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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1196件

プロフィール| 書評

No.216 7点
麻耶雄嵩
(2011/10/07 20:59登録)
(未読の方は注意)
 「登場人物の驚きに驚かされる」手法が斬新。考え方によっては叙述とは言えないような気もしますが,「知らなかった」ことを誤認させているのだから,やっぱり叙述モノか。いやはや,完全にしてやられました。
 一方,「視点」に関しては,序盤から匂いがプンプン漂っていて身構えざるを得ませんでしたので,十分に想定可能でしたね。こちらに意識を集中させておいて,前述の叙述を炸裂・・・って意図なのだとすれば,もう完全に脱帽。
 もう少し高得点でもいいのですが,極めて精密な面がある一方で,ほったらかしにされてる点がいくつかあるなぁ・・・という印象も受けましたので,少しだけ減点を。


No.215 6点 妃は船を沈める
有栖川有栖
(2011/10/03 21:15登録)
 作者の意図はどうであれ,構成としては「中編2本を幕間でつないだ作品」という評価を超えることは難しいでしょうね。
 中編自体は,どちらもロジカルでなかなかの出来栄えです。ミステリアス(?)なヒール役が相当に貢献していますね。(取り巻きの青年達の精神構造は理解不能でしたけど。)1作目における「猿の手」の解釈も面白い。
 個人的には,これまでに読んだ国名シリーズ短編集(ロシア紅茶・ブラジル蝶・英国庭園)よりも楽しめましたよ。


No.214 6点 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
奥泉光
(2011/09/30 22:27登録)
 三流大学「たらちね国際大学」に赴任したクワコーこと桑潟幸一准教授と,彼が顧問を務める文芸部の部員が織り成す,ユーモア・ミステリー。
 「ミステリー」の部分,つまり謎のレベルや解明過程は,正直弱いです。よって,このサイトでの個人的採点はこの辺りが限度。
 一方で,「ユーモア」の部分は相当に良でした。クワコー・文芸部員のキャラ演出が素晴らしく,特にクワコーの自虐ネタは抜群。笑かされながら,何気に自分を振り返ったりしちゃいました。
 是非ともシリーズ化してほしいですね。その際は,ミステリー部分の強化も期待しましょう。


No.213 6点 夜は千の鈴を鳴らす
島田荘司
(2011/09/27 23:42登録)
 2つの事件のうち片方のメイントリックについては,高木彬光氏の某作品を読まれた方にとってあまりにも容易…というか,バレバレですね。もう一方のトリック(まぁトリックとすら言えない気もしますが)も,都合が良すぎて,肩透かし感満点でした。
 しかし,犯人と被害者のそれぞれの人生について,少なからず感じ入る面があったのも事実。これは一種のノワール・ミステリーなのだ,と割り切って読むってのはどうでしょう?
 なお,事件解明の過程で何気に挟み込まれている叙述系ミスリードについては,見事にヤラレましたし,個人的に大好物です。


No.212 5点 英国庭園の謎
有栖川有栖
(2011/09/24 19:15登録)
 暗号モノにそれほど興味を持てないワタクシとしては,正直,盛り上がりに欠けた短編集っていう印象でしたね。(決して暗号モノに特化した短編集ではないのですけどね。)
 印象に残ったのは,「完璧な遺書」くらいでしょうか。まぁ,その理由は「珍しく倒叙形式だったから」なのですけどね…。


No.211 4点 ひぐらしふる
彩坂美月
(2011/09/20 22:27登録)
 うーん。作者がやろうとした「狙い」は否定しませんが・・・。一歩間違うと,途中で読み飽きられる(読者視点でいえば,読む気が失せる)危険性がありますね。しかも,中途半端な印象だけを残したうえで・・・。作者の真意からすれば,かなりリスキーな手法ではあります。もったいないような気もします。
 内容(雰囲気を含む。)については,正直,好き嫌いが分かれるところでしょうねぇ。私にとっては,ちょっと入り込みにくく,ストーリー運びにも相当の違和感を覚えました。ミステリとしても,やや微妙な評価です。


