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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1979件

プロフィール| 書評

No.159 6点 チルドレン
伊坂幸太郎
(2011/05/18 21:59登録)
伊坂氏本人の言の通り、短編集の形を借りた長編といった感じ。
そこそこ楽しめたが、全体を通して何か物足りなさを覚えてしまう。
それはドラマ性やストーリーの起伏が薄いせいかもしれない。
謎解きも至って単純なものではあるし、ミステリ色はあまりないように思われる。
しかし、最終話のどこかほのぼのとした結び方は悪くない。
各登場人物も上手く描き分けられているので、キャラ萌え小説としても楽しめるのではないだろうか。


No.158 6点 メルカトルかく語りき
麻耶雄嵩
(2011/05/15 21:37登録)
5編の物語で構成される短編集。
本格ミステリとはいえないと思うが、良くも悪くも麻耶氏らしい作品ではある。
メルカトル鮎は悪徳探偵ぶりを遺憾なく発揮しているし、彼らしい怜悧な推理を披露してくれて、存在感はやはり只者ではない。
ただ、ある程度予想はしていたが、期待通りの出来とは言えず、文体も読みづらいのでファン以外の読者が楽しめるとはあまり思えない。
第一話は別として、それ以外の作品はどれもラストがスッキリしないのもどうかと。


No.157 7点 そして誰もいなくなる
今邑彩
(2011/05/12 21:29登録)
前半はサスペンス仕立てのわりに緊迫感が希薄で、歯応えが感じられなかった。
シナリオ通りに見立て殺人がおこなわれていて、次の犠牲者が分かっているにもかかわらず、女子高生達に危機感がなく、暢気すぎるのは読んでいて不可解さを覚える。
しかし、物語が佳境に差し掛かってからは、一変スピード感に溢れ展開がめまぐるしくなり、歯応えが出てくる。
真相も捻りがよく効いていて、ありがちな展開とは言え、読者を引き込む筆力は素晴らしいと思う。
個人的には今邑女史の最高傑作は『金雀枝荘の殺人』だと考えているが、本作はそれに比肩するほどの傑作ではないだろうか。


No.156 4点 蹴りたい田中
田中啓文
(2011/05/09 21:31登録)
『蹴りたい背中』ではない。
勿論、芥川賞受賞作でもなく茶川賞受賞作である。
ミステリ、時代劇などを含むバカバカしいほどの大スケールで描かれるSFを中心とした、短編集。
相変わらず、脱力系だじゃれ満載の田中節が炸裂する。
決して読者に迎合することなく、自分の書きたいものを書くという、作者の意気込みは伝わってくる。
だから、読者を選ぶタイプの作品だが、ある種のマニアにとっては堪えられないだろう。
しかし、人に薦められる小説でない事は確かである。


No.155 5点 ささらさや
加納朋子
(2011/05/05 22:09登録)
終始ふわふわした雰囲気に包まれていて、それを心地よいと感じるかどうかで評価が変わるだろう。
私には今ひとつピンとくるものがなかったため、辛目の評価になってしまった。
これは夫が事故で死亡し、その夫が幽霊となって妻を見守り、時には近しい人物にとり付いてちょっとした謎を解きながら彼女を救うという、ミステリと言うよりヒューマン・ストーリーだ。
それにしても主人公のさやは頼りなさ過ぎる。
その彼女を助けるべく登場するのが三婆で、この老婆達は実に個性豊かでいい味を出しているが、感情移入できるほどではなかった。
それに、なんといってもドラマチックさに欠けるのが、難点だろう。
しかし、私の嗜好に合わなかっただけで、こういった暖かみのあるほのぼのとした小説が好きに人には、十分面白いのではないかと思う。


No.154 6点 死神の精度
伊坂幸太郎
(2011/05/01 21:43登録)
死神のクールさがなあ・・・そこが良いという読者も勿論いるだろうが、私にはやや食い足りなかった。
全体としてはよく考えられた連作だと思うが、ちょっぴり物足りなさを感じるのも確か。
ただ、様々なシチュエーションが楽しめる作品ではあるし、死神が主人公のわりに、暗すぎず重すぎず、適度なユーモアを保っているのは評価できる。
尚、最終話のオチには深く頷かされ、感動的といってもよいと思う。


