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ミステリの祭典

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プリズム

作家 貫井徳郎
出版日1999年10月
平均点6.15点
書評数27人

No.27 7点 zuso
(2023/12/30 22:28登録)
学校の女性教師が変死した事件について、四つの章を通じて、教え子や同僚など四つの視点から真相を探していく。
その過程で彼女をはじめとする登場人物の表面と内面の差異が明らかになっていく様が興味深いし、四者四様の推理も愉しめる。その四つの推理が重なった果てに提示される結末が独特で、しかも相当に衝撃的。

No.26 4点 sophia
(2023/09/18 23:35登録)
ネタバレあり

これは難解な作品ですが、要は各章の視点人物の間で疑惑の連環を作りたかっただけの作品ですよね。最後に疑惑を向けられる第一章の男子児童がシロなのは明白ですし。その構造を面白がれるかどうかが評価のポイントなのでしょうが、自分はいまいちでした。それをやりたいがために終盤で急に話が変わるのがどうにも不自然でしたし。やはりリドルストーリーは基本的に合わないようです。

No.25 6点 パメル
(2021/04/22 08:44登録)
太陽の光を三角柱のプリズムに当てると虹のような光の帯が現れる。そんな実験を小学校の理科の授業で見た覚えがある。プリズムとは光を分散、屈折させるための光学素子である。この作品は幾重にも繰り返される仮説の構築と崩壊。一筋の推理の光が屈折、分散し到達する実験的本格ミステリ。
小学校教師が変死体となって発見された事件をめぐって、教え子の四人が章ごとの語り手として登場し、それぞれに真相を探ろうとする。一歩間違えば本格ミステリの基盤も揺るがしかねない要素を積極的に取り入れた多重解決形式を採用している。
この作品の特徴は、前の語り手が構築した推理が、その次の語り手によってリレー式に覆されていくという点にある。四人の語り手は、それぞれの動機から真相を知ろうとするが、それらの動機は語り手自身が自分を納得させるためという点では共通している。従って語り手たちは、せいぜい自分の探偵能力で知り得る範囲の手掛かりから組み立てた推理で満足し、それ以外の可能性が存在するなどとは考えもしない様子。
さまざまな方向へ展開される仮説は魅力的で、それなりの説得力を持っているが、いずれも決め手を欠いている。結局、真相は登場人物それぞれが真相を知ったつもりで納得しているだけ。知り得るのは、語り手たちの視点を重ね合わせることが出来る読者のみ。これが作者の狙いなのだろう。

No.24 7点 りゅうぐうのつかい
(2016/07/02 15:18登録)
小学校の女性教師の死を巡って、その教え子、同僚の女性教師、元恋人、教え子の父親の4人の視点で繰り広げられる調査と多重推理、疑惑の数珠つなぎ。
各人の推理の課程をたどっていくのが楽しい作品だ。
その構成の妙と、それを可能にした被害者を取り巻く人間関係構築の妙が目を引く。
周囲の男性を手玉に取り、同僚女性教師には負い目を感じさせる、悪魔のような無邪気さを持つ被害者の性格設定が光っている。

No.23 7点 斎藤警部
(2015/08/28 14:06登録)
多重解決スピリットをサスペンス流儀で塑形、ミステリ心を唆る視点バトンタッチ四部構成!
バークリーの「毒チョコ」に湊かなえ「告白」を斜め交差させたような感覚!

ところで、いかにも事件解決の鍵を握ってそうな「美男刑事」が宙ぶらりんの存在で終わっちゃうのはどういうわけ? 後の作品で再登場するの? まさか犯人?? 彼の視点で解決まで辿り着く第五章が欲しいという意見を何処かで見かけましたが、私も賛成かな。 重要な解決のポイントは殺人犯特定の他にもいくつかあるわけで、それらがみんなオープンのまま終わっちゃうとやっぱりちょっと不満。

しかし、サスペンスと多重解決の融合に成功した新本格、という立ち位置は立派だ。

No.22 7点 あびびび
(2014/05/12 16:49登録)
グイグイ引き込まれて、ページをめくる手が止まらなかったが、やっぱり真相は多面体だったのか~と苦笑した。

でもバークリーの毒チョコよりはこちらの方が好きだ。単に登場人物の心理状態が分かりやすかった、というのはあるが…。

No.21 7点 こう
(2012/10/21 00:40登録)
多重解決でバークリーの毒入りチョコレート事件を本歌取りした作品ですが非常に気に入りました。
 各章の探偵役が結局自分の手持ちの不十分な情報から犯人を推理していますがその時点では次章で簡単に覆るにしろ一応説得力があるように見える結論としてまとめていますし、犯人役(というか容疑者役)が見事に循環しているのもよく構成が考えられているなあと思います。
 いわゆる解決編がないのは気になりますがこの構成を見せてもらっただけで大満足、個人的にはチョコレートをわざわざ使用しているのも嬉しかったです。

No.20 6点 まさむね
(2012/02/13 20:39登録)
 自己矛盾する2つの印象を受けました。
 まず,第1点。前章で犯人(と目された)人物が次章の語り手となり,新情報も加えて独自の推論を組み立てるスタイルは,やはり面白い。最終的には循環させつつ,読者に委ねる構成もニクイ。人それぞれ,無限の楽しみ方があると思いますね。
 その一方,純粋に「正答が知りたい!」と感じてしまったのも事実。作者の狙いは十分に認識しつつも,やはり,どうしても…ねぇ。これが2点目の印象。何ともワガママな読者ですみませんねぇ。
 ちなみに,タイトルは「被害者」・「容疑者」・「関係者」の多面性を端的に表していて,秀逸です。

