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ミステリの祭典

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返事はいらない

作家 宮部みゆき
出版日1991年09月
平均点7.00点
書評数14人

No.14 7点 ALFA
(2023/08/23 08:36登録)
日常の謎から殺人事件まで6話からなる短編集。いずれも社会派風味。
この社会派風味の頃合いがちょうどいい。
カードローンをモチーフにした「裏切らないで」は、欲望の虚像都市「東京」の罠に嵌まった女性を主人公にした秀作。シンプルなミステリーだが、声高に社会派を振りかざした有名長編より味わい深い。逆トリックによるドライなエンディングは清張を思わせる

お気に入りは表題作「返事はいらない」と読後感のいい「ドルシネアにようこそ」。

No.13 7点 E-BANKER
(2019/11/05 22:26登録)
~日々の生活と幻想が交錯する東京。街と人の姿を鮮やかに描き、爽やかでハートウオーミングな読後感を残す・・・~
というわけで1991年に発表された作者の第二短編集。

①「返事はいらない」=キャッシュカード認証システムの不備を利用した犯罪の片棒を担ぐことになった女性。捨てられた不倫相手への腹いせのつもりが・・・。ラストの刑事とのやり取りもなかなか良い。(因みに現在ではこのような犯罪は成立しません)
②「ドルネシアにようこそ」=ドレスコードのある六本木のクラブ・ドルネシア。同じ六本木の速記事務所で働く地味な男にとって、そこは無縁であり憧れの場所でもあった・・・。巻末解説によると、宮部氏自身が昔速記事務所で働いてたんだねぇー
③「言わずにおいて」=26歳であんなふうに職場で言われるなんて・・・。今だったら絶対セクハラで訴えられるよ! それはともかく、人生にはこんな偶然も起きるんじゃないかと思う。
④「聞こえてますか」=引っ越した中古住宅に残された古い黒電話。その中から偶然見つけたものは・・・。前の家主は過去に特高を務めていたと聞き・・・。少年が主人公となるのが作者らしいし、生き生きしてる。
⑤「裏切らないで」=代表作「火車」のプロトタイプのような作品。一昔前の話ではあるけど、こういう女性心理は何か心が苦しくなってしまう。
⑥「私はついてない」=最後は軽~いタッチの一編。偽物が偽物を呼び、結果息子は知りたくもない両親の秘密を知ることに・・・。

以上6編。
うん。いいです。何ていうか、さすがに一流作家だなという印象。
確かにタッチは軽い。ミステリー的なプロットは希薄だし、サプライズが用意されているわけでもない。
でも、こんな作品をサラリ(ではないかもしれないが)と書く、書けることが力量ってことだろう。

今回、紹介文のとおり、「東京」に住む市井の人々が主人公となる。
⑤に登場する刑事が東京を指していう言葉、『果たして東京なんて街は実在しているのだろうか。そんなものは、この種の雑誌やテレビで創りあげた幻にすぎないのではなかろうか・・・』が、何だか本作の作品世界に通じるようで印象に残った。
登場人物は市井の人々=生活感の伴った人々のはずなのに、どこかジオラマの世界の住人のような感覚・・・とでも言ったらいいのか。

やっぱりこうやって書いてると、本作は宮部作品なんだなぁーと思う。(当たり前だが)
長編はいつも冗長に感じるんだけど、短編は粒ぞろい。個人的にはいつもそう感じる。
(個人的ベストは①か⑤かな。次点が②)

No.12 5点 いいちこ
(2019/08/03 17:23登録)
いずれの短編も上手にまとめているが、ふみ込みが足りない。
リアリティも弱いし、何より胸に迫る、強い印象を残すものが何もない。
軽量コンパクトな作品群

No.11 9点 Tetchy
(2017/11/30 00:47登録)
いやはや脱帽。久しぶりに宮部作品を、それも短編集を読んだが、流石と云わざるを得ない。犯罪や人の妬み、嫉みという負のテーマを扱いながら、読後はどこか前向きになれる不思議な読後感を残す佳品が揃っている。

偽造カード詐欺と狂言誘拐を組み合わせた表題作、後の『火車』でも取り上げられるカード破産をテーマにした「ドルネシアへようこそ」、店の金を持ち逃げされた従業員を追ったレストラン経営者のある決意を語った「言わずにおいて」、盗聴器が仕掛けられた引っ越し先の前の住人の正体を探る「聞こえていますか」、ブランドや装飾品に自分の存在価値を見出した女性の借金まみれの生活を扱った「裏切らないで」、そして最後は借金のカタに婚約指輪を取られた従姉のために一肌脱ぐ高校生の活躍を描く「私はついてない」。そのどれもが読後、しっとりと何かを胸に残すのである。

