home

ミステリの祭典

login
怪しい店
作家アリス&火村シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日2014年10月
平均点6.30点
書評数10人

No.10 6点 バード
(2021/02/06 08:41登録)
本短編集は「店」が共通テーマ。『絶叫城殺人事件』もそうだが、統一テーマものは結構好き。今後『暗い宿』にも挑戦したい。

<個別書評>
・古物の魔(6点)
モノの値段を決めるのは客というのには、はっとさせられた。今後、買い物で悩んだらこの考え方に従おう。収録作の中で、一番気に入ったストーリー。

・燈火堂の奇禍(6点)
店主の奇妙なポリシーが死に設定でなく、事件の原因として活きておりgood。無駄話少な目の引き締まった良短編。

・ショーウィンドウを砕く(6点)
犯人像がイマイチ掴めなかったが、火村の仕掛けが冴えており、ミステリとしては収録作の中で一番好き。

・潮騒理髪店(6点)
旅先で髪を切った経験はないけれど、冒険するのも意外と楽しそう。変な髪型になっても笑い話できるしね。

・怪しい店(5点)
表題作だが本短編集の中ではワースト。ミスリード以外に役割の無いキャラが多く、物語に締まりがない。短編なのだから仕方ない、のではなく短編なのだからこそ、そういうキャラのシーンはカットすべきと思う。

No.9 6点 HORNET
(2017/09/18 19:36登録)
 火村&作家アリスシリーズの短編集。相変わらず、短編というサイズに程よい適度な仕掛けのパズラーで、安心して読める。
「古物の魔」…骨董屋の店主の撲殺事件を解くフーダニット。最後、犯人を追い詰めていく火村の推理が心地よい。無難に面白い。
「燈火堂の奇禍」…アリスが立ち寄った先で前日に起こった強盗事件の真相を解く。ちょっと日常の謎テイストの、面白い仕掛け&真相。
「ショーウィンドウを砕く」…倒叙モノ。喫茶店のくだりで、ほぼ看破できる。(これはどういう意味で「店」に関係する作品とされているのか?そっちのほうが謎だった(笑))
「潮騒理髪店」…火村が調査先で立ち寄った理髪店での、日常の謎。昭和の映画のようなシーンと、鄙びた村の雰囲気にほっこりする作品。
「怪しい店」…「みみや」と称して悩みある人の話を聞くことを生業としていた女性の殺害事件。本短編集ではもっとも本格的。

 有栖川氏の短編集なので、基本水準が下がることはなく、安心して読めます。

No.8 6点 メルカトル
(2017/07/12 20:40登録)
「店」をテーマにしたご存じ火村&アリスシリーズの短編集。本格、倒叙、日常の謎と色々取り揃えております。さすがに有栖川氏の名に恥じぬ作品が並んでいますが、逆に言うと有栖川ブランドの域を良くも悪くも超えることなく、すっきりまとまっている感じがします。
中には『潮騒理髪店』のような絵になる、印象深いものもありますが、いずれすぐにでも忘れてしまいそうな短編が多いですね。私はどちらかというと破天荒な、どこか突き抜けたような作品が好きですが、その意味では残念ながら本短編集は小ぢんまりしすぎていて、これは、と思うようなのがないんですよね。ただ、相変わらず端正なつくりの、好感度の高そうな作品が並んでいるので、一般の読者にもすんなりと受け入れられそうではあります。
表題作にはイメージを裏切る「店」が出てきます。むしろ立派な店を構えているわけでもなさそうなので、読者は意表を突かれるかもしれません。しかしタイトル通り十分怪しいのは間違いないので、これを表題に選んだのは正解だった気がします。こんな怪しげな商売が成り立つ現代の病的な世相を浮き彫りにしている点は、確かに面白いです。
まあしかし、たまには有栖川もいいんじゃないですか。大作じゃなくてもちゃんとした作品を書いていますから。ある意味、裏切らない作家だと思います。

No.7 7点 青い車
(2017/01/20 12:13登録)
 2014年に刊行された、火村英生シリーズ短篇集。やはり安定した手堅い話が揃ってます。大きく外れた作品がないので、作者に興味を持った人が手軽に読むのに最適な一冊ではないでしょうか。
 以下、各話の感想です。
①『古物の魔』 相変わらずホワイの捻り方が上手。あくまで短編向きのネタだけど面白い。
②『燈火堂の奇禍』 殺人以外の事件を扱って目先を変えた作品。過去の作品の登場人物名が出てくるのもサービスもあり。
③『ショーウィンドウを砕く』 推理の内容は小ぢんまりしているが、犯人の心理は倒叙形式にマッチしていて読応えがある。
④『潮騒理髪店』 切なさを残す読後感が良くて「おいしい箸休め」的な一編。
⑤『怪しい店』 作者にしては珍しい意外な犯人を引っ張り出す終盤と、それをアンフェアに陥らせない書き方が印象的。

