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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1258件

プロフィール| 書評

No.1218 6点 探偵AIのリアル・ディープラーニング
早坂吝
(2025/03/01 21:35登録)
 ラノベ的な展開&書きぶりに、前半は少し戸惑ったのですが、連作短編全体として巧く流れているし、ミステリとしても成り立たせていることには感心(ちょっと無理のあるネタもあったけど)。特に最終話 「中国語の部屋」 の仕掛けは好きですね。AI探偵という、新しい感覚で読めたのも自分としては楽しかったな。


No.1217 5点 猫の耳に甘い唄を
倉知淳
(2025/02/24 21:32登録)
 うーむ。丁寧であり、フェアであり、念入りでもありましょう。で、あるが故に、カタルシスには至らない。
 うーむ。作者の親切心が強く出過ぎたということで。


No.1216 6点 新 謎解きはディナーのあとで2
東川篤哉
(2025/02/22 21:17登録)
 シリーズ第2章の第2弾。影山執事の暴言が優しめになったなぁ、とか、風祭警部の着眼点が何気に良くなっているなぁ、とかいう印象はありつつも、いつもの黄金の流れの5短編を収録。不思議とマンネリ感はありません。むしろ安心して読める心地よさを感じましたね。ミステリとしても、小粒ではあるものの、安定した面白さがあります。アイドル・キラリンが印象的な「灰色の血文字」、なぜ被害者の服を奪ったのか「服を脱がされた男」あたりが、作者らしくて好きですね。


No.1215 6点 一寸先の闇 澤村伊智怪談掌編集
澤村伊智
(2025/02/13 21:40登録)
 ホラー21連発の掌編集。時間の隙間に少しずつ読んでいこうと思っていたのですが、次の掌編も気になるなぁ…が続いた結果、あっという間に読み切ってしまいました。
 ちょっと意図をつかみきれない作品もあったのだけれど、多彩なパターンで楽しめます。たった2ページでの反転が見事な「せんせいあのね」、想定外のオチ「さきのばし」、ひっそりと怖い「満員電車」辺りが好み。


No.1214 6点 パンとペンの事件簿
柳広司
(2025/02/11 21:07登録)
 1910年代に実在した「売文社」を舞台とした連作短編。
 勉強不足で、「売文社」はもとより、機関紙「へちまの花」、さらに堺利彦、大杉栄、荒畑寒村、小口みち子らの名も初めて知ったのですが、皆が生き生きと描かれていて、読み心地は良です。当時の時代背景も含めて、勉強にもなりました。ミステリー度は低いのですが、自由とは何か、世評とは何か、今に繋がる課題を考えさせられもして、良い読書をさせていただきました。


No.1213 7点 ミステリ・トランスミッター 謎解きはメッセージの中に
斜線堂有紀
(2025/02/09 13:33登録)
 粒ぞろいの短編集。SFあり、ハードボイルド調ありと筆も幅広く、読者を飽きさせません。読ませます。6.5点を切り上げてこの採点。
①ある女王の死:ある女性の一代記。
②妹の夫:SF。時空を超えた伝達と推理。通信官ドニが素敵。
③雌雄七色:タイトルがアレだけど、二度読みはしました。
④ワイズガイによろしく:一転してハードボイルド調。
⑤ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会:キャラもの?


No.1212 6点 夜ごと死の匂いが
西村京太郎
(2025/02/06 23:20登録)
 7つの短編を収録。
 4短編は刑事(主に十津川)視点。十津川やその相棒の設定が短編ごとに微妙に異なっていたりする辺りは興味深いです。
 残り3短編は私立探偵(森恭介or秋葉京介)視点で、個人的にはこちらの方が好み。スピード感と意外な結末で楽しませてくれました。
 各短編が発表されたのは、1971年~1977年までの間。トラベルミステリー注力期以前の、作者の様々な試みが垣間見える短編集でした。


No.1211 5点 本格的 死人と狂人たち
鳥飼否宇
(2025/02/03 21:37登録)
 バカミス好きの私としては、思ったよりも?マトモというか、しっかりしていた印象…いや、そうとも言い切れないか。うーむ。「本格的」というタイトルどおりかもしれない。
 増田助教授が嫌いになれないのだけれども、続編「官能的」を読んでみるべきか否か、暖かくなる頃までに考えてみたいと思います。


