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ミステリの祭典

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失われた貌

作家 櫻田智也
出版日2025年08月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 7点 まさむね
(2025/12/20 14:32登録)
 作者初の長編。それが警察小説というのが、個人的にはちょっと意外でしたね。
 丁寧に作り込まれていますし、警察小説としての面白さは十分と評価するものですが、この作品、何か損をしているような気がします。
 まず、「本物の『伏線回収』と『どんでん返し』をお見せしましょう!」という謳い文句が煽りすぎ。さらに、年末のミステリランキング3冠でさらにハードルが上がりすぎ。
 いずれも作者に非はなく、特に後者は(あくまでも個人的な見解ですが)今期はこれといった注目作があまりにも少なかったことによる「単なる結果」であると受け止めています。前述のとおり、一般的にはしっかりと練られた読ませる作品だと思うのですが。

No.3 6点 人並由真
(2025/12/09 14:43登録)
(ネタバレなし)
「このミス」のベストには基本、批判的(××年度といいながら、その年の1~12月の新刊ベストではなく、勝手に晩秋で時期を区切るのが何よりイヤ)な評者だが、それでも来年の東西作品の新刊予告を読みたくて毎年、買ってはいる。
 で、一応、巻頭の記事を見ると……ほうほう今年の翻訳ベストはマンヴィル・ムーンかい、いや結構結構(笑)。この勢いで50~60年代の未訳のハードボイルド&私立探偵小説をどんどん発掘しましょう。
 ……で、国産の今年のベストが、とにもかくにもコレ(本作)である。

 「このミス」発売以前から本は家の中にあったが、わずか数日で正にとにもかくにも期待値が大きく上がってしまった?
 で、読了後の感想だが、う~~ん、今年の国産ベストワン、という看板に応えられるのかな、これ、という印象(汗)。

 いや、つまらなくはない(一方でそんなにリーダビリティが高いわけでもなく、先がどんどん読みたくなるようなベクトル感も希薄ではあったが)。

 話もよく練ってあり、ややこしくなりすぎてしまう手前ギリギリで、事件を組み上げていくパーツは、かなり巧妙に組み合わせてある、とは思う。
 ただしそのパーツ群に用いたギミックのひとつひとつがどっかで見たような読んだようなのばっかしで、21世紀の謎解きミステリ(作品の形質はまず警察小説ジャンルだとは思うが)としては、……う~む、これで今年の一位をとってエエの? という気分である。
 いや、「このミス」一位になったのはこの本の責任でもなんでもなく、世の中に相応に評価された作品だった、というだけの事実にすぎんのだが。

 あと、終盤のドラマ的なクライマックスも、小説としては悪くないんだけどね。
 ただ一方で、伊岡瞬や天祢涼あたりの昨今の中堅作家なら、3年に一冊くらいはこの程度に手応えのあるミステリ<小説>を恒常的に、フツーにちょくちょく書いてるだろ、という思いでもある。
 人間の血液型は変えられる可能性があるか、というトリヴィアだけはちょっと面白かったかも(まあ、それも以前にどっかのミステリで読んだネタのような気もするが)。

 結論から言えば、このミス1位になったのが、たぶんかなり不幸になる作品。そっと読まれて、静かに騒がれれば、かなりの高い定評を得たと思うんだけどね。

 客観的に観れば7点で十分いいと思うんだけど、あえて6点と抑えめの点数をつけておきます。作者の方は、以前も今後も本気で応援しているつもりだけど。

No.2 6点 sophia
(2025/11/20 16:51登録)
ネタバレあり

ミステリーでおなじみ「顔のない死体」というテーマに真っ向から挑戦していると思われるタイトルの割に、古典的かつ初歩的なトリックで拍子抜けというのが正直な感想です。本作は明らかにタイトルで損をしています。それに現代社会でこの古典的なトリックをやるのはだいぶ無理がありませんか?登場人物も魅力に乏しいです。被害者も容疑者も行方不明者も借金、横領、脅迫、不倫などと下世話な人物ばかりで話の行く末に興味が持てずなかなかページが進みませんでしたし、人物関係も最後まで頭に入って来ませんでした。ストーリー全体の起伏もはっきりしておらず、気が付いたら終わっていたという感じです。やはりこの方は短編の方が本領を発揮できるのではないかと感じました。

No.1 7点 HORNET
(2025/09/27 21:14登録)
 山中に遺棄された男性の遺体は、人相が判別できないほど顔がつぶされ、両手首も切断されていた。身元不明死体の捜査にあったのは媛上署捜査係長・日野雪彦。ほどなくして近隣市のアパートで別の殺人事件が起きる。現場の痕跡から、その犯人は遺棄された遺体の男性であるらしいことが判明。事件の背景を探るうちに、媛上署で起きている様々な事案がピースとなってつながっていく―



「サーチライトと誘蛾灯」に始まるおとぼけ青年・魞沢泉が探偵役のシリーズから雰囲気は一変、社会派の警察小説である。
 伏線として描かれる、日野の同期の生活安全課長・羽幌とのストーリーが、本線に絡んでくる展開はよく練られていて面白い。ただ、多方に広がっている各線が結びつけられていく構成は、だんだん全体像がこんがらがってくるところもあり、整理しながら読み進めないといけなかった。
 最後に明かされる真相は、正直物語終盤でおぼろげに見えてきているところがあり、「……あぁ、やっぱり」という感想だった。よく仕組まれた話ではあるが、ミステリに読み慣れていれば推測できるネタでもある。ただ主人公・日野と同期の羽幌の物語という側面の面白さもあり、総合的には楽しめた。

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