No.6 7点 ボンボン
(2016/09/09 00:02登録)
軽妙洒脱というのだろうか。スマートで巧みな筆さばきに磨きがかかり、どんどん軽やかに、透明になっていくような。このままいくと二人は34歳にして老成しきってしまうのではないかと多少心配になる。
(ネタバレあり)
『古物の魔』:地味だけれど、小事の隙を突いて見たことのない結論に至る火村らしい推理。最後の解決の段は、静かな緊迫感があり、魅せられる。
『燈火堂の奇禍』:楽しい展開。平和な日常の謎。
『ショーウィンドウを砕く』:犯人視点。腹の奥底に激しい怒りを持った人が哀しい壊れ方をする話。子供時代、強烈に辛い感情に蓋をして、一見無感情になっているが、無自覚な怒りの衝動を持っている。完全犯罪をしっかりやっているつもりなのに、ボロボロと取りこぼしている様子が、狂ったロボットのようで凄く怖い。そんな犯人の目には火村の「闇」が映る。
『潮騒理髪店』:火村が聞かせてくれる旅先での話を、アリスが良質な日本映画の小品のイメージで「勝手に色々と潤色」して脳内上映するため、ところどころ過剰に素敵な気分になっているのが可笑しい。実は結構な毒が含まれているが、それをスルーしてしまう、とてもいい話。
『怪しい店』:火村とアリスの深淵にコマチさんがサクサクと切り込んでいくので、シリーズのファンは必読。

No.5 6点 まさむね
(2015/03/07 18:03登録)
 火村シリーズの短編集で、すべて何がしかの「店」をテーマにしています。「宿」をモチーフにした同趣旨の短編集「暗い宿」の姉妹編ですね。
 相変わらず、火村と有栖川の掛け合いが楽しい。ベストは、ちょっと無理筋な面がありつつも、「画になる」シーンが多々登場して印象的だった「潮騒理髪店」か。

No.4 7点 白い風
(2015/02/10 17:32登録)
火村英生シリーズの5編の短編集。
この中では唯一事件が起こってない「潮騒理髪店」が好きです。
犯人側から見た「ショーウィンドウを砕く」も視点が変わっていて面白いけど、殺人の動機がビミョウだったな。
火村シリーズも嫌いじゃないけど、もうそろそろ江神二郎シリーズも読みたいな。

No.3 7点 虫暮部
(2015/01/13 10:50登録)
 どの短編も良いが、中でも「ショーウィンドウを砕く」で描かれる加害者の動機の微妙な心理に説得力を感じた。が、安易なミスをポロッとやっちゃうのは如何なものか。「潮騒理髪店」は旅行記のような面白さはあるがミステリ的には少々強引な気がする。
 そしてやはり全篇に亘って、文章のさりげない巧みさが素晴らしい。

No.2 6点 kanamori
(2014/12/16 18:47登録)
いろいろな”店”を題材にした作家アリス&火村シリーズの連作中短編集。”宿”がテーマだった「暗い宿」の姉妹編のような位置づけの作品集で下記5編を収録。(一部ネタバレあり)

「古物の魔」は骨董屋の店主殺し。火村が言うように、”殺害時刻を誤認させる工作がアリバイ偽装のためではない”という、犯人の動機が非常にユニークです。火村と船曳捜査班との関係が何となく探偵ガリレオっぽいですね。
「燈火堂の奇禍」は、古書店の事件ということで、当然のごとく”日常の謎”を扱ったアームチェア・ディテクティヴになっているw
「ショーウィンドウを砕く」は倒叙もの。全て犯人視点で語られる火村や大阪府警の面々がちょっと新鮮な感じを受ける。
「潮騒理髪店」は、田舎町へ取材で訪れた火村の視点で語られる”日常の謎”もの。ミステリ的には普通ですが全体の雰囲気がよく、編中の個人的ベスト作品。
最後の「怪しい店」は、1話目の「古物の魔」と同様に、大阪府警の船曳班の捜査に火村とアリスが協力するオーソドックスなフーダニット。出来自体は可もなく不可もなくというところ。

No.1 5点 mozart
(2014/12/10 11:25登録)
このシリーズとしてはまずまずの水準と言えるかも。
以下個別の感想:
「古物の魔」:そこまでこの仕事に入れ込んでいたとは……。
「燈火堂の奇禍」:火村の名推理はなかなかのものでした。
「ショーウィンドウを砕く」:この動機はちょっとどうかと。「完全犯罪」も結構杜撰だし。
「潮騒理髪店」:自分も(1000円カットではなく)ちゃんとした床屋に行きたいと思い直しました。
「怪しい店」:本筋とは別の所が面白かったりして。

10レコード表示中です 書評