home

ミステリの祭典

login
メルカトルさんの登録情報
平均点:6.03点 書評数:2034件

プロフィール| 書評

No.214 6点 逃亡者
折原一
(2012/03/30 22:00登録)
ある理由から殺人を犯したごく普通の主婦の逃避行の物語。
前半から中盤にかけては、さながらトラベルミステリの様相を呈している。
全国各地を転々とし、整形手術を受け、顔を変えて逃げ続ける女の足跡を追う描写は、なかなかのサスペンス振りである。
ところが後半予想もしない展開が待ち受けていて、どんでん返しも鮮やかに決まっており、最近の折原氏の作品の中では出来は良い方ではないだろうか。
若干長いのが気になるが、決して退屈する事はない。
なかなか読ませてくれる。


No.213 6点 少女
湊かなえ
(2012/03/22 21:51登録)
流れるような文章ですらすら読める。
二人の少女が人が死ぬところを見たいという願望から、それぞれ行動を起こし、やがて交錯し一つの結末に帰結するのだが。
冷静に考えれば、こんな偶然あり得ないとしか言いようがない、しかし小説だからね、こんなのは普通かも。
私にとっては許容範囲内だが、読者によっては許しがたいかもしれず、その辺りも評価が別れるところだろう。
現役女子高生の実態は案外こんなものかもしれないと、妙に納得できる部分もあるが、二人の少女の個性が今ひとつキッチリ描き分けられていなかった気がするのがやや残念である。
とは言え、思いのほか面白かったのは事実で、もう少し点数を高くしてもよかったが、ギリギリこの点数で。


No.212 6点 傍聞き(かたえぎき)
長岡弘樹
(2012/03/19 21:51登録)
うーむ、どの作品も無難にまとめているが、言い換えればどれもこれもインパクトに欠けるということだろうか。
読み方が悪いせいなのか、私の頭が弱いせいなのか、一度本を置いてブランクが空くと、それまでのストーリーがほとんど思い出せないという珍現象が頻繁に起こった。
もう自分にはミステリを語る資格がなくなったと言うことか。
悲しい現実を突きつけられた作品だが、決して面白くなかった訳ではなく、それなりに楽しめたと思う。
それぞれの短編に教訓のようなものが示唆されているのも、一つ良いポイントであろう。


No.211 6点 永遠の仔
天童荒太
(2012/03/16 21:38登録)
長い、さすがに文庫本5冊分は長い。
しかしながら最後まで飽きることなく読めたのは、やはり作者の力量が並ではないということなのだろう。
帯の「ミステリーの最高峰」の謳い文句は大袈裟だが、心に残り続ける、というのは決して間違ってはいないと思う。
要所要所に、問題提起やちょっとした感動を呼ぶサイドストーリーが散りばめられていて、いいアクセントになっている。
全体としてはさして複雑なストーリーではないが、丁寧に描かれているため、この長尺はやむを得ないのかも。
だが、個人的には誰にも感情移入できなかったのはマイナス点だろうか。


No.210 7点 昆虫探偵
鳥飼否宇
(2012/02/20 23:38登録)
単に昆虫の世界を舞台にしているだけではなく、昆虫の生態を生かしたトリックを仕掛けており、事件も一風変わったものばかりで最後まで興味を持って読むことが出来る。
作者は作家になる前は昆虫の研究をしており、とても素人では書けない本格的な昆虫界の知識を披露していて、ミステリ史上でも相当に異色の作品に仕上げていると思う。
こんな作品が脚光を浴びてもよいと思うのだが、いかんせんマニアックすぎるきらいもあり、一般受けするかどうかは未知数である。
しかし、一読の価値はあると言いたいと思う。


No.209 5点 Mystery Seller
アンソロジー(出版社編)
(2012/02/16 22:40登録)
島田荘司他8人の豪華執筆陣によるミステリ短編集。
竹本健治、麻耶雄嵩、有栖川有栖など、超有名な作家名が並ぶだけに、かなり期待していたのだが、見事に期待は外された。
どれもこれも凡作ばかりで、これといって特筆すべき作品が見当たらない。
唯一、我孫子武丸が面白かったかなという印象。
名前に惹かれて思わず買ってしまったが、あまり読むに値しないと思われるので、作家名で購入するのはお勧めできない。


