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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:1279件

プロフィール| 書評

No.559 5点 パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から
似鳥鶏
(2015/11/30 19:17登録)
 ストーリーとして敢えてスイーツにこじつける意義が少ないような気がするなぁ…、そもそも喫茶店・珈琲店・ビストロ系ミステリ(勝手に括ってみた)は食傷気味なんだよなぁ…ってのが、正直な感想。
 一方で、第3話「星空と死者と桃のタルト」における“放射線おばちゃん”の描き方など、「そうそう、いるいる!こういうタイプ!」と膝を打つ場面もございました(ミステリとしては直接関係ないですけどね…)。各短編自体は悪くなく、連作モノとしても無難にまとめていると思います。


No.558 10点 折れた竜骨
米澤穂信
(2015/11/28 20:52登録)
 当時、各種ミステリランキングで相当に評価が高かったことは、知っていたのです。しかし、表面だけで判断しがちな私は、「はぁ、剣と魔法の世界って言われましてもねぇ。しかも舞台は中世ヨーロッパときましたか。はぁ。」といった心の声に従い、決して手にしなかった訳であります。
 嗚呼、なんと浅はかだったのでしょう!ファンタジーとミステリの見事な融合。解決シーンは圧巻で、まさに本格の王道路線。(消去法による解決手法はベタすぎるとの意見もありましょうが、この手法もまた王道の一つと言えましょう。)伏線の配置と回収もお見事。さらに、登場人物の一人ひとりが実に魅力的で、ストーリーとしても美しい。
 特殊設定系ミステリの新たな可能性を体感させていただいたことに感謝申し上げ、思い切ってこの点数に。


No.557 7点 その時の教室
谷原秋桜子
(2015/11/20 21:22登録)
 構成としては、教諭を中心に据え、学校を舞台とした4つの短編に、その短編間に挿入されている幕間を繋ぎ合せて、プラス1短編といった構成。
 短編のうち、「その時」のラスト1行が心に突き刺ささりました。ミステリ云々という視点は別として、これまでに経験のない読後感。私の個人的な体験が深くかかわっていることは間違いないですが、かなり響きました。
 また、「幕間つなぎ短編」については、あざとすぎる面は否めないものの、最終的には、そのような視点では読んでいないし、前向きで巧くまとめてくれたな…という印象。私にとっては、相当に印象に残る読書となりました。


No.556 7点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2015/11/15 19:10登録)
 叙述を重ねに重ねて、なお成り立たせる構成力に、まずは魅かれました。
 さらに、その前提として、よくもまあこれだけの伏線(正確には伏線のための伏線って感じか)を仕込んだものだなぁ…と、その努力にも感心。「はいはい、ここ注目ですよ~」といった判りやすいものから、「そこまでやっちまうのかい!」と突っ込みたくなるものもあって、なかなかに楽しめましたねぇ。
 作者の遊び心を楽しみつつ、読後には結構考えさせられる同志もいらっしゃるであろう、精緻な作品という印象かな。


No.555 6点 ジャイロスコープ
伊坂幸太郎
(2015/11/08 18:43登録)
 アンソロジーや雑誌に掲載された短編に書き下ろし短編を加えた、作者初の文庫オリジナル短編集。
 ミステリーとは言い難い短編が多くを占めますが、逆に作者の良さを詰め込んだバラエティに富んだ短編集と言えるのかもしれません。
 好きなのは、「浜田青年ホントスカ」、「一人では無理がある」、「彗星さんたち」かな。「if」も掌編として、なかなか面白い。すべての短編の受け皿として書き下ろされたであろう、最終話「後ろの声がうるさい」は、いかにも作者らしい。一方で、「ギア」と「二月下旬から三月上旬」は、個人的に合わなかったかな。
 個人的に、伊坂サンの作品は長編よりも短編の方が好みなのですが、その辺りが巻末のインタビューで語られていて興味深かったですね。


No.554 5点 東京結合人間
白井智之
(2015/11/07 21:57登録)
 うーん、「結合人間」という特殊設定を活かしたと言ってよいものかどうか、微妙です。序盤のグロさに嫌悪感を持つ方もいらっしゃるでしょう。最終的に本格度は高いと思うのですが、終盤の捻りも含めて、何かスカッとしない。
 作者のデビュー作「人間の顔は食べづらい」を超えることはなかったなぁ…という印象かな。