80年代後半から90年代に掛けて、狂乱の時代と云われたバブル時代の残滓が起こした当時の世相を映したような事件の数々。そんな世相を反映してか、6編中5編が金銭に纏わるトラブルを描いている。しかしそれらは過ぎ去った過去ではなく、今なお起きている事件でもある。

こんな出来栄えの短編集だからベストの作品が選べるわけがない。全てがそれぞれにいい味を持った短編だ。だから敢えてベストは選ばないが、唯一刑事を主人公にした「裏切らないで」が作者がこの時代の特異性を能弁に語っているのでちょっと書いておきたい。

地方から出てきて若さを武器に借金をしながらもいい仕事に就いていい男を見つけようとしていた女性が殺される。その彼女を殺した女性は東京の北千住から引っ越してきた女性なのにそこは「東京」ではないという。当時煌びやかで華やかさを誇ったバブル時代は実際は中身のない好景気で、その正体が暴かれた途端に弾けてしまい、しばらく世の中はその後始末に追われた。そんな上っ面の時代の東京もまたメディアに創り上げられた幻に過ぎなかったのではないかと刑事は述懐する。それは彼女たちの生き方も見た目を着飾ることに終始して、やりたいことがなく、ただ「貰う」だけ、手に入れるだけを目指していた。その中に中身があるかないかも分からずに。

本書はそんな時代の、東京を映した短編集。しかしバブル時代のそんな空虚さを謳っているのに、時代の終焉を迎え、乗り越えようとする人たちに向けての応援の作品とも取れる。こんな作品、宮部氏以外、誰が書けると云うのだろうか?
解っている。だから勿論、この問いかけに対する「返事はいらない」。

No.10 6点 斎藤警部
(2016/01/21 09:41登録)
軽くてきれいで温かい。ちょっと怖くて淋しい。悪くないね。

No.9 6点 白い風
(2012/10/15 17:52登録)
宮部さんの初期の6編の短編集ですね。
比較的どれもライトな内容で癖もなく、楽しめました。
本の題名の「返事はいらない」と「ドルシネアにようこそ」が面白かったかな。

No.8 6点 まさむね
(2011/03/31 21:44登録)
今更ながらですが,彼女の短編は,巧いのみならず,非常に読み心地がよいです。
特にこの短編集は,温かく,爽やかな読後感の作品ばかり。
中でも「ドルネシアにようこそ」は秀逸。表題作と「言わずにおいて」も相当良です。
サラッと読みたい気持ちの方にお薦めします。

No.7 7点 如月雪也
(2005/06/05 09:45登録)
表題作が良かったです。

No.6 7点 HATT
(2004/11/01 21:31登録)
宮部みゆきの短編集は長編よりプロットがしっかりしており、練り込まれている感じがする。「ドルネシアにようこそ」は特に秀逸。

No.5 7点 なの
(2004/10/02 17:09登録)
全体的に前向きな話が詰まっています。
表題作をはじめとして、今までの自分の殻を脱ぎ捨てるような・・・。
爽やかな読後感です。
でも『私はついてない』の姉さんは、一発くらいビンタ入れたい(苦笑)

No.4 6点 ばやし
(2004/01/12 10:24登録)
覚えて無い(苦笑)

No.3 9点 TAKA
(2002/12/08 16:10登録)
時間潰しのために売店で買っただけの本でした。これが中々どうして思わず夢中になって読んでしまいました。特に「ドルシネアにようこそ」は読後ほのぼのとした気持ちにさせてくれました。

No.2 9点 美来
(2001/08/31 14:56登録)
泣きたくなるような短編集。
表題作の最後、主人公のせりふが哀しい。それでいながら、前向きな話になっているのが良い(^^)

No.1 7点 アデランコ
(2001/07/19 12:33登録)
短編集。
クレジットカード被害や銀行ATMカードの偽造に絡む女性を凄くリアリティあるように描いています。
「火車」の原型と言われているが、さらっと読めるところが短編のいいところ。
個人的には、おじいさんが自分の電話機に盗聴器をつけてしまうストーリーが好きでした。

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