No.210 4点 あの頃の誰か
東野圭吾
(2011/09/17 11:50登録)
 うーん。作者が語るとおりの「わけあり物件」揃い。東野さんだけに,何とも言えない残念感が残りました…。
 純粋に良かったのは「再生魔術の女」のみ。他の作品はちょっとなぁ…何がしたかったのか,よく分からない作品もありますしねぇ…。
 ちなみに,収録作品のうち「さよなら『お父さん』」は,「秘密」を読了してから読むべきでしょうね。まぁ「秘密」の読了後ならば無理して読む必要が無いという考えもありますが。


No.209 6点 鋏の記憶
今邑彩
(2011/09/14 22:16登録)
 連作短編です。
 サイコメトリーを持つ女子高生が主人公であり,個人的には敬遠しがちな設定ではあるのですが,内容としては,ミステリとして結構しっかりしていました。謎の提示や反転の手法としてサイコメトリーを活用しているって感じでしょうか。安易という見方もあるでしょうが,短編としてサクッとまとめるには便利な手法であることも確かで,途中からは敬遠心も薄れましたね。読みやすいですし,なかなか楽しめましたよ。


No.208 7点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2011/09/12 19:22登録)
 皆様の書評のとおり,横溝・三津田氏を思い起こさせる舞台設定。雰囲気は十分です。
 しかし,第一部では何ともいえないモヤモヤ感を抱いたのも事実。全体で見ればなるほどねぇ・・・といったところでしょうか。いかにも,作者らしい作品ですね。


No.207 8点 卍の殺人
今邑彩
(2011/09/10 22:11登録)
 個人的には,なかなかの収穫。本格モノとして,もっと広く読まれていてもいいような気がしますね。
 一方で,トリック自体に目新しく点はなく,犯人当てについても,読みなれている方にとっては比較的容易かもしれません。「綺麗に纏まっているけれど,ありがちな作品」と言われれば,うーん,否定はできないかも。
 しかし,自分なりの推理が展開できた作品であったこと,さらに建物のみならず,人物関係もシンメトリーとした設定に引き込まれましたので,加点しちゃいました。(甘すぎるかなぁ・・・?)


No.206 5点
今邑彩
(2011/09/07 22:10登録)
 ホラー風味の短編集。
 途中で察しのつく作品も多く,もう一捻りほしいかな…っていう印象も受けましたが,まぁ非常に読みやすいし,まずまずではないでしょうか。(同じ短編集だったら「つきまとわれて」の方が好みですけども。)
 個人的には,最も拍子抜けしつつ,一方で読後に最も考えさせられた表題作「鬼」が印象に残ったかな。それと「セイレーン」でしょうか。


No.205 7点 真夏の方程式
東野圭吾
(2011/09/06 20:52登録)
 「容疑者X~」と比較してしまうのは,内容的にも止むを得ないところでしょう。そして,プロットの精巧さにおいて,「容疑者X~」に軍配が上がってしまうのも止むを得ないところだと思います。
 とはいえ,評価したい点も多くありました。何といっても,恭平少年の存在が大きい。また,科学と経済と環境との関係も,まさにこの時期を的確に反映していて意義深いと考えます。作品ごとに確実に人間味が増している湯川氏も見所の一つでしょう。
 あくまでも個人的評価ですが,探偵役の好き嫌いで言えば,加賀>湯川。しかし,同時期の作品で評価すれば「真夏の方程式」>「麒麟の翼」ですね。


No.204 6点 学ばない探偵たちの学園
東川篤哉
(2011/09/03 20:49登録)
 2つの密室殺人。きっちり本格してます。
 個人的に好きなのは2つ目の密室。いかにもこの作者らしい。伏線もニクイ。1つ目の密室は…まぁいいか。
 なお,作者のギャグについて,私は大いに支持してます!


