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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.475 6点 三毛猫ホームズの推理
赤川次郎
(2014/07/20 22:54登録)
 三毛猫ホームズシリーズの第一作。
 赤川作品を読むのは四半世紀ぶり。(ちなみに,本作は未読だったと思う。)コミカルで軽いタッチに懐かしさも手伝い,想像以上に楽しめました。
 ミステリとしての要素がかなり詰め込まれており,伏線も綺麗です。ご都合主義的な側面や,キーパーソンがかなり絞りやすいのでは…といったところは,まぁ良しとしましょう。それ以上にページをめくらされました。今後もたまに赤川作品を読んでみようかな。
 ちなみに,四半世紀前の私の「赤川作品」への印象に反してこの作品は,結構「大人」な話でしたねぇ。


No.474 6点 解決まではあと6人 5W1H殺人事件
岡嶋二人
(2014/07/19 22:04登録)
 複数の興信所を訪れ,各々に奇妙な依頼をしていく「平林貴子」と名乗る女。彼女の目的は何か?
 章ごとに探偵小説的な楽しみもありつつ,謎が深まるという,なかなか面白いプロットです。
 しかし,期待が膨らんだ分だけ,ラストには何とも微妙な印象が。意外性はあるのでしょうが,ちょっと狙い過ぎかなぁ…と。犯人のラストの行動にも疑問が。
 勿論,水準以上には楽しめたのですけどね。


No.473 5点 捩れ屋敷の利鈍
森博嗣
(2014/07/11 23:08登録)
 密室トリック自体は,まぁ,そんなところか…といった印象。「保呂草VS萌絵」の部分の方が楽しめたかな。
 なお,この作品最大の(と私は思う)謎がエピローグで登場しますが,この答は,「四季・秋」を読まねば正式には分からないようです。四季シリーズが未読であるのに,気になってネタバレサイトを覗いてしまった私は,損をしたのか,実を得たのか…。


No.472 7点 満願
米澤穂信
(2014/07/03 21:22登録)
 ノンシリーズ短編集。バラエティに富んでいますが,ブラックな色彩の作品が多いかな。個人的には「儚い羊たちの祝宴」よりも好印象。
1 夜警
 佐々木譲or横山秀夫と読み間違うような展開。伏線は「いかにも」だったのですが,想定以上の反転でした。
2 死人宿
 1とは異なる意味での「反転」が見事。私は結構怖かった。
3 柘榴
 これも怖い。
4 万灯
 梓崎優の「叫びと祈り」を思い起こさせる雰囲気。犯行の発覚理由が何とも興味深い。
5 関守
 一定想像はつくのだが…やっぱり怖い。
6 満願
 雰囲気作りが巧い。ホワイの部分はやや納得しがたい面も。

 どの作品もハズレはないですが,好みとしては「万灯」「満願」「柘榴」の順でしょうか。


No.471 7点 刑事のまなざし
薬丸岳
(2014/06/29 14:03登録)
 7編で構成される連作短編集。
 通り魔によって娘を植物状態にされた夏目信人は,事件後,少年鑑別所で少年たちの心理を調査する法務技官から警察官に転職した。そして,この通り魔事件の犯人はいまだ捕らえられていない…。
 終盤の反転が見事な短編が多く,また,人間ドラマとしても良質。第三者の視点で淡々と語るスタイルが効いています。
 収録作でベストの短編は,日本推理作家協会賞短編部門の候補作にもなった「オムライス」。広くお薦めしたい。その後に,表題作「刑事のまなざし」と「黒い履歴」が続く印象かな。


No.470 5点 六人の超音波科学者
森博嗣
(2014/06/23 23:40登録)
 今回の主人公は,瀬在丸紅子(と祖父江七夏)。小鳥遊クンと紫子さんのキャラも活きてはいますが,保呂草の印象は薄いですねぇ(煙草をよく吸っていた印象はあるけけど)。
 ネタとしては,極めて典型的なモノで,インパクトとしては弱いですかね。祖父江さんについては,今回は何とも損な役回りで可哀想ではあるけれども,「ソコは気付こうよ」と思わずにはいられませんね。って,それでは小説自体が成り立たないか…。


No.469 7点 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー
アンソロジー(出版社編)
(2014/06/18 22:00登録)
 夕刊フジの連載企画から生まれた,犯人当てアンソロジー。出題者は,有栖川有栖氏,貫井徳郎氏,麻耶雄高氏,霧舎巧氏,我孫子武丸氏,法月倫太郎氏という錚々たるメンバーでして,内容も充実しています。最後に収録されている座談会も,「犯人当て作品」に関する各々のスタンスが垣間見えて楽しい。犯人当てに挑むという本来の読み方が最も楽しめることは間違いないですが,肩ひじを張らずに普通の短編集として読んでも良いと思います。
 犯人当てに成功したかどうかは別として,楽しめた作品は,漂流者(我孫子武丸氏),ヒュドラ第十の首(法月倫太郎氏),蝶番の問題(貫井徳郎氏)ですかね。


