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ミステリの祭典

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冷たい太陽

作家 鯨統一郎
出版日2014年06月
平均点6.00点
書評数5人

No.5 7点 mediocrity
(2020/01/02 05:35登録)
仕掛けは非常に面白いと思います。
ただ、この作品、ライトノベル並みに軽く読めるのに、推理の根拠になった事柄は異様に細かいことばかり。多くの方は1時間半くらいで読み飛ばして、そんな細かい所まで気にしていなかったのではないでしょうか。
アンフェアではないんですが、なんだか予想していた解決と全く違ったので、あっけにとられたとでもいいましょうか。

この本は、推理懸賞クイズとしては満点の作品だと思います。
まだ読んでいない方は犯人当てクイズのつもりで、メモを取りつつ、一字一句に気を配りながら読み進めるのをお勧めします。

No.4 6点 蟷螂の斧
(2018/06/29 18:32登録)
会話が主体の文章でスラスラ読めるのが利点。トリックは面白いのだが、「やられた感」がなかったことが残念なところ。やはり無理が感じられるのである。身代金の受け渡しなどのアイデアは楽しめた。

No.3 7点 メルカトル
(2018/06/06 22:36登録)
数ある誘拐ものの中でもこれはかなり印象に残りそうな作品です。個人的には大変面白かったのですが、ミステリマニアの受けは良くないかもしれません。それは、物語のすべてを読者を騙すためだけに書かれたのだと誤解させるような仕上がりになってしまっている為です。しかし、よく考えてみれば、ミステリの本質はマジックと同じでいかに読者を欺くかであることを鑑みれば、これはこれでありなのではないかと私は考えます。

本作は終始淡々とした文体で綴られており、サクサクと読めます。そこに感情移入など予断が入り込む隙間はありません。言ってみれば映画のシナリオのようでもあります。しかし、油断して読み飛ばしていくと、後で後悔することになります。そう、その時点で既に作者の策略に嵌っているからです。二度読みなど面倒なことをしたくないという方は、十分細心の注意を払って読み進めなければなりません。ただ登場人物は多いですが、混乱するような事態にはならないのは、作者の手腕ではないかと思います。

多くの読者が騙されることになるでしょうから、むしろ騙されたいと思いながらミステリを読んでいる向きにはお勧めです。もし、この仕掛けを見破ることができたら大いに自慢してもよいと思います。それほどにこの一撃の及ぼす心理的ショックは大きく、決して後味が良いとは言いませんが、後を引きずる可能性が大いにあるのは間違いないでしょう。

No.2 5点 まさむね
(2015/05/05 17:47登録)
 トリッキーな誘拐物と言えるのかな。読中は、これまで作者に抱いてきた印象と違っていて、失礼ながら、へぇこういうのも書けるんだ…と感心しつつ、読後には、まぁ確かにこの作者らしいのか…っていうのが率直な感想です。
 とある1本の仕掛け頼った作品であり、無理筋な面や、とってつけたようなミスディレクションなど、気になる点が多々あるのも事実ですが、着眼点を含めた総合的な印象は悪くないです。ドラマ台本のような淡々とした進行については好き嫌いが分かれそうですが。
 ちなみに、kanamoriさんと同様、私も読後に乾くるみ氏の名前が思い浮かびましたねぇ。

No.1 5点 kanamori
(2014/06/26 21:36登録)
「娘を預かった。返してほしければ五千万用意しろ」-----食品会社社長の高村家にかかってきた一本の電話から全てが始まった。幼稚園に問い合わせると、確かに娘の美羽が行方不明になっていたのだ--------。

あらすじだけを見ると、作者が新境地を開いたかのような誘拐を題材にした謎解きサスペンス.....なのですが、読了後は「やはり、鯨統一郎」といった感じのミステリになっている。
ユニークな身代金の受け渡し手段とか部分的に面白いところがあるものの、全てが”ある仕掛け”に奉仕するために構成されているので、かなり不自然でリアリティがない部分が目立ちます。虚偽の記述はないにしても、騙し方にあざとさを感じてしまう。とくに、読者と同じメタレベルに近い形で、かすみが探偵に情報を提供する方法はご都合主義といわれてもしようがない。
メインのアイデア自体は(既視感はあるものの)そう悪いとは思わないので、乾くるみとか、誰か別の作家が巧く書いていれば傑作になっていたかも知れない。
なお、表紙のイラストが連城三紀彦の「小さな異邦人」にちょっと似ている。くれぐれも間違って買われないようにw

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