まさむねさんの登録情報 | |
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平均点:5.87点 | 書評数:1230件 |
No.510 | 7点 | 小さな異邦人 連城三紀彦 |
(2015/01/17 13:09登録) 生前,雑誌に発表したままになっていた8編の短編が収録されています。 男女の心理を巧みに描きつつの,視点の転換が見事な作品が並んでいますが,その流れで辿り着く最終話(表題作)が個人的なベスト。作者には珍しい(?)ユーモアタッチの語り口なのですが,「誘拐されたのは誰なのか?」等々の魅力的な謎に対して示される真相には驚かされました。読後にタイトルが浮き出てくる感覚もいい。誘拐短編として出色です。 時効寸前の事件に絡む女と刑事を描いた「無人駅」,交換殺人のプロットを活かした「蘭が枯れるまで」,無理筋な面がありつつも反転が際立つ「白雨」も良作。また,恋愛小説的な側面が強いですが,「さい涯てまで」のラストの情景も個人的には印象深いですね。 |
No.509 | 6点 | 街の灯 北村薫 |
(2015/01/11 21:18登録) 作者の第3シリーズ(ベッキーさんシリーズ)の第一作品集。 上流階級の女性が主人公という点で「覆面作家シリーズ」が想起されますが,若き女性「わたし」の一人称スタイルという面や全体の雰囲気は「円紫さんと私シリーズ」により近い印象を受けました。 ミステリーとしては,派手な演出や奇抜なアイデアがある訳ではありませが,舞台となる昭和初期の風景や世相の描写が綺麗で,かつ,それをミステリーに巧く絡めています。イイ話だけでは終わらせない,毒の盛り方も作者らしいです。 次々にページをめくらされましたので,次作も読むことになりそうです。 |
No.508 | 4点 | 人柱はミイラと出会う 石持浅海 |
(2015/01/04 23:22登録) 人柱,黒衣,お歯黒,厄年,参勤交代やらの日本古来の風習が,今でも生活に密着した形で残っている…という設定自体は面白いと思います。探偵役が「人柱職人」で,アメリカからの留学生リリーがヒロイン的役回りというのも良く考えられています。 しかし一方で,各短編のロジックは微妙。いくらなんでも強引すぎない?…ってことで辛目の点数に。 |
No.507 | 5点 | ノックス・マシン 法月綸太郎 |
(2015/01/02 22:38登録) 全体的に小難しいなぁ。正月に酒飲みながら読むべき作品ではなかったなぁ…。怒られちゃうかもしれないけど,すごく単純化して紹介するとすれば,海外古典作品をSF的に表現した「楽屋ネタ」ってことで括れるのではないかなぁ…と。 正直,「ノックス・マシン」&「論理蒸発」は,私には面倒すぎて厳しい。「バベルの牢獄」も面倒なのだけれども,(短くてストレスも少なかったし)結末にはニヤリとしたのでまぁいいかな。「引き立て役倶楽部の陰謀」はパロディとして楽しめたので,総合的には,まぁこのあたりの採点になるのかなぁ。 |
No.506 | 5点 | 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題 法月綸太郎 |
(2014/12/30 10:00登録) 法月綸太郎・星座シリーズの短編集。 牡羊座から乙女座までの各星座をモチーフにした企画モノなので,やむを得ない面はあると思うのですが,ちょっとコトバ遊びに傾注しすぎてはいないかなぁ…と。勿論,提示される謎自体は興味深く,流石と思わされるのですが。 初出が犯人当て小説の2作品,「(双子座)ゼウスの息子達」と「(蟹座)ヒュドラの第十の首」がベストかな。作者の名短編「都市伝説パズル」を想起させる「(乙女座)冥府に囚われた娘」がその後に続く感じかな。 |
