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ミステリの祭典

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あと十五秒で死ぬ

作家 榊林銘
出版日2021年01月
平均点6.88点
書評数8人

No.8 7点 ミステリーオタク
(2024/09/12 21:34登録)
 多かれ少なかれ「十五秒」が関わる4つの話からなる中短編集。

 《十五秒》
 非常によく構成された話だとは思うが、技巧に走りすぎたせいで「十五秒後に死ぬ」というテーマの割にはスリルやサスペンス感が少し薄まってしまっているようにも感じた。
 また主人公の業務内容は現実にはあり得ない。(まぁ、この話そのものが全くの非現実設定だから余計なお世話か)
 
 《このあと衝撃の結末が》
 これも凝りに凝ったミステリで、作中ドラマで時空を行ったり来たりするのでついていくのに少々疲れる。

 《不眠症》
 「不思議な感じ」で話が展開していくが前二作に比べると遥かに読みやすく、また何とも言えない余韻を残す。

 《首が取れても死なない僕らの首無殺人事件》
 読む前は何を言っているのかサッパリ分からないタイトルだが、これまたムチャクチャな非現実設定の「本格」ミステリ。
 主人公たちが共同行動を始めた辺りは本当に気持ち悪かったが、いつの間にか慣れて、延々と繰り返すような展開に「飽き」も感じた。また、トリックや動機はあまりスッキリしないし、尋常ならざることこの上ない設定をベースにした緻密極まる推理過程を自分が完全に理解したかも疑わしいが、読後は「読んでよかった」と思える作品だった。
 
 
 全く類似性のない世にもエキセントリックな発想を4つも展開させる本書は特殊設定の短編集としては極北に位置すると言えるのではないだろうか。

No.7 7点 ぷちレコード
(2024/07/20 22:49登録)
撃った犯人と被害者の一瞬の攻防。推理クイズドラマの見逃した短い時間でなぜあんな結末に至ったのか。繰り返される車中の夢の意味。首の着脱が可能な島民が住む地で起きた殺人事件など異様な状況ばかりの作品集。
第十二回ミステリーズ!新人賞佳作の「十五秒」をはじめ、収録された四作全てが、「十五秒で死ぬ」という状況を核にした物語になっている。どれも厳しい制約がある趣向なのに、展開には大きな紆余曲折があり、ニヤリとさせられるオチまでついている。デビュー作とは思えない出来。

No.6 7点 虫暮部
(2023/06/09 12:43登録)
 変なことばかり考える人だ。いいねいいね。十五秒でどこまで出来るか。それは厳しいだろうって部分もある。でも些細なことだ。
 短編1作目から単行本デビューまで6年。執筆速度が課題? 頑張ってもっと変な話を読ませて欲しいな。

No.5 7点 パメル
(2023/03/29 07:34登録)
「死ぬ直前の十五秒」をテーマにした四編からなる短編集。
「十五秒」背後から銃撃された薬剤師が一時停止能力を獲得し、死ぬ前の十五秒で復讐を企む。殺された者と殺した者の知恵比べ。「私」は時間の一時停止能力を駆使して残りの十五秒を小刻みに時間を使いながら、犯人の正体を確認し自分の死後にできる反撃方法を案出しようと試みる。いかに自分のやりたいことを詰め込めるかという緊張感あふれる描写が面白い。
「このあと衝撃の結末は」テレビドラマが予想外の展開を迎える、たった十五秒を見逃した「俺」がドラマを見ていた姉のクイズに答える形で真相を追求する。姉から重要なシーンをピックアップした解説を聞いて「ドラマで何が起きたのか」を推測していく。ドラマと現実が渾然となる仕掛けには驚かされた。
「不眠症」十五秒後に大きな交通事故に巻き込まれる夢を何度も繰り返し見る茉莉が、その真相に迫っていく。同じ夢を何度も繰り返し見るというループする怖さを描き切っている。意外性と滋味が鮮やかに融合されている。
「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」首が取れても十五秒以内に首を繋げば問題ないという、特殊な島で起こる殺人事件。胴体を失った被害者が同級生と首をすげ替えながら犯人を推理するという、シュールな光景に笑いが止まらない。ふざけた設定ではあるが、この作品が一番、トリックや謎解きなどの部分はかなり本格的。

