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ミステリの祭典

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少年時代

作家 深水黎一郎
出版日2017年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2017/04/01 09:22登録)
ハルキ文庫書き下ろし。
本の帯では『昭和の香り漂う懐かしい風景から予想外のラストが待ち受ける連作小説』とあるが・・・

①「天の川の預かりもの」=~町を歩くチンドン屋のシゲさんが吹くサキソフォンの音色に惹かれた僕は、あきらめないことの大切さを教えてくれた。ある日、町で殺人事件が起きて~という粗筋なのだが、この“あきらめないことの大切さ”が後々効いてくることになる・・・(ってネタバレ?)
②「ひょうろぎ野郎とめろず犬」=“ひょうろぎ”も“めろず”も山形県内陸地方の方言とのことだが、中身も方言満載で読みにくいこと夥しい・・・(深水氏も解説の池上冬樹氏も山形県出身とのこと)。薄汚れたビーグル犬“ツンコ”に纏る少年と両親の物語。最後は何だか泣けてくる。
③「鎧袖一触の春」=本連作のメインはコレ。ある県立高校の弱小柔道部が舞台となった青春小説風(?)。OB連中の理不尽なシゴキに耐えた一年生たちが、三年生の県総体という大舞台で挑んだ相手は全国に名を轟く強豪校だった! そして最後に訪れるのはサプライズ!! 結構爆笑&ニヤリとさせられるシーンも多いけど、でも何だか泣けてくる不思議な話。まさに「汗臭い」青春小説だな。

以上3編。
上の①~③まで読んでると、「どこがミステリーなんだ?」って思うよね、普通。
そう。本作は全然ミステリーではありません。少なくとも「エピローグ」までは。
エピローグで始めて、作者の狙いが分かる仕組みになっているわけだ。

でも、そこはあまり響かなかった。
っていうか、どうでもいい感じだ。
本作の“ミステリー的な仕掛け=予想外のラスト”も、特段目新しいものではないし、それよりも、子供時代~青春時代のエピソードの数々がどこか懐かしく、それ以上にほろ苦い気持ちを思い出させてくれた、それこそが本作の良さだろう。

やっぱり達者な作家だなと再認識させられる一冊。
こういう軽い読み物でもまずまず満足させてくれるのだから・・・
(これってやっぱり深水氏の体験談なのだろうか?)

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