No.505 | 7点 | ずっとあなたが好きでした 歌野晶午 |
(2014/12/28 22:37登録) 恋愛小説短編集。って言いながら歌野氏だからなぁ…と念頭に置きながら読み進めますと,やっぱり表題作や「舞姫」のような捻りの効いた作品もありつつ,あれ?純粋な恋愛小説もあるし,ははぁ,今回はこういった雑多感を楽しむ趣向なのかねぇ…などと結構中だるみを感じた頃に…ねぇ。 スラスラ読ませつつも結構な分厚さ。ソコも狙いなのでしょうが,なるほどねぇ。ははぁ,なるほどねぇ。 |
No.504 | 6点 | 純喫茶「一服堂」の四季 東川篤哉 |
(2014/12/23 08:50登録) 舞台は鎌倉。探偵役の女性は極度の人見知り…ってあたりで「ビブリア古書店かよ!」と突っ込み,喫茶店そして女性のバリスタが探偵役…ってあたりで「珈琲店タレーランかよ!」と突っ込まざるを得ない舞台設定。そしてこの表紙って! 東川篤哉氏だからこその芸当と言えるのですが,これらすべてを見事に「利用」した“全体構成”がお見事。(評価は相当に割れると思いますが…) ちなみに,内容としてはビブリア&タレーランとは一線を画す,十字架磔死体,首なし死体,バラバラ死体など,思いっきり人が死ぬ本格系統。これまた両作品とは一線を画す,東川流ユーモアも全開。個人的には結構好きなパターンの連作短編でしたね。 |
No.503 | 6点 | クローバー・リーフをもう一杯 円居挽 |
(2014/12/19 21:35登録) 作者初の連作短編集(だと思う)。 「ルヴォワール」シリーズで作者の技巧を見せつけられてはいますが,同シリーズには「面倒くささ」が同居していたのも事実。 この作品は,その辺りも意識しているのか,結構読みやすい展開。その分,謎も軽めではありますが,4話目の「ペイルライダーに魅入られて」と最終話「名無しのガフにうってつけの夜」に作者らしさを感じます。 前半での青春ミステリ的な盛り上げが,後半に活かしきれていないことが惜しいですね。遠近クンと青河さんの展開も気になるなぁ。今回の登場人物たちを使った続編は出ないものか。(もしかして作者の営業戦略に乗せられているのか?) |
No.502 | 7点 | 時鐘館の殺人 今邑彩 |
(2014/12/13 22:08登録) 今邑さんの短編集の中でも,かなり高水準ではないでしょうか。 ①「生ける屍の殺人」:いかにも今邑女史らしい作品。でもラストのホラー帰着が個人的にはどうにも微妙。 ②「黒白の反転」:伏線や反転を含めて綺麗に纏められた良作。そこかしこに巧さを感じます。良作。 ③「隣の殺人」:オチが読みやすすぎるため,逆に何かあるのか…とすら思わせる。でも思い過ごしでしたねぇ。凡作。 ④「あの子はだあれ」:SF短編として良質。余韻を残す反転も見事。 ⑤「恋人よ」:20ページ程度の分量の中でしっかりと雰囲気を作っています。最後の捻りも私は結構好き。 ⑥:「時鐘館の殺人」凝ったプロットです。遊び心にも溢れています。文庫版ではノベルス版にはあった箇所を大幅に削除しているとのこと。理由の一つが「実在する作家の方々を揶揄するような表現が多々あることが気になったから」とのこと。気になるなぁ。 ⑥・②がベスト2。④と⑤も好み。①は個人的には評価しにくいが,いかにも作者らしい。③のみ凡作か。 |
No.501 | 7点 | 月光ゲーム 有栖川有栖 |
(2014/12/07 22:13登録) 良くも悪くも「若い」です。 人物が多すぎる…とか,動機が何とも…とか,ダイイング・メッセージはやり過ぎだろう…等々,気になる点は少なくありません。 とは言え,読者挑戦モノとしての気概は天晴だし,やはり読んでいてワクワクしちゃいます。七色の変化球を操る投手も好きですが,やはり直球で押すルーキーの魅力には敵わない。内角に直球を投げ込めない投手は,結局変化球も活かせないものです。 ってことで,思い入れも入りつつ,この点数。 |
