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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1269件

プロフィール| 書評

No.69 4点 極北クレイマー
海堂尊
(2010/08/16 21:12登録)
まず,この作品はミステリではありません。
医師の刑事訴追問題とか,地域医療崩壊問題とか,社会的なトピックを扱っており,それ自体は興味深い話題と言えます。しかし,前者については,いわゆる「大野病院事件」をそのまま描き直しただけですし,後者についても何とも薄っぺらい(真の問題点を履き違えている?)印象を受けました。
かといってエンタメ感溢れる作品でもない。作者は何がしたかったのだろう。いろんな意味で中途半端な印象。そういえば,姫宮の使いっぷりも中途半端だったなぁ。


No.68 5点 春期限定いちごタルト事件
米澤穂信
(2010/08/12 21:14登録)
ライトな謎で,綺麗にまとめてるなって印象。
ちなみに,主人公の男子にちょっとイライラ。
なお,アラフォー男子としては,図書館で借りるのに多少の勇気が必要であった(題名及び表紙が)。
それでも続編も読んでみようという気にはなった。


No.67 9点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2010/08/08 15:12登録)
一読の価値大の秀作。
素晴らしい。このヒトコトに尽きる。

しかし,これが昭和30年代の作品とは!
40年以上を経ても決して色褪せず,むしろ歴史を経れば経るほど輝きを増していくのではないかとさえ思わせる。まさに名作。
作品を書いた「年代」を考慮すれば,この評価が過大であるとは,決して思わない。


No.66 7点 カラスの親指
道尾秀介
(2010/08/05 22:48登録)
この作品がミステリなのかどうかといった疑問はとりあえず右に置いて,楽しい読書の時間をありがとうと言いたい。
読中感・読後感とも,相当に良い。作者の「主張」も嫌味が一切なく,良い。ご都合主義的側面も,まあ,このストーリーであれば,目くじらを立てる気にはならなかった。純粋な「読書」としての評価は,個人的には「ラットマン」より上。

<以下,未読の方は注意!>
でも,道尾作品を多少なりとも知る者にとっては,どうしても「このまま終わるわけがない」という(ある意味非常に悲しい)視点で読み進めてしまう。結果として,詳細は分からないまでも,キーパーソンが誰であるのか,そしてキーパーソンと他の登場人物との真の関係が何となく予想できてしまう。無論,「何となくの予想」以上の仕掛けがあったので,それはそれで楽しめたが…


No.65 7点 死神の精度
伊坂幸太郎
(2010/08/02 22:36登録)
主人公(死神)のキャラクターを含め,前提状況の設定が抜群。コミカルで,かつ,時に考えさせられる「会話シーン」もこの作品では嫌味(※)に感じることなく,純粋に良かった。
※正直,他作品では個人的にイライラする会話シーンが多いので…

ラストの「死神対老女」などを読むと,なるほど,直木賞候補に挙げられたのも,素直に首肯できる。
ミステリ性が高いものではないが,意義ある読書タイムは保証できる連作短編集である。


No.64 6点 密室の如き籠るもの
三津田信三
(2010/08/01 23:30登録)
3短編+1中編から成る中短編集。
刀城言耶シリーズお決まり(?)の「どんでん連発」が,特に3短編では薄いが,それはそれで悪くはない。さらっとしていて逆に読みやすく感じた面も。それでいて,いつもの「雰囲気」はきっちりと守ってくれている。
刀城言耶ファンにはお買い得の中短編集では。


No.63 5点 女王様と私
歌野晶午
(2010/07/27 20:11登録)
「叙述と見せかけ,実は…」等々,オチのパターンを想像しつつ,それ以上の驚愕を期待していたのですが,そう来ましたか,はあ,そうですか・・・ってのが,読後の感想。
やや脱力気味。
しかし,さてさてオチはどうなのかな~という好奇心をラストまで切らすことなく読了したことは事実だから,5点で。
読後感は相当微妙だったけど。


No.62 5点 儚い羊たちの祝宴
米澤穂信
(2010/07/21 23:44登録)
期待しすぎたのか,「衝撃的なラストの1行」という読後感は全く受けませんでした。
というか,途中で概ね察しがついた作品も多かった。
短編集全体の趣旨を否定するつもりはないのですが,「玉野五十鈴の誉れ」がなければ,マイナス1点だったかも。
「玉野五十鈴の誉れ」は良かった。それ以外の作品は何とも言い難い。


No.61 6点 四捨五入殺人事件
井上ひさし
(2010/07/20 19:47登録)
私が中学生のときでしたが,NHKの銀河テレビ小説で放映された当該作品を,ホントに楽しみに観てました。
主演の中村雅俊よりも,大竹まことの方の印象が断然強いです。
それはなぜだろうと思い返してみると,ラストで大竹まことが中村雅俊に「お詫び」しているシーンが心に染み付いていたのですね。
心が純粋であった当時の私としては,それだけオチが衝撃だったということでしょう。衝撃とともに,ラストを知ってある意味「ほっとした」のも事実。ああ純粋だったなぁ。
・・・という思い出を込めて6点。


No.60 8点 龍神の雨
道尾秀介
(2010/07/19 19:04登録)
作者としては,原点に還りつつ,これまでの作品に関して読者から寄せられた数々の「意見」に対して,ひとつの「回答」を示したのではないか,そんな印象を,まずは受けました。
で,この作品。いいですね。
私の嗜好のひとつ「回答編手前でしばし考え込む」という楽しみはほとんど与えてくれませんが,これは慣れっこ。「読ませられ」た感は文句なし。「騙され」た感では,ヒトコト言いたい事もあるが,まあ,如才なさを見せ付けられた。読後感も嫌いではない。
個人的には「ラットマン」よりも好印象。
採点が甘いという批判も覚悟の上で,8点献上!


