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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1196件

プロフィール| 書評

No.56 7点 扉は閉ざされたまま
石持浅海
(2010/07/10 13:59登録)
 なぜ犯人は密室を維持するのか。しかも逃亡や証拠隠滅のためではなく「時間稼ぎ」のために。リスクを犯してまでなぜ?
 状況設定が秀逸ですし,この謎は確かに興味をそそられましたね。
 ただ,その「回答」に至る過程において,やっぱり「動機」の非現実感に引っかかってしまいました。秀逸な状況設定のための止むを得ない措置なのだ(何とかできたような気もするが)と自分を説得させつつ,読了。
 なお,倒叙形式の見所たる「いかに暴かれていくか」の点については,文句なしに良かった。
 結末も私的には想定外で良かった。(もちろん,こちらも「非現実感」は否定できませんが…)動機等の違和感の割には妙な読後感の良さ。
 総合的にこの点数で。


No.55 3点 黒い森
折原一
(2010/07/05 21:33登録)
両面から(表からも裏からも)読み進められる設定。そしてどちらから読み進めても最後(つまり本の中心部なのですが)には「袋とじ」が!
ってなれば,内容も期待するってモノですよね。
「袋とじには,どんなどんでん返しが待ってるのか?」と引っ張っておいて…あれれ?犯人はじめ,すべてが完全に想定どおりじゃないか!分かりやすすぎる!
サスペンスとして読めということなのかもしれません。では,なぜ「袋とじ」が?いろんな意味で消化不良です。


No.54 4点 GOTH リストカット事件
乙一
(2010/07/04 23:08登録)
採点に迷ったが,やっぱり5点(まぁ楽しめた)は付け難い。
“イタイ系”の話が続くのは,そもそも辛いなぁ。ちょっと最後に「イイ話」を織り込ませようとするのも…むしろ…。
トリックも「入れ替え」に偏重しており,新味がない。(無論,騙されたのも多かったですが…)
久々に苦しみながらの読了とあいなりました。
私の嗜好が違うだけかもしれませんので,あまり参考になさらずに。


No.53 4点 カラット探偵事務所の事件簿①
乾くるみ
(2010/07/03 17:30登録)
探偵と助手が,依頼を受けた謎を解明していく連作短編集。
日常系の謎だけに,各短編のトリックは正直緩い。「暗号モノ」などは,少なからず苦痛に感じたりも…。
最後の「仕掛け」は,個人的に嫌いではないのですが,まあ,驚くレベルのモノではないですし…。
やっぱり,この点数になりますかねぇ。


No.52 7点 山魔の如き嗤うもの
三津田信三
(2010/06/29 23:02登録)
純粋に,面白かった。
しかし,どうしても「首無~」と比べてしまいますね。
雰囲気や最終局面での「どんでん返し連発」など,両作品には類似点が多い(地図ほしい~感まで類似してる…)ですが,当該作品の方が全体的に「弱い」印象を受けますね。
もちろん,「首無~」よりも良い点もありますが。この作品は刀城言耶が「主体的に」登場するし,何よりも読み進めやすくなっています。
「首無~」との相対評価っぽくなってしまいましたが,絶対評価として「良作」であることは間違いないと思います。


No.51 5点 ZOO
乙一
(2010/06/26 08:51登録)
10編からなる短編集。
どの作品にも「ハズレ」がない。陰と陽 静と動 冷と暖をうまく組み合あわせているからか、飽きもこない。
よって、もっと高得点にすべきなのでしょう。しかし、多くの短編で淡々と述べられる「狂い」に対し,私の心がやや後退りした面もありまして…。もっとも、これが良さでもある訳で…。完全に自己矛盾してますね。
初めて読んだ乙一作品なのですが,不思議な魅力がありますね。さて、長編も読んでみるか、そんな気にはさせられました。


