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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.955 6点 ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ扉子と空白の時
三上延
(2021/07/04 15:55登録)
 セカンドシリーズではありますが、栞子さんと大輔君の出番が多めです。ファーストステージと雰囲気が被りがちな一方で、絶妙な時間軸の設定と娘の扉子さんの存在で奥行きは増しているような気がしました。プロローグやエピローグを含めた構成の巧みさもあったかな。今回のテーマは「横溝正史」で、この点も興味深かったですね。


No.954 7点 二重螺旋の誘拐
喜多喜久
(2021/06/22 22:53登録)
 なかなかの良作だと思います。
 真相の一部(といっても、ほんの一部)は容易に想像がつくのですが、違和感が常につきまといます。とある書きぶりから「きっと、あの手法を使っているのだろう」と想定はしたものの、「いや、それでは辻褄が・・・違うのか?」と思わせられてしまい、あの事実には気づけなかった。伏線は十分にあったのですがねぇ。違和感の正体を、もっと慎重に吟味しとけば良かったなぁ。ミスリードにもやられましたねぇ。外角へのボール1つ分の出し入れで勝負され、見逃し三振に仕留められた気分(意味不明?)。でも、負けて悔しがれるって幸せですよね(これも意味不明?)。
 ちなみに、甘めのラストについては、何か都合よすぎないか、本当に大丈夫なのかと思わずにはいられませんでした。これって、私だけじゃないはず。


No.953 6点 化学探偵Mrキュリー6
喜多喜久
(2021/06/20 20:57登録)
 シリーズ初の長編作品。
 アメリカから四宮大学に留学してきたエリーを中心に物語は進みます。彼女は16歳。飛び級で大学に入学した科学の天才です。3年前に母国で偶然出会った四宮大学生を追い掛けて留学してきたのですが・・・。
 今回の沖野准教授は、人間臭さが出ていて、何かカッコいい。温かい前向きな終わり方も良かったですね。


No.952 7点 Dの殺人事件、まことに恐ろしきは
歌野晶午
(2021/06/14 21:33登録)
 短編集。各短編とも、乱歩作品の現代版アレンジとして練られているし、高レベルにあると思います。作者らしさも随所に感じることができます。
 ベストは表題作で、まさに最新鋭の?本格短編。締め方も作者らしい。「スマホと旅する男」の雰囲気も、乱歩作品のオマージュとして良質。「陰獣幻戯」の終盤でのたたみかけ具合も個人的には好きです。


No.951 6点 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。
青柳碧人
(2021/06/07 23:21登録)
 昔話ミステリ第2弾。
 前作のテーマが「日本昔話」だったのに対し、今回は「西洋童話」で、「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠れる森の美女」「マッチ売りの少女」 が元ネタ。
 前作との一番の違いは、探偵役を固定したことでしょうか(タイトルどおり「赤ずきん」が探偵役)。連作短編としてのメリットは当然ありましょうが、一方で、各短編の変化を付けにくい(思い切った設定変更がしにくい)デメリットも否定できない。まぁ、本作は連作短編として綺麗に締めた方が印象に残っていいのかも。各短編は、パロディのパターンが似通っている印象もありましたが、ファンタジックな側面を巧く活用したりして、結構楽しかったですよ。


No.950 6点 七丁目まで空が象色
似鳥鶏
(2021/06/05 10:26登録)
 楓ヶ丘動物園シリーズ第5弾。研修のために訪れた山西動物園から象が脱走しちゃいます。象を逃がした犯人はだれか、その目的は何か、象は自らの意思でどこに向かおうとしているのか・・・等々の謎が、軽快な文書による個性的なメンバーたちの活躍も含めて楽しめます。気軽に読めるのもいい。


No.949 6点 パンドラ’Sボックス
北森鴻
(2021/05/25 22:12登録)
 ノンシリーズ短編集。バラエティに富んでいるとも言えるし、寄せ集めとも言えるのですが、個々の短編自体の印象は悪くなかったですね。個人的には、裏京都シリーズの原型となった短編を読めたのは良かったかな。
 各短編の合間に、作者のエッセイが挟み込まれていたのも嬉しい。作家になろうとしたきっかけを含む前職(編集プロダクション)時代のお話、作家としての駆け出しの頃の苦労などなど、もはや作者から伺うことが叶わないだけに、コミカルな内容とは裏腹に、しみじみと読ませていただきました。


