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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.1195 6点 君が手にするはずだった黄金について
小川哲
(2024/11/23 16:18登録)
 本屋大賞ノミネート作品という情報のみで手にしたのですが、ちょっと思っていたのと違ったなぁというのが、率直な感想。エッセイ風小説とでも言ったらいいのかな。少なくともミステリーとは言い難い。
 でもそれはそれとして、楽しく読ませていただきました。考えさせられた部分も多々ございます。文章、語り口、好きですね。


No.1194 5点 変な家2 〜11の間取り図〜
雨穴
(2024/11/19 22:01登録)
 前作よりもパワーアップしたことは間違いないでしょう。中盤までに示される11のストーリーの繋がりは、まぁ想定の範囲内というか、よくあるパターンであると思うのですが、それらを示したうえでのギアチェンジは、確かにパワーアップを感じます。
 一方で、ラストの違和感が気になってしょうがない。何かが隠されている気がするし、もしかしてこういうことなのかな、と何となく予想はするのだけれども、どうなんだろう。すごくモヤモヤしてます。文庫版とかで示す思惑なのかな?個人的にはスパッと締めてほしかったのだけれど。(何も隠されていないのであれば、余計な記述をするなと言いたくなりますな。)


No.1193 6点 家族解散まで千キロメートル
浅倉秋成
(2024/11/16 19:45登録)
 家族がバラバラに暮らすことになり、実家を解体することに。引っ越しの整理もあって、元旦に家族(いつもいない父を除く)が揃ったものの、倉庫の中から見慣れぬ仏像を発見。青森の神社から仏像が盗難されたとのニュースも飛び込んできた…。
 前半は、コメディ・タッチだけれどタイムリミット・サスペンス的な展開で、グイグイと読まされました。しかしポイントは青森到着後。家族のあり方を問う部分は正直評価が分かれると思うし、とある登場人物の心理や行動には疑問を持つのだけれども、終盤の急展開や畳みかけ具合は嫌いではないです。


No.1192 6点 シートン(探偵)動物記
柳広司
(2024/11/09 18:01登録)
 作者といえばジョーカー・ゲームに代表されるD機関シリーズが有名。一方で歴史上の著名人や著名作品を扱った作品も多いですよね。本作は、子どもの頃ワクワクした方も多いであろう動物記でお馴染みのシートンを主人公にした短編集。
 全体的にミステリとしては小粒ですが、子ども時代の懐かしさもあって好印象。ベストは、狼王ロボ(懐かしい!)が登場する「カランポーの悪魔」か。終盤の一捻りが心憎い。


No.1191 6点 雷龍楼の殺人
新名智
(2024/11/03 16:28登録)
 富山県の沖合の島に建つ「雷龍楼」。ここでは2年前、密室で4人が亡くなる事件が起きていた。そして2年後、再び「雷龍楼」で密室事件が…。その裏では誘拐事件も起きていた…。
 むむむ…。「完全なる密室」ですか。確実に賛否両論あるでしょうねぇ。違和感満載な流れだっただけに、様々想定はしていたし、そういった着地も決して否定はしないのだけれども、「肩透かし」だけでは言い表せない何かを感じたのも事実。
 まぁ、そういった点も含めて個人的には楽しめたとは言えるのかな。でも、読んで怒りたくなる人もいるかもしれないので、あしからず。


No.1190 7点 冬期限定ボンボンショコラ事件
米澤穂信
(2024/10/29 21:34登録)
 小山内さんとの下校途中に轢き逃げされた小鳩君。意識を取り戻したのは病院のベッドの上…。導入部から衝撃的な展開であります。
 入院中の小鳩君と、犯人を特定せんと動く小山内さん。でもこの二人はなかなか会えない。携帯電話も壊れて直接の会話もできない中、小山内さんが病室に置いていくプレゼントとメッセージカード。小鳩君は3年前の同様の轢き逃げ事件に思いを馳せ…。
 過去と現在の事件が交互に語られ、グイグイ読まされます。過去の事件の背景の一部は予測しやすいような気もしますが、あくまでも一部であって、全体を見通すことはできませんでした。過去の「密室」の謎解明も含め、終盤の怒涛の展開は魅力的。
 小鳩君と小山内さんの中学時代の出会いも描かれていて、二人の高校時代を巡る春夏秋冬の完結版として、非常に綺麗に締めてくれました。大学時代の二人も見てみたいのですが…米澤さん是非お願いします。


No.1189 5点 からくり富
泡坂妻夫
(2024/10/20 21:03登録)
 江戸を舞台とした夢裡庵先生捕物帳シリーズ。作者らしい捻りが無いわけではないけれど、そういった側面よりも江戸情緒や庶民の心情を感じるべき短編集と言えるのではないかな。