No.500 | 5点 | 乱れからくり 泡坂妻夫 |
(2014/11/30 21:52登録) 泡坂ファンのみならすとも,「言わずもがな」な有名作品。ベスト100モノでは常連(?)といってよいでしょう。 玩具を絡めた発想,それぞれのトリック,終盤での伏線の回収と転換,そして何よりも「騙し」へのこだわり…等々,自分なりに評価の高さの理由を理解しつつ,しかしながら,緊張感やスピード感は…とか,こういう設定(ネタバレを避けて詳細は書きませんが)だったら何でもアリでは…といった,おそらくは素人的であろう感想を持ったのも事実。初期作品なら,個人的にはアノ短編集の方が好み。 勿論,楽しめたのですが,敢えてこの点数にしましょう。 |
No.499 | 5点 | 幻色江戸ごよみ 宮部みゆき |
(2014/11/23 23:06登録) 「本所深川ふしぎ草紙」が結構楽しかったので手にした次第。 勝手に「岡っ引きの茂七親分」が登場するシリーズものだと思い込んでいたので,純粋な短編集であることにちょっとびっくり。(私が勝手に思い込んでいただけで作者には何ら非はないのですが。) 内容としては,人情&ホラーを重視した時代小説といったところか。「器量のぞみ」「庄助の夜着」「神無月」あたりが良かったかな。 |
No.498 | 7点 | 去年の冬、きみと別れ 中村文則 |
(2014/11/17 19:57登録) 芥川賞作家が描くミステリー作品。ミステリーとして「異色」とまで言えるかは別として,なるほど,確かに芥川賞作家らしい筆致で,登場人物の心情も含めて,緊張感に満ちた構成です。 序盤からミステリーとしての「匂い」がプンプンと漂う展開で,あれこれ想定しながら読み進めざるを得なかったのですが,浅はかな想定を上回る終盤の展開は見事。登場人物たちの,それぞれの「狂気」が読後ににじみ出てきます。とある団体に関して,不発気味というか,ちょっと投げっぱなしになっていないか?との疑問もありますが(単に読みが甘いだけか?),個人的には「いつもと違う読書」を満喫できましたね。 こういう系統の作品は,かなり好き嫌いが分かれると思うのですが,中編と呼んでもよいくらいの分量ですし,一読する価値はあると思います。 |
No.497 | 7点 | 魔球 東野圭吾 |
(2014/11/11 22:01登録) 作者の初期の長編作品。 心に訴えかける結末です。「悲しい」という一言では言い表すことのできない余韻があります。野球部員の殺人事件のみならず,一見無関係にも見える他の事件を絡ませることで,ストーリーの厚みが格段に増しています。その事件の真相の一つとして明かされる,とある人物たちの墓前でのやりとり,そしてその両者の心情については,特に記憶に残りそうです。 読者が犯人を論理的に特定できるような構成ではありませんが,作者の構成力,ストーリーテラーぶりが,当時から十分に発揮されていたことを認識できる作品と言えましょう。 |
No.496 | 5点 | 大癋見警部の事件簿 深水黎一郎 |
(2014/11/03 23:13登録) メタミステリーとしてどう評価していいものやら。 目次から拾ってみても、「ノックスの十戒、アリバイ、密室殺人、叙述トリック、レッドヘリング、ダイイング・メッセージ、ヴァン・ダインの二十則、後期クイーン問題、正確な死因、お茶会で特定の人物だけを毒殺する方法、二十一世紀本格、「見立て」の真相、バールストン先攻法にリドル・ストーリー、警察小説、歴史ミステリーおよびトラベルミステリー、さらには多重解決」…というように、ガンガンに詰め込んでいます。そのせいなのか、個々のネタについては、小ぶりの印象が否めません。 気軽に読む分には良いと思うのですが、個人的には「天下一大五郎」センセの方が好みかな。 |