No.948 5点 ガラッパの謎 引きこもり作家のミステリ取材ファイル
久真瀬敏也
(2021/05/16 11:53登録)
 第18回このミス大賞の隠し玉作品。
 引きこもり作家と幼馴染の男子大学生らが「鹿児島の隠れキリシタン」の新説に挑みます。九州の各地を舞台に、隠れキリシタンから、河童やヨッカブイ、そしてユダヤ教や一向宗にまで話は広がり、知的好奇心が刺激されました。その点は純粋に面白かった。
 でも、そこはかとなく感じるラノベっぽさが、私としてはちょっとむず痒かったりも。(別名義でライトノベル作品を発表している作家さんだと読後に判明。なるほど。)歴史ミステリとしての好き嫌いは分かれるような気がします。ラストの尻切れ感もちょっとマイナス。散らかしたまま終わったような印象も。


No.947 6点 奇跡の男
泡坂妻夫
(2021/05/05 21:22登録)
 ノンシリーズの短編集。ユーモラスな筆致、そして反転の妙。作者の短編集の中ではそれほど目立たない存在かもしれせんが、肩肘張らずに読めるのでおススメですね。
 マイベストは「狐の香典」。いかにも作者らしい作品で、余韻も印象的です。


No.946 6点 珈琲店タレーランの事件簿6
岡崎琢磨
(2021/05/02 16:14登録)
 タレーランのオーナー・藻川又次が突然狭心症で倒れ、緊急入院。又次は手術を前に弱気になったのか、又姪のバリスタ・切間美星に相談。4年前に他界した妻・千恵は、7年前に又次がコーヒーカップを割ったことに激怒し、1週間の家出をしていた。その理由は何だったのか、常連客のアオヤマとともに調査する美星だが…。
 全体の流れとしては、無難にまとめているのだと思います。シリーズ6作品の中で移動距離は最も長く(といっても、京都・浜松・天橋立くらいだけど)、観光紹介めいた部分もあって、楽しくは読ませていただきました。でも何というか、結構な違和感を抱いたのですねぇ。ソコまで詮索するかねぇ…とか。何より、とあるお二人の行動って一般論としてどうなのよ…とか。それぞれの身勝手さを感じてしまうのは私だけなのでしょうか。


No.945 6点 孔雀狂想曲
北森鴻
(2021/04/24 19:53登録)
 下北沢の片隅にある骨董品屋「雅蘭堂」を舞台とし、店主の越名集治が探偵役を担う連作短編集。各短編がコンパクトで後味も悪くないので、個人的にバタバタしていた時期の読書には適していました。いかにも作者らしい作品集で、安定感があります。もう絶対に続編を読むことができないのが残念です。


No.944 5点 玉村警部補の巡礼
海堂尊
(2021/03/29 22:40登録)
 作者の作品を読むのは相当に久方ぶり。個人的に、作者の強めの自己主張がちょっと辛くなりまして、正直避けていたのです。
 しかし、今回のテーマは「四国遍路」。しかも各県1短編で成る短編集とのこと。嗚呼、お遍路!ずっと憧れていたのです。退職したら是非とも挑戦したいと思い続けているのです。本書を手にせざるを得なくなった、私の心情を何卒ご理解ください。(結局は、Ai以外の新たな自己主張も何気にあったのですが。)
 で、ミステリとしては、うーん、思っていたよりもその要素を織り込んでいたのだけれども、積極的な評価は敢えて避けようかな。結局、最終的な印象としては、ミステリ云々よりも、楽しそうにお遍路に勤しむ加納&玉村コンビが凄く羨ましかったなぁ…と。行きたいなぁ、お遍路。歩き遍路はストイック過ぎるし、バスツアー遍路も何となくアレなので、「基本的に歩くつもりだけれども、場合によっては(というか積極的に)公共交通機関を利用してみる遍路」って、甘えているのでしょうか。経験者がいらっしゃれば教えてください。
 気付いたら、お遍路への隠しきれない憧れに偏った感想になってしまいました。スミマセン。


No.943 6点 血縁
長岡弘樹
(2021/03/14 20:49登録)
 家族をテーマにした短編集。イイ話から黒い結末の話まで、幅広いです。
 表題作がベスト。作者らしさという面では「文字盤」や「黄色い風船」に色濃く表れていました。最近の作者の短編集の中では上位に入ると思います。いくつか気になる「穴」もあったのですがね。


No.942 6点 月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言
倉知淳
(2021/03/06 18:26登録)
 猫丸先輩シリーズの短編集。このシリーズらしく、軽妙な語り口で楽しめたのですが、ちょっと小粒な印象も残ったかな。謎自体は魅力的なのですがねぇ。ベストは「ついているきみへ」かな。


