home

ミステリの祭典

login
罪人の選択

作家 貴志祐介
出版日2020年03月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 まさむね
(2025/11/22 18:18登録)
 4編が収録されたノン・シリーズの中短編集。うち3つはSFで、通底する何かを感じましたね。
①夜の記憶:本格デビューの9年も前の作品だそうで。書きたいことは分かるけど…。
②呪文:異星を舞台にしながらも、「諸悪根源神」を含めて、非常に考えさせられる内容。
③罪人の選択:唯一の非SF.。「AかBのいずれかに毒が入っている」パターンの進化系。
④赤い雨:正体不明の微生物「チミドロ」に蹂躙された地球が舞台で、まずはその設定が見事。微かではあるものの、力強さと希望を感じさせるラストも印象的。

No.3 5点 パメル
(2022/12/23 08:24登録)
哲学的なものから、架空の生物の脅威を綴ったものまで、執筆時期も内容も多様な4編からなる中短編集。各作は独立しているが、十八年を隔てた二人の男の命懸けの選択を描く表題作をはじめ、いずれも「時間」が重要なテーマ。
「夜の記憶」は、本格デビュー前の一九八七年、初めて雑誌に掲載されたSF。異形の生命体とバカンスを過ごす夫妻の物語が交互に語られ、やがて意外な形で結びつく。文章は粗削りで読み難いが、人間の定義や意識のありようを問う主題、謎と不穏が漂う展開など考え方は驚くほど今と変わっていない。
新型コロナウイルスの感染が広がっている現在を想起させる作品もある。二〇一五年~十七年に発表した「赤い雨」。生態系を支配し、死に至る病を引き起こす藻類・チミドロの繁殖した世界を描く。汚染された赤い雨が降る中で、女性研究者の橘瑞樹が治療法を探す。人類が、ここで描かれたような危機に対処しようとする時「一つの悪が、想像力の欠如」とみる。現実社会のコロナ禍でも、他者への配慮に欠けた言動や差別が、いつも以上に浮かび上がっている。
作中でチミドロの戦いは数千年続くと予想されるが、瑞樹はあくまで未来を見据える。自然は人間に忖度しない。だから人は思いを繋いで、長い時間を戦い抜くしかない。

No.2 7点 sophia
(2020/09/11 23:44登録)
●夜の記憶 4点・・・習作にもほどがある。
●呪文 6点・・・竜頭蛇尾。「Nintendo」には笑いました。
●罪人の選択 8点・・・二段構えのデスゲーム。さすがは表題作。面白い。
●赤い雨 8点・・・今の世相にマッチしたパンデミックもの(?)サスペンスとしても一級品。後半法廷ミステリになっちゃいましたが。

著者の短編集は初めて読みました。後半2つがよかったです。「夜の記憶」は加筆修正した方がよかったのではないかと思いますが、本格デビュー前の作品とのことで、そのまま載せることに意義があったのですかね。それと関係ありませんが、著者の作品の主人公は本当によくセックスをしますよね(笑)

No.1 7点 虫暮部
(2020/08/04 11:40登録)
 ミステリ1、SF3の短編集。
 表題作はヒントの台詞が判り易く、仕掛けが概ね読めた。しかしそれでつまらなくなるわけでなく、“こう来たか” と楽しめた。この手の謎は、特殊な知識が無くても “こういう性質のモノがあればこうなる” と推測出来れば “御名答!” でいいよね。
 「赤い雨」。子供っぽい登場人物ばかりでジュヴナイルかと思ったが、初出は別冊文藝春秋。

4レコード表示中です 書評