No.553 5点 この国。
石持浅海
(2015/11/03 18:36登録)
 一党独裁の管理国家。しかし戦争を放棄した平和国家であり、治安がよく、経済も発展していて、国民の満足度は高い。そんなパラレルワールドの日本(決して作者は日本とは断言していないが)を舞台とした連作短編集。
 そんな国では、小学校卒業時に児童の将来が決められ、国防軍は名ばかりのものとなり、多くの女性が国外から売春婦としておとずれ、「カワイイ」文化を愛する…。
 この設定自体は、かなり興味深いと思うのです。柔軟問わず、様々な切り口での作品が出来上がりそう。でも、活かしきれていないなぁ…と。サクサク読み進められる展開も、番匠中佐のキャラも嫌いじゃないのだけれど、個人的には、もの凄く勿体ない印象を受けました。もっとこの舞台を縦横無尽に活用してほしかったなぁ。


No.552 8点 宵待草夜情
連城三紀彦
(2015/10/30 22:27登録)
 マイベストは、「花虐の賦」。反転が実にお見事で美しい。傑作です。
 表題作「宵待草夜情」の全体を包み込む儚い空気感も素晴らしい。
 とにかく短編集全体が、大正ロマン溢れる筆致で男女の情愛を描いており、今の時代だからこそ、この雰囲気が活きてくるような気もします。
 「戻り川心中」や「夜よ鼠たちのために」とともに、これぞ連城!というべき短編集ではないでしょうか。


No.551 5点 公開処刑人 森のくまさん
堀内公太郎
(2015/10/24 19:45登録)
 導入部からテンポが良く、ストレスなく読み進められます。(後半はちょっとクドイ印象もありますが。)
 でも、犯人は分かりやす過ぎたなぁ。逆に何かあるに違いないと疑いたくなるような展開。きっと、多くの方が「そのままかい!」と突っ込むことになるでしょう。
 ソコも含めて、楽しめはしたのですが。


No.550 5点 踊るジョーカー
北山猛邦
(2015/10/12 16:17登録)
 もの凄く気弱な名探偵「音野順」が登場する短編集第1弾。
 ほとんどの短編について、一般的には「いやいや、そこまではやらないでしょ、普通は」と突っ込まれること必至でしょうねぇ。個人的には、作者のその覚悟にこそ、本格愛を感じたりするのですが(笑)。
 とはいえ、「見えないダイイング・メッセージ」のロジックなど、細かい点で結構「ほほう」と思う箇所もあり、キャラの良さも含めて、嫌いなタイプではないです。本格バカミス系統が好きな方には、よりフィットするかも。


No.549 6点 交換殺人はいかが?
深木章子
(2015/10/10 17:05登録)
 その経歴から、個人的に注目していた作家さんなのですが、これまでの作品は何となく手を出しにくいなぁ…という勝手な思い込みで、未読の状態が続いておりました。この初短編集は、いかにも読みやすそう…ってことで、手にした次第。
 ミステリ作家を目指す小学生(作中、中学生に成長)の求めに応じ、一人暮らしの元刑事の祖父が、過去の事件を語ります。孫の推理で事件の構図がガラッと変わって…というスタイル。
 「密室」、「幽霊」、「ダイイングメッセージ」、「交換殺人」、「双子」、「童謡殺人」という、王道(?)のテーマが揃っていて、なかなか楽しいです。表題作の「交換殺人はいかが?」、双子ならではの「ふたりはひとり」、ダイイングメッセージをホワイに活かした「犯人は私だ!」が良作。捻りが効いています。


No.548 5点 あぶない叔父さん
麻耶雄嵩
(2015/09/26 14:50登録)
 うーん、「ひねくれてますねぇ、相変わらず」って感じ。良くも悪くも、ひねくれているんだよなぁ。
 探偵役とは何かを突き詰めた設定なのだという受け取り方もあると思うのですが、個人的には金田一耕助のパロディに見せかけたバカミスっていう評価。「マジか?」と突っ込まざるを得ない低レベルのトリックも散見されます。真紀と明美を設定した意義も、最終的にはよく判らない。
 様々な側面で中途半端な印象を受けましたねぇ。続編を想定しているのであれば、まぁ、分からないではないけど…。


No.547 6点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2015/09/21 22:43登録)
 作者の処女作(表題作)を含む、初期5作品で構成される短編集。
 表題作「変調二人羽織」は、第3回幻影城新人賞受賞作だけに、なるほど、最後までの捻り込みが作者らしい。しかし、個人的に最も印象に残ったのは、「六花の印」。明治と昭和をリンクさせた中での、意外性が素晴らしい。
 他も、一筋縄ではいかない作品が並んでいますが、全体的な完成度となれば、その後に発表された短編集に譲るかな…という印象。