No.468 6点 競作 五十円玉二十枚の謎
アンソロジー(出版社編)
(2014/06/14 20:44登録)
 池袋の書店を土曜日ごとに訪れて,20枚の50円玉を千円札に両替していく中年男。 バイト中にこの「謎」に遭遇した若竹七海氏が出題者となり,プロ・アマ混合でその回答編を書くという競作アンソロジー。なかなか興味深い試みです。
 プロ側の回答編は,謎に真正面から…というよりも,技巧で体裁を整えた感じの作品が大半。プロ側のベストは有栖川氏の作品かな?
 一般公募の中では,自動販売機モノが最も好印象。アマ時代の倉知淳氏の作品(猫丸先輩初登場作品)を読めたことにもお得感が。


No.467 7点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2014/06/08 17:02登録)
 法月綸太郎シリーズの第1短編集。
 「死刑囚パズル」と「カニバリズム小論」が抜きんでていますかね。どちらもホワイが印象的です。でも,決してソコだけが読みどころではない辺りもミソ。
 前半の短編とは雰囲気が一変する,後半の4編「図書館シリーズに」ついても,個人的には嫌いではないですね。
 ちなみに,「土曜日の本」は楽屋オチ以外の何物でもなく(捌き方としては巧いと思いますが),「50円玉20枚の謎」自体が気になってしょうがないので,近々に本家のアンソロジーを読む羽目になりそうです。


No.466 5点 世界で一つだけの殺し方
深水黎一郎
(2014/06/06 20:29登録)
 中編2本で構成。どちらの作品も,お馴染み「神泉寺瞬一郎」が探偵役を務めますが,作品自体の雰囲気は対照的と言えます。(時間軸として両作品に繋がりを持たせてはいますが)
1 不可能アイランドの殺人
 確かに「舞田ひとみが探偵ガリレオしている」との書評のとおりです。本筋の殺人事件に無理やり「奇妙な出来事」をくっつけた…という印象もありますが,モモちゃんのキャラも良く,サラサラ読む分には楽しめると思います。ちなみに「神泉寺瞬一郎」の出番は少ないです。
2 インペリアルと象
 「芸術探偵」の特長が色濃く反映されている作品。音楽に無縁な私にはちょっとピンとこない面も正直ありましたが,クラシック好きの方には楽しめるでしょう。冒頭とラストの内容は,「いかにも」と思いつつ,やっぱり良いですね。


No.465 6点 祈りの幕が下りる時
東野圭吾
(2014/06/01 18:39登録)
 ページをめくらせる力はさすがです。終盤前に真相の大枠(あくまでも「大枠」ですよ)を予測できてしまう方も多いと思いますが,既にそういう方向では読ませていないのですよねぇ。登場人物たちの人生の見せ方が何とも心憎く,巧いです。
 これまでの加賀シリーズの設定に加え,「白夜行」の雰囲気,「容疑者X~」の切なさ,「天空の蜂」から続く作者の主張などなど,目一杯に盛り込まれています。(だからこそ東野ファンには真相の「大枠」が見えやすいかもしれませんね。)
 加賀恭一郎の家族の過去が描かれていますし,今後の展開が楽しみな締めにもなっているので,加賀シリーズファンには必読と言えましょう。


No.464 4点 波形の声
長岡弘樹
(2014/05/29 21:03登録)
 7編からなる短編集。
 登場人物の心情の動きと終盤の反転が読みどころ,のはず。この点は氏の出世作「傍聞き」と同じ方向性なのですが,比べれば相当に小粒だし,こじつけ感も気になります。
 横山秀夫氏の作風ともダブるのですが,本作品のみで比較するとすれば差は明確。読みやすい作品ではあるのですが…。辛口かもしれませんが,この点数で。


No.463 7点 首折り男のための協奏曲
伊坂幸太郎
(2014/05/24 10:15登録)
 7話から成る連作短編集。とはいえ,各話の繋がりは緩やかです。
 個人的なベストは第5話の「月曜日から逃げろ」。ミステリ的にも,これまで読んだ伊坂短編の中でもベストに位置付けたい。敢えて多くは書きませんが,様々な面で綺麗に纏めた秀作です。伊坂作品でお馴染み「黒澤」ファンの方にはさらに楽しめるのではないでしょうか。
 他の短編は,いつもの伊坂ワールドは勿論,恋愛モノやホラー風味の作品もあり,さらには作者の主張や遊び心も加わっていて,氏の短編集としては比較的バラエティに富んでいると言えましょう。(ミステリとしては弱いですが。)何を期待して読むかで評価は大きく変わると思いますが,純粋な読書としては十分に楽しめましたね。


