home

ミステリの祭典

login
まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1196件

プロフィール| 書評

No.96 6点 セカンド・ラブ
乾くるみ
(2010/10/23 21:16登録)
分かりやすすぎる「餌」がぶら下がっているため,その裏に何があるのか想像しながら読み進めたものの,ラスト4行には確かにしてやられた。
読了後,数秒考え込んで「!」となるあたりは,イニシエーション・ラブと同様。
ただし,イニ・ラブが多彩で綿密な伏線を用意しているのに対して,この作品の「最大の肝」に対する伏線は果たして…?
この2作品,雰囲気は似ているが,ラストの衝撃に向かってのアプローチはかなり異なる。
また,イニ・ラブが「十分にあり得る話」だった(ソコが良かった!)のに対して,この作品には多少の無理も感じた。最終的に解せない点もある。
楽しめはしたが,総合評価としてはイニ・ラブの方が断然上位。


No.95 5点 トリック・シアター
遠藤武文
(2010/10/18 19:46登録)
前作(プリズン・トリック)同様,評価が微妙ですね。(前作を読んだ上で,この作品に触れた方が楽しめると思います。)
提示される謎はなかなかに魅力的ですし,前作における欠点を修正しようとする姿勢も買うのですが…
でもやっぱり,詰め込みすぎじゃないかなぁ。もっとシンプルでもいいと思うんですよね。
また,相変わらず(一部の者を除いて)人物表現が拙いような気がしてしまいました…映像として浮かんでこないというか…。
その薄い人物表現の中で人間性のコアな部分をも描こうとするから,分かりにくくなるのかも?(単に私の読解力不足なら,大変申し訳ございません)。

って何だかんだ言って,前作同様,魅力は否定できないんですよね。
続編があるような結末だったし,今度こそ次回作に期待かな。


No.94 7点 警察庁から来た男
佐々木譲
(2010/10/16 21:11登録)
「笑う警官」に続く道警シリーズ第2弾。
津久井・佐伯・小島・新宮など主要な登場人物は前作とほぼ同じ。これに「警察庁から来た男」が加わり,またもやグッジョブかましてくれる。皆,かっちょいい。
警察小説好きであれば,純粋に楽しめると思う。個人的には前作の「笑う~」よりも,こちらの方がスピーディーで好み。


No.93 5点 切り裂きジャック・百年の孤独
島田荘司
(2010/10/14 20:23登録)
1888年ロンドン編における切り裂きジャック事件の新解釈は,文句なしに面白かった。
でも,その百年後,1988年ベルリン編は,ロンドン編とのリンクというよりも,「こじ付け」の感が拭えなかったなぁ。
勿論,両者並行で語ることで,味わい深くなっているので,ロンドン編・ベルリン編を分けること自体が筋違いなのでしょうが,敢えて分けるとすれば,雰囲気を含めてロンドン編に軍配。


No.92 5点 フィッシュストーリー
伊坂幸太郎
(2010/10/09 11:47登録)
4編からなる短編集。ミステリ性は低い。
なお,それぞれの短編間の関連性はない。
①動物園のエンジン
 意図は分からないでもないが,正直,青臭い。
②サクリファイス
 中盤までの雰囲気は嫌いではない。ただし,後半は失速気味。
③フィッシュストーリー
 氏のコトバを借りれば,「だから?」という感じ。それ以上の感想は抱かなかった。
④ポテチ
 これは佳作。ベタ過ぎる展開ではあるが,響いた。

率直に言えば,④がなければマイナス2点だったかも…。
まあ,④も人によって好みが分かれそうだけれども。


No.91 5点 チルドレン
伊坂幸太郎
(2010/10/06 18:55登録)
まず,想像よりもミステリ的な側面があったことが意外であった。(きっと作者の狙いはソコではないのだろうし,相当に分かりやすいミステリ性だったけれども。)

最後にもう一捻りほしかったなぁ・・・でも普通には楽しめる連作短編集だったという印象。

ちなみに,氏の登場人物が奏でる「コトバ」って,個人的にはあまり好みではない。むしろ,上から目線に辟易することも多い。これって私だけなのかなぁ。


No.90 6点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2010/10/06 18:33登録)
現実には閉ざされていない中での「クローズドサークル」。
なるほど。面白いですね。
現実か芝居か分からない,微妙な展開。
なるほど。巧いですね。

<以下,未読の方注意>
オチは,まあ,なるほどって感じですが(決して嫌いではないけど),例の女性にとってちょっと無理がありすぎるような気がしますね。4日間ですよ。求道者かよ・・・ってことでこの点数。


