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ミステリの祭典

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雨と短銃
鹿野師光シリーズ

作家 伊吹亜門
出版日2021年02月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 6点 ◇・・
(2023/08/27 22:46登録)
「刀と傘」の前日譚であり、薩長同盟成立の直前を描いている。
極めて緊張感のある中で、坂本龍馬と上洛した長州藩士が殺害され、下手人が逃げ場の無い場所から消え失せるという事件が起こる。
探偵役には物語によってそれぞれ謎を解決しなければいけない理由が設定されるものだが、この作品では歴史的な要請によって謎を解かざるを得なくなる。この事件でキーとなるのはギャップ。読者があれを思い浮かべた時、このような性質を思い浮かべることは少ないのではないか。

No.4 6点 猫サーカス
(2023/01/25 18:00登録)
幕末の京都。長州藩士が切りつけられ、その傍らにいた薩摩藩士は逃走して姿を消した。薩長同盟を成立させようと奔走する坂本龍馬は、事態の収拾を図るため、尾張藩公用人の鹿野師光に調査を依頼する。薩摩、長州、そして新選組の策略が渦巻く中、人の命が軽く扱われる状況での探索が語られる。前作同様、実在の人物と架空の人物を織り交ぜて、史実とフィクションを巧みに重ね合わせている。この時代ならではの手掛かりに基づく謎解きもまた鮮烈。史実に対し、現代の私たちが抱くイメージを利用した仕掛けに驚かされっる。その先に広がる人々の思惑と、真相を突き止めた鹿野の味わう、達成感とはかけ離れた思いも記憶に残る。

No.3 6点 HORNET
(2022/12/18 23:43登録)
 幕末の京都。薩長協約をめざして奔走する坂本龍馬は、ようやく西郷吉之介を説き伏せた。しかしその大事な時に、一緒に京に来た長州藩士・小此木鶴羽が斬られ、下手人は逃げ場のない場所から煙のように消え失せる。竜馬は尾張藩公用人の鹿野師光に、下手人と思われる薩摩藩士の捜索を依頼する。依頼を受けた師光だったが、事件の裏に、薩長両藩のきな臭い思惑が見え隠れして―

 犯人が脱出不可能と思われる犯行現場から消え失せるといういわば消失トリックなのだが、その「トリック解明」はまぁ二の次(真相もそんなんじゃないし)。消失のトリックよりも、結局犯人と目されてている人物はきっと真犯人じゃないんだろうというフーダニット路線に傾いていく。し、最終的に明かされる真犯人はミステリ通なら多くは予想の範疇かも。ミステリという点では、前作「刀と傘」のほうがキレがあった印象。長尺よりも短編のほうが向いているかな。
 とはいえ「刀と傘」に連なる歴史ドラマ自体が面白い。世間的には圧倒的に好感をもって受け止められている坂本龍馬が、ちょっと違った色で描かれているのも興味深かった。

No.2 5点 zuso
(2022/08/17 22:36登録)
前作「刀と傘 明治京洛推理帖」の前日譚。
物語の舞台は、幕末の京の都。犬猿の仲である薩摩藩と長州藩に協約を結ばせるため、坂本龍馬が動いていた。だが稲荷神社の境内で、薩摩藩の菊水簾吾郎が、長州藩の小此木鶴羽を斬り、重傷を負わせるという事件が発生。しか簾吾郎は、逃げ場のない鳥居道から、忽然と姿を消した。この件で竜馬が頼ったのが、尾張藩公用人の鹿野師光だ。仕方なく依頼を受けた師光は、簾吾郎の行方を追ううちに、意外な真相にたどり着く。
師光が探偵役となり不可解な事件に立ち向かう。鳥居道での人間消失の真相は、やや肩透かしだが、首なし死体の件の真相は鮮やか。その時代その場所だから成立するトリックに感心させられた。

No.1 6点 まさむね
(2021/11/20 13:10登録)
 デビュー作「刀と傘 明治京洛推理帖」が好印象でしたので、手にした次第です。
 薩摩藩と長州藩が協約を結ぼうとしていた、慶応元年の京都が舞台。前作(デビュー作)同様に架空の人物・鹿野師光が探偵役を務めます。前作の前日譚の位置づけですね。坂本龍馬や中岡慎太郎、桂小五郎、西郷吉之助(隆盛)に中村半次郎、土方歳三といった人物が、重要な役割をもって登場します。ココがポイント。
 ミステリとして目立った点はないのですが、歴史的な背景とともに読み込むべき作品であり、幕末好きな私としては、ワクワクしながら読ませていただきました。

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