No.941 7点 たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説
辻真先
(2021/02/28 22:04登録)
 ミステリとしては、密室殺人とバラバラ殺人(解体殺人)を扱った本格モノ。楽しく読ませていただきましたが、各々のトリックが全体の雰囲気に溶け込んでいないような印象を受けました。そして、特に第2の事件については「危険を冒してまでそのトリック使おうとするかなぁ。自分なら一人で夜に呼び出して目的達するけどなぁ。」といった、ミステリ読みとしてあってはならない?感情を抱いたりもしました。(トリック自体の評価は敢えて書きません。)
 一方で、昭和24年の名古屋を舞台とした青春群像劇としては非常に興味深かったです。その時代、その場にいないと書けないであろうリアリティを感じました。令和の世に、新作としてこういった作品を読めるのは素晴らしいこと。辻御大に敬意を評してこの採点で。


No.940 7点 名探偵のはらわた
白井智之
(2021/02/21 20:04登録)
 第一話「神咒寺事件」を読み進めますと、作者お得意のグロテスクな表現もなく、ノーマルな短編なのかと思わせられつつ、最後には、本作を貫く驚きの特殊設定が示されます。各話のタイトルから、我が国の実犯罪をテーマにした短編が続くのだろうと想定はしていましたが、ちょっと戸惑いましたかね。
 ベストは何といっても最終話の「津ヶ山事件」。勿論、モチーフは津山事件(津山三十人殺し)。この事件については、個人的に別書籍で読んだりして知識もあったため、大変に興味深く読ませてもらいました。練られています。正攻法の本格モノと言ってよいのではないかな。


No.939 7点 紅蓮館の殺人
阿津川辰海
(2021/02/13 19:10登録)
 本格愛を感じる作品です。前半、多少冗長な印象もあったのですが、中盤以降の展開はお見事で、楽しく読ませていただきました。感心した点も多いです。
 一方で、新旧の探偵を登場させたうえで「探偵の生き方」をテーマの一つとし、相当のページ数を割いている点には、消極的な評価。勿論、全体のストーリーに不可欠な部分はあるものの、個人的にはちょっとクドく感じたかな。なお、この点に関しては、既に複数の方が挙げられているとおり、私も市川哲也氏の鮎川哲也賞受賞作「名探偵の証明」を思い起こしましたね。


No.938 7点 片翼の折鶴
浅ノ宮遼
(2021/02/06 19:36登録)
 粒ぞろいの短編集。医学の専門知識のみに頼っている訳ではなく、本格度も高いです。明確に謎を提示し、情報の提供もフェア。きっちりと組み立てられています。
 マイベストは、「幻覚パズル」。部屋の配置図まで登場する密室系で、ロジカルな解決手法はまさに本格短編。盲点を突かれた真相も記憶に残りそうです。
 「消えた脳病変」も練られています。ちょっと伏線の一部が丁寧すぎたのか、「患者の脳にあった病変が消えた」理由は分かりやすかったのですが、全てを見通すことはできなかったですね。正確には、とある説明が必要であることを自分で見落としながら、そしてその伏線も見落としていながら、技術的な真相のみで満足していた・・・ということになりますかね。こちらも好短編です。


No.937 7点 不穏な眠り
若竹七海
(2021/01/31 11:13登録)
 葉村晶シリーズの短編集。
 4短編いずれも、スッと物語に入り込まされ、ユーモアを交えつつのクールな語り口の中で、どんどん転がされます。スピーディーに拡大・展開していくため、作者の技術を堪能するためにも、一定の短期間でそれぞれの短編を読み切ることをお勧めします。
 個人的ベストは、一気に読まされた「逃げ出した時刻表」。一作目の「水沫隠れの日々」のラストの儚さ(と言っていいものか)も記憶に残りそう。


No.936 6点 超能力者とは言えないので、アリバイを証明できません
甲斐田紫乃
(2021/01/24 20:00登録)
 大富豪の遺言状の開封のため、孤島の館に集合した一族。一族は長男派と次男派が遺産分割で揉めている。そんな中、遺言状が盗まれ、弁護士も姿を消した。捜索の結果、血の付いたナイフと海に浮かぶ弁護士の上着が発見され…。
 と、書くと、本格ど真ん中設定なのですが、しょーもない超能力を使えるメンバー達によって、ユーモア群像劇風に進行していきます。舞台を観ているような感じ。読み心地も悪くなかったですね。ちなみに、事件に「アリバイ」は関係ないので、タイトルにはちょっと疑問。

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