聴き屋の芸術学部祭 聴き屋シリーズ |
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作家 | 市井豊 |
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出版日 | 2012年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | メルカトル | |
(2020/09/15 22:36登録) 生まれついての聴き屋体質の大学生、柏木君が遭遇する四つの難事件。芸術学部祭の最中に作動したスプリンクラーと黒焦げ死体の謎を軽快に描いた表題作、結末のない戯曲の謎の解明を演劇部の主演女優から柏木君が強要される「からくりツィスカの余命」などを収録する。文芸サークル第三部“ザ・フール”の愉快な面々が謎を解き明かす快作、ユーモア・ミステリ界に注目の新鋭登場。 『BOOK』データベースより。 もっとユーモア色の強い作品かと思っていましたが、殊の他ロジカルな本格物でした。特に最初の表題作が出色の出来で、他も期待しましたがこれを超えるような作品は見られずその意味では残念でした。それでも派手なトリックや殺人事件よりも論理優先型の読者には持って来いの作品集だと思います。 どれも緻密なロジックで、流石に創元社推理文庫と感じました。ミステリマニアで変人の川瀬が探偵役と思いきや、実は真の探偵は柏木君だったという趣向も楽しませてもらいました。 世間的にはあまり注目されていないようですが、この作者はやれば出来る人だと思いますので、今後の活躍に期待したですね。 |
No.3 | 7点 | 青い車 | |
(2019/07/31 06:35登録) 大学生柏木くんが遭遇する4つの事件(殺人もあれば日常的なものもあり)を収録したシリーズ第1短編集。心地よいユーモアと謎解きが共存している良作です。好みなのは『濡れ衣トワイライト』で、キャラクターの楽しさときっちりした論理展開のキレがよく出た好例と感じました。『からくりツィスカの余命』もお馴染みのトリックの扱いが上手で、それを作品世界に無理なく取り込んでいます。 |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2012/02/29 22:47登録) ”聴き屋”体質の大学生「ぼく」が謎解く4つのミステリ。 殺人事件のフーダニット、日常の謎、安楽椅子探偵っぽいものと、それぞれ趣向を変えたミステリが収録されています。コミカルなエピソードに紛れ込ませる形で伏線を巧妙に張ったうえのロジカルな解法が基本になっていて、それが作者の持ち味のようです。第2話の「からくりツィスカの余命」だけは、ロジックよりトリックがキモになっていて、逆に個人的には編中で一番よかったのですが。 芸術学部の個性豊かな学生が多く登場するのだけれど、なかでも極度のネガティブ思考の持ち主である”先輩”が面白い。彼女のキャラで+1点加点しました(笑)。 |
No.1 | 5点 | まさむね | |
(2012/02/24 22:30登録) 作者との出会いは,創元推理文庫のアンソロジー「放課後探偵団」において。その中の収録作品が軽快かつロジカルで好印象だったため,単独デビュー作品たる本書を手にとった次第です。 で,本書ですが,聴き屋体質の大学生「柏木クン」が探偵役を務める4短編が収録されています。短編ごとに趣向が異なっていて,作者本人があとがきで語るとおり,バラエティ豊かとも言えるし,統一感がちょっと…との印象も受けます。個人的ベストは「からくりツィスカの余命」という短編でしたね。 総合的に軽快かつロジカルという印象に変化はなかったですが,「動機が…」(表題作)とか、「この短編って聴き屋体質と関係ある?」などなど,ちょっと引っ掛かる点があったのも事実。 とはいえ,ポジティブ過ぎる思考回路の学生たち,逆にネガティブ過ぎる「先輩」のキャラ設定はなかなか面白かったですね。シリーズ続編も予定されているとのことなので,期待します。 |