No.546 6点 柘榴パズル
彩坂美月
(2015/09/21 21:47登録)
 読みどころは最終話の「バイバイ、サマー」で、最終話に至るまでの個々の短編については、正直、ミステリとしてちょっと弱い。でも、私は結構好み。陳腐という印象を受ける方もいらっしゃると思いますが、個人的には「こういうのも、たまにはいいじゃない」って感じですねぇ。


No.545 7点 鳴風荘事件
綾辻行人
(2015/08/31 21:19登録)
 殺人方程式シリーズ第2弾。
 「読者挑戦モノ」ってこと自体で評点が高くなるワタクシでございます。ちなみに、「なぜ被害者の黒髪が切られたのか」という謎自体は判りやすかったものの、犯人特定までには至りませんでした…。
 その中で繰り広げられた犯人特定のロジックは、正直楽しめましたねぇ。地味という印象もありましょうが、特に読者挑戦モノのド本格作品というのは、どうしてもそういった傾向になるような気がします。
 シリーズ第3弾を読んでみたいものですが、無理かなぁ。


No.544 6点 透明人間の納屋
島田荘司
(2015/08/22 23:53登録)
 島荘による「ミステリーランド」作品。いやー、この時点で既に興味津々ですよねぇ。(私だけか?)
 で、魅力的な謎と人物描写、そして何より真相の規模と結末…この構想自体がまさに島荘。読中、様々な感情を抱かせてくれました。流石であります。
 一方で、密室トリック自体は、ちょっと拍子抜け。まぁ、このトリックは「おまけのおまけ」みたいなものですがね。
 ちなみに、イラストも含め、少年・少女にはちょっとキビシイ感じがするなぁ。


No.543 5点 ぶぶ漬け伝説の謎
北森鴻
(2015/08/22 23:31登録)
 裏京都ミステリーシリーズの続編。
 登場するキャラ自体は嫌いではないのですが、ミステリ度は前作よりも落ちる印象。ちょっと強引というか、こねくり回し過ぎというか…。京都に関する小ネタが仕入れられるのは嬉しいですけどね。


No.542 6点 支那そば館の謎
北森鴻
(2015/08/10 23:26登録)
 あまり芳しくない評価もあるようですが、雰囲気も含めて私は好きなタイプ。ベストは「鮎踊る夜に」かな(事件そのものは、何とも陰惨でありますが…)。
 なお、後半から登場する、売れないバカミス作家「ムンちゃん」の存在自体はウザいものの、彼が唯一受賞(大日本バカミス作家協会賞)したという設定の作品名が「鼻の下伸ばして春ムンムン」って…。そのちょっとした作者の遊び心(?)が、個人的に結構ツボでした。
 ちなみに、舞台となっている、京都嵐山の大悲閣千光寺は実在するとのことで、是非とも訪れてみたくなりましたねぇ。


No.541 6点 腕貫探偵、残業中
西澤保彦
(2015/08/10 23:08登録)
 腕貫探偵シリーズの第2作。
 私事で恐縮ですが、高知を旅行することになったので、高知出身(かつ在住?)の作者の作品を手にした次第。
 今回は、タイトルに「残業中」とあるとおり、探偵役の「市民サーヴィス課」職員としての就業時間外の推理(サービス残業?)で構成されています。
 作者らしく、サクサク読み進めさせながらの後半の反転が楽しいですね。探偵役よりも目立っているといっても過言ではない、住吉ユリエ嬢のキャラも良く、結構好きなタイプの短編集でした。個人的ベストは、過去・現在・未来の絶妙なバランスが印象に残った「夢の通い路」かな。


No.540 5点 ライオンの歌が聞こえる
東川篤哉
(2015/08/09 22:36登録)
 シリーズ第2弾。これまでの作者のシリーズと比べて、キャラ自体の特徴は弱めなのですが、逆に使い勝手は良いのかもしれません。だからなのでしょうか、ちょっと「やっつけ感」が匂わないではありません。③がなかったならば、4点レベルかなぁ…。
①亀とライオン:犯人がわざわざ策を弄した意義がよく判りませんねぇ。私だったら、そんなことはせずに「とても急いでいたようでしたので…」と証言するだけだけれどなぁ。
②轢き逃げは珈琲の香り:小さな思い付きから即興で作られた作品…って感じ。
③首吊り死体と南京錠の謎:密室をベースにしながらの反転が実にお見事で、本短編集中のベスト。雰囲気は全然違うものの、個人的には「容疑者Xの献身」を思い起こしましたねぇ。
④消えたフィアットを捜して:いやいや、いくらなんでも強引すぎますなぁ。

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