まさむねさんの登録情報 | |
---|---|
平均点:5.88点 | 書評数:1269件 |
No.289 | 5点 | 遠まわりする雛 米澤穂信 |
(2012/05/26 17:00登録) 古典部シリーズの短編集。今回もホータロー君がご活躍です。 個々の短編の内容というよりも,高校1年生の1年間について,短編を時系列順に配置することで4人の「変化」を描こうとした試みを評価します。ラストも綺麗ですね。 |
No.288 | 5点 | 玉村警部補の災難 海堂尊 |
(2012/05/26 16:11登録) 「このミス!」に掲載された4作品を集めた短編集。 監察医制度,Ai(死体画像診断),DNA鑑定,歯の治療痕照合…と,いかにもこの作者らしいテーマが揃っています。 一方,ミステリ的なレベルはまちまちで,個人的な判断基準でミステリと言ってよいのは「青空迷宮」くらいかも。「四兆七千億分の一の憂鬱」もギリギリセーフかなぁ…って感じでしょうか。その点は大きな期待をせずに,医療エンタメとしてお楽しみいただくのが無難かもしれませんね。 |
No.287 | 6点 | 消失グラデーション 長沢樹 |
(2012/05/26 15:58登録) 横溝正史ミステリ大賞受賞作。昨年度の各種ミステリランキングでも,なかなかの高評価でしたね。 この作品の「肝」は何点かあると思うのですが,そのうちの1点は,結構序盤からプンプンとした臭いが。とは言え,完全に見切ることはできず,大胆かつ巧妙な仕掛けには感心いたしました。 ちなみに,読後に検証してみたのですが,どうしても腑に落ちない「表現」がございますねぇ。そこがちょっと不満です。 |
No.286 | 6点 | ミミズクとオリーブ 芦原すなお |
(2012/04/30 22:21登録) ミステリとしては相当に弱いです。 でも,楽しい。ひょうひょうとした主人公のキャラは勿論,奥さん,同級生刑事との軽妙な会話も良いですねぇ。とても羨ましくなる雰囲気。何というか,いいなぁ。 これでミステリ度が上がれば申し分ないのですが…。続編もそのうち読んでみます。 |
No.285 | 6点 | 中途半端な密室 東川篤哉 |
(2012/04/14 15:10登録) プロデビュー前の作品を中心とした短編集。ユーモアや文章は,完成途上(?)との印象も受けましたが,内容自体はまずまず楽しめました。 良かったのは,表題作と「南の島の殺人」。前者はロジカルな展開が楽しく,後者は巧妙な仕掛けが楽しい。 「十年の密室・十分の消失」は,興味深い設定ではありますが,「そこまでやるか」感も。ラストの人物像の反転は結構好み。 |
No.284 | 5点 | 境遇 湊かなえ |
(2012/04/01 22:29登録) ヒトコトで評すれば,「薄いコーヒー」。 湊サンお得意の複数視点。スラスラと読めるし,まぁ,飲める(読める)のではないでしょうか。 いや,コーヒーは好きなんですよ。でも,薄いなぁ。濃くしようとしているのが,むしろ薄さを助長しているような気も…。 って思いながら読み終えて知ったのですが,これってドラマありきの作品なのね?そうだったかぁ。なら,已む無し。 |
No.283 | 5点 | まどろみ消去 森博嗣 |
(2012/04/01 21:58登録) 短編集です。おそらくは,作者の実験場なのでしょう。そう!実験! 実験としては,「やさしい恋人へ僕から」と「悩める刑事」に一応の意義があったのでは。(あくまでも,実験の意図が分からない作品よりは良いという趣旨ですよ。念のため。) いや,実験ってのは,「失敗」をどう活かすかが重要なのでしょうなぁ。さすがは理系作家。勉強になりました。 |
No.282 | 5点 | 彼女はもういない 西澤保彦 |
(2012/03/25 22:53登録) 「R‐18ミステリ」と言うだけあって,グロテスクな犯罪シーンもあり,苦痛に感じる方も相当いらっしゃると思います。ご注意ください。 その点を別にすれば,一気に読ませるプロットで,思ったほどの嫌悪感は無かったです。あれ?いつもとはちょっと作風が違うのか?と思わせておきつつ,最終的には「やっぱり西澤サンだったよ!」って感じ(敢えて多くは語りませんが)。読後に振り返ってみると,タイトルと表紙にも味わいがあります。 惜しいのは,主人公の狂気発露の理由(同窓会名簿のヤツ)が常人にはピンと来ないこと,さらに城田理会警視の存在が中途半端なこと。 ちなみに,西澤さんは,同窓会名簿が好きですなぁ。きっと,短編集「必然と~」と同時期に構想したのしょうねぇ。 |
