)
従来の捜査方法では解決できないミステリー小説のような難事件に対処すべく警察庁は名探偵を特別顧問として契約。ただ、警察組織に属さない探偵は単独で現場を捜査することができないので随行員として警察官を付けることになるが、ミステリー小説を嗜んでいるという理由だけそれに選ばれたのが、キャリア警察官として就任したばかりの主人公で...。

全3篇からなる中編集で、まず癖の強すぎる名探偵たち及び彼らに反目する叩き上げの刑事たちに主人公が振り回されるさまがユーモアミステリーとして秀逸です。ミステリーとしては不可解な犯行から犯人の意図を読み解いていくホワイダニットがメイン。刑事の常識的な視点と主人公のミステリマニアならではの視点とで重層的に事件を検証していく過程がよくできています。

最初のエピソードは小手調べとうこともあってまずまずといったところですが、第2話の表題作は笑いの中にさりげなく伏線を散りばめて最後に意外な真相を提示してみせる傑作です。最終話の見立て殺人も逆説的なロジックが素晴らしい。

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