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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1196件

プロフィール| 書評

No.196 5点 ガラスの麒麟
加納朋子
(2011/08/05 22:48登録)
 連作短編の特長をうまく活かしている作品ではありますね。「ななつのこ」といい,作者はホントに連作短編が上手いなぁ。
 でも,正直いって登場人物(被害者と神野先生)に感情移入ができず(おっさんだからか?),最終章も中途半端な印象が否めず,解決もロジカルとは言い難かったので,この程度の採点になりますかねぇ。個人的に評価が難しい作品です。


No.195 8点 パラレルワールド・ラブストーリー
東野圭吾
(2011/08/01 22:48登録)
 久しぶりに,読後の余韻に浸れた作品。
 交互に語られていく現在と過去。混乱する記憶。一体何が真実なのか…と疑心暗鬼になりながら,次第に「なぜ,彼はそうなったのか」というホワイダニット的な面でも惹きつけられました。でもやっぱり真実との境目が(読者にとっても)危ういところがミソ。目を離せません。
 これらの謎が終盤で明らかにされたとき,切なさとともに,一種の安堵感(語弊がある?)が。個人的には,「記憶」に残るであろう作品。改編されない限りにおいて,ですけど。
 ちなみに,実は「パラレルワールド」ではなく,そして「ラブストーリー」でもないような…って読後にほくそ笑んだのは私だけ?


No.194 5点 ロシア紅茶の謎
有栖川有栖
(2011/07/30 21:33登録)
 表題にもなっている「ロシア紅茶の謎」と「赤い稲妻」は,まぁ楽しめたかなぁ。
 で,残りの作品は,小粒でピリリと辛くもない印象。「八角形の罠」は,舞台だったらそれなりに面白いのかもしれないし,「動物園の暗号」の着目点も個人的には好きですけどね・・・。


No.193 7点 再会
横関大
(2011/07/25 21:46登録)
 前年の江戸川乱歩賞受賞作。
 端的な文章でグイグイ引き込まれました。プロットも,決して目新しい点はないのですが,丁寧に練られています。登場人物間の視点転換も気にならない,というかむしろ効果的に働いている印象。老練な作家が書いたとすら思わせる巧さが垣間見えます。
 ご都合主義的な側面や,過去の事件において真犯人がとった行動には理にかなっていない面があるのではないか…という疑問もありましたが,まぁいいか,と思わせるストーリー運び。
 このレベルの作品を今後コンスタントに発表されることを期待します。(買うと思います。)
 ちなみに,前年度の受賞作「プリズン・トリック」とは,確かに様々な点で正反対の位置にある作品です。結構幅広いぞ,乱歩賞。


No.192 5点 冷たい密室と博士たち
森博嗣
(2011/07/24 13:19登録)
 「オーソドックスな密室もの」という印象。本格作品としてきっちりしているのですが,特筆すべき点も見当たらないというか・・・。
 それと,多くの方が指摘していますが,某女性が殺される理由の説明には,確かに納得し難いですねぇ。プロットの本筋はいじらずに工夫できたような気がします。
 でも,読後に損したと思わせる作品ではないです。いたって平均的。


No.191 6点 心臓と左手 座間味くんの推理
石持浅海
(2011/07/22 22:16登録)
 作者の代表作のひとつ「月の扉」の探偵役・座間味クンが再登場する短編集。
 「月の扉」で知り合うこととなった大迫警視と座間味クンは,時折酒を酌み交わす仲に。その席で,大迫警視が組織としては解決した(ことになっている)事件について語るのですが,座間味クンの推理でガラッと事件の姿が変わってしまうという,まぁ,安楽椅子モノですね。
 決して真相究明に特化している訳ではなく,大岡裁き系も,リドルストーリー調もあるのがミソ。小気味よいロジカルな展開でストレスを感じずに読めましたね。短編集としてなかなか高水準だと思います。(「月と扉」の後日談だけは期待はずれでしたが・・・)
 ちなみに,推理とは全く関係ないですが,この2人の酒を酌み交わす情景(海鮮鍋やら石垣牛やら一夜干しやら鶏料理やら炉端焼きやら…)が浮かび,羨ましくてしょうがなかったです。特にアジの一夜干し!そして日本酒!


