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ミステリの祭典

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嘘と隣人

作家 芦沢央
出版日2025年04月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 7点 パメル
(2026/04/28 09:05登録)
定年退職した元刑事・平良正太郎が主人公で、日常生活の中で遭遇する不可解な出来事と、その裏に潜む小さな嘘が引き起こす悲劇を描いた5編からなる連作短編集。
「かくれんぼ」DV加害者である元夫に居場所を隠していたはずなのに襲われてしまう。なぜ見つかってしまったのか。些細な保身や、善行に見える行動が取り返しのつかない事態を招く恐怖が描かれている。読後はゾっとするような冷たさが残る。
「アイランドキッチン」正太郎は不動産屋で勧められたマンションが、女性の転落死事件の現場だったことに気付く。自分を守るために嘘を重ねる人間の醜悪さが際立っており、不動産という大きな買い物に潜むトラブルのリアルさも相まってイヤミス全開な作品。
「祭り」正太郎はかつて捜査した外国人技能実習生の死体遺棄事件を回想する。不法就労や差別といった社会の歪みの中で、なぜ罪を犯すに至ったのかの真相が語られる。弱者がさらに弱い立場の人を追い詰める構造が描かれており、タイトルの「祭り」が持つ賑やかさと事件の虚無感とのギャップが胸に刺さる。
「最善」妻の友人の夫が駅で痴漢容疑で逮捕される。本人は否認しているが目撃証言もあり絶望的な状況。家族を守るための嘘が結果として家族を崩壊させていく皮肉な結末が作者らしいイヤミスの真髄を感じさせる。
「嘘と隣人」正太郎は同じマンションの住人から、SNSでの誹謗中傷や脅迫について相談される。現代的なSNSの問題を取り入れ、じわじわと隣にいる誰かの正体が見えてくる不気味さがある。読後には人間不信に近い余韻が残る。

No.2 8点 HORNET
(2025/08/31 00:05登録)
 知りたくなかった。あの良い人の“裏の顔”だけは…。ストーカー化した元パートナー、マタハラと痴漢冤罪、技能実習制度と人種差別、SNSでの誹謗中傷・脅し…。リタイアした元刑事の平穏な日常に降りかかる事件の数々。身近な人間の悪意が白日の下に晒された時、捜査権限を失った男・平良正太郎は、事件の向こうに何を見るのか?(「BOOK」データベースより)

 退職した元刑事・平良正太郎を主人公とした連作短編集。事件にまつわる人たちの「嘘」を共通要素として扱っている。一つ一つの謎とその真相が非常にしっかり仕組まれていて面白い。置換冤罪を題材とした「最善」は特に面白かった。
 短編集ながら、一作一作のレベルがなかなか。これはよかった。

No.1 7点 まさむね
(2025/07/06 12:57登録)
 定年退職した元刑事・平良正太郎が主人公を務める連作短編集。様々な「嘘」が共通テーマで、社会派の一面もあります。元刑事らしい淡々とした語り口と転換の組み合わせが良。
①かくれんぼ:ⅮⅤ夫からの被害の発端となったのは…。
②アイランドキッチン:事件の真相よりも記憶に残る激ヤバ女。こんな人間にロックオンされたら…怖すぎる。
③祭り:外国人労働者を巡る課題。ミステリ度は収録作で一番か。
④最善:痴漢冤罪。本当に最善の策だったのか。巧みなプロット。
⑤噓と隣人:人は何故嘘をつくのか。承認欲求や保身…。少しだけ救いのある話。続編がありそうな締め方。

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