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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1258件

プロフィール| 書評

No.1258 6点 奥只見温泉郷殺人事件
中町信
(2025/08/13 22:55登録)
 「悲痛の殺意」と改題された文庫版で読了。温泉宿を出発したスキーバスが川に転落し、5人が死亡。しかし、死亡した者のうち1名は絞殺されていた…。宿の宿泊客は、いかにも何かを抱えていそうな者ばかりで、冒頭からスルスルと読まされました。様々に捻りのある展開で、古さは否定できないものの、嫌いではないタイプです。
 一方で、ズバリ「ここ伏線ですよ」と語りかけられているとすら感じる側面も。また、章冒頭の日記部分の仕掛けは本当に必要だったのだろうか…むしろ分かり易くなりすぎていないか…といった印象も。


No.1257 6点 どうせ世界は終わるけど
結城真一郎
(2025/08/11 20:22登録)
 小惑星が地球に激突し、人類は滅亡する。ただし100年後に…。絶妙な設定の中で描かれる連作短編集。100年の猶予は長いのか短いのか。自分ならどうするのか、深く考えさせられます。
 終末系小説でイメージされるような寂寥感はなく、むしろ〝希望〟を感じます。マイベストは3話目の「友よ逃げるぞどこまでも」か。最終話は、無理に色々詰め込まなくても良かったような気も。


No.1256 6点 谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる
東川篤哉
(2025/08/06 21:40登録)
 シリーズ第2弾。探偵役は谷根千エリアで開運グッズを扱う「怪運堂」の店主であり、作務衣を好む竹田津優介。ワトソン役は、近所の大学に通う「岩篠つみれ(いわしのつみれ)」。同エリアで鰯料理メインの居酒屋を経営する「岩篠なめ郎(いわしのなめろう)」の妹であります。
 居酒屋「鰯の吾郎」を含めた雰囲気、そして読み心地は、何気にほっこりできて嫌いじゃないです。でも、ミステリとしての小粒感は否めない。基本に忠実な?謎はしっかり用意されているし、地味だけど小技の組み合わせは評価したい短編もあるのですがね。総合的には、「気軽に読む分には悪くないかな」といった印象。


No.1255 5点 あの日、タワマンで君と
森晶麿
(2025/08/03 14:10登録)
 王様のブランチで紹介されたことから手にした次第。流行りに弱いんです。
 舞台は六本木にあるタワマン最上階の一部屋。配達員をしながら日々を凌いでいる山下創一が、ある日その部屋に配達をすると…という出だしからの展開で、先が気にはなったのだけれど、ずっと違和感が脇にあったことも事実。自分ならこうするけどなぁ…と思いながら読んでましたね。
 最大の肝については、読み返してみるとどうなんだろう。ギリギリセーフなのか。あのシステムもよく分からなかったしなぁ…。
 それと、結末とその後予測される展開を良しとしてよいものなのだろうか。何か釈然としないものがありました。


No.1254 7点 嘘つきたちへ
小倉千明
(2025/07/31 23:35登録)
 5編を収録したノンシリーズの短編集。タイトルどおり「嘘つき」がテーマ。
①このラジオは終わらせない:ラジオの生放送の中での駆け引き。反転攻勢は嫌いじゃないけど、ちょっとっしつこすぎた感も。
②ミステリ好きな男:嘘つきのオンパレード。
③赤い糸を暴く:20ページ程度の文量。真相は想定の範囲内かもしれないが、この文量の中での仕掛けとしては良。
④保健室のホームズ:保健室登校を続ける小学生との友情物語…であります。何も考えずスラスラ読んでしまったけれども、この短編集を読み進めた方なら、分かっちゃう方も多いかも。
⑤噓つきたちへ:第1回創元ミステリ短編賞受賞作。過疎の町で起きた、小学校5年生の水難事故について、20年以上を経て再開した同級生たちが語り合う。やはり本作中ではベストか。


No.1253 6点 あなたが誰かを殺した
東野圭吾
(2025/07/28 20:07登録)
 タイトル的に加賀恭一郎の「~が~を殺した」シリーズということになるのだと思うのですが、前2作とはテイストが異なり、犯人も含めて事件の真相が読者に示されます。相変わらずリーダビリティが高く、スラスラ読まされますし、意外性もあって流石と感じさせられました。
 一方で、個人的には何か釈然としない部分も。負の感情が集まりすぎているというか…。全体的に感情移入はしにくかったかな。まぁ、ミステリとは直接関係ない部分だけど。


