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ミステリの祭典

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龍神の雨

作家 道尾秀介
出版日2009年05月
平均点6.79点
書評数14人

No.14 7点 パメル
(2021/05/12 08:31登録)
肉親と死に別れた二組の兄弟が登場する犯罪小説風のサスペンス。十九歳になる添木田蓮は実母の急死後、暴力を振るう継父を疎ましく思い始め、やがて殺意へと変わっていく。一方中学生の辰也と小学生の圭介の兄弟は実母の死後に再婚した父親を病気で失い、継母と暮らしていた。辰也は継母の存在を認めず非行に走り、圭介は二年前に実母が死んだ原因が自分にあると密かに悩み続けていた。
台風による大雨の日、蓮は継父を事故死に見せかけて殺す仕掛けをして外出する。帰宅した蓮は、継父の死体を発見するが、妹の楓から自分が継父を殺したと告白される。
ストーリーも人間のありようも、一面からでは判断できない。二組の兄弟の視点人物である蓮と圭介。彼らが見た息詰まるような現実を追っていくうち、作者が仕掛けた周到な罠にはまっていく。苦い味わいの青春小説であり、叙述トリックを超えた仕掛けが楽しめるミステリでもある。

No.13 7点 斎藤警部
(2020/12/29 16:39登録)
ターニングポイントとなる”お墓参り”のシーンがやけに沁みます。

“ものの五分ほどで、椿の蕾はばらばらになった。魚の鱗のような、緑色の萼(がく)が作業台の上に散らばり、水っぽい、少しピンクに色づいた幼い花びらが、その真ん中で無惨に千切れていた。”

ヒリヒリ来る攻めのカットバック(二家族それぞれの兄弟/妹愛と、義親との軋轢と..)は早期に点で交接。双ストーリーは一旦分離、ややあって再会、接面がじわりじわりとサスペンスフルに拡大。。。。まさかの方向からの参戦者と思い切りぶつかり合ってクタクタに萎れた最後、ダークグレイの雲間から淡い光が差している。。最後のラジオニュース連打。。(聞いている彼等には、その意味がまるで分からない)。。。大きな考えオチなのか、救い切らずに終えるのか。 スッキリ見せない匙加減が凄く良い。 

“長いこと自分の周りにまとわりついていた重たいものが、手品のように消えるのを感じた。それが何だったのかはよくわからない。しかし、わからなくてもいいと思った。もう消えてしまったのだから。”

本作のミスディレクションは、道尾さんらしい読者側へのものと、かなりの意外性と衝撃孕む小説内部のものと、両方向に向けて強烈です。 “想像は人を喰らう。” 

目次にも視覚的/意味的ギミックと魅力があります。 ご注目ください。

最後に、これを言うとネタバレっぽくなるわけですが。。。。。 翔子はどうなったんだ。。。。

No.12 6点 八二一
(2020/01/23 20:12登録)
真相が露になる時というのは、大抵のミステリでは犯人の企みの瓦解であるけれど、この作品では真相は被害者たちを崩壊させてしまう。そこが新しいし哀しい。

No.11 6点 sophia
(2018/03/27 19:22登録)
「シャドウ」や「ラットマン」の系譜、さらに貴志祐介「青の炎」を彷彿させる展開の本作ですが、ちょっと期待外れでした。真犯人(?)の正体に驚くよりも引いてしまったんですよね。後味も悪いですし。雨のせいでも何でもなく、全部あいつのせいでしょう。全編に渡って使われている「龍」の比喩もあまり効いていないような。散々「龍」に例えられた人物が、終わってみれば何も大したことなかったですからねえ。それとこの作品の柱になっている「脅迫者」ですが、楓はなぜ迷いなく××だと思ったんでしょうか。まず××の方を疑いませんか?最後に、2段ベッドが揺れるミスリードは分かりにくいですよ(笑)××××しようとすまいと彼に対する心証に影響はあまりありませんし。

No.10 7点 いいちこ
(2016/01/21 20:39登録)
二組の兄弟の偶発的すぎる接触、「雨」や「龍」のこじつけめいたメタファー、読者に対するミスリード(特に脅迫状等)のあざとさ等には難を感じるし、真相は美談にまとめすぎてやや安易な印象を受ける。
ただ、登場人物ごとの虚実を微妙にずらした巧妙なプロットと、それを活かしたミスリードの手際はさすが。
例によって少年を描き出す手腕には卓越したものがあり、圭介の母と兄を想う切ない気持ちは心を強く打つものがあった。
ラジオニュースを活用して作品に余白を持たせる手際も洗練されており、作者の余裕すら感じる

No.9 6点 風桜青紫
(2015/12/29 01:48登録)
里枝さんの人物設定がよくできています。なかなかいい人だけど、接しづらい空気がよく出てるんです彼女。それでいて子どもたちを心配してる気持ちがよく伝わるので、辰也はなんとも嫌なガキなんですが、嫌いになれないのです。それが物語の先行きに不安を呼び、リーダビリティを生み出すわけです。こういう青春ものを書かせるとやはり道尾秀介はうまいなあ、と思う。道尾秀介の味がよくでた作品なんだが、その分、他の道尾作品の影がちらついてインパクトが薄れたかな。でもまあ、面白かったです。

No.8 8点 itokin
(2015/12/27 21:09登録)
少し無理と思われる展開もあるが二転三転する運びは予想を上回るので最後まで飽きさせず楽しめました。人物の個性、心の動きも丁寧に書かれているので共感も得られさすがです。

No.7 7点 yoneppi
(2014/06/21 09:51登録)
作者の作品のなかでもかなりの良作。予想以上に楽しめた。

No.6 7点 mohicant
(2012/09/17 22:20登録)
 あいかわらず、読者をミスリードさせる手腕はさすが。

No.5 8点 まさむね
(2010/07/19 19:04登録)
作者としては,原点に還りつつ,これまでの作品に関して読者から寄せられた数々の「意見」に対して,ひとつの「回答」を示したのではないか,そんな印象を,まずは受けました。
で,この作品。いいですね。
私の嗜好のひとつ「回答編手前でしばし考え込む」という楽しみはほとんど与えてくれませんが,これは慣れっこ。「読ませられ」た感は文句なし。「騙され」た感では,ヒトコト言いたい事もあるが,まあ,如才なさを見せ付けられた。読後感も嫌いではない。
個人的には「ラットマン」よりも好印象。
採点が甘いという批判も覚悟の上で,8点献上!

No.4 5点 こう
(2010/03/20 23:10登録)
 派手なしかけがなく比較的真相が予想しやすい作品だと思います。真相、ストーリーがとにかく暗く重たいお話ではありますが他の作品と同様この作品も読みやすいと思います。
 少しネタバレですが一方の兄弟に対しては救いのないお話でありある意味残酷な真相だなあと思います。楽しめたのですがあまり再読したくなる作品ではありませんでした。

No.3 7点 あるびれお
(2009/09/18 19:50登録)
最初に採点された方と同様、道尾さんに対しては期待値がとても高い。仕掛け自体は比較的わかりやすいものだったが、それより、物語としてとても面白かったし、満足しているのだが、「もっと」を求めてしまう。

No.2 7点 だい様
(2009/09/07 09:48登録)
暗くて重たい物語でした。
作を重ねる毎にミスリードが巧くなっていて以前の作品で感じたようなあからさまな違和感もなくなったと思います。
『ラットマン』を読んでなかったら+1点くらいつけていたかも知れません。

No.1 7点 おしょわ
(2009/07/04 15:13登録)
ミステリとしては及第以上だけど期待値が高いだけにちょっと辛めの採点になります。
それでも十分楽しめました。

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