No.153 5点 つきまとわれて
今邑彩
(2011/04/28 21:47登録)
日常のふとした事件から超常現象まで、読者の興味を惹きそうな謎を提示した短編集。
ホラー色は薄く、真っ当なミステリとしての体裁は保っている。
本書の特徴は、前の話の登場人物が次に再び登場するという、ちょっと風変わりな設定にある。
そして最後のストーリーが最初に繋がってくるという、リンクが凝っている。
それぞれの短編にオチもしっかりついていて、中には二転三転して楽しめるものもあるが、『鬼』に比べるとインパクトが薄い印象は否めない。
全体としてはまずまずと言ったところか。


No.152 6点 禍記
田中啓文
(2011/04/23 23:40登録)
伝奇ホラーの短編集だが、全編に亘って「禍記」が関わってくるのが異色。
だが、連作というわけではなく、それぞれが独立したストーリーになっている。相変わらずグロは健在で、その意味で田中ファンにとっては安心して?読めるであろう。
また、謎解きの要素も各短編に備わっている為、ミステリとしての側面も読み取る事ができる。
あとがきにもちょっとした仕掛けが施されていて、読者サービスも怠っていない姿勢は立派だと思う。


No.151 6点 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人
倉阪鬼一郎
(2011/04/19 21:42登録)
これは正直評価が難しい。
賛否両論を呼びそうな作品だが、本格志向の読者にとっては全く読むに値しない可能性が高い。
バカミスなのは最初から承知で読んだが、何しろ全体的に単調なのは閉口する。
決して人に薦められないので、5点にしようと思ったが、作者の地道な努力に敬意を表して6点。


No.150 7点
今邑彩
(2011/04/17 22:34登録)
ミステリを中心とした、ホラーを含む短編集。
久しぶりに今邑女史を読んだのだが、この人の作品がこれ程洗練されていて、尚且つ読みやすいとはまさに嬉しい誤算であった。
全体として、切れ味の鋭い内角をえぐるシュートといった感じの作品が多く、ほとんどが読者の意表を突く展開で、意外性も十分。
オチも素晴らしく、短いが読み応えのある短編集である。
なんとなくやり切れない気分や、不可思議な余韻を残す作品が多いのも評価できる点ではないだろうか。


No.149 6点 マドンナ
奥田英朗
(2011/04/14 21:48登録)
中間管理職の悲哀を描いた、主人公達の心情が手に取るように分かる、ユーモラスな短編集。
やはり表題作の『マドンナ』が最も共感できる。
40代の男が淡い恋心に大いに戸惑い、心揺らす様は読んでいて身に詰まされるし、凄く理解できる。
これほどまでに主人公の心の中に入り込んだ描写を出来る作家はそうはいないと思う。
それだけに貴重な存在であろう。
『ボス』もなかなか良い出来だ、ラストシーンは少しだけ癒されるかも。


No.148 6点 ミミズからの伝言
田中啓文
(2011/04/12 21:44登録)
SF、伝奇、ミステリ、都市伝説など様々な要素を取り入れた、脱力系ホラー短編集。
あとがきにもあるように、7作品全てに共通するキーワードは「だじゃれ」。
かなりグロイものも含まれているが、最近あまり見られなくなったホラーらしい奇想溢れる短編が並んでいて、飽きが来ない。
それぞれのオチも捻りが効いていて、なかなか楽しめる仕上がりとなっている。


No.147 6点 ガール
奥田英朗
(2011/04/09 23:44登録)
働く女性たちの職場での、私生活での悲喜こもごもの愛憎劇。
と言っても、決して深刻なものではなく、どちらかというと日常生活の何気ないやり取りが丁寧に描かれている短編集である。
それだけにあまりドラマチックな作風ではないが、なるほどと頷かされるような女性の微妙な心理状態が見事に表現されている。
どれが秀でていると言う訳ではなく、どの作品も一定の水準を保っている。
サラッと読めて、後味スッキリの軽い仕上がりだと思う。


No.146 4点 秋の牢獄
恒川光太郎
(2011/04/07 23:52登録)
『夜市』のような透明感溢れる文体はなりをひそめてしまっているし、幻想的な雰囲気も感じられなくなった。
表題作他全三篇からなる短編集だが、いずれの作品も既視感を覚えるようなストーリーだし、捻りも全く効いていない。
ホラーとしては面白いのかもしれないが、ミステリ読みとしてはかなり物足りない。
世評は高いようだが、私にとっては期待はずれであった。