No.1252 7点 殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス
五条紀夫
(2025/07/24 22:37登録)
 「走れメロス」。日本で最も有名な小説の一つに挙げる方も多いでしょう。そして読んだことのある(又は内容を知っている)方も多いはず。ならば、この作品も読んでみるがよし。結果「激怒した」と言われても責任はとれないけど。
 ミステリとして特筆すべきものがあるや否や、そんな判断は別として、まずは登場人物のネーミングが素敵である。メロスの妹は「イモートア」、その婿は「ムコス」、事件の目撃者は「ミタンデス」。当時の作家の名は「オサムス」。いいねぇ。隠しきれない(隠してないけど)バカミス要素も、これまたいいよねぇ。個人的には嫌いになれないタイプの作品。


No.1251 5点 科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア
喜多喜久
(2025/07/21 19:12登録)
 かつて「科警研のホームズ」と称された室長の土屋と、各県警から科学警察研究所(科警研)に派遣された3人の研修生による短編集第2弾。
①毒殺のシンフォニア:パーティー会場で毒殺された研究者。犯人は彼に近づかずに毒を飲ませたのか?
②溶解したエビデンス:水酸化ナトリウム溶液に浸された白骨死体の謎。
③致死のマテリアル:一酸化炭素中毒事故と思われたが、死因は呼吸不全。なぜ?
④輪廻のストラテジー:衆人の監視下で急死した新興宗教の教祖。輪廻のため自ら心臓を止めた?
 設定上そうせざるを得ないだろし、決して悪くはないのだけれど、「こういう物質又はこうした特性があるのです」を連発されるのはちょっとツラいか。②は工夫を感じたけれど…。


No.1250 6点 闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿
深木章子
(2025/07/19 21:23登録)
 「消人屋敷の殺人」に登場した、フリーライター・新城誠と編集者・中島好美のコンビが再登場。ちなみに、前作を読んでいなくても特段問題ないです。
 中盤以降の複数の転回には楽しませてもらったのですが、真相にはちょっと無理があるような気がします。うーむ、あり得なくはないのか…。
 なお、虫暮部さんのご意見はごもっともで、私自身、とある事実が判明した時点で疑問に感じた次第。敢えて二人のコンビを使わなくてもよかったし、設定上の工夫の余地は十分にあったと思いますね。


No.1249 7点 ひとつ屋根の下の殺人
酒本歩
(2025/07/09 23:50登録)
 伏線をゴシック体で明示するという趣向については賛否が分かれそう。個人的には、読者へのチャレンジというよりも作者の作戦の一つと捉えていて、まぁアリなのではないかなと感じたところです。
 私自身は残念ながら真相に辿り着けなかったのですが、読み慣れた方であれば、十分に予測可能と思われます。でも、考える前に先が気になって読み進めてしまった…という読書もいいじゃないですか(自分への言い訳)。
 斬新なトリック!という訳では決してなく、むしろ典型的なパターンではあるのですが、サクサク&ワクワクと読めたので1点加点しちゃおう。


No.1248 7点 嘘と隣人
芦沢央
(2025/07/06 12:57登録)
 定年退職した元刑事・平良正太郎が主人公を務める連作短編集。様々な「嘘」が共通テーマで、社会派の一面もあります。元刑事らしい淡々とした語り口と転換の組み合わせが良。
①かくれんぼ:ⅮⅤ夫からの被害の発端となったのは…。
②アイランドキッチン:事件の真相よりも記憶に残る激ヤバ女。こんな人間にロックオンされたら…怖すぎる。
③祭り:外国人労働者を巡る課題。ミステリ度は収録作で一番か。
④最善:痴漢冤罪。本当に最善の策だったのか。巧みなプロット。
⑤噓と隣人:人は何故嘘をつくのか。承認欲求や保身…。少しだけ救いのある話。続編がありそうな締め方。


No.1247 5点 逆転ミワ子
藤崎翔
(2025/07/02 22:05登録)
 ピンの女性芸人・ミワ子が雑誌に連載したエッセイ&ショートショート集、という体裁。30を超えるエッセイとショートショート自体は、悪くはないのだけれども、多少飽きも感じたかな…という辺りで登場する「後日談」がポイント。そういった展開であろうことは、自明なのだけれど。
 正直な感想としては、前作「逆転美人」の二匹目のどじょう狙い感が強めだなぁ…と。いや、狙うことは営業上当然としても、ネタ全被りに関しては工夫の余地があったような気がしましたね。


No.1246 5点 スタフ staph
道尾秀介
(2025/06/29 22:23登録)
 ドキドキ読ませていただいたし、転換も含めて楽しませてもらったのだけれども、そういう着地ね…という、何とも言い難い読後感が残ったなぁ…。いや、楽しく読ませてもらったし、不満を述べる気はないのだけれど。
 ちなみに、久しぶりにランチワゴンを利用しようかな…って思いましたね。


