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ミステリの祭典

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鬼の跫音

作家 道尾秀介
出版日2009年01月
平均点6.35点
書評数17人

No.17 6点 ミステリーオタク
(2021/03/02 21:24登録)
作者が脂が乗り切った頃の「ミステリ+ホラー」短編集。


《鈴虫》
確かにミステリ+ホラーではあるが、特に斬新さは感じす。

《(けもの)》
ミステリ部分はとても良くできているし、ホラーパートも、あまり好みではないが強烈。

《よいぎつね》
古より時々見られる○-□型ネタだが、こういうのはどうも作者の自己マンに感じられてしまう。

《箱詰めの文字》
途中までは面白い展開だが、結局何がしたかったのかよくわからない。

《冬の鬼》
全く斬新とは言えないが、あるユニークな手法が取られている。「ラスト」もかなりエグい。

《悪意の顔》
合理的な出来事か、超常現象か。その境界をさまよう不思議な作品。でも最後の1行がその解答らしい。


以上6編、良くも悪くも道尾らしさが色濃く出ている作品集に仕上がっていると感じた。
で、Sっつうのはやっぱり秀介のSか?

No.16 6点 パメル
(2020/01/06 19:39登録)
六つの収録作は、いずれも単に怖がらせるためだけのホラーや驚かせるためだけのミステリにとどまっていない。
冒頭の「鈴虫」は、十一年前の友人S殺害事件ののち、恋人を奪って妻にした男の物語。谷底に落ちたSを穴に埋めたとき、近くで鈴虫が鳴いていた。いま自分を取り調べている刑事の肩口にも鈴虫が這い上がっており、私を見ていた・・・。
どの短篇も、忌まわしく暗い犯罪が扱われていながら、虫、けもの、鬼といった、いわば人外魔境の視点が持ち込まれているのに加え、誰もがみな持っている負の一面が書き込まれているため、歪んだ現実が迫ってくるようだ。白昼に見る夢のような、まどろみと周到に仕組まれた騙しの快楽がひとつになる時、グイっと別の次元へ引っ張り込まれたかのごとき浮遊感を覚えさえせられる。
作者ならではの、驚異の世界が凝縮した一冊。

No.15 6点 いいちこ
(2019/05/06 17:45登録)
どの作品からも確かなテクニックが感じられる一方、既視感も強い。
したがって、完全に外している作品がない一方で、突き抜けた作品もない。
短編集として水準には達しているものの、軽量コンパクトな印象が強い

No.14 8点 メルカトル
(2018/12/19 22:55登録)
ホラーでこれだけ楽しめる作品集はあまり見かけません。一概にホラーと言っても、『ケモノ』や『瓶詰の文字』のようにミステリ要素の強いものもあったり、非常にバラエティに富んでいて一つひとつ味わいが違います。しかも短編なのに、二転三転する作品が多く、凄くエッジが効いており、完成度としては初期の短編集なのを考慮すれば非常に高いものと言わざるを得ません。しかも、どれもこれも読後気分的に引き摺られるものばかりで、佳作秀作揃いだと私は思います。

それぞれが独立した短編なのに、Sと言う人物が重要な存在であったり、鴉や昆虫などが小道具として使われていたりする共通点があり、特に動物の扱いがぞんざいだったりします。そこには情の欠片もなく、命というものに対する尊厳など一切存在しません。それは人間に対しても情無用である点で相通じるものがあります。そこに私は道尾秀介の作家としての覚悟が見られる気がします。

取り敢えず、ホラー作品はワンパターンになりがちなところがあると思いますが、これだけ種類の違った短編を並べられる作者には敬意を表したいですね。個人的に滅多に付けない8点を献上するのに躊躇いはありませんでした。素晴らしい作品集だと思います。

No.13 7点 sophia
(2018/07/21 01:07登録)
途中まではいまいちな感じでしたが、最後の2つ「冬の鬼」と「悪意の顔」がすごかった。「冬の鬼」は冒頭での謎の提示、そして1日ずつ遡っていく日記という構成がよかったです。7日前にどんなことをやらかしたのかという興味で引き込まれました。伏線もばっちり。「悪意の顔」はSFなのか妄想なのかというシーソーゲーム。最後の最後にはっきりするのですが、その直前のSの一瞬の変貌に含みを持たせているのも効果的。主人公の母親がデザイン事務所に勤めているのが伏線かと思ってちょっと混乱しちゃいましたけど。その他には「よいぎつね」で残された謎の解答を次の「箱詰めの文字」の作中作で示したのには唸らされました。しかしこの作者の「S」と「鴉」に対するこだわりは何なのでしょうか(笑)