No.203 7点 ジークフリートの剣
深水黎一郎
(2011/09/02 22:14登録)
 まずは,作者の豊富な知識,教養に驚かさました。この点だけでも,読む価値があるかもしれません。
 物語としては,序盤から中盤まで比較的淡々と進みます。そして終盤に犯罪が発覚して急発進。個人的には,急発進以降の「展開」が短すぎるかなぁ・・・という印象もありますが,一方で,それがラストに活きているような気もします。ラストは文句なしに秀逸!


No.202 7点 アルバトロスは羽ばたかない
七河迦南
(2011/08/27 22:50登録)
 児童養護施設「七海学園」の子どもたちが通う高校の文化祭当日に,校舎屋上からの転落事件が発生。単なる事故だったのか,その謎を追う「冬の章」が作品のメインなのですが,その合間合間に,春から晩秋までにかけて起こった,学園の子どもと春菜保育士を取り巻く4つの事件が挟み込まれている構成です。4つの事件の中に「冬の章」の手掛かりというか,伏線が用意されている訳ですね。
 4つの事件(短編)自体もなかなかの出来栄えなのですが,やはり何といっても,作品の「全体構成」を評価したいですね。終盤の反転は,全体構成の賜物。綺麗で巧妙です。


No.201 5点 鍵のかかった部屋
貴志祐介
(2011/08/22 23:00登録)
 密室ハウダニットに特化した中短編4本!作者も好きですよね~密室が。
 個人的には,表題にもなっている「鍵のかかった部屋」がベストかな。微妙な作品もありましたが,そこはご愛嬌ってところでしょうか。密室好きの方はどうぞ。そうでない方は,途中でつらくなるかも。
 ちなみに,防犯探偵シリーズ…らしいです。というのも,恥ずかしながら防犯探偵・榎本も弁護士・純子さんも,ワタクシにとっては初対面。特に問題なく読めましたけど。


No.200 6点 麒麟の翼
東野圭吾
(2011/08/22 22:53登録)
 「赤い指」あたりから続く,加賀恭一郎シリーズのキーワード(「家族」)が,これまた色濃く反映されてますね。加賀刑事の着目点や推理の推移を楽しもうと思えば,悪くないと思います。松宮の成長とか,金森登紀子看護婦の再登場,さらには彼女に頭が上がらない加賀刑事のシーンなど,シリーズファンにとっての見所もありますしね。
 ただ,謎解きとしては楽しめないでしょうねぇ。読者への証拠の提示もないですしね。ちなみに,私の根拠レスな真犯人予測は見事にハズレました…。


No.199 6点 つきまとわれて
今邑彩
(2011/08/17 23:05登録)
 反転モノ好きの私としては,結構楽しめました。非常に読みやすいですしね。
 特に「つきまとわれて」と「六月の花嫁」がおすすめです。それと最終話の「生霊」。登場人物を他の短編にも登場させて繋げる手法が綺麗に展開されてます。
 この作者の短編集は初読だったのですが,他の短編集も読みたくなりました。


No.198 5点 ブラジル蝶の謎
有栖川有栖
(2011/08/16 22:19登録)
 何とも芸のない書評で恐縮ですが,「可もなく不可もなく」というのが率直な印象。後々まで記憶に残りそうな話は無かったですね。
 その中でも,時期的には,どうしても最終話の「蝶々がはばたく」のトリックに目が行きます。確かに成り立つし,ほどよい余韻も具備している,ますまずの作品ですが,今年の3月11日以降に読むと,複雑な気持ちになりますね。


No.197 5点 死ねばいいのに
京極夏彦
(2011/08/10 23:57登録)
 ミステリ面だけに着目すればフーダニット+ホワイダニットなのでしょうが,読中は,そんなことは気にせず,主人公と被害者を取り巻く人達の人生感を堪能(?)することができましたね。
 ただ,犯人及び被害者の感情については,結構な違和感も。終盤にちょっとした反転があるのは良いのですが,やや中途半端な印象も・・。

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