No.281 | 5点 | ちょっと探偵してみませんか 岡嶋二人 |
(2012/03/21 21:22登録) 25個の推理クイズ集。ショートショートとして結構いい味を醸し出している作品から,なんだこりゃって作品まで,レベルは幅広いです。 全体的に難易度は低めですが,その辺の推理クイズ本と比べると,さすがというか,筆力の違いは明確。スキマ読書として丁度よかったです。 |
No.280 | 5点 | 必然という名の偶然 西澤保彦 |
(2012/03/18 19:01登録) 「櫃洗市」で起きる6つの事件を描いた連作短編。サクサク読めます。 大富豪探偵ヒロっち&オヤカタ&ケージの同級生トリオは,キャラも立っていて,今後も使い出がありそう。だから最終話の書き下ろしで再登場させたのでしょうが,コレはちょっと不発でしたか…。 他の単独作品も含めて,読み手によって評価が分かれるかもしれません。ちょっと強引過ぎると感じる方もいるかも。 |
No.279 | 4点 | 人面屋敷の惨劇 石持浅海 |
(2012/03/15 23:22登録) 「非日常的な空間又は条件におけるロジカルな心理戦」がこの作者の持ち味なのでしょうが,登場人物の行動倫理には共感しがたい点ばかり。そんな登場人物たちが語るロジックなんぞは片腹痛い,というか苦痛。 以上が,これまで蓄積してきた,作者に対する個人的な印象。本作を読み,その印象はさらに強いものとなりましたね。特にこの作品は,作者の意図がよくわからず(仮に予測どおりだとしても,成功しているとは言いがたい),ことさら空疎感を抱きました…。 |
No.278 | 4点 | 封印再度 森博嗣 |
(2012/03/11 20:02登録) 正直,微妙です。 「良かった」と言えるのは,壺・鍵・箱・凶器の謎,そしてタイトルくらい。強引過ぎる箇所が複数あるし,内容に比して無駄に長すぎます。 ちなみに,萌絵嬢ってこんなキャラだった?急激にイヤな感じに成長しちゃいましたねぇ。犀川センセの魅力まで吸い取る魔力。要するに,二人とも「おこちゃま」ってことで1点減点ですな。萌絵嬢は、この作品では不要というかもの凄く邪魔。 |
No.277 | 6点 | 贖罪の奏鳴曲 中山七里 |
(2012/03/08 22:47登録) 「どんでん返し」については,ミステリー的にそれほどでもないかなぁ…っていう印象(嫌いではないケド)。 しかし,小説全体を見通せば,オセロ的な白黒逆転自体に意味を含ませているのであろうし,ミステリーの「折込み具合」に難があるとも感じなかったので,私としてはこの位で丁度良いのだろうと感じました。 ちなみに,リーダビリティは高く,少年院での出来事や法廷シーンも(最高裁法廷であんな事があり得るのかは別として),なかなか面白いです。ちょっと未消化の伏線がないわけでもないですが…。 |
No.276 | 6点 | さよならドビュッシー 中山七里 |
(2012/03/03 11:13登録) 音楽青春小説としては,純粋に楽しめましたね。特に,ピアノ演奏シーンの描写力は素晴らしい。音楽的素養の全く無い私ですら,クラシックをじっくりと聴きたくなったほど。 一方,ミステリーとしては正直「分かりやすい」ですし,それほど評価することはできません。ミステリー要素だけで見れば,『このミス』大賞で同時に最終候補に残った「連続殺人鬼カエル男」(応募時は別タイトル)の方に軍配が上がる気がします。(勿論,同一作家の複数作品が最終候補に残ること自体が凄いコトですけれども。) しかし,「どちらの作品の方が惹きこまれるか」という観点で言えば,私はこちらの作品に1票。実際の受賞作も本作(まぁ,『このミス』大賞のコンセプトからすれば,妥当なのでしょうが)。 よくよく考えてみれば,「オチは分かっているけれども,ページをめくる手が止まらなかった」という事実は,私にとって珍しいコト。筆力は高いと思います。 |
No.275 | 7点 | 放浪探偵と七つの殺人 歌野晶午 |
(2012/02/27 22:23登録) 読者挑戦形式の本格短編7連発。そして解答編は袋とじ(ノベルス版の場合)。読者挑戦モノ好きの私としては,この構成自体で「プラス1点」って感じです。 で,中味も良かった。凡作と言えるのは1話のみ。個人的なベストは,傑作と評価したい「有罪としての不在」。(問題編のみで完璧な「正答」に辿り着ける方は皆無のような気もするが…)次点が「水難の夜」でしょうか。総合的にレベルが高い短編集だと思います。 えっ?「結局,お前は何問解けたのだ」ですって?痛いところを突きますねぇ。すみません,1問だけでした。しかも,その1問は前述で「凡作」と評した,分かり易すぎるもの。でも,「分からなかったからこそ,楽しめた」って側面もあるわけですしね!(開き直り) |