No.59 5点 密室殺人ゲーム2.0
歌野晶午
(2010/07/17 14:38登録)
続編だけに,前作ほどの斬新さは感じない。(当たり前か)
Q3とQ4は結構面白かったですが,他の作品は・・・
無駄に長い印象を受けたのも事実。
総合的にこの採点で。


No.58 5点 鬼の跫音
道尾秀介
(2010/07/12 21:28登録)
この作者の技巧は,長編でより発揮されるような気がします。
この短編集を読み,そう感じました。


No.57 6点 ラットマン
道尾秀介
(2010/07/11 21:17登録)
うーん。巧いのだろうなぁ。「道尾作品」らしい「道尾作品」だなぁ。
うーん。そして私は道尾作品は結構好きなんだけどなぁ。
うーん。ならばもっと感動してもよいはずだなぁ。
以上が,読後の率直な感想。
何と言えばよいのか,例えば野球で言えば,狙いすました美しい流し撃ちを見せられた感じ。決して外野の頭は越えないシングルヒットね。
その技巧は本当に天晴れだし,不満などないのだけれども,時には,思いっきり引っ張った長打とか,場合によっては泥臭い内野安打とか,そういうバッティングを見たい野球ファンもいると思うのです。
すみません。意味不明ですか。


No.56 7点 扉は閉ざされたまま
石持浅海
(2010/07/10 13:59登録)
 なぜ犯人は密室を維持するのか。しかも逃亡や証拠隠滅のためではなく「時間稼ぎ」のために。リスクを犯してまでなぜ?
 状況設定が秀逸ですし,この謎は確かに興味をそそられましたね。
 ただ,その「回答」に至る過程において,やっぱり「動機」の非現実感に引っかかってしまいました。秀逸な状況設定のための止むを得ない措置なのだ(何とかできたような気もするが)と自分を説得させつつ,読了。
 なお,倒叙形式の見所たる「いかに暴かれていくか」の点については,文句なしに良かった。
 結末も私的には想定外で良かった。(もちろん,こちらも「非現実感」は否定できませんが…)動機等の違和感の割には妙な読後感の良さ。
 総合的にこの点数で。


No.55 3点 黒い森
折原一
(2010/07/05 21:33登録)
両面から(表からも裏からも)読み進められる設定。そしてどちらから読み進めても最後(つまり本の中心部なのですが)には「袋とじ」が!
ってなれば,内容も期待するってモノですよね。
「袋とじには,どんなどんでん返しが待ってるのか?」と引っ張っておいて…あれれ?犯人はじめ,すべてが完全に想定どおりじゃないか!分かりやすすぎる!
サスペンスとして読めということなのかもしれません。では,なぜ「袋とじ」が?いろんな意味で消化不良です。


No.54 4点 GOTH リストカット事件
乙一
(2010/07/04 23:08登録)
採点に迷ったが,やっぱり5点(まぁ楽しめた)は付け難い。
“イタイ系”の話が続くのは,そもそも辛いなぁ。ちょっと最後に「イイ話」を織り込ませようとするのも…むしろ…。
トリックも「入れ替え」に偏重しており,新味がない。(無論,騙されたのも多かったですが…)
久々に苦しみながらの読了とあいなりました。
私の嗜好が違うだけかもしれませんので,あまり参考になさらずに。


No.53 4点 カラット探偵事務所の事件簿①
乾くるみ
(2010/07/03 17:30登録)
探偵と助手が,依頼を受けた謎を解明していく連作短編集。
日常系の謎だけに,各短編のトリックは正直緩い。「暗号モノ」などは,少なからず苦痛に感じたりも…。
最後の「仕掛け」は,個人的に嫌いではないのですが,まあ,驚くレベルのモノではないですし…。
やっぱり,この点数になりますかねぇ。


No.52 7点 山魔の如き嗤うもの
三津田信三
(2010/06/29 23:02登録)
純粋に,面白かった。
しかし,どうしても「首無~」と比べてしまいますね。
雰囲気や最終局面での「どんでん返し連発」など,両作品には類似点が多い(地図ほしい~感まで類似してる…)ですが,当該作品の方が全体的に「弱い」印象を受けますね。
もちろん,「首無~」よりも良い点もありますが。この作品は刀城言耶が「主体的に」登場するし,何よりも読み進めやすくなっています。
「首無~」との相対評価っぽくなってしまいましたが,絶対評価として「良作」であることは間違いないと思います。


No.51 5点 ZOO
乙一
(2010/06/26 08:51登録)
10編からなる短編集。
どの作品にも「ハズレ」がない。陰と陽 静と動 冷と暖をうまく組み合あわせているからか、飽きもこない。
よって、もっと高得点にすべきなのでしょう。しかし、多くの短編で淡々と述べられる「狂い」に対し,私の心がやや後退りした面もありまして…。もっとも、これが良さでもある訳で…。完全に自己矛盾してますね。
初めて読んだ乙一作品なのですが,不思議な魅力がありますね。さて、長編も読んでみるか、そんな気にはさせられました。


No.50 6点 告白
湊かなえ
(2010/06/21 22:02登録)
第1章のスピード感には,皆様と同じく,圧倒されました。第2章以降は,圧倒感という意味では第1章に及ばないものの,登場人物ごとの「視点」により,作品の深みが断然に増していると思うので,否定的な評価には繋がりませんでした。
江守さん同様,私も,八坂准教授の独白をぜひ読みたかったですね。
この点数としたのは,「ミステリ」として考えてどうかな?と思ったからであって,小説としては秀逸であると思います。
登場人物(例えば森口)に対する読後の評価(印象)は,人によってまったく異なると思うのですね。それこそが,まさにこの作品の「小説」としての良さであると考えます。

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