No.190 6点 月の扉
石持浅海
(2011/07/16 22:09登録)
 当時各種ランキングで高評価だった作品。特殊な閉鎖空間におけるロジカルな推理とくれば,まさに作者の真骨頂。確かにその点は楽しめましたね。
 しかし,動機がイマイチ(あくまでも個人的見解)という,もう一つの作者の特徴も如実に表れています。「石嶺師匠」の凄さは良く分からないけど,登場人物のみならず作者までもが彼に頼りっぱなしでしたねぇ。


No.189 5点 弥勒の掌
我孫子武丸
(2011/07/16 22:04登録)
 氏の作品だけに,ひねくれて読んでしまったせいもあると思うのですが,結末にはそれほどの驚きを感じませんでした。
 いや,私のようなひねくれ者を惑わす怪しげな展開も良かったし,概ね騙されたし,決して悪い作品ではないのですよ。
 ただ,思ったよりも(?)正攻法でしたね。もっと騙されているかと思ってました。「これで終わっちゃっていいの?」というか・・・後味もかなり悪いしなぁ・・・この点数くらいにしておきましょう。


No.188 6点 鬼面村の殺人
折原一
(2011/07/12 21:06登録)
 氏の作品を読むのは,恥ずかしながらこれで3作目。従前の印象は「私とは波長が合わない」だったのですが,この作品について言えば,良い意味で裏切られましたね。
 密室はともかくとして,建物消失トリックへの挑戦は買えますね。黒星警部と虹子記者とのドタバタ劇も悪くない。最後の連続ひねりにも好感,というか個人的にはど真ん中。
 全体的には確実に水準以上の作品だと思います。


No.187 7点 そして誰もいなくなる
今邑彩
(2011/07/10 20:53登録)
名作の活かし方としては,ありがちな手法とはいえ,相当に良質で効果的。中盤以降の捻りと加速感も素晴らしく,一気読みでしたね。
ただ,最終章については,makomakoさんと同じ意見で,ない方が締まるかも。


No.186 4点 黒い列車の悲劇
阿井渉介
(2011/07/09 22:00登録)
 三陸鉄道のトンネル内で乗客もろとも列車が消えた。数分後,反対側から来た列車は,何事も無かったかのようにトンネルを抜けていった…。単線なのになぜ?その夜,海の上を走る列車の目撃情報が。
 確かに謎は魅力的です。しかし,トリック面については,真正面から勝負していると言えなくもないですが,ちょっと強引ですねぇ。海の上を走るくだりも蛇足っぽい。動機にも疑問。牛深警部の想いとか社会派的な視点は,むしろ中だるみを助長してるだけのような気が…。
 作品はさておき,震災で甚大な被害を受けた三陸鉄道の完全復旧がなるべく早くなされるよう,お祈りいたします。


No.185 8点 丸太町ルヴォワール
円居挽
(2011/07/04 22:24登録)
 ラノベ・タッチはむず痒くなるので,すごく苦手です。そしてこの作品は「講談社BOX」での刊行ですから,慎重派(?)のワタクシとしては,普通であれば決して手を出せないのですが,世間の評判の高さに負け,手にとってしまいました。
 その結果は,「凄い掘り出し物!」。いや,むず痒くならなかった訳ではない(冒頭の会話シーンなどは痒いどころか,結構カチンとくる)のですが,そこを無視して読み進めたところ,完全に飲み込まれました。連続どんでん返しが圧巻。叙述のテクニックも見事です。比較的安易な叙述を見せておいて…ってのは,よくある手法ですが,どんでん返し連発との合わせ技で見せられると…楽しいですなぁ。
 私的裁判っていう設定は,一般的には微妙なのでしょうが,少なくともこの作品の中では活きてます。法廷(?)での両者の応酬も見所のひとつでしょう。
 むず痒い&カチンとくる面もあったから減点を…とも思いましたが,作者の将来性の高さを買って8点献上!次はラノベ風味を排除した作品を書いて欲しいなぁ。


No.184 5点 私たちが星座を盗んだ理由
北山猛邦
(2011/07/02 23:01登録)
 ラストでの覆りに力点を置いた短編集。
 作品ごとにレベルはまちまちですが,「妖精の学校」は怪作です。なるほど,なるほど,そう来たか。
 「終の童話」もなかなか趣深いです(最終的にはリドルストーリーってことなんでしょうかねぇ。)
 両作品とも,読み終わった後が,ある意味で入口かもしれません。好き嫌いは分かれそうですけれども。