No.1245 6点 だるまさんが転んだら
堀内公太郎
(2025/06/22 21:59登録)
 ミステリー新人賞における盗作を巡るお話。
 前半の緩やかな進行(決して悪い意味ではない)から一転する、終盤の展開は好みが分かれそう。まぁ、ストーリー的にはやむを得ないのだろうけど。
 ネタとしては可もなく不可もなく…って書いたら怒られそうだけれど、サクサク読み進めてほぼ一気読みだったし、読書としては楽しかったですね。ちなみに、とある登場人物が(死亡フラグをイイ感じで立てちゃったこともあって)結構可哀そうだったな。


No.1244 7点 月蝕島の信者たち
渡辺優
(2025/06/21 22:56登録)
 伝統的かつ正当な孤島ミステリ。展開のパターンは想定できるのだけれど、ソコも含めてとても楽しい読書だったなぁ、と素直に思います。この手の作品、やっぱり好きな方は多いと思うな。コテコテ感がいい。
 なお、設定した動機を否定するつもりはないけれども、犯人は犯行後どうしようとしていたのかな…という点は、確かに読後気になりましたね。


No.1243 5点 神津恭介、犯罪の蔭に女あり: 神津恭介傑作セレクション2
高木彬光
(2025/06/15 14:04登録)
 神津恭介が登場する短編を集めた傑作セレクション第2弾。前作は密室縛りでしたが、本作は女性絡みの6つの事件を収録。
 古典的な構成と筆致を存分に味わえる一方、令和となった時点ではちょっと古臭く感じてしまう面も。警察もその辺りは調査というか裏取りしておこうよ…なんて感じちゃったりして。
 収録作の中では、意外性や探偵らしさの演出という点でも「青髯の妻」がベストかな。


No.1242 6点 ひとんち 澤村伊智短編集
澤村伊智
(2025/06/09 21:01登録)
 色々な「怖さ」を感じることができる8編を収録した短編集。同じパターンが揃うと怖さよりも飽きが先立ちそうなものですが、バラエティに富んだ怖さを滲みだしている点が特長。グイグイ読ませる引力もあります。
 ストレートな恐怖という観点では「死神」がベストか。それとは全く異なる角度で切り込まれたのが最終話の「じぶんち」。「シュマシラ」は作者のシリーズに通じるジャパニーズな怪奇モノ。「宮本くんの手」の原因には早い段階で気づくのだけれども、一気読みせずにはいられない流れでした。読み得な短編集と言えるのでは。


No.1241 7点 世界でいちばん透きとおった物語2
杉井光
(2025/06/06 22:53登録)
 「仕掛け」が印象的だった前作に比して絢爛さはないけれど、ミステリの側面で見れば本作の方が上位かもしれません。作中作の使いぶりが面白いし、そのような使い方をした必然性の演出も上手いと思います。編集者・霧子さんの存在も含めて読み心地も良。スマートに纏まった好編。


No.1240 6点 砂男
有栖川有栖
(2025/06/01 22:25登録)
 作者の単行本未収録作品を集めた作品集。江神シリーズ2本、火村シリーズ2本、ノンシリーズ2本の計6作品を収録。出来栄えはマチマチといったところですが、個人的には青い目・緑色の目の既存パズルを活用した「推理研VSパズル研」がベストか。既存パズルの回答後の展開が江神シリーズらしい。
 何より、2つのシリーズを同一の文庫で読めたことが、ファンとしては楽しかったですね。


No.1239 7点 神様の次くらいに
久住四季
(2025/05/24 15:47登録)
 日常の謎5編から成る短編集。派手さはないけれど、バラエティに富んでいるし、心憎い反転もあって水準以上に楽しめました。
①さくらが丘小学校四年三組の来週の目標
 若き小学校の教師が主人公。コミカルな好編。
②ライオンの噓
 高校が舞台。肝となる部室での出来事は、いくら何でも気付かれると思うな。
③神様の次くらいに
 大学生の男女が主人公。謎というよりも、爽やかなラストが印象的。
④小さいものから消えよ
 探偵と推理作家のコンビが、公園から毎日何かが(しかも小さいものから順に)消えていくという謎を追う。王道ではあるが、もうワンパンチ欲しかったかも。
⑤デイヴィッド・グロウ、サプライズパーティーを開く
 「星読島に星は流れた」に脇役として登場したデイヴィッド・グロウが再登場…らしいのだけど、全く記憶になかった。粋な反転に好感。

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