No.89 5点 夏と花火と私の死体
乙一
(2010/10/04 18:33登録)
確かに,書かれた当時の作者の年齢を聞けば,驚かざるを得ません。(描写力などは,年輩の作家よりも巧く感じたりも!)
ただ,作品自体を冷静に見れば,標準レベルのような気もします。
表題の「死体の一人称」は結構斬新で面白かったけど…
逆に「優子」は,結末が想像できてイマイチでしたね。
総合して,この評価でしょうか。(ハードルを上げ過ぎて読んでしまった面もありますが…)


No.88 6点 交換殺人には向かない夜
東川篤哉
(2010/10/03 12:05登録)
氏の作品を読むのは初めてなのですが,この作品だけで判断すると,ドタバタ&ギャグが,作品にとって結構効果的に使われていると思う。
簡単そうだけど,肝心なとこが分からないなぁ…って思いつつ,実は完璧に騙されていた自分がいた。うーん,やられた。


No.87 4点 リスの窒息
石持浅海
(2010/09/26 22:42登録)
 現実感が物凄く希薄。
 「扉は閉ざされたまま」でも,相当の違和感を抱いたものの,一個人の内面(動機)に対するものであっただけに,自分としては,まあ,スルーした記憶がある。
 しかし,この作品はそれどころじゃない。違和感どころか,現実感が「まったく」得られなかった。
 だって,普通,誘拐事件だったら即刻警察に連絡するでしょ。警察に弱みがあるわけでもなかろうに。いかにサラリーマンの悲しい性があっても,新聞社のオトナたちが揃いもそろって,馬鹿な判断するかな?社長もあんな馬鹿な指示出さないでしょ。よく潰れないもんだ,この新聞社。
 まあ,それでは作品が成り立たないのだけれども,「若手がスクープ欲しさに上層部に報告せずに独走」くらいのプロットの方がまだまし。被害者の学生証が開示されてるのに,調査も遅すぎるし。かなりイライラする。
 この辺で引っかかると,もうスリリングさを感じることなどできなかった。
 氏の作品は,私にとって2作品目。両作品とも「世間でまともと見られている人間の非常識な判断」が重要な要素になってくるが,その描きっぷりは,決して褒められたものではない。


No.86 6点 ガラス張りの誘拐
歌野晶午
(2010/09/24 19:45登録)
「病名、やさしさ。」
1ページ目にナイスなフレーズが。(人によってはダメかもしれないが。)
そして,このフレーズ、結構この作品全体にわたる共通項だったりする。
この辺り、私は嫌いではない。
ただし,やっぱり「動機」と「結果」との違和感はぬぐえない。嗚呼もったいない!根底のテーマが悪くないだけに。
この作品+「さらわれたい女」は,確実に「葉桜~」に通じていると思うので,気持ち加点します。


No.85 3点 puzzle
恩田陸
(2010/09/22 23:48登録)
中編ミステリであり,短時間でサラサラ読める。
提示される謎も,なかなか魅力的。
・・・評価したい点は以上の2つ。
しかし・・・
真相にはさすがに無理があったなぁ。謎が魅力的だっただけに,むしろ残念感が増してしまったなぁ。
それと,探偵役(職業:検事)の推理(?)も,根拠薄弱のような印象が・・・。
そういえば,最近,郵便不正事件に関して,担当検事による証拠改ざん疑惑が問題となっているが,検事の「思い込み」ってのは,やっぱり怖い。そんなことを考えさせられましたね。


No.84 6点 さらわれたい女
歌野晶午
(2010/09/22 20:20登録)
無理に奇をてらうことなく,正攻法で書かれた誘拐ミステリ(まあ「誘拐ミステリ」って言って良いのか,やや躊躇する面もあるが)。
特筆すべきトリックがあるわけではないが,軽快な語り口&展開で,純粋に楽しめると思う。
こういう,大掛かりではないけども安定感あるミステリは,結構好み。
なお,この作品,結構「葉桜~」に活かされているような気がする。


No.83 7点 星降り山荘の殺人
倉知淳
(2010/09/19 11:22登録)
作者の思惑に,まんまと嵌りました。

(以下,未読の方は注意)
確かに,よくよく見れば,ある意味分かりやすいとも言えるヒントが「そこ」にあったのですよね。まあ,読後はある種の爽快感すら覚えました。
結局,肝となる「そこ」のトリックに嵌るか否か・嵌った後にニヤリとできるか否かで評価は分かれるのでしょうね。
私はニヤリ派であり,もっと高得点でもいいのですが,途中までの展開が冗長に感じたこともあって…まあ,これも作者の思惑の一部なのでしょうけど。


