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ミステリの祭典

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マスカレード・イブ
マスカレードシリーズ

作家 東野圭吾
出版日2014年08月
平均点6.00点
書評数11人

No.11 6点 パメル
(2022/05/18 08:53登録)
「マスカレード・ホテル」の続編だと思っていたが、そうではなく前日譚であった。「マスカレード・ホテル」の前日譚なので、新田刑事とホテルのフロントクラークの山岸は、同じ事件に関与しながらも接点はなく、お互いの存在を知らない。その中で新田、山岸の両人が必然性を持って絡んでくる描き方が巧みな4編からなる連作短編集。
「それぞれの仮面」は山岸、「ルーキー登場」は新田、「仮面と覆面」は山岸と交互に主役が交代し、最後の「マスカレード・イブ」のみ新田と山岸の両人が登場する。山岸登場編では、刑事事件ではなく、ホテルに泊まる客にまつわる人間ドラマ的ミステリを山岸が解く。それも真実を暴くためではなく、客の「仮面」を守るため、ホテルマンとしての務めを果たすためという話になっている。それでも、推理ものとしての面白さは十分に味わえる。新田刑事登場編では、刑事事件であり警察捜査の過程を描くミステリで読ませる。
前作「マスカレード・ホテル」を読んでいればこその遊び心ある関連性が散りばめられているなど、シリーズ作品としての読みどころが盛りだくさん。

No.10 6点 バード
(2020/07/23 12:25登録)
『マスカレード・ホテル』ファンに向けた続編(前作の過去話)。
本作(と前作)のテーマである「仮面」は、ミステリ小説と相性がいいので、私は本シリーズを気に入っている。というのも、読者が見ることが出来るのは、「年」も「性別」も「体形」も「名前」も「性格」も全て、作者が付けた仮面越しのキャラだからである。
キャラの仮面が取り去られ、素顔が暴かれる瞬間のカタルシスが好きなのよ。

最後に個人的な嗜好を述べる。普通の警察物の新田パートよりも、ホテルマンとして、少し変わった視点から仮面の下を覗く山岸パートの方がトリッキーで好き。

No.9 7点 take5
(2019/07/30 18:34登録)
マスカレードホテルの主人公達のサイドストーリー
イブなので二人が会う前のニアミス話。
東野圭吾は読みやすいです。

No.8 7点 Tetchy
(2016/06/30 23:43登録)
山岸尚美と新田浩介。本書は『マスカレード・ホテル』の文庫化を期に文庫オリジナルで刊行された名(迷?)コンビの2人の前日譚。
彼らの初々しさを髣髴させるエピソード集と云えるだろう。

例えば今ならば一流のホテル・ウーマンとなった山岸尚美ならばお客様に仮面を着けているなどとは心では思いこそすれ口には出さないだろう。1作目の「それぞれの仮面」の最後の方で元恋人宮原隆司と元プロ野球選手の不倫相手である女性に対して慇懃ながらも本心をオブラートに包んでチクリと皮肉を云うなどとは決してあるまい。こういうところに未熟さを交えるところが東野氏のうまいところか。

そして「ルーキー登場」で捜査一課に配属になったばかりの新田の活躍が描かれる。しかし事件の真犯人は証拠不足のまま逮捕不能となる苦い結末を迎える。これも若さゆえの青さを感じさせる物語だ。

また本書の美味しいところは山岸尚美のパートでは日常の謎系ミステリを、新田浩介のパートでは警察小説と2つの味わいが楽しめることだ。これらを卒なくこなす東野氏の器用さこそが特筆すべき点であるのだが。

この山岸尚美と新田浩介が登場シリーズは共通する題名から「マスカレードシリーズ」とでもいうのであろうか。そもそもこのマスカレードは非日常体験を提供する一流ホテルの従業員山岸尚美が客は日常とは違う仮面を被ってホテルへ集う、そしてその従業員もまた仮面を被って接しているのだというホテルはマスカレード=仮面舞踏会の舞台のようなものだというところから来ているが、本書に収録されている作品はつまりこの世は全て仮面舞踏会に過ぎないのだと云っているように思える。

ただ題名にマスカレードと冠しているためか、仮面、仮面と強調しているのはいささか煩わしい。押しなべてミステリの登場人物はいずれも仮面を被っているもの。最初には思いもかけなかった動機と犯人の素顔が明かされるのがミステリのカタルシスなのだから、何もホテルに来る人物はいつも仮面を被っているなどと強調しなくてもいいのだ。ホテルに来る人だけでなく、我々は皆仮面を被っている。公的な仮面と私的な場面における素顔、いや私的な場面においても仮面を被って演じなければならない時もある。それが我々人間の営みなのだから。