No.50 6点 告白
湊かなえ
(2010/06/21 22:02登録)
第1章のスピード感には,皆様と同じく,圧倒されました。第2章以降は,圧倒感という意味では第1章に及ばないものの,登場人物ごとの「視点」により,作品の深みが断然に増していると思うので,否定的な評価には繋がりませんでした。
江守さん同様,私も,八坂准教授の独白をぜひ読みたかったですね。
この点数としたのは,「ミステリ」として考えてどうかな?と思ったからであって,小説としては秀逸であると思います。
登場人物(例えば森口)に対する読後の評価(印象)は,人によってまったく異なると思うのですね。それこそが,まさにこの作品の「小説」としての良さであると考えます。


No.49 6点 インシテミル
米澤穂信
(2010/06/19 09:32登録)
いろんな作家が悩んできたであろうクローズド・サークルの条件設定やリアリティを,「アルバイト」で一気に片付けてしまう,その割り切りに,一種の爽快感を覚えた。確かに,この作品は,そうあるべきでしょうね。
後半部はもうワンパンチ欲しかった気もしましたが,軽快に読み進めやすく,「本格ミステリ」として楽しめました。


No.48 7点 生首に聞いてみろ
法月綸太郎
(2010/06/14 21:09登録)
非常に丁寧に計算された作品であると思います。後半の紐解かれ具合は,結構好きですね。
・・・が,複数の局面で「偶然性」が強く出すぎているような気が。ご都合主義とまでは言いませんが,「読者サイドからすれば不親切」と思う点は正直ありましたね。
私は,皆様の「このミス1位に期待しすぎた」コメントを読んでいたのでよいのですが,期待感満々で読んだら-1点だったかもしれませんね。


No.47 10点 イニシエーションラブ
乾くるみ
(2010/06/09 22:56登録)
(ネタバレ注意)
⇒side-Bの「もやもやした違和感」が,ラスト2ページで「明確な違和感」に!
⇒あれ?しばし本を閉じて考える。「秋物語…」
⇒そういうことか?もしかして…
⇒両sideを読み比べてみる。(頭に時系列表を描きながら)
⇒なるほど「日焼け」「指輪」「イブのホテル予約」「アインシュタイン」「便秘」「木曜日に変更」…(その他諸々)ね…。
という訳で,極めて楽しめました。
すり替え具合,暗示の具合が絶妙。2回目の読書がこれまた楽しい。こういうミステリもアリですね。
叙述トリック系の傑作と評価いたします。

なお,トリックによって,あの世代特有の男女のかけひき(?)の連綿性まで表現できていると思う。恋愛モノとしてのチープさ(確信犯だろうが)がいい味を出している。スイカに塩的な感じ。
昭和30年代~40年代生まれの方は,さらに楽しめるのではないでしょうか?学生時代に気分が戻るかもしれません。


No.46 5点 骸の爪
道尾秀介
(2010/06/07 20:52登録)
伏線は回収しているし,まとまった作品であると思うが,特筆すべき「驚き」があるとは言えない。
理論的な「犯人当て」ができるだけの手がかりがある訳でもないし…。「なぜ?」の部分は結構理論的だと思いますが。
まあ,全体的には楽しめました。


No.45 9点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2010/06/03 22:02登録)
(一部ネタバレ注意)
皆様の評判のよさに刺激され,図書館で借りました。
ホラー的要素が効果的に働いていることは間違いないですが,その根幹となるトリック構成にはとても感動しました。
古典的ともいえる「顔のない死体」&「人物入替」を重層的に,拘りぬいて使ってますよね。一本の結び目を紐解くと,あれよあれよと解明していく様も見事。伏線も見事。(叙述的ミスリードも,ある意味見事。)
結末のどんでん返し連発(返して一部戻してと言った方がより正確?)も,息つく暇なく良かったですね。
最後に「1ページ目」を読み返さざるを得なくなったのも,私好み。
これは高評価にならざるを得ません。
※漢字の多さに馴染めなかったこと(それはそれで雰囲気醸成に重要なのだろうが)+前半,状況把握&伏線認識のみに特化せざるを得なかったことが「10点」をためらった理由


No.44 7点 悪意
東野圭吾
(2010/05/23 21:11登録)
この作品の本質は「・・・ダニット」なのだというような情報を一切与えられずに読むべき作品。
私は,様々に想像力を刺激されながら,しかもストレスなく読み進めることができ,相当に楽しめた。(結末は想定内であるが,過程が楽しめる。)
良作!