No.495 | 6点 | 本所深川ふしぎ草紙 宮部みゆき |
(2014/11/03 21:38登録) 岡っ引きの茂七親分が活躍する,時代小説短編集。 ミステリーというよりも,人情モノという側面が強いかな。「片葉の芦」「送り提灯」「落葉なしの椎」が良かったですね。弱いんですよねぇ,人情を前面に出されると。 宮部さんの時代小説をもう少し読んでみようかな,という気にさせられましたね。 |
No.494 | 6点 | 迷いアルパカ拾いました 似鳥鶏 |
(2014/10/25 22:32登録) 「楓ヶ丘動物園」を舞台にした,動物園ミステリーシリーズ第3弾。 文庫版で234ページという,長めの中編と言ってもよい分量。これまでの作品同様,「動物園」への深い理解が伝わってきました。サラサラと読みやすく,「犯人は?」って疑問を終盤まで持ち続けさせる辺りに作者の力量を感じます。 |
No.493 | 4点 | アガサ・クリスティー賞殺人事件 三沢陽一 |
(2014/10/23 23:27登録) 「致死量未満の殺人」で第3回アガサ・クリスティー賞を受賞した作家による,受賞後第一作品。そしてこの表題作ときた。分かり易いですねぇ。 さて,前作「致死量未満の殺人」は,文章力にやや難があり,派手さもなかったものの,プロット自体は極めて堅実で,むしろ好印象を抱きました。 で,本作品は5編で構成される連作短編集。個人的には,前作での好印象に加え,「作家や評論家が実名で登場。さらに被害者は有栖川有栖」という謳い文句に惹かれて手にしたわけですが,実質的にその謳い文句が活かされるのは,最終話となる表題作にたどり着いてから。 最終話までの4作品は東北の各地を舞台にしたもので,堅実とも言えるし,無難すぎるとも言える内容。決して嫌いではない部類(特に「柔らかな密室」は何気に好きなタイプ)なのですが,何と言いますか,表現も含めて「新しさ」は感じ得ないかなぁ…と。 最終話については,相当な肩すかし感を抱きました。トリックも薄目だし,動機も強引すぎる。前4話の存在意義もよく分からず,連作短編集としてちぐはぐ。残念。 それと,有栖川ファンの私にとっても,最終話での「有栖川押し」の強さにはちょっと引き気味になりましたねぇ。これも如何なものかなぁ…と。 |
No.492 | 6点 | 白い兎が逃げる 有栖川有栖 |
(2014/10/19 23:00登録) 私事ですが鳥取を訪問する予定があったため,敢えてこの日程に合わせて手にした次第。 で,表題作。あれ?鳥取自体はあまり登場しないのね…ってのは自分勝手すぎるか。でも個人的に利用機会が多い(現に今回も利用した)関西空港も舞台だったから,まぁいいか。ちなみに,この空港を利用する機会の多い人間にとっては結構わかり易いトリックだったですかねぇ。中編の長さが必要だったのか,内容的にも疑問。 表題作よりも,「不在の証明」と「地下室の処刑」の2短編をお薦めしたいかな。 |
No.491 | 5点 | 魔法使いと刑事たちの夏 東川篤哉 |
(2014/10/15 22:06登録) 魔法使い「マリィ」シリーズ第2弾。 魔法の使いっぷりとしては,倒叙形式だからこそのギリギリのラインを守っているのですが,魔法使いという設定をミステリの構成に活かしきれているのかと問われれば,かなり疑問。マリィのキャラ自体は結構好きなのですがね。、 内容自体としては,犯人の発覚理由にニヤリとさせられるものが多く,なかなか楽しめました。「魔法使いと妻に捧げる犯罪」の伏線にもニヤリ。大技はないですが,気軽に楽しみたい方にはよろしいのではないでしょうか。 |