No.82 7点 聖女の救済
東野圭吾
(2010/09/13 22:26登録)
清く・正しく・美しい(?),正統派のハウダニット作品。
叙述的ミスリードまで,清く・正しく・美しかった。
基本トリックが1点厳選というのも,潔さを感じて,嫌いではない。(トリックの発想自体が斬新なため,現実味云々は,私的には敢えて減点対象とせず。)
トリックのみでいえば,短中編でも,十分に作品として成り立つと思うが,これに種々人間ドラマを絡ませ,冗長さを感じさせない長編に仕上げてしまう作者の力量は,さすがとしか言いようがない。(注:皮肉などではなく,純粋に拍手)
ただし,湯川氏の「虚数解」発言は,こじ付けが過ぎる印象がして,最後まで違和感が消えなかったので,マイナス要素。本筋とはあまり関係のない,細かい点ではあるが…。
(ちょっとネタバレ)
しかし,どうしようもない奴が随分モテたものだ。そもそもこんな奴と結婚しなきゃいいじゃない…ってトリックの全否定になっちゃうような気もするから,あくまでも戯言で。


No.81 7点 追想五断章
米澤穂信
(2010/09/11 11:09登録)
仕掛けの一部は確かに分かりやすいものの,全体的に面白い試みではある。その点は大いに拍手を送りたい。
ちなみに,作中の5つのリドルストーリー自体が,何気に良い。特に,最後のリドルストーリー「雪の花」などは,本作品の真実とも相まって,何と言うか,一回り深いリドルストーリーに仕上がっている。文学のかほりすら漂う。(ちょっと言い過ぎかな?)


No.80 7点 99%の誘拐
岡嶋二人
(2010/09/08 22:49登録)
誘拐モノとしては,出色であると思います。さすがは「誘拐の岡嶋」。
展開もスピーディだし,緊張感もあって,ページをめくる手を止めることができませんでした。(個人的に蔵王スキー場は大好きだし…あまり関係ないですね…)
一方,謎の提示及び解明具合並びに結末にかけての意外性については物足りなかった印象も。(この点は皆様も同様の感想を持たれたようでしたね。)
基本スキームが倒叙形式であるので,作者の意図は分からないでもないですが,それでも「完全犯罪手法 誘拐版」の開示に特化しすぎているような気がしました。(正確には,「99%の」完全犯罪なのでしょうが。)
とはいえ,やっぱり楽しい読書でしたね。


No.79 4点 電氣人閒の虞
詠坂雄二
(2010/09/05 23:16登録)
最終章1つ前の章のラスト1行の衝撃は,確かに結構なものでした。ページめくってあの1行。芸も細かいですね。その意味では,まぁ楽しめたと言えるのかな。

しかしながらですよ。結末にはやっぱり唖然としましたね。
まさか,そんなオチはないでしょ,自分の読解不足なだけでしょなどと読み返して見ても,やっぱりそれ?こりゃ私のような一般読者は,きっと唖然としますね。
衝撃そして唖然。この体験は貴重だけども,特にこの種の作品の「唖然感」は「喪失感」にも似て,心の傷になりそうだから,しばらくは避けたい。同種ネタの作品もそれなりに見受けられるようだし…
でもこの種の作品って,それこそ「語ると現れる」からなぁ。ああ怖い。


No.78 6点 秋期限定栗きんとん事件
米澤穂信
(2010/09/03 22:41登録)
ミステリとして目立った点はないのでしょうが,このシリーズのファンにとっては結構楽しめる内容。
特にラストはいいですね。小佐内さんは,これだから目が離せない。


No.77 7点 暴雪圏
佐々木譲
(2010/09/01 21:58登録)
川久保巡査部長シリーズ第2弾。
3月の暴風雪で閉ざされた北海道の田舎町のペンションに,訳アリの者たちが偶然にも集う。
この訳アリっぷりがすごい。強盗殺人犯・窃盗逃亡犯・不倫を清算しようとする主婦・その主婦を追いかける軽薄男・義父の性被害に悩む少女などなど…。そして近所では数ヶ月前の女性死体も発見されて…。
よくもまあ,同じ日にこれだけの偶然が重なったものだ…との突っ込みはさておき,各々の登場人物のキャラが立っていて,なかなか楽しめる。川久保巡査部長の登場シーンは前作ほど多くないが,最後においしいところは持っていく。
作者のリーダビリティの高さは変わらない。読後感も良い。
ちなみに個人的には,不倫主婦の結末に心からの拍手を。(良かったね~という意味で)

1196中の書評を表示しています 1101 - 1120