No.1210 6点 朝比奈さんと秘密の相棒
東川篤哉
(2025/02/01 15:11登録)
 鯉ヶ窪学園を舞台とする連作短編集。であるので、確かに「鯉ヶ窪学園シリーズ」なのだろうけど、主要メンバーは一変しているし、新シリーズと捉えた方がいいかもしれません。
 まずは、理事長の娘であり、在校生でもある朝比奈譲がいい味を出しています。(別シリーズでも同じようなキャラが…という突っ込みも含めて、)いかにも作者らしいキャラ設定です。相棒となる石橋君のキャラ変体質は、何とも都合よすぎる設定だなぁ…とは思うのですが、短編的には良い変調をもたらしているし、まぁ、いいか。
 中身としては、丁度いい小粒感。いや、決して悪い意味ではなく、気楽に読める短編集としていいんじゃないかな。


No.1209 7点 毒入りコーヒー事件
朝永理人
(2025/01/21 23:02登録)
 これは面白かった。
 「誰が毒を入れたのか」。登場人物が限られている中、その真相解明の過程が楽しかったですね。そして終盤の怒涛の絵解き?が素晴らしい。
 「カップの底から真相が浮かび上がるとき、読者は『自分が何服も盛られていた』ことに気付くだろう」との、市川憂人氏の推薦文は、非常に的を射ています。手軽に読み進められる文量でもあるし、一読の価値はあると思います。個人的に、こういう作品は大好物だし、長く印象に残りそう。


No.1208 6点 みどり町の怪人
彩坂美月
(2025/01/19 21:39登録)
 埼玉県内の架空の地方都市を舞台とした連作短編集。時代設定は1990年代初めで、SNSはおろかインターネットも一般化しておらず、都市伝説が私たちの傍にあった時代。その町には怪人が出て、女性と子どもを殺すという噂があった。実は過去に、母子殺人事件があり、犯人は未だに捕まっていない…。
 …と書くとホラー感満載と思わされそうだけれども(まぁ、そういった要素も無くはないのだけれど)、各短編はイイ話も多く、読後感も悪くないです。主人公が短編ごとに変わるのも、気分が変わって悪くないかな。最終話は、予測どおりではありましたが、どうなのかなぁ。そういう結末でいいものか、ちょっと考えさせられはしましたね。


No.1207 6点 成瀬は信じた道をいく
宮島未奈
(2025/01/13 21:57登録)
 sophiaさんのおっしゃるとおり、最終話「探さないでください」はミステリーとも言えましょう。そういうことで、続編も書評しちゃおう。
 いやはや、今回も成瀬あかりとその周りの仲間がいいなぁ。笑いつつ、何か泣きたくなるんだよなぁ。こういう時代だからこそ、成瀬あかりが必要なのかもしれない。純粋に楽しく読みました。


No.1206 5点 改訂・受験殺人事件
辻真先
(2025/01/11 16:43登録)
 スーパー&ポテト・シリーズ第3弾。「中学」・「高校」と来て、今回は「受験」か。ふむふむ。
 なかなか魅力的な謎で楽しく読めたのだけれど、その真相自体は些か凡庸かもしれません。でも、構成の妙や意外性の演出は流石であります。あらためてタイトルを振り返って、なるほどねぇ。


No.1205 6点 人外境ロマンス
北山猛邦
(2025/01/08 22:39登録)
 「つめたい転校生」と改題された文庫版で読了。
 「物理の北山」とも称される作者ですが、その真の良さはファンタジー的要素を含んだ作品にこそ表れると個人的には思っています。本短編集は、まさに作者の特長を示す内容と言えるのですが、各短編の根幹を成す部分が同じであるだけに(まぁ、そうした短編集なのだから仕方ない部分はあるのだが)、ちょっと割を食っている面はあるかも。
 収録作の中では「いとしいくねくね」が抜けている印象。収録作の4番目で、中だるみ感も多少抱きつつ読み進めたうえでのラストが結構衝撃。いやはや、よく考えればそういうことなんだよね、ダラダラ読んじゃダメなんだよね。でも、楽しめたということは、お得な読者だよね…ということで印象に残りそうです。


