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ミステリの祭典

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玉村警部補の災難
加納警視正&玉村警部補シリーズ

作家 海堂尊
出版日2012年02月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 E-BANKER
(2016/04/02 00:34登録)
「ナイチンゲールの沈黙」などに登場した警察庁の“デジタル・ハウンドドック(電子猟犬)”こと加納警視正と、警視正にこき使われる哀れな中年刑事・玉村警部補のコンビが贈る連作短篇集。
要は、最近はやりの「スピンオフ」ってやつだ。
2012年発表。

①「東京都二十三区内外殺人事件」=東京都と神奈川県の境界線付近で発見された不審な死体をめぐるお話。日本においては正確に機能している監察医制度が東京二十三区にしかないという、作者が従来より主張している内容がテーマ。白鳥とふたりして○○をエッチラオッチラ運ぶ田口の姿を想像すると可笑しい・・・
②「青空迷宮」=桜宮のサクラTVの名物番組で起こった殺人事件。巨大迷路という密室の中で誰も殺せたはずのないところに死体が・・・っていうと実にまともなミステリーっぽいが、本当にミステリーなのである。ロジックで犯人を追い詰める加納が強烈。
③「四兆七千億分の一の憂鬱」=DNA鑑定がテーマの作品なのだが、この数字はDNA鑑定で同じ型が登場する可能性を表している(とのこと)。これも完璧と思えたトリックを無理矢理崩す加納と、それに付き合わされる玉村が強烈。
④「エナメルの証言」=やくざの焼死体なら、歯型さえ一致すれば解剖されない・・・という司法の悪癖を付いた問題作!っていう感じか。これも「死因不明社会」に警鐘を鳴らす作者らしい作品と言える。まるでアーティストのような“坊や”のキャラがなかなか良い。

以上4編。
何だかはしゃぎ過ぎのような作品集。
いつものように「桜宮サーガ」の登場人物たちが大暴れするのだが、今回は主に「死因」にスポットを当てた作品が並んでいる。
そして数々の事件の捜査に当たるのが、デジタル・ハウンドドック=加納警視正!
(普通警視正は直接捜査に当たらないよなぁー)

相変わらず独特のリズム感ある展開とプロットで読者をグイグイ引っ張る。
はしゃいではいるものの、時折専門的な話を出し、単なるエンタメ小説ではないことを主張する。
旨いもんです。
小粋な短篇集いっちょ上がり!!・・・っていう感じかな。
(ベストは①だろうが、④も捨て難い)

No.1 5点 まさむね
(2012/05/26 16:11登録)
 「このミス!」に掲載された4作品を集めた短編集。
 監察医制度,Ai(死体画像診断),DNA鑑定,歯の治療痕照合…と,いかにもこの作者らしいテーマが揃っています。
 一方,ミステリ的なレベルはまちまちで,個人的な判断基準でミステリと言ってよいのは「青空迷宮」くらいかも。「四兆七千億分の一の憂鬱」もギリギリセーフかなぁ…って感じでしょうか。その点は大きな期待をせずに,医療エンタメとしてお楽しみいただくのが無難かもしれませんね。

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