No.462 6点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
青崎有吾
(2014/05/17 21:18登録)
 裏染シリーズ初の短編集。
 ちょっと恣意的な設定も見受けられるし,ロジック展開としてもこれまでの長編に及ばないのですが,ユーモアミステリ的な側面も増していて,サラッと読む分には楽しめると思います。よくよく考えてみれば短編集にマッチする舞台構成ですしねぇ。個人的なベストは「もう一色選べる丼」かな?
 ちなみに,「体育館の殺人」の次は「図書館」と想像しつつ,「水族館」に持っていかれた者としては,とうとう「図書館」が読めそうなのが嬉しいです(苦笑)。


No.461 6点 三度目ならばABC
岡嶋二人
(2014/05/11 22:18登録)
 増補版で読了。
 ベストは,本格短編として良質な「十番館の殺人」。事件の再現ドラマの撮影中(正確にはリハーサル中か)に,役者やスタッフが事件を検証していく設定も楽しい。
 他の短編は水準級かな…といった印象ですが,山本山コンビの雰囲気も相まって,気軽に読むのにちょうど良い感じですね。


No.460 8点 天空の蜂
東野圭吾
(2014/05/05 23:01登録)
 東日本大震災後だからこそ,広く読んでいただきたい作品。
 震災前に読んだのであれば,自分ならおそらく「薀蓄が多い…」とか「とは言っても…」などと感じてしまったと思うのです。
 しかし,今となっては,一つ一つの言葉がズシリと心にのしかかってきます。「沈黙する群衆に,原子炉のことを忘れさせてはならない」,「子供は刺されて初めて蜂の恐ろしさを知る」…。クライシス・サスペンスとしても秀逸ですが,作者の言わんとしているコトが突き刺さってきて,非常に読みごたえがあります。
 今一度申し上げます。今こそ広く読んでいただきたい作品です。


No.459 6点 ビブリア古書堂の事件手帖5
三上延
(2014/04/28 21:39登録)
 人気シリーズ第5弾。
 ラブストーリーとしての割合が高くなってきていますが,スキを突くような第1話の反転や,各短編におけるトリビア的知識などなど,楽しめると思います。
 ちなみに,個人的には「篠川智恵子さんみたいな母親ってあり得る?」とか「いや,そもそも栞子さん的な人って実在しないよね~」とか,気にならないでもないです。この辺の設定をちょっと薄めるのは難しいのかなぁ。


No.458 5点 シュークリーム・パニック Wクリーム
倉知淳
(2014/04/19 23:10登録)
 あまり考えずに気軽に楽しむのが一番!って感じの短編集。
1 限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件
 非常に馬鹿らしい結末だけれども,途中のロジック展開も含めて,嫌いではないタイプ。
2 通い猫ぐるぐる
 この作者さんはホントに猫が好きなんだなぁ…という以上の感想はないですね。
3 名探偵南郷九条の失策
 読中に感じた違和感がそのまま伏線でしたか…。確かに作者らしい作品ではあります。


No.457 6点 鏡の花
道尾秀介
(2014/04/13 23:34登録)
 不思議な世界観の連作短編集です。
 第2章に入って驚きました。なぜなら,第1章で亡くなっていた設定の人間が生きていて,生きている設定の人間が亡くなっているから。
 つまりは,限られた登場人物の中で「この人が亡くなっている」という様々な設定で各短編が描かれているわけでして,何とも不思議な余韻を残します。
 ミステリ的な側面は極めて弱いのですが,着目点や作者の表現手法(コレは好き嫌いがあると思いますが…)には一目置きます。


No.456 7点 江神二郎の洞察
有栖川有栖
(2014/04/06 23:13登録)
 アリスの大学入学からマリアの推理小説研究会入部までの1年間を舞台にした,このシリーズ初の短編集。
 一言でいえば,とても気持ちよく読めました。何とも心地よい。
 舞台が昭和から平成に移るとき…というのも,自分が四半世紀前に還ったようで,不思議な気分でしたねぇ。
 ベストは「四分間では短すぎる」。「二十世紀的誘拐」も好きなタイプ。「除夜を歩く」と「蕩尽に関する一考察」もファンとしては楽しい。

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