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ミステリの祭典

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猫柳十一弦の後悔
不可能犯罪定数

作家 北山猛邦
出版日2011年12月
平均点5.38点
書評数8人

No.8 6点 tider-tiger
(2016/09/24 17:43登録)
失敗作だと思う。そうはいっても、部分部分は悪くない。
1探偵学、孤島研修、不可能犯罪定数といった設定は面白いと思った。
2トリックや見立てはかなり面白い。
3「探偵は犯罪を未然に防ぐことを第一の目標とすべし」という猫柳の信念も面白いと思う。
ただ、これらを全部ぶちこんでしまったために全体のバランスが崩れてしまったように思う。
1と2を組み合わせてライトに仕上げる分にはまったく問題ない。
2と3を組み合わせるのも同じく問題なし(個人的には3のテーマを扱うならもう少し重い文章、重い雰囲気を希望)。
だがしかし、1と3は食い合わせが悪いように思った。1を残してこの設定にリアリティを持たせ、深める方向か、3の大きな命題に挑戦するかどちらかに絞った方が良かったのでは。猫柳が探偵学に新たな道を拓くという流れを目指したのかもしれないが。
また、3のせいで猫柳の推理が超人じみてしまったこと(そうしないと未然に防げない)、故にせっかく出来の良いトリック、見立てがいまいち活かし切れずもったいなかったのでは。
さらに動機が無茶苦茶という不幸がトドメとなってしまった。

けして、つまらなくはなかった。むしろ楽しく読んだ。完成度は低いが可能性を感じさせてくれる面白い作品だった。

No.7 6点 アイス・コーヒー
(2014/08/25 17:16登録)
大学の探偵助手学部の君橋と月々は、偶然にも知名度ゼロの猫柳ゼミに入れられてしまう。猫柳十一弦という大仰な名前のその探偵は、気弱な若い女性だった。彼らは名門雪ノ下ゼミとともに孤島研修に行くこととなるが…。

独特のキャラクター造形と、クローズドサークルの組み合わせでありながら、「城」シリーズとは違った雰囲気を持つ本作。「探偵助手学部」「孤島研修」といった舞台設定はさすがに強引だと思うが、トリックや内容はそれなりによく出来ている。
まず孤島研修開始まもなくに発生する第一の殺人から、過剰すぎるほどの死体装飾が行われている点が興味深い。見立ての真相やその理由なども今までにないもので確かに驚かされた。
また「犯罪を防止する」ことに焦点をあて、主人公である猫柳探偵の健気な奮闘と助手二人のサポートを描いていくあたりも本作の醍醐味の一つで、北山作品らしいキャラの魅力が引き立っている。
ただ、犯人の特定やその動機などはぎこちなく、素直に納得できない部分も多い。このあたりは中途半端な世界観の設定に問題があるように思える。(そういう意味では、元の設定がぶっ飛んでる「ダンガンロンパ霧切」の方が全体の調和が成り立っているといえるかもしれない。)
よく出来たところも、歪なところもあるが、今後も彼女を応援したいと思う。

No.6 6点 蟷螂の斧
(2014/03/10 13:06登録)
「アリス・ミラー」「アルファベット」は期待はずれでしたが、本作はライト風で楽しめました。クローズド・サークルものが好みなこともありますが・・・。孤島ものでは、探偵役が何もできないうちに、次々と殺人が起こってしまうものがほとんどですが、本作はそれを未然に防ごうとするところに新鮮さを感じました。探偵・猫柳十一弦のキャラクターも一風変わっており魅力的でした。「さっきのって・・・・・助手としての答えですか?」「そうですよ」「そうですか」こういう会話って結構好きなんです(笑)。

No.5 3点 mozart
(2012/10/24 15:42登録)
「アリスミラー城」と「ギロチン城」が面白かったので、期待して読み始めたのですが、正直、これは期待はずれでした。
何と言っても設定が強引過ぎ。動機が後出しであることはともかく、途中の犯人の意図に気づくことはおよそ不可能で、解答を示されても、カタルシスは全くなく、「ふ~ん・・・、で?」ぐらいのレスポンスしかしようがなかったりして。

No.4 5点 虫暮部
(2012/06/08 07:19登録)
良くも悪くも強引な話だな~と感じた。大学の探偵助手学部(!)の学生達という設定なのに、皆あまりそれに相応しい行動が取れていないように思う。

No.3 6点 まさむね
(2012/02/21 22:26登録)
 タイトル&表紙からは想定しにくいですが,内容としては真正面からの孤島モノ。
 犯人特定までの流れはなかなか楽しめました。読みやすかったですし,全体的には整った作品だと思います。探偵&助手のキャラ造成も悪くないので,続編があれば,私はきっと手にすることになるでしょう。
 しかし,ミッシング・リンクの設定(それ自体は,いかにもこの作者らしいのですが)を含めた「動機」については,かなり浮いた印象を受けましたねぇ。孤島モノにはありがちな傾向(あくまでも個人的な印象ですよ)とはいえ,やっぱり気になる。
 ちなみに,講談社HPの本書担当者コメントに「東川さんの次は北山さんダ!」って表記が。なるほど,ふむふむ。ここにもミッシング・リンクが施されていたか(笑)。ソノ線で想定すれば,次の次は「西村」先生ってことになりますか!

No.2 5点 kanamori
(2012/01/23 18:37登録)
タイトルをみて連作短編集かと思ってましたが、孤島ものの長編ミステリでした。
「そして誰も~」風の見立て連続殺人で使われたアリバイ・トリックはそれなりに面白かったのですが、殺人の動機がもう無茶苦茶で一気に萎えてしまった。なんで殺人を選択する。他に手段がいくらでもあるでしょうに。
”不可能犯罪定数”や、それに関連するミッシング・リンクの要素は「物理の北山」らしいものの、いまいちピンとこなかった。作者の短編は割と好きだが、長編はどうも合わない。

No.1 6点 メルカトル
(2011/12/26 22:52登録)
日本で唯一探偵助手を養成する大学の、名探偵の称号を持つ二人の教官と、そのゼミに所属する探偵助手見習い達が、孤島で演習を実施する。
そして台風接近のため孤立し、型どおり殺人が起こる。
勿論連続殺人に発展し、その死体には異様な装飾がなされるという、誠に正統派の孤島ミステリ。
猫柳十一弦という女探偵の造形はこれまでにない新味を出しており、シリーズ化も見越したキャラ作りは一応成功している。
一つ苦言を呈するとすれば、動機がいかにも弱いという事。
あっと驚くような展開はないが、真面目に書かれたミステリであるのは間違いないだろう。
ライトな感じで読みやすいのも好感が持てる。

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