No.1188 6点 成瀬は天下を取りにいく
宮島未奈
(2024/09/29 23:31登録)
 このサイトで書評するのもアレだけど、主人公・成瀬の性格がミステリーなのだと自分に言い聞かせて、書いちゃおう。何卒大目に見てください。
 一話目の「ありがとう西武大津店」を読んで、なぜか泣きそうになりました。成瀬への尊敬と羨ましさと、もうその世代には戻れない悔しさと、内容の清々しさとが綯い交ぜになった感じ。最終話の「ときめき江州音頭」を読んだ後も、なぜか泣きそうに。
 おじさん世代にもグイグイ刺さる小説でありました。こりゃあ、売れるわけだな。


No.1187 7点 ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~
三上延
(2024/09/23 20:34登録)
 テーマは、戦中に川端康成はじめ鎌倉の文士らが経営した貸本屋「鎌倉文庫」。そこには夏目家から提供された初版本も並んでいたとのこと。
 このシリーズも長くなりましたが、今回は智恵子(昭和)、栞子(平成)、扉子(令和)と篠川家の3代(3時代)にわたる「鎌倉文庫」所蔵本とのかかわりがポイント。前述の史実(らしい)や漱石に係る蘊蓄も含めて楽しめました。色々な家族のつながりを感じさせる点も良かったかな。6.5点の気持ちで、切り上げてこの採点。


No.1186 6点 六色の蛹
櫻田智也
(2024/09/16 17:14登録)
 シリーズ第三弾の連作短編集。前作まで各短編のタイトルは虫に関係する語句が入っていましたが、今回のタイトルは色で統一。虫との関係性も、前2作より薄くなっているような気がします。
 マイベスト短編は「赤の追憶」で、シンプルだからこその鮮やかさが印象的。短編らしい短編です。他の作品の出来栄えには、ちょっと波があったかも。連作短編集としての「まとまり」はシリーズで一番だと思うのですが、この点は好き嫌いが分かれるかもしれません。


No.1185 6点 室蘭地球岬のフィナーレ
平石貴樹
(2024/09/08 23:10登録)
 函館物語シリーズ第4弾にして、おそらくはタイトルどおりフィナーレ。今回の岬は、函館近辺じゃなくて室蘭の地球岬です。
 繋がりそうで繋がりが判明しない3つの事件。特に2つ目の地球岬の事件が浮いています。捜査が難航する中、フランスからジャン・ピエールが来日し、神のような謎解き。すげー。ある一つの推理が大きな転換点となりますが、気づけなかったなぁ。
 書きぶりは丁寧で、伏線の回収ぶりも読みどころの一つ。ある意味古いタイプのプロットなのだけれど、むしろ新鮮に感じましたね。


No.1184 6点 にわか名探偵 ワトソン力
大山誠一郎
(2024/09/02 21:48登録)
 シリーズ続編の短編集。
 警視庁捜査一課の刑事・和戸宋志には、秘めたる特殊能力がある。それは、謎に直面すると無意識に発動し、一定範囲(現時点では半径約20mらしい)内にいる人間の推理力を飛躍的に向上させる能力で、その名も「ワトソン力」。自分の推理力が上がるわけではないところも含めて可愛らしい。
 この設定は、短編構成上も便利で合理的。事件が勃発したらほどなく「どうやらワトソン力が作用し始めたようだ」のヒトコトで、周辺の登場人物たちの推理合戦に持っていけるわけです。非常にコンパクトに、一定のロジックを楽しめるのは好みです。ただ、流れが同じになりがちなので、中だるみ感を抱かれるリスクも併せ持つことにはなりますね。
 個人的に楽しかった短編は「ニッポンカチコミの謎」。ヤ〇ザの方々が推理合戦する姿がシュールなのだけれど、何といっても組長がエラリー・クイーン信奉者であり、全作品(「聖典」と呼んでいました)を神棚に備えているところが素敵。「暴力じゃねえ、ロジックだ」のご発言もいい味出しています。一方で、最終話はちょっと蛇足だったかも。


No.1183 5点 御手洗潔のメロディ
島田荘司
(2024/08/29 23:45登録)
 「IgE」、「SIVAD SELIM」、「ボストン幽霊絵画事件」、「さらば遠い輝き」の4編が収録された短編集。御手洗モノとして典型的な「IgE」を筆頭として、個人的な興味は掲載順に下がっていきましたね。特に最終話は、ファン限定って感じがあります。