No.4 7点 まさむね
(2021/12/30 10:06登録)
 まずは、「あと十五秒で死ぬ」という縛りの中で4短編を揃えた意気込みを評価したいですね。しかも、各短編のシチュエーションはバラバラで、バラエティーに富んでいます。読んでいて楽しかった。達者な作家さんですね。
①十五秒
 ミステリーズ!新人賞の佳作受賞作。この設定自体が面白い。終盤の連続捻りには唸らせられました。
②このあと衝撃の結末が
 これも終盤の連続捻りが見事。15秒縛りと作中作形式の選択。巧い。
③不眠症
 この短編集の中では目立たないものの、作者の裾野は広いかも、と思わせられました。
④首が取れても死なない僕らの首無殺人事件
 作者名当てクイズを出されたら、私は迷わず「白井智之」と答えそう。特殊設定本格短編として秀逸。

No.3 7点 メルカトル
(2021/09/08 22:59登録)
死神から与えられた余命十五秒をどう使えば、私は自分を撃った犯人を告発し、かつ反撃ができるのか? 一風変わった被害者と犯人の攻防を描く、第12回ミステリーズ! 新人賞佳作入選「十五秒」。犯人当てドラマの最終回、目を離していたラスト十五秒で登場人物が急死した。一体何が起こったのか? 姉からクイズ形式で挑まれた弟の推理を描く「このあと衝撃の結末が」。〈十五秒後に死ぬ〉というトリッキーな状況で起きる四つの事件の真相を、あなたは見破れるか? 期待の新鋭が贈る、デビュー作品集。
Amazon内容紹介より。

お世辞にもリーダビリティが優れているとは言い難いけれど、その突飛な発想には見るべきところがあります。四作とも毛色の違う作品で作者の引き出しの多さを思い知らされました。特に中編の『首が取れても死なない僕らの首無殺人事件』はこれ一作で長編でも書ける充実の内容となっています。白井智之も真っ青なその特異設定は奇妙奇天烈で、しかし適度なユーモアも含んでおり、更に解決編ではこれでもかと本格スピリットに基づいた緻密な推理を披露してくれます。これは文句なく面白い、よくこんなものを考え付いたなと感服します。まあ受け付けない人も居るんでしょうけどね。

『このあと衝撃の結末が』もちょっと煩雑な気もしますが、なるほどの結末で納得。TV番組の推理ドラマの謎に挑戦する視聴者と云う図式で姉が活躍し、なかなかの名探偵ぶりを見せてくれました。
他二編もそれなりの出来で高水準、好感が持てる作品集でした。

No.2 6点 HORNET
(2021/08/15 21:53登録)
 タイトルが思わず読みたくなる引きがあってよいね。
 「15秒」を共通テーマにした短編集になっているが、書籍のタイトル「あと15秒で死ぬ」のは厳密には1編目の「十五秒」。これは発想といい仕組みといい、斬新かつ緻密で面白かった。
 「15秒テーマ」という縛りで短編を継ぎ足したという印象もあるが、ラストの「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」などは奇妙な特殊設定下でユーモアも交えながら、ロジカルに犯人当てがなされていて楽しかった。
 今後、どんな作品を書いてくれるのかは楽しみである。

No.1 7点 sophia
(2021/03/02 23:21登録)
●十五秒 8点・・・被害者と犯人の攻防を視点の切り替えのみならず、時系列の操作も用いて意外な着地点へ誘った傑作。
●このあと衝撃の結末が 5点・・・構成が凝り過ぎていていまいち入り込めませんでした。
●不眠症 5点・・・ガラッと趣向を変えてヒューマンドラマ寄りにしてきましたが、後味がよくない。もっと希望を感じさせるオチにしてほしかったです。
●首が取れても死なない僕らの首無殺人事件 8点・・・当初思っていたよりもコミカルな話で楽しく読めました。

個人的に評価の二分される四編となりました。「このあと衝撃の結末が」は作者が作った複雑な迷路をゴールまでクネクネ引っ張って行かれているようで疲れました。推理も予定調和かつ牽強付会な感じがします。特に電話番号の件にもっと根拠が欲しかったです。「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」はミステリーとしても友情物語としても面白かったです。××の指紋は採取してなかったのかという疑問はありますが。しかしまあ、この島の犯罪捜査において指紋やDNAに意味はあまりなさそうですね(笑)

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