No.1204 5点 まず良識をみじん切りにします
浅倉秋成
(2025/01/05 19:42登録)
 ブラックユーモア短編集。いずれの短編も極端な人物が登場し、ナンセンスな展開が繰り広げられるのですが、心情が分からないではない(むしろよく分かる?)辺りがミソ。考えさせられもするのですが、作者らしい「捻り」を期待すると、肩透かしかもしれません。
 「行列のできるクロワッサン」のバカバカしさと絶妙な心理展開、「ファーストが裏切った」の深みが印象に残ったけれども、最終話の「完全なる命名」における新米パパの妄想と現実が素敵でした。


No.1203 7点 半席
青山文平
(2025/01/03 21:48登録)
 江戸を舞台とした連作短編。ホワイダニットとして秀逸だと思うのですが、主人公・片岡直人の成長譚として、その絡ませ方も巧い。直人の上司・内藤雅之の人間味もいいですねぇ。どの短編も良作なのですが、特に「六代目中村庄蔵」のホワイとその結末は結構沁みました。良き短編集だと思います。


No.1202 7点 田沢湖殺人事件
中町信
(2024/12/23 20:05登録)
 トリック盛り沢山のうえ、鮮やかな反転。素晴らしいです。時刻表の件は、あまりに恣意的な「待ち合わせ場所」であったため、結構分かり易いとは思うのですが、それはトリックのごくごく一部。伏線は十分にあるのだけれど、想定できなかったなぁ…。隠れた?名作だと思います。


No.1201 6点 幸せな家族 そしてその頃はやった唄
鈴木悦夫
(2024/12/20 23:16登録)
 「孤高のジュヴナイル・ミステリ、復活」との帯に惹かれ、中公文庫版を購入。
 大まかなポイントは多くの方が序盤から見通すのだと推測しますが、その一つ一つに工夫が施されているので、それはそれで興味を切らさず読み進められたと思います。どんどんページをめくらされます。ラストも、最終的な結論としては想定内としても、その経過はなかなかに衝撃的。
 でもこの作品、読者のターゲットが本当に少年少女だとしたら、ちょっとアレだなぁ。いびつさの度合いがね。まあ、それが作者として描きたかった芯なのだろうし、それが無ければ小説としても成り立たないのでしょうがね。


No.1200 5点 東北新幹線(スーパー・エクスプレス)殺人事件
西村京太郎
(2024/12/15 21:24登録)
 東北新幹線が大宮~盛岡間で開業したのは1982年6月だそうで。「やまびこ」と「あおば」か。懐かしい。
 それが南は東京駅まで延び、北は海を越えて函館北斗駅まで延びているのですから、時の流れを感じますねぇ。東京駅で乗り換えて、東海道・山陽・九州新幹線と繋げれば鹿児島までか。北陸にも新幹線で行けるし。新幹線のおかげで、国内の時間的な距離はすごく縮まりましたよね。
 で、この作品の初出は1983年1月。さすがは西村京太郎先生。素早くサスペンスの舞台に取り入れています。サクサクと読ませる点や、在来線と接続していない白石蔵王駅を取り上げる点は作者らしい(岐阜羽島駅とか好きですしね)。
 ちなみに、突っ込みたい点も。指定席確保の順番って、そうなの?最初の被害者が可哀そうすぎないか?それと、十津川さんと亀井さん、今回ミス多すぎ。特に最初の「やまびこ」での段取りがダメすぎましたね。


No.1199 7点 ごんぎつねの夢
本岡類
(2024/12/11 21:48登録)
 中学卒業後15年を経て開催されたクラス会の会場に、キツネの面を被り、散弾銃を持った男が立て籠もった。その男はかつてのクラス担任だった…。
 序盤から興味津々。なぜそのような事件を起こしたのか、犯人である恩師から託された「ごんぎつねの夢を広めてくれ」とのメモの真意は何なのか…。教え子であるノンフィクションライターがこれらの謎を追い掛けます。展開もスピーディーで、グイグイ読まされました。
 ストーリーの基軸となるのは新見南吉の「ごんぎつね」。小学校時代に教科書で読んだ方も多いと思います。私は、細かいストーリーはうろ覚えだったものの、ラストの情景は強く印象に残っておりました。本書を通じ、新見南吉に関する蘊蓄も含めて、あらためて「ごんぎつね」を振り返れたこと自体が意義深い。
 全体的にはヒューマン・文芸ミステリーとでも評すればよいのでしょうか。犯人や関係人物の種々の行動には理解しがたい面があるし、ミステリーとしては平板なのかもしれませんが、個人的には良質な読書でありました。

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