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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.1155 7点 ミステリー・オーバードーズ
白井智之
(2024/04/27 23:14登録)
 バラエティに富んだ短編集で、本格度も高いです。白井度は作品によって格差アリ。耐性が無くても意外にイケるかも(責任はとれないけど)。
①グルメ探偵が消えた
 舞台は英国。失踪したグルメ探偵の行方を追うお話。翻訳調の語り口が珍しいなぁ…と感じつつも、ラストはやはり白井智之。
②げろがげり、げりがげろ
 タイトルからして白井智之。でも読み進めるほど、内容に即した、秀逸なタイトルであると気付く。ちょっと笑える、作者らしい特殊設定ミステリ。
③隣の部屋の女
 心理サスペンス風。多くは書かないけれど、作者としては珍しい展開。
④ちびまんとジャンボ
 本格度の高さとハチャメチャな内容のコラボが雑妙な味を醸し出している。作者らしさ全開。
⑤ディティクティブ・オーバードーズ
 これは斬新。複数の「信頼できない語り手」から犯人を絞り込むロジックが見事。


No.1154 6点 村でいちばんの首吊りの木
辻真先
(2024/04/15 23:10登録)
 短編集。大技が炸裂するものではないですが、作者が各短編に込めたメッセージも含め、意義深く読ませていただきました。特に表題作は、作者にとって思い出深い作だそうですので、益々意義深い。
①村でいちばんの首吊りの木
 謎の一部は「ありがち」だけれど、ラストの次男の考察には結構びっくり。
②街でいちばんの幸福な家族
 結末が何となく予測できるとは言え、軽快な展開が好印象。良かった。
③島でいちばんの鳴き砂の浜
 ミステリとしては平板。でも語り手の無主物たちの語りが結構楽しい。


No.1153 5点 博士はオカルトを信じない
東川篤哉
(2024/04/13 15:10登録)
 (自称)天才発明家のアラサー女性博士と、両親が探偵事務所を経営している中2男子のコンビによる短編集。新シリーズとはいえ、何かどこかで見かけた雰囲気ですし、東山節も健在。コンビが変わっただけ?という気がしないでもない。
 スラスラ読みやすいのですが、トリックは相当に小粒。すごく小粒。その中でも、最終話「天才博士と靴跡のアリバイ」の発想は嫌いではないです。


No.1152 6点 蔭桔梗
泡坂妻夫
(2024/04/07 16:20登録)
 大人の恋愛を描いた短編集。ミステリの側面を期待して読むと肩透かしかもしれませんが、こういった短編集も悪くない。11篇で構成。印象に残った作品の短評を。
「遺影」:おっ、そう来たかという作品。全篇読み切ったうえで振り返ると、この短編集の中で特異的とも言える。
「簪」:それぞれの人情が沁みる。
「蔭桔梗」:職人と職人を取り巻く方々の心意気が響く。
「十一月五日」:歯医者のシーンから始まる構成の妙。
「竜田川」:最もミステリに近いか。
「くれまどう」:夫婦とは何かを問う短編。


No.1151 8点 地雷グリコ
青崎有吾
(2024/04/04 20:31登録)
 まずは、対戦するゲームの設定が絶妙です。じゃんけんグリコ、神経衰弱、だるまさんが転んだなど馴染み深い遊びをベースとして、それに追加されるルールもさほど複雑ではないので、面倒くさがりな私でも、スッと頭に入ってきます。だからこそ、ゲームの奥深さも理解しやすい。
 射守矢真兎の快進撃?に爽快感を抱きながらの、中盤以降の展開も好印象。頭脳戦のみならず、ルールの隅を突く戦略や心理戦の要素が抜群に面白かった。どの短編も楽しめたのですが、特に「自由律ジャンケン」と「フォールーム・ポーカー」が良かったかな。


No.1150 7点 爆弾
呉勝浩
(2024/03/26 23:04登録)
 微罪で警察に連行され、取調室で秋葉原の爆発を「予言」した中年男性。自らを「スズキタゴサク」と名乗り、霊感が云々、記憶がない云々を語る、この人物のキャラがすごい。
 彼は何者なのか、目的は何なのか。次の爆発を防がんとする警察との頭脳戦を経て、その全景が見えてくるのか…という興味でグイグイ読まされました。サスペンスとしても、警察小説としてもレベルが高いと思います。


No.1149 5点 マイクロスパイ・アンサンブル
伊坂幸太郎
(2024/03/20 11:28登録)
 もともとは、猪苗代湖を舞台とした音楽イベントの来場者に小冊子として配られた短編小説。イベントが毎年開催された結果、7年間で1冊の本にまとまったようです。
 そういった経緯もあるからなのか、全体として見ると多少散漫な印象もございますが、お伽噺と現実世界との組み合わせ方は伊坂さんらしいし、温かい気持ちにさせてくれました。