No.1182 7点 明智恭介の奔走
今村昌弘
(2024/08/29 23:34登録)
 初の短編集。タイトルどおり、探偵役は神紅大学ミステリ愛好会会長の明智恭介。助手役として葉村譲が登場。剣崎比留子の出番はなし。シリーズの番外編という位置づけになるのでしょうが、本家(?)のシリーズ作品とは雰囲気が異なり、ユーモアにあふれています。これはこれで好印象。
 収録短編の中では「とある日常の謎について」が最も楽しかったですね。ある事実が判明した時点でニヤニヤ。そうか、それだったか。「泥酔肌着引き裂き事件」のバカすぎる謎の提示と、その謎を解かんとする明智と葉村のやり取りも楽しい。記憶なくし過ぎだけどね。


No.1181 7点 そして誰かがいなくなる
下村敦史
(2024/08/18 23:03登録)
 ド直球の本格設定の中での終盤の展開。いいですねぇ。好きですよ。餌が分かり易いだけに、色々想定しながら読んだのですがねぇ…。複数の工夫にも感心。よく練られた作品だと思います。もっと多くの方に読まれていいかも。


No.1180 6点 アルファルファ作戦
筒井康隆
(2024/08/17 20:49登録)
 ドタバタ不条理SF短編集と言ってしまっては一括りにし過ぎかな。盛り上げた割にラストは…といった短編が無いではないけれど、総じて楽しく、一部考えさせられながら読ませていただきました。特に会話部分が面白い。
 表題作に加え、人口爆発後の地球を描いた「人口九千九百億」、若返る薬を巡る騒動「一万二千粒の錠剤」が印象に残りますかね。個人的には「公共伏魔殿」の皮肉たっぷりな書きぶりも、昭和後半以降の時代を示唆しているようで良かったです。


No.1179 6点 お梅は呪いたい
藤崎翔
(2024/08/12 21:31登録)
 戦国時代、呪いで大名一族を滅亡にまで追い込んだ日本人形「お梅」。五百年を経た令和の世に、その封印が解き放たれる…っていう設定のうえでの「お梅」が何とも素敵です。動いているところを、ちょっとだけ見てみたいです。
 呪おうとすればするほど幸せに繋がるという、ネタとしてはありがちではあるけれど、語り口もコミカルで可笑しいし、何気に「人生の転機って何だろうね」という、時代を超えた命題を問うているような気もします(いや問うてないか)。純粋に面白かったですね。続編もありそうなので、楽しみに待ちたいと思います。


No.1178 5点 退職刑事3
都筑道夫
(2024/08/06 23:32登録)
 シリーズ第3弾。このシリーズは、安楽椅子探偵モノの国内代表格と言えると思うのですが、本作は前2作と比べると多少落ちるかな…という印象。真相について他の解釈も可能では?という短編もございましたし、全体的にこじつけ感が強めのような…。
 収録作の中では1作目の「大魔術の死体」がベスト。電話ボックス内に射殺死体が、でもボックスのガラスは無傷…という謎が魅力的(ちなみに近い将来「電話ボックス」も死語になるのかなぁ)。2作目の「仮面の死体」も好みだけれど、胆となる部分が1作目と被っている分、割引か。後半にダイイング・メッセージ系が固まっていることもあるし、短編の掲載順を少し変えてみると短編集全体の印象も変わるのかも。


No.1177 5点 放課後ミステリクラブ1 金魚の泳ぐプール事件
知念実希人
(2024/08/03 20:02登録)
 2024年本屋大賞ノミネート作品。児童書として初めてのノミネートということで、気になっていました。
 体裁としては、文字大き目のフリガナ付き、挿絵もふんだんに挟んであって、まさに「児童書」。一方で、内容としては、シンプルながらも本格ミステリの要件を満たしていると思います。確かに「本格児童書ミステリ」と言えるのではないかな。あっという間に読めるので、試しに一読してみるのもいいかも。
 ちなみに、図書館予約の順番の関係で、夏休みのど真ん中に借りることになってしまいました。しかも親子で楽しむという訳でもなく、おじさん一人で読んでしまい、ちょっとした罪悪感。少年少女の皆さん、ごめんなさい。急いで返却します。


No.1176 5点 緋色の残響
長岡弘樹
(2024/07/30 23:19登録)
 スマッシュ・ヒットとなった「傍聞き」に登場した、シングルマザー刑事と新聞記者志望の娘が主人公となる短編集。
 作者の作品の多くは、一つの蘊蓄ネタだけを拠り所にしながら人間ドラマに結びつけようとする結果、相当のこじつけ感や非現実感、人間ドラマと真逆の作り物感が残るんだよなぁ…というのが私の個人的な印象。本書の短編においても、そういった側面は多分にあるのだけれども、母と娘の関係性や娘の成長という側面がそのマイナスを補ってくれたような気がしますね。もとより、リーダビリティは高い作家さんですしね。

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