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ミステリの祭典

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球体の蛇

作家 道尾秀介
出版日2009年11月
平均点5.75点
書評数8人

No.8 5点 パメル
(2021/09/26 08:11登録)
幼なじみ・サヨの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった。白い服に身を包み自転車に乗った彼女は、どこかサヨに似ていた。想いが抑えきれなくなった私は、彼女が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込むという悪癖を繰り返すようになったが、ある夜、運命を決定的に変える事件が起こってしまう。
タイトルの「球体の蛇」とは、サン=テグジュペリの「星の王子さま」に出てくる、象を飲み込んだウワバミのこと。絵に描くとシルクハットにしか見えなくて、主人公の男の子が「これ怖いでしょ?」ってみんなに言うと「全然怖くないよ。なんで帽子の絵が怖いのか」「いや、これはウワバミが象を飲み込んで、消火しようとしている恐ろしい絵なんです」と。
そういうふうに、見かけと中身が違っているのがこの小説のテーマ。冒頭に出てくるスノードームがキーアイテムになって、物語の要所要所に再登場するのだが、内側と外側、閉ざされた平和な世界と、その世界の外側にある過酷な現実、みたいなことの象徴になっている。
それから主人公は、シロアリ駆除のアルバイトをしている。床下の世界とその上の日常みたいな対比もあって。つまり、本当に起きたことと、外から見える現実との二重性を引きずりながら、青春小説が語られていく。作者自身は「ミステリじゃない」と言っているが、事件もあるし、謎もあるし、どんでん返しもある。一種の青春ミステリといってよいでしょう。

No.7 6点 sophia
(2021/04/08 22:36登録)
読んでいる最中は「ラットマン」のような過去の事件の反転を目指した作品なのかなと思っていましたが、それとはまたちょっと違うリドルストーリーでした。一応ミステリーではありますが、主人公の心情描写がメインで純文学寄りなのですかね。「球体の蛇」というタイトルはあまり的を射ていないように思います。

No.6 4点 風桜青紫
(2015/12/29 02:02登録)
「ブンガク」を志した瞬間にストーリーが退屈になる好例。「道尾は『球体の蛇』から文章がよくなった」なんて意見をけっこう聞くんだが、道尾秀介ほど実力のある作家ならこういう「いかにも」な文章は、やろうと思えばいつでも書けたのではないかと思う。もちろんサヨの子どもらしい残酷さがにじみ出た人物造形なんかは道尾らしさが出ていて、なかなか興味(割り箸を鉛筆削りにぶちこむとかね)をかきたてるけれども、それでも作品ひとつを支えるだけの力があるとは思えない。直木賞とるための実験作にしか見えないわけです。まあ、後の作品で結果的にとれたから、試みとしては悪くなかったんだろうけど。

No.5 7点 mohicant
(2013/08/03 22:21登録)
 最近の道尾秀介の作品の中では結構好きな方。いろいろとむごい。

No.4 7点 まさむね
(2011/03/06 11:25登録)
 作者にとっては,初のノンミステリ作品という位置づけらしいですね。しかし,青春小説としてのラストの心象を保ちながら,その実なかなか趣深いリドルストーリーに仕上げてます。この辺りに作者らしさを強く感じました。
 登場人物では,何と言っても「ナオ」がいい。印象に残ります。
 その後の直木賞受賞作品「月と蟹」(これまたノンミステリ)よりは,私は断然,この作品の方が好み。この作者の作品は,5期連続で直木賞候補に挙げられてますが(うち5期目の「月と蟹」で受賞),明らかに受賞作よりも「カラスの親指」やこの作品の方が良作。(候補作のうち「光媒の花」のみ未読だが)
 何はともあれ直木賞も手にしたことだし,再度,基軸をミステリにおいて欲しい…って(ある種わがままな)希望を込めて7点を。

No.3 5点 江守森江
(2010/06/12 18:13登録)
ミステリ分野に軸足を置く読者が、作者に求めて支持してきた、読者の思い込みを利した鮮やかな反転を齎す作品ではなく、一般文芸で直木賞狙いに方向転換した分岐点的な作品。
次の展開(捻り)を細かく晒しながら転がるストーリーなのでドンデン返しは小さくなるが、作者は敢えてしているのだろう。
主人公が真相に納得する形で幕を閉じるが、読者の側では火事の真相3パターン×智子の生死2パターンの計6通りから勝手に真相を想像するリドルストーリーだと考えれば水準レベルなミステリーだとは思える。
その一方で、作品の主題がトラウマ克服青春記で、そちらに気を取られたままリドルである事を意識せず読了するので、ミステリー色は非常に薄く感じる。
どこといって悪くないが、作者に求める物と違う為に不満は大きい。

No.2 6点 こう
(2010/03/18 01:08登録)
 読みやすく一気に読了できましたがこれまで読んだ道尾作品と違いミステリ要素がほとんどない作品でした。青春小説様でその割には主人公はかなり身勝手で青臭い感じで魅力が感じられず感情移入しづらいです。「ナオ」の父親も同様です。本を読んで真っ先に感じるのは同じ境遇にあった3人で一番若い「ナオ」に対する男2人の配慮はあまりにも欠けており結末はともかくストーリー中の「ナオ」の扱われ方はかわいそうだなあということでした。
 これまでの作品同様のひねりを期待する方なら拍子抜けするかもしれません。今回のはひねりといえるかどうか。
 発表ペースが速いのは喜ばしいですが本作品と同様の方向にはあまりいってほしくないです。

No.1 6点 おしょわ
(2010/01/24 22:26登録)
全体的にできすぎ感が強いです。
映像化狙って書いてる感じ。

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