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ミステリの祭典

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さみしさの周波数

作家 乙一
出版日2002年12月
平均点7.20点
書評数5人

No.5 6点 メルカトル
(2021/02/27 22:51登録)
「お前ら、いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼を合わせることができなくなった。しかし、やりたいことが見つからず、高校を出ても迷走するばかりの僕にとって、彼女を思う時間だけが灯火になった…“未来予報”。ちょっとした金を盗むため、旅館の壁に穴を開けて手を入れた男は、とんでもないものを掴んでしまう“手を握る泥棒の物語”。他2篇を収録した、短編の名手・乙一の傑作集。
『BOOK』データベースより。

乙一節が炸裂します。切ない話、奇妙な話、怖い話、救いのない話、それぞれ乙一らしいんです。最もお気に入りは誰も触れていませんが最初の『未来予報』ですね。これこそ本領発揮の一篇ではないかと思いますよ。他はその奇想は買うものの、やや霞んでしまっている感じがします。まあこの作者ならこれくらいは当たり前との認識が強いため、他の作品集と比較して特に優れているとは言えません。それでも面白いのには違いなく、入門編としてもお薦めでしょうかね。

全体的にもう少し切なかったらなあと思います。何しろ乙一と言えば切ないイメージですからね。
嘘か誠か、あとがきでえらく恐ろしいことを書いていますが、作家って色々大変なんですね。しかしこの人ももうちょっと頑張って短編書いて欲しいです。他名義も良いですが乙一としての新刊を期待しています。出来れば『GOTH』を超えるやつを。

No.4 5点 まさむね
(2012/05/26 17:16登録)
 乙一らしい短編集。
 収録作の中では,作者本人が「書きたいと思ったから書いた」と述べている「手を握る泥棒の物語」がベストでしょうか。
 「失はれた物語」の世界も,ミステリ云々はさて置き,深い印象を与えてくれますね。

No.3 10点 はせ
(2005/05/01 13:57登録)
あたたかくて笑える「手を握る泥棒の物語」は乙一以外に誰もかけないだろうと思う。私の中で乙一作品の1、2を争う作品だ。文学っぽい「失はれた物語」の喪失感には思わず涙がこぼれた。涙をこぼしたと言えば「未来予報」もそうだ。乙一の書く恋愛というのはまたすごい。

No.2 9点 SD
(2003/12/23 22:03登録)
「失われた物語」は重いテーマですがせつない雰囲気が
秀逸だと思います。
この作品が無ければもっと低い採点にしていたはず。

No.1 6点 しゃんてん
(2003/07/12 16:58登録)
 最初の3つの短編にも共通するのは、今までの乙一氏の作品と同じく主人公達が孤独で世間とのずれを感じている点だろう。
 『君にしか聞こえない』とは違い、ものすごく特異な出来事が起こるわけではない。「フィルムの中の少女」では怪異現象が起こるが、『君にしか聞こえない』の各短編と比べたら、特殊さはさほど無い。話のモチーフ自体は良くあるものである。それぞれの短編のラストに至るまでものすごく驚くような出来事が起こるわけではない。にもかかわらず、読み終えると救われた気分になれた。人間の暖かさを各短編で上手く表現しているためだと思う。
 最後の短編『失われた物語』では、主人公は救われない。むしろより悲惨な方向に突き進んでいっている。しかし、残酷なラストにもかかわらず、人間の暖かさを感じた。
 優しさと暖かさで包まれた作品集のように思う

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