しかしホテル・コルテシア東京のデラックス・ダブルのデポジットが7万円。プレジデンシャル・スイートが1泊18万円!我々庶民には泊まれない高級ホテルである。
さらに新田の登場シーンもホワイトデーの夜に都内のホテルで女性と一夜を過ごしたシーンから幕を開ける。さらに上に書いたような新卒の刑事とは思えない裕福な暮らしぶり。う~ん、双方バブリーの香りがしてちょっと時代錯誤な印象があるなぁ。

ともあれ、日常の謎を含んだホテル・ウーマンのお仕事小説と初々しい若さ溌剌のルーキー、新田浩介が活躍する軽めの警察小説という万人に受けやすいブレンドコーヒーのような作品で、じっくり読むというよりも息抜きで軽く読める読み物といったテイストである。思えば探偵ガリレオシリーズもそうであったが、果たしてこの2人の今後の活躍に我々の胸を打つような重く味わい深い作品に出会えるのか。

いやそれよりもまだシリーズは続くのか、そっちの方が心配だ。

No.7 5点 ボンボン
(2015/11/02 15:16登録)
なんの引っかかりもなくスラスラ読めました。ほとんど苦労せず、試行錯誤もなく、観察と推理で事件解決。
フロントクラークの山岸さんは、すっきりと強い、なかなかいい感じのキャラクターでした。

No.6 5点 CHABI
(2015/06/21 22:36登録)
長編かと思いきや、短編集でした。
感心するようなトリック等はないです。
他人の仮面を剥がさずに素顔を想像する職業と、他人の仮面を剥がして素顔をさらけ出す職業の物語。

No.5 6点 まさむね
(2015/05/17 22:43登録)
 マスカレード・ホテルで出会う前の、山岸尚美と新田浩介それぞれの物語。ニアミスはあるものの、二人が直接接することはありません。個人的には、山岸尚美の人物設定に好感を抱きましたね。
 ガツンとした衝撃を受けるような展開でないだけに印象が薄くなる可能性もあるのですが、人間性を織り込み、ストレスなく読み進められる作品を次々に繰り出せる東野氏の筆達者ぶりは、やっぱりスゴイと思いますね。

No.4 6点 kanamori
(2014/11/14 20:35登録)
「マスカレード・ホテル」のダブル主人公、ホテルウーマン山岸尚美と、警視庁捜査一課の刑事・新田浩介が登場する連作中短編集。タイトルの”イブ”は”前夜”ということで、二人が「マスカレード・ホテル」で出合う前のエピソードが4編収録されている。

「それぞれの仮面」と「仮面と覆面」は、山岸を主役にホテルを舞台にしたトラブルを描く。
プロのフロントクラークならではの山岸の機転や推理が鮮やか。登場する元プロ野球選手や覆面作家・玉村薫のモデルが誰なのか、容易に想像できるのが可笑しい。
新田刑事編では、彼の人物像が浮き彫りになっている点はいいが、警察小説としてそれほど新味がある内容とはいえない。
最終話の中編「マスカレード・イブ」がプロットにヒネリがあり、まずまずの出来。ただ、サプライズの演出のために、もう片方側の情報が後出しになっていて、メイントリックも手垢のついたものですが。
ストーリーテラーぶりは相変わらずで非常に読みやすく、東野のファンであれば十分に楽しめるという評価。

No.3 7点 白い風
(2014/11/13 11:44登録)
マスカレード・ホテルの続編が希望だったけど、山岸と新田の出会う前のお話でしたね。
それにしても流石東野さん、ファンの裏を書きますね(笑)
今回は4編の短編集でしたが、どれも楽しめました。
やっぱり、山岸さんの推理がいいですね。
次回こそは二人の今後の長編でお願いします(笑)

No.2 6点 makomako
(2014/10/25 08:03登録)
マスカレードホテルでは連作風のエピソードを詰め込み過ぎて肝心のメインストーリーが薄められてしまったのの反省?からか、今回は連作でしかも分量も数なく、サクサク読めます。
 それぞれの話も語り上手で、それなりに興味をひき一気に読んでしまいました。
 だからとても感動したとかすごいといったことはありませんが、読んで不快というものでもなく一般的に言えばまあ良かったということでしょう。
 しかし私としては作者はもっと才能ある方と思いますので、こういった薄い作品を多量に書くのはそろそろやめて、じっくりと重厚な作品を書いてほしいのですが。

No.1 5点 haruka
(2014/09/30 00:52登録)
マスカレードホテルの両主人公が知り合う前のお話。ってことで、二人の絡みはないのですが、結構ニアミスしてます。どのお話も二人の推理が楽しめるのですが、可もなく不可もなくという感じです。

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