No.145 7点 熱帯夜
曽根圭介
(2011/04/01 23:55登録)
第62回日本推理作家協会賞短編賞受賞の表題作を含む、3篇からなる短編集。
『熱帯夜』はなかなかサスペンスフルで小気味良いが、少々駆け足気味なのが残念な点ではある。
しかし、登場人物全てに役割がしっかり与えられていて、一風変わったホラー色も加わって独特の世界観を紡ぎ出している。
『あげくの果て』はやや散文的な文体で、まとまりに欠ける感があり、印象が薄い。
『最後の言い訳』は意表を突く展開で楽しめる。
いわゆるゾンビものではあるが、ドラマ性も十分で、ラストでかなり強烈な余韻を残す力作だ。


No.144 4点
荻原浩
(2011/03/29 23:36登録)
正直、採点通りイマイチの出来かなという印象。
面白かったのは、今時の(もう一昔前だが)女子高生達の実態と、刑事とのやり取りくらい。
あと、個人的な好みで食事のシーンが多めだったのは、良かったが。
しかし、テンポもあまり良くないし、若干無駄と思える描写もあり、間延びした感は拭えない。
また、被害者の足を切り取る理由があれでは、ちょっと納得できないかと。
ラスト一行で+1点。


No.143 4点 幼虫旅館
赤星香一郎
(2011/03/23 23:37登録)
前二作が面白かっただけに、非常に残念である。
今回は、いわゆる陸の孤島或いは嵐の山荘ものに、ちょっぴりホラー・テイストを加味して、水で薄めたような仕上がりになっている。
かなり濃密に感じられた前ニ作と比較すると、とても同じ作家によるものと思えないような希薄さが感じられ、正直読むべきではなかったと後悔している。また肝心の巨大幼虫の正体には唖然とさせられた、勿論悪い意味で。
せっかく期待していたのに、トリックらしいトリックもなく、なんの捻りもない凡作に終わっているのは、返す返すも残念で仕方ない。
でも、新作が出たらまた買ってしまうんだろうな・・・。


No.142 8点 連続殺人鬼 カエル男
中山七里
(2011/03/19 23:44登録)
本作は、『このミス大賞』に同作家の『さよならドビュッシー』とともにダブルエントリーされた作品で、こちらのほうを読みたいとの読者の声が多く、刊行されたいわくつきの作品である。
マスコミによって「カエル男」と名付けられた連続殺人鬼を追う刑事達を描いた、サイコ・サスペンスといえるであろう。
いささかエグい描写があるので、特に女性読者は要注意だが、意外と骨格はしっかりしている印象だ。
果たして「カエル男」の目的は何なのか、単なる無差別殺人なのか、それとも殺人快楽症なのか、その辺りが本作の一つの眼目といってよいと思う。
主人公の刑事、古手川がボンクラであることや、少なからず疑問を抱かざるを得ない箇所があること、やや冗長なシーンなど、細かい欠点はいくつもある。
しかし、それらを補って余りある面白さであり、後半の畳み掛けるようなどんでん返しの連続は見事といってよいと思う。


No.141 5点 探偵Xからの挑戦状!Season2
アンソロジー(出版社編)
(2011/02/27 23:44登録)
4人によるアンソロジーだが、それぞれ一長一短あってどの作品が秀でている訳でもなく、押しなべて平均点をクリアしている感じである。
自分の好みから言うと、近藤史恵女史の『メゾン・カサブランカ』がややお気に入りかな。
問題編と解決編が完全に分離されているわけだが、面倒なので全く推理しないで解決編を読んでしまった。
これはある意味正解かもしれない。
というのは、真相を看破するのには多分に想像力を要する作品が多かったため。
そんな中井上夢人氏の『殺人トーナメント』だけは、純粋なパズル問題であり、理系が得意な人には意外に簡単に解けるかもしれない。
あなたも挑戦してみては?


No.140 7点 空中ブランコ
奥田英朗
(2011/02/25 23:47登録)
奥田英朗氏の作品を初めて読ませてもらった。
一読後の感想は、なんと言っても精神科医の伊良部一郎の強烈なキャラと看護婦のマユミの魅力に見事に嵌った感じ。
笑える小説もたまにはいいもんだねえ、気分が楽になるようだ。
伊良部の元を訪れる患者達は、その無茶苦茶な治療法に驚かされるが、さすがに医師だけあって実は計算どおりの経過を辿っているような気もする。
いずれにしても、ほとんどの患者が快方に向かっているし、後味もすっきり清涼感があって良いと思う。
また、最終話『女流作家』のラストシーンには、思わずホロリとさせられた、これまでの作風からは考えられない場面に少し驚かされた。

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