No.1148 6点 五覚堂の殺人~Burning Ship~
周木律
(2024/03/16 23:15登録)
 堂シリーズ第三弾。今回も「館×数学」ミステリであります。
 前作を読んでから随分と月日が経ってしまったので、人物設定があやふやなまま読み進める形になったのですが、やっぱり某作者の某シリーズが思い浮かんじゃいますよねぇ。まぁいいけど。
 密室のうち一つは、本当にできるのかという意味で、驚きました。でも、これは一般的な読者には分からないと思いますね。また、とある登場人物の特性については、「なぜ明言しない。なぜぼかす。何を狙っているのか?」と疑心暗鬼に。最終的には「そのままかい!」と、むしろ清々しく突っ込めます。
 数学を介してはいるものの、全体としてはオーソドックスな館ものという印象。時間軸の設定等も面白かったかな。


No.1147 6点 聖母
秋吉理香子
(2024/03/10 22:46登録)
 単にトリックとしてということではなく、テーマとの結び付け方も含めて、非常に上手く組み立てられていると思います。
 一方で、「分かりやすそうだけど全体像として結びつかない…」という思いを継続しながら読み進めた割に、読後の(ある意味での)爽快感は思ったほどではなかったかな…という印象も。帯の惹起文言が悪影響を及ぼしているような気もするのですが…。


No.1146 7点 午後のチャイムが鳴るまでは
阿津川辰海
(2024/03/04 21:25登録)
 馬鹿馬鹿しいことに情熱を注ぐこの高校生たちは、馬鹿だ。お前は当時どうだったかって?ええ、勿論、馬鹿でした。懐かしくて愛おしい奴らだなぁ。「あの頃に戻りたいなぁ」と久方ぶりに思えた青春ミステリでした。
 こういった高校生たちの描写も含めて、上手い作品です。短編単独ではフィットしなくても、高校時代を思い起こしながら読み進めるのが吉。ラーメンも旨そうだったし。
 ちなみに、「Bでも仕方がない」とう言い回しは、少なくとも私は、「AでもBでも仕方がない(AもBもダメ)」という意味ではなく、「AはダメなのでBでも仕方がない(AはダメなのでBでもやむを得ない)」という意味で使いますねぇ。つまりは「次善の策」。虫暮部さんの別解には感銘を受けました。


No.1145 6点 ハッピーエンドにさよならを
歌野晶午
(2024/02/28 23:32登録)
 11篇からなる短編集。出来栄えは作品によってマチマチな印象。タイトルどおり、どの短編もハッピーエンドとは無縁ですが、社会問題を絡めつつ考えさせられる短編も複数ございました。
①おねえちゃん:悲しい話ですなぁ。
②サクラチル:ストンと落とされた。
③天国の兄に一筆啓上:凡作と言わざるを得ない掌編。
④消された15番:正直、ピンとこなかった。
⑤死面:過去の真相の想定はつくが、ラストの一ひねりは作者らしい。
⑥防疫:最後の言葉が効いている。
⑦玉川上死:ミステリ的な側面は最も強いが、序盤で想定ができる面も。
⑧殺人休暇:ラストの1行がいい。自分も読中そう思った。
⑨永遠の契り:バッドエンドとはいえ、思わず笑ってしまった掌編。
⑩In the lap of the mother:この掌編も苦笑い。パチンコは怖い。
⑪尊厳、死:人の尊厳とは。なかなか深い。


No.1144 6点 神酒クリニックで乾杯を
知念実希人
(2024/02/24 19:01登録)
 ゴリゴリの医療ミステリかと勝手に勘違いしていました。ライトなサスペンスといった感じでしたね。
 雰囲気としては悪くなく、一気に読まされました。一方で、反転を織り込みつつ真相に迫っていく展開に、良くも悪くも「優等生」的な印象を受けたことも事実。極端なキャラ設定も好き嫌いが分かれるか。切り上げてこの採点。


No.1143 4点 変な家
雨穴
(2024/02/21 23:06登録)
 作者の作品は「変な絵」を先に読んでいて、意外に?楽しく読ませていただいたことから、話題のデビュー作もそのうち読んでみようか…と考えておりました。最近文庫化されたことを機に、ようやく手にした次第です。
 で、正直、積極的な評価はしにくいですねぇ。間取り図が関係するのは前半だけで、後半は親族関係が複雑化されたたうえ、単に結論を読まされただけという感じ。内容的にも強引すぎはしないか。文庫版では、栗原設計士による「文庫版あとがき」も追加収録されていたのですが、これまた微妙でした。
 一方で、冒頭で触れたように、2作目の「変な絵」は良かった。ということは、この間で確実な進化があったとも捉えられる訳で、最新作「変な家2~11の間取り図~」に手を出してみる価値はあるのではないかと、考えているところです。