No.12 5点 風桜青紫
(2015/12/29 01:29登録)
軽く読んだが、まあ、道尾秀介は話作りがうまい。ホラーものというより、短編ミステリとしてそこそこの出来。『冬の鬼』は時間が遡っていくという話の形式が不安を生み、読書意欲をかきたてる。趣味の悪いラストも良し。ホラーチックな不気味な設定も現実めいた怖さに転写する『悪意の顔』もなかなかよかった。S君はその名のとおりのサディストだ。どの作品も一定水準の面白さではあるが、出色は特にないといったところか。

No.11 6点 yoneppi
(2013/12/01 16:28登録)
良質短編集。さらっと読めてドキッとさせられる。

No.10 8点 mohicant
(2012/09/17 22:00登録)
 道尾秀介の得意とするどんでん返しは短編においても健在だった。良質の叙述トリックを集めた短編集。
 おそらく作者が影響を受けているであろう京極夏彦が文庫版の解説を担当しているのも感慨深い。

No.9 7点 ayulifeman
(2012/07/01 13:13登録)
手軽に騙しのテクニックを享受できる良短編集。
どれもそこはかとなく気持ち悪い余韻がたまらない。

No.8 7点 isurrender
(2012/03/09 23:08登録)
ホラーミステリ。
全ての作品が最後にひとひねり加えたラストが用意されていて、期待していたよりどれも高い水準でした。
個人的には「鈴虫」「箱詰めの文字」「悪意の顔」が良かったです。

No.7 7点 haruka
(2011/12/13 00:55登録)
人間の狂気を描いたホラー短編集。どれも怖いが、全編ともどんでん返しがあって、論理的に決着するあたりが作者らしいと思った。

No.6 5点 E-BANKER
(2011/12/03 21:38登録)
ブラック風味溢れる短編集。
ジワジワと恐怖が心根に浸食していく感じが何とも言えない作品が並んでます。

①「鈴虫」=一見して普通の男が過去に犯した罪。そして、それが露見するとき、さあどうなる? 「鈴虫」という存在自体がまるで何かの象徴のように思える・・・
②「ケモノ」=刑務所で作られた椅子に奇妙な文書が彫られ、それは家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語が、哀しい事件の真相を示していた・・・
③「よいぎつね」=子供のいたずらが、本当の「罪」になってしまうという忌まわしい過去。そして、その過去が主人公の記憶に蘇るとき・・・
④「箱詰めの文字」=これは相当ブラック。ドンデン返しの連続も効いていて、短編らしい切れ味を感じる作品。ただ、何となく既視感はありますが・・・
⑤「冬の鬼」=これは④以上にブラック、っていうか寒気がした。日記風の文書形式でストーリーは進みますが、日付が逆になっていく(=徐々に遡っていく)という趣向が凝っている。
⑥「悪意の顔」=同級生のひどい「イジメ」に怯えて毎日を過ごす少年が出会った女性は、何でも中に入れられる不思議なキャンパスを持っていた・・・こんなキャンパス欲しいわ!

以上6編。
最近こういう手の作品が多くなってるような気がしますし、そういう意味ではちょっと食傷気味にさせられる。
さすがに道尾氏らしく「うまさ」を感じるが、それだけではあまり高い評価はしにくい。
まぁ、いわゆる「軽~いホラー」なので、それほど読者を選ばないのが長所でしょうか。
(④⑤はなかなか面白い。それ以外は・・・それ程でもないかな)

No.5 4点 HORNET
(2011/01/10 19:19登録)
 ものの3時間で全編読めてしまいました。どんでん返し目的の軽い作品集という感じ。この人の作品は,やはり長編のほうがよいというまさむねさんの意見に賛成です。

No.4 5点 まさむね
(2010/07/12 21:28登録)
この作者の技巧は,長編でより発揮されるような気がします。
この短編集を読み,そう感じました。

No.3 7点 あるびれお
(2009/09/09 06:48登録)
「冬の鬼」って、桜庭一樹の「私の男」と同じように時系列を遡って語られる話だけれど、長編でそれを行なった「私の男」よりも、その構成の見事さ(与えるインパクトの強さ)はこちらの方が鋭く感じられた。また、短編すべてが一冊の本にまとめられることによって立ち上がってくる、黄昏たというか、ほの暗い世界に雨が降っているような雰囲気も素敵だと思った。

No.2 7点 おしょわ
(2009/07/04 15:12登録)
短編集ですが道尾テイストもあってなかなか。
ただ乙一っぽい感じも。

No.1 7点 だい様
(2009/04/12 22:34登録)
幻想的な雰囲気が良かった。
かなり完成度が高いと思います。
ただオチがある程度読めてしまうものばっかりだったのが少し残念に思えた。

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