No.19 5点 蟷螂の斧
(2011/10/30 20:37登録)
フーダニットとしての試みとしては面白いとは思いますが、チョコレートを贈った人物の視点からの記述がないので、これでは単なる事故で終わってしまいます。仮説の中に真実がなければ、読者も推理できません。事故ならフーダニットになりませんし・・・。

No.18 7点 E-BANKER
(2011/09/06 22:42登録)
いわゆる「多重解決型」を狙ったミステリー。
1つの殺人事件を連作形式で綴るのが特徴的な作品。
~小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。ガラス切りを使って外された窓のロック、睡眠薬が混入されたチョコレート・・・平凡だったはずの女性教師の殴殺事件は予測不能の展開を見せる~

①「虚飾の仮面」=第1話は教え子の小学生たちの推理。その結果は、意外な犯人へ辿りつく。
②「仮面の裏側」=第2話の探偵役は①で犯人と目された人物。天真爛漫で誰からも愛された人物と思われた被害者に、実は意外な面があることが判明。
そして、①とは違う人物を真犯人とする結果に・・・
③「裏側の感情」=今度は②で犯人と目された人物が探偵役に。またしても、被害者の違う一面が分かり、そして意外な人物が被害者と関わっていたことが分かる。最終的には違う人物を真犯人として指摘する。
④「感情の虚飾」=③で真犯人と考えられた人物が主役。最後に辿りついた結論はかなり意外なものに。

「多重解決」といえば、当然「毒チョコ」が有名ですし、本作の「作者あとがき」でも「毒チョコ」を意識している旨が書かれてます。
まぁ、好みは分かれるかもしれませんが、個人的には面白いと思いますね。
本サイトの「毒チョコ」の書評でも書きましたが、ミステリー作品の真相なんて、作者の匙加減1つですから、こういった実験精神溢れる作品があっても何ら構わないと思いますね。
「プリズム」というタイトルには、「多重解決」という以外にも、被害者の人物像そのものが見る人(生徒や友人、恋人など)によって多面的に変わって見えるという意味も含んでいるのが印象的。
「連作形式」というプロットも嵌っていると思います。
トータルでは、一気読みできる佳作という評価。

No.17 8点 3880403
(2011/04/05 23:34登録)
面白い。
自分は麻耶雄嵩あたりの作品も好きなので、
個人的には上位に入る。

No.16 6点 solo1e
(2010/05/18 13:24登録)
複数の主要人物それぞれの視点で、被害者を語る手法により、被害者の
多面性が浮き彫りになるという作品。
他の方のレビューにもあるが、ラストに関しては好みが分かれるかも?
(私は楽しめましたし、一定以上の評価をしていますけど。)

ただ私としては、似たような手法であれば、同氏の「愚行録」の方が好きかな。

No.15 3点 spam-musubi
(2010/05/16 09:00登録)
全体の構成はとても面白く、ぐいぐいと引き込まれながら読んだ。
が、この宙ぶらりんなラストはどうにも受け付けられない。

No.14 4点 STAR
(2010/02/18 11:13登録)
(ネタバレあり!)
物事にはいろいろな見方があるということなんでしょうけれど、最後真相がわからないままなので、「結局どうだったんだ?」と思ってしまう作品。案外単純な事件だったのかもしれない。
好き・嫌いが分かれる作品だと思います。

No.13 7点 vivi
(2008/02/20 01:18登録)
いくつかの章立てで事件の別の面を見せていくという構成が秀逸。
どうなるの?という興味で読者を引きずっていきますね。
結局、最初の章へと戻ってしまうのだけど、
そのリングの中に犯人はいなかったわけで。
じゃあ、リングの中心にあるものは何?
案外、単純な事件だったのかも、と思いました。

No.12 5点 深夜
(2008/01/23 21:04登録)
あとがきによると、推論構築を主とした数少ないパターンのミステリだそうだ。そういう意味では、この作品を書こうとした貫井さんのアイデアと筆力に感心するばかりである。

しかし、個人的に、章が変わる度に新しい情報が増えていくため、自分自身で新しい真相を考えるのが面倒になったというのが正直なところ。そういうわけで、この作品を楽しむことができなかった。

No.11 3点 こもと
(2007/10/16 22:32登録)
 人間とは、多面体だ。 一人の語り手から見た被害者の印象は、あくまで一面に過ぎない。 幾人もの印象を重ね合わせて、浮かび上がってくる人物像は、確かにプリズムだ。
 作品の構成としては、かなり面白く、私の好きな部類だと言える。 凝っている・・・と思う。 だからこそ、その後の展開を見極めたくて、ページを繰って先を急いだのだ。 なのに、この結末はどうだろう? たぶん、この結末を好む人も、いるはずだとは思う。 賛否両論(これも、プリズム?)というところだろうが、私としては正直、肩透かしを食った・・・そんな気分。

No.10 2点 いけお
(2007/10/10 11:47登録)
で結局なんだったの?
明確に提示されなくても自分の解釈で考える余地があればいいけど、これはできない。

No.9 8点 ぷねうま
(2007/09/26 06:42登録)
個人的には『慟哭』より好き。
各登場人物の事件に対する思考過程や論理の組み立て方は面白い。タイトルも秀逸。
真犯人を探すのは無粋だという指摘もあろうが、真相を探ろうと頑張っているサイトを見てなんかこういうのいいなって思った。

No.8 8点 アデランコ
(2007/08/10 20:29登録)
答えがわからないところがいい部分。

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