No.1142 7点 案山子の村の殺人
楠谷佑
(2024/02/20 23:01登録)
 従兄弟で合作推理小説を書いている大学生コンビが、秩父の山奥の村で遭遇した殺人事件。奇をてらわないクラシック・スタイルの本格モノで、好感を持たれる同志の方も多いと思います。登場人物の造詣も上手く、ストレスなく読み進められます。密室の謎は小粒かもしれませんが、ミスディレクションには感心。ぜひとも続編を書いてほしい。


No.1141 8点 好きです、死んでください
中村あき
(2024/02/15 21:31登録)
 いいですねぇ。好きですよ。
 恋愛リアリティーショーという舞台設定を最大限活かしています。「三年×組にて」と題された幕間の存在も大きい。様々に想定しながら読んだものの、完全にしてやられました。新鮮味のあるクローズドサークルものです。
 リーダビリティも高く、ほどよい「軽み」も好印象。映像コンテンツやSNSに対するメッセージ性も含めて、一読の価値はあると思います。


No.1140 5点 119
長岡弘樹
(2024/02/12 17:31登録)
 和佐見市の漆間分署(いずれも架空)に所属する消防官たちを主人公に据えた連作短編集。9作で構成されますが、全短編を振り返ると10年の歳月が流れていることになります。ある短編で脇役だった者が後の短編で重要な役割を担ったりしていて、それぞれの登場人物による群像劇的な面もございます。
 短編ごとに見ると、こじつけ感や違和感が引っかかる作品もありますし、全体として中弛み感もあったのですが、前述の要素が連作短編集として一定の効果を発揮してくれた後半以降、多少盛り返してくれた感じでしょうか。


No.1139 4点 製造迷夢
若竹七海
(2024/02/09 23:49登録)
 渋谷猿楽署の刑事・一条風太とサイコメトリー能力を持つ井伏美潮のコンビによる連作短編集。
 物語としてサイコメトリーを活用すること自体、私は否定的にとらえているものではなく、むしろミステリとして絶妙な調味料にもなろうと思っています。でも、それは素直にストレートに使ってほしいなぁ…という気もしていて、それにドラッグやら何やらをかまして複雑化されてしまうと、どうにも興味が減退してしまう面がありました。
 若竹作品の中では異色作として位置づけられると思うのですが、成功しているかと問われれば、個人的には消極的な評価になってしまいます。辛口ですが敢えてこの採点で。


No.1138 6点 秘書室の殺人
中町信
(2024/02/05 22:06登録)
 文庫版で250ページ弱という文量ながら、作者らしい企みに満ちた作品。プロローグの仕掛け自体の驚きはないものの、ソコも含めた全体構成がいかにも中町信らしい。発端となった秋保温泉での事案に関してはちょっとモヤモヤした気持ちがあるし、色々とご都合主義的な部分もあるけれど、最後まで引っ張っていただけたので、楽しい読書ではありました。


No.1137 8点 出版禁止 死刑囚の歌
長江俊和
(2024/02/03 07:41登録)
 二人の幼児が殺害される事件(柏市・姉弟誘拐殺人事件)が発生。犯行を自供した男の死刑が確定する。当該事件の22年後、幼児の両親が殺害される事件(向島・一家殺傷事件)が発生。死刑は既に執行されており、男の犯行はあり得ない。両事件の裏には何があるのか…。
 複数のルポルタージュや雑誌記事を読み進める形で、徐々に真相が明らかになっていきます。先が気になってグイグイ読まされました。不穏な空気が序盤から漂っているので、それなりに注意深く読んできたつもりだったのですが、ラストには驚かされました。「どういうこと?」と首をひねった私は、きっとすごく幸せな読者なのであろうと、暫くして自分を励ましたりもしました。(よく考えれば、気づけるのでしょうが…)和歌の解釈は、もはや解説サイト任せなダメな私ではありますが、こういった点も含めて、純粋に面白かったですねぇ。


No.1136 6点 汚れた手をそこで拭かない
芦沢央
(2024/01/27 17:33登録)
 短編集。濃淡はあるけど、人の心の絶妙な悲哀を感じて、ホラーとは違った「怖さ」を感じることができます。でも、好き嫌いはあるでしょうねぇ。爽快な気分になれるものでもないですし。
①ただ、運が悪かっただけ:過去の自分に悩む夫。末期癌の妻が解き明かす真実は。嫌な奴も登場するけど、読後感は悪くないかも。
②埋め合わせ:社会問題と言ってもいい、学校のプールの水問題。教師に賠償請求するのは社会的に正しいのかねぇ…。で、この作品の主人公が悲しいほどにダメ。それに輪をかけて…
③忘却:アパートの隣人が熱中症で孤独死した。原因は…。温かさと怖さと。
④お蔵入り:色んな人が色々とダメ。嫌な気分になれます。
⑤ミモザ:元カレもダメだけど、料理研究家の主人公もねぇ…。これも嫌な気分になれます。

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