No.274 | 5点 | 聴き屋の芸術学部祭 市井豊 |
(2012/02/24 22:30登録) 作者との出会いは,創元推理文庫のアンソロジー「放課後探偵団」において。その中の収録作品が軽快かつロジカルで好印象だったため,単独デビュー作品たる本書を手にとった次第です。 で,本書ですが,聴き屋体質の大学生「柏木クン」が探偵役を務める4短編が収録されています。短編ごとに趣向が異なっていて,作者本人があとがきで語るとおり,バラエティ豊かとも言えるし,統一感がちょっと…との印象も受けます。個人的ベストは「からくりツィスカの余命」という短編でしたね。 総合的に軽快かつロジカルという印象に変化はなかったですが,「動機が…」(表題作)とか、「この短編って聴き屋体質と関係ある?」などなど,ちょっと引っ掛かる点があったのも事実。 とはいえ,ポジティブ過ぎる思考回路の学生たち,逆にネガティブ過ぎる「先輩」のキャラ設定はなかなか面白かったですね。シリーズ続編も予定されているとのことなので,期待します。 |
No.273 | 6点 | 猫柳十一弦の後悔 北山猛邦 |
(2012/02/21 22:26登録) タイトル&表紙からは想定しにくいですが,内容としては真正面からの孤島モノ。 犯人特定までの流れはなかなか楽しめました。読みやすかったですし,全体的には整った作品だと思います。探偵&助手のキャラ造成も悪くないので,続編があれば,私はきっと手にすることになるでしょう。 しかし,ミッシング・リンクの設定(それ自体は,いかにもこの作者らしいのですが)を含めた「動機」については,かなり浮いた印象を受けましたねぇ。孤島モノにはありがちな傾向(あくまでも個人的な印象ですよ)とはいえ,やっぱり気になる。 ちなみに,講談社HPの本書担当者コメントに「東川さんの次は北山さんダ!」って表記が。なるほど,ふむふむ。ここにもミッシング・リンクが施されていたか(笑)。ソノ線で想定すれば,次の次は「西村」先生ってことになりますか! |
No.272 | 3点 | 東尋坊マジック 二階堂黎人 |
(2012/02/19 11:11登録) 結構がっかりな作品。 水乃サトルが遭遇した東尋坊での銃殺事件と,日本各地で20年にわたって発生している猟奇的殺人事件いう,大きく2つの事件を解き明かそうってことなのですね。まぁ,ご都合主義感満載で,解決はするんだけどさ…。 前者の事件は,一定の謎がある分だけ,まぁ,ごちゃごちゃ言いますまい。(勿論,言いたいことは山ほどあるのですよ。敢えて言わないだけで。) ひどいのは後者の事件。なんだこりゃあ。長々と無駄に読まされた…って印象しか受けませんでした。つまらなかったです。作者は読者に何を与えたかったのでしょうか。 正直,唯一良かった(驚いた)のはエピローグの最後の一行のみ。と言っても,叙述系の「驚き」ではありませんし,事件とも無関係。このシリーズの読者として「へぇー」くらいのものですが。 |
No.271 | 5点 | 素人がいっぱい 新野剛志 |
(2012/02/15 23:50登録) 渋谷のデリヘル「ラブホリック」を舞台に,その従業員やお客様等を巡る謎を解き明かしていくという,まぁ安楽椅子モノに分類されるであろう連作短編。本格度は低め。探偵役は,店長の同級生,というか居候。 舞台が舞台だけに色モノで攻めてくるかと思いきや,そうでもなかったりして,この舞台を用意した意義があまり見出せませんでした(皆無とは言わないけど)。探偵役の設定もちょっと上滑りしている印象を受けましたね。 とはいえ,サクサク読み進められたし,嫌いな雰囲気でもなかったので,この点数に。 |
No.270 | 6点 | プリズム 貫井徳郎 |
(2012/02/13 20:39登録) 自己矛盾する2つの印象を受けました。 まず,第1点。前章で犯人(と目された)人物が次章の語り手となり,新情報も加えて独自の推論を組み立てるスタイルは,やはり面白い。最終的には循環させつつ,読者に委ねる構成もニクイ。人それぞれ,無限の楽しみ方があると思いますね。 その一方,純粋に「正答が知りたい!」と感じてしまったのも事実。作者の狙いは十分に認識しつつも,やはり,どうしても…ねぇ。これが2点目の印象。何ともワガママな読者ですみませんねぇ。 ちなみに,タイトルは「被害者」・「容疑者」・「関係者」の多面性を端的に表していて,秀逸です。 |