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ミステリの祭典

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あなたが誰かを殺した
加賀恭一郎シリーズ

作家 東野圭吾
出版日2023年09月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 6点 sophia
(2024/02/20 23:11登録)
腹黒一族の内紛パターン。別荘地で殺人事件が起きて、たまたま居合わせた加賀恭一郎が解決するというようなオーソドックスな展開を思い描いていたのですが、東野圭吾には珍しい凝った構成の作品でした。内容は自分の苦手な時系列パズルだったので、整理していくのがとても大変でした。特に加賀が殺人の順序を4パターンに絞ったところが頭が痛かったです(読了後にも自分で改めて検証してみましたが、他のパターンもある気がして釈然としませんでした)。結局時系列を完璧に把握することは諦めました。その論理正しいの?と思うところも多く、緻密なようでいて粗い作品だと思います(阿津川辰海の「蒼海館の殺人」のような)。それでも節目節目で一癖も二癖もある登場人物たちの正体が暴露されていくという趣向があり、引き付けられたので何とか挫折せずに読めはしたのですが。事件解決後にとある登場人物の独白で語られる後悔がよかったです。ところでこの作品はタイトルだけ見て例のシリーズの第3弾かと思っていましたが、クイズ形式でない以上は別物と捉えるのが妥当でしょうか。

No.4 6点 HORNET
(2024/02/04 20:14登録)
夏の閑静な別荘地で恒例となっていた、近隣同士の四家でのバーベキュー・パーティ。ところががその晩に、5人が殺害される連続殺人が起きた。突如起きた惨劇に、悲しみに暮れる親族たちだったが、犯人はすぐに自首。四家族とは縁のない外部犯だったのだが、あまりに不可解な事件の様相を解こうと、関係者たちで「検証会」を行うことに―

 「〇〇が〇〇を殺した」のタイトルによる加賀恭一郎シリーズは、これまでは作中で犯人が明らかにされず、読者が真相を推理するという仕組みの作品だったのだが、本作はそうではない。言ってしまえばいたって「普通の」フーダニットのミステリだった。
 作品前段で早々に犯人が自首するのだが、当然それがそのまま真相であるはずはなく、「真犯人」が別にいるという暗黙の了解で物語を読み進めることになる。些細な違和感をもとに推理の突破口を見出す加賀刑事の慧眼は健在で、そこから真相を紐解いてく過程は本格ミステリの純度が高い作品ではある。ただそれ以上でもそれ以下でもなく、いたってオーソドックスな(良い意味でも)仕上がりの一作だった。

No.3 7点 人並由真
(2023/11/12 15:44登録)
(ネタバレなし)
 その年の8月のとある別荘地。その夜、4つの別荘(うち一つは本宅)を利用する計15人の老若の男女(一部はゲスト)が、バーベキューパーティを開いていた。だがその憩いの場は、短時間のうちに惨劇の現場にかわり、複数の被害者が出た。その直後、事件はさらに予想外の展開を迎え、大枠では終焉の方向に向かうが、いくつかの残された謎があった。休暇中の警視庁捜査一課のベテラン刑事・加賀恭一郎は、知人の頼みで非公式にこの事件に介入するが。
 
 あー。東野作品は、まだどうにかフタケタ程度の消化なので、評者が初めて出会う加賀シリーズだよ。笑ってください(笑・汗)。
 たぶん高木彬光を十数冊読んでいながら、神津恭介との縁がなかったような感じなんだろーな。

 で、期待通りにスラスラ読める。そのリーダビリティの高さとテンポの良さは、さすがに巨匠という感じ。
 
 芯はしっかりとしたフーダニットパズラーながら、形質としては変化球の部分もある作品。その辺のバランスの良さもベテランらしいということであろう。
 事件の解法が(中略)という部分に拠り、劇中人物が次第にストーリーの駒のようになってくるのは、良い面もあれば……といった感慨。

 しかし真相を知ったあとで、全体の物語の構造を考えると若干の違和感も抱いたが、たぶんその辺は、そのつもりで改めて読み直せば、きちんとうまく捌いてあるのであろう。
(そんな程度でシロートの考える事を、送り手が意識してないとも思えないので。)

 なんにしろこれで加賀シリーズとの接点もようやくできたので、機会を見て旧作の名編や歴代の話題作なども少しずつ読んでいきたい。
(↑でもって、この本作の主題のひとつは、こーゆー……(以下略)。)

No.2 6点 mozart
(2023/11/08 20:36登録)
発売日から数日遅れで図書館に予約したら18人待ちになってしまって昨日になってようやくゲットできました(一気読みしました)。図書館ではすでに予約が200人以上の待ち状態になっていてさすが紫綬褒章受章作家の人気シリーズというべきか。

で、加賀恭一郎の「○○が××を殺した」シリーズ(?)なわけですが予想に反して事件は(意外な真相も含めて)最後でちゃんと明らかにされます。それにしても相変わらず加賀はカッコイイですね。今作では「検証会」の司会&アドバイザー(?)であって、事件を直接担当する捜査官として関わっているわけではないせいか、いつもより「粘着度」は控えめでしたが。

どうでも良いことですが最初の方で登場人物の名前が漢字だったりカタカナだったりしたのは単にどういう漢字なのか知らなかった人物の視点で書かれていただけでしたが、ひょっとして叙述トリックかも?と邪推してしまいました(汗)。

(図書館に返却する前に再読したので追記)
地の文(というのかな?)の視点が何人か書き分けられていてその中には「犯人」も含まれているわけで、最初の方にちょっと疑問符が付く表現があったような…。まぁ、ギリギリセーフなのかも知れないけど。

No.1 8点 文生
(2023/10/01 09:38登録)
夏の避暑地で行われたバーベキューパーティーで起きた無差別殺人の謎を追う作品ですが、序盤で事件の経緯が一気に描かれるため、とにかく登場人物を覚えるのが大変です。しかし、そこを乗り越えると、関係者と地元刑事、それにアドバイザーの加賀恭一郎が一堂に会した検証会が始まり、俄然面白くなります。状況を整理しながらの推理にワクワクしますし、それと同時に秘められた人間関係が露わになっていく展開も秀逸です。加えて、二転三転の末の意外な真相も申し分ありません。本格ミステリとしては東野圭吾久々の快作です。

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