No.43 5点 完黙
永瀬隼介
(2010/05/17 23:16登録)
警察官を主人公とした5作品で構成される短編集。(私の価値基準では広義のミステリーにかろうじて入る。)
横山秀夫氏の警官モノ短編集の「ライト版」といった印象。
もうワン・パンチ又は一捻りほしい気もしますが,前向きな結末が多く,読後感は良い。
横山秀夫氏の短編が好きな方は,一読の上,比較検討するのもよいかもしれません。


No.42 5点 ジェネラル・ルージュの伝説
海堂尊
(2010/05/10 23:02登録)
表紙に「海堂尊ワールドのすべて」とあるとおり,海堂ワールドを振り返りたい(又は知ってみたい)方にはお薦めですね。
特に「作者の歴史(の前半)」と「自作解説」が面白い。「心に響く名ゼリフ」も,ちと笑いを誘って(?)何気に良かった。
なお,収録中編「ジェネラル・ルージュの伝説」は,速水ファンには楽しめると思う。もっとも,ミステリーではないですけど…。


No.41 6点 列車消失
阿井渉介
(2010/05/08 22:05登録)
「列車消失モノ」結構好きなんですよね~。
終着駅に着いてみたら,車両が乗客もろとも1両消えていた!
犯人は,身代金の受け渡しに寝台特急を指定!
その寝台特急の中で…
いやぁ,弱いんですよね~。この設定ってば!
(以上,中盤までの感想。以下,読後の感想。)
トリックの評価は,なんといいますか「微妙…」。
「本格」好きの方からは厳しい意見もありそう。
社会派テーマも,好き嫌いありそう。(嵌らないひとはとことん嵌らないと思う。)
舞台設定に関する個人的な「弱いんですよね~」があったからこその,この点数ということでご理解ください。


No.40 5点 Pの密室
島田荘司
(2010/05/05 18:49登録)
個人的には「鈴蘭事件」の方が良かったですかね。サラッと楽しめましたから。幼稚園児って設定は…まあ面白かったから良しということで。
表題の方ですが,建物見取図が「一部ずつ」開示されている時点で…。小学校低学年の御手洗が「占星術」時代よりも圧倒的に「オトナ」であったところが見どころでしょうか…。ちなみに,私は,人間味のある占星術時代の御手洗の方がいいなぁ。


No.39 5点 疑惑
折原一
(2010/05/04 23:59登録)
軽いタッチで読み進めやすい短編集。
現実的にどうかとか,そんなことを考えず読み進めていくのが良いかしれませんね,この作品は。


No.38 5点 上高地の切り裂きジャック
島田荘司
(2010/05/01 22:55登録)
中編2本で構成。
いすれの事件も「謎の不可解レベル」は申し分なし。
(以下,ネタバレ含む。)
ただし,「上高地の~」については偶然性があまりに強すぎる感が(しかも何となく2時間ドラマっぽい),「山手の~」は強引すぎる感が(隠し通路って…),それぞれ否めないような気がします。


No.37 5点 絶叫城殺人事件
有栖川有栖
(2010/04/29 09:16登録)
6つの短編集。すべての短編名が,「『建物名』殺人事件」で統一されています。
ちなみに,建物名が付されているからといって,「密室モノ」に特化しているわけではありません。
一番よかったのは,表題にもなっている「絶叫城殺人事件」。
トリック云々でなく,雰囲気としては「黒鳥亭殺人事件」も好きですね。
その他の短編は…標準レベルでしょうか。

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