No.183 6点 貴族探偵
麻耶雄嵩
(2011/07/01 21:59登録)
 「どうしてこの私が推理などという面倒なことをしなければならないんだ。雑事は使用人に任せておけばいいんだよ」
 斬新というか,むしろ清々しさすら感じるセリフです。で,その名も「貴族探偵」。安楽椅子探偵モノに一石を投じる(?)ニューヒーローの誕生ですね。
 尋常じゃないお金持ち・凄いキャラ立ち・使用人がご活躍・短編集・安楽椅子探偵…などなど,ベストセラー「謎解きはディナーのあとで」と設定はかぶりますが,それぞれ微妙に異なる面白さがあります。両作品を読み比べることをオススメします。


No.182 6点 謎解きはディナーのあとで
東川篤哉
(2011/06/25 21:42登録)
3人のレギュラーメンバー(宝生・影山・風祭)の設定が絶妙。漫画的で軽快な会話シーンもよい。個人的には,有名な(?)宝生&影山の会話シーンよりも,むしろ宝生&風祭の会話シーンに魅力を感じました。(ちなみに,ワタクシは従前から,氏のギャグの積極支持派でございます。)
で,骨組みは完全に本格ミステリ。(ひとつひとつはシンプルですけど…)確かに,売れる要素は多いですね。シリーズ化されて,息が長く売れそうな気がします。


No.181 6点 光媒の花
道尾秀介
(2011/06/20 21:15登録)
 道尾作品の中でどのような順でこの作品を読んだのか,それで評価は分かれるような気がします。
 まず,ラットマン周辺を既読の方にとっては,この作品に物足りなさを感じると思いますね。作品にとって良いか悪いかは別として,彼のこれまでの特長が見受けられません。
 しかし,直木賞受賞作品「月と蟹」の流れで(触発されて),この作品を手にした方にとっては,評価は結構高いのかもしれません。読み進めさせる技量でいえば間違いなくトップクラスの作家が,決して生ぬるくはなく,かつ,絶望的でもない複数の人生の心の分岐点を描くのですから,ミステリ要素を除けば,まぁ,一定の評価は当然と言えましょう。その点はやっぱり上手いし,個人的には「月と蟹」よりは相当に良かったです。
 で,道尾反転ミステリをほぼ読破しつつ,(図書館予約の関係で)「月と蟹」を先読している私にとっては,上記の両方の印象が混在して,どう評価してよいものか・・・。道尾ミステリに期待する人は無理に読む必要なし。「月と蟹」を素直に読めた方は,一読する価値があるかも。


No.180 5点 追憶のカシュガル
島田荘司
(2011/06/18 10:21登録)
 2つの短編+2つの中編で構成。ちなみに,どれもミステリではありません。
 今回の御手洗は,探偵役ではなく語り手役に徹しています。御手洗が過去に世界放浪の旅で出会った(聴いた)方々の人生を語るスタイル。
 特に「戻り橋と悲願花」が印象的ですね。個人的には作者の後記も沁みました。ミステリではなかったけれども,こういう読書もたまにはいいかな。


No.179 6点 死者が飲む水
島田荘司
(2011/06/12 19:17登録)
 札幌在住の両親の結婚記念日に合わせて,2人の娘が送付したトランク。中にはプレゼントが入っているはずだったが,開けてみたら父親のバラバラ遺体が。死因は「海に非常に近い川」での溺死。
 トランクの動きと被害者の動きを組み合わせることで,確かに魅力的な謎に仕上げています。でもなぁ…私は正直,解決までのプロセスが無駄っぽく感じましたね。特に「指紋」のくだりはちょっと疑問。トリックを見極める証拠の提示もフェアとは言い難いような・・・。
 うーん,牛越刑事への懐古的親近感でプラス1点。


No.178 8点 亜愛一郎の狼狽
泡坂妻夫
(2011/06/07 22:20登録)
 様々なトリックが堪能できる,本格短編のお手本となるべき作品。
 確かに,証拠に比して推理が飛躍しすぎている(特に,「DL2号機事件」には驚いた)面もありますが,純粋にトリックを楽しもうと割り切れば,かなり楽しめると思います。
 個人的には「ホロボの神」が印象に残ってますね。


No.177 6点 叫びと祈り
梓崎優
(2011/06/05 22:10登録)
 昨年度の各種ランキングで高評価続出の連作短編集。
 中でも,綾辻氏・有栖川氏が激賞した(らしい)「砂漠を走る船の道」は,噂に違わず高水準。ホワイダニットとして秀逸です。一読の価値はありますね。
 その他の短編はちょっと疑問。正直,読み進めたくなる感情があまり沸き起こってこなかったんですよねぇ。1作目で「目が慣れた」からなのか,単に私が日本人だからなのか?
 でも,今後期待できる作家であることは記憶に刻みました。次は長編を読んでみたいですね。

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