No.208 6点 盗まれて
今邑彩
(2012/02/04 22:05登録)
手紙や電話が重要な役割を果たす、短編ミステリ8編からなる作品集。
良くも悪くも、読みやすく忘れやすいという今邑女史の二大特徴を踏襲した作品ばかり。
ストーリーを読むにつれて、その展開は読めてしまうケースが多いし、オチもおおよそ想像がつくが、その先に更に一捻り二捻り効かせているところはさすがである。
全体として、それなりに面白いし一読の価値はあるのではないだろうか。
今邑女史としてはまずまずの出来だと思う。


No.207 5点 踊るジョーカー
北山猛邦
(2012/01/27 21:47登録)
まあ言ってみれば、可もなく不可もなく、又はインパクトに欠けるという感じだろうか。
気弱で引きこもりの探偵という設定は悪くないが、その特異な探偵像が上手く機能しているとは言い難い。
トリックも取り立てて素晴らしいわけでもない、むしろ平凡な部類に入るのではないか。
これはバカミスすれすれで、きわどく本格ミステリとしての体裁を保った、軽めの短編集だ。
個人的な好みでいえば、『ゆきだるまが殺しにやってくる』が好み、トリックはちょっとバカバカしいが。


No.206 6点 ビブリア古書堂の事件手帖2
三上延
(2012/01/22 22:10登録)
前作同様、読み心地もよく、雰囲気もふんわりしていて、とても感じの良い仕上がりとなっている。
今回は、古書にまつわる謎に加えて、ビブリア古書堂に復帰した栞子さんの母親の過去の秘密が明かされたりして、シリーズ第二弾としてありがちなパターンを踏襲している。
ただし、前作に比べて若干出来が劣る感じがするのは否定できない。
謎が若干弱いのと、キャラの魅力に頼りすぎな点がその原因ではないかと思う。


No.205 7点 奇面館の殺人
綾辻行人
(2012/01/19 22:21登録)
待望の館シリーズ第9弾、待たされた甲斐はあったかな。
実に丁寧に描かれていて、それだけに前半殺人が起きるまでまわりくどい感じは拭えない。
しかしさすがに「館」は本格の芳ばしい香りが漂っていて、楽しませてくれるのは間違いない。
被害者の首を切った理由、招待客全員に仮面を被せた理由、指を○○した理由などは十分納得できるが、殺人を実行した動機だけはいかにもありきたりでやや拍子抜け、これはちょっといただけない。
それと、前のお二方も書かれているが、鹿谷の推理はややもすると推測と偶然に過ぎない部分があるのは否定できない。
とまあ、色々あげつらったが、細かい点まで緻密に書かれていて好感が持てるし、「館」ならではの趣向が満載で、本シリーズのファンは間違いなくその世界観を存分に味わえると思う。
随所に伏線が張られているのも、高評価。
しかし、読者によっては、ジリジリするような苛立ちを感じるかもしれない気がするのは、ちょっぴり残念な点ではないだろうか。


No.204 5点 THE CHAT
椙本孝思
(2012/01/12 21:48登録)
ソフトウェア会社に勤める平岡が通っているチャットルームに“インターネットの亡霊”と名乗る者が現れた。
彼は既に殺されており、不要なファイルを削除していると語り、その言葉通りチャットのメンバーが次々と残酷な方法で殺されていく。
といった内容だが、どうにも全体的にスッキリしない感じがしてならない。
それと気になるのが誤字が多い事、これはいけない、気になって仕方ない。
もう一つ、偶然に頼りすぎのご都合主義があちらこちらに散見されて、まとまりのないストーリー展開に一役買っているのも難点であろう。
一応登場人物が無駄なく処理されているのはプラス要素ではあるが、いかにも上手く出来過ぎていて、作り物めいた印象が強いのはいかがなものだろうか。


No.203 6点 わくらば追慕抄
朱川湊人
(2012/01/03 22:10登録)
『わくらば日記』の続編だが、相変わらず情感豊かに鈴音と和歌子の姉妹を中心に、ミステリ的趣向を織り交ぜながら描かれている。
残念ながら前作に比べると、数段出来が落ちる感は否めない。
今回は、母親がほとんど登場せず、その代わり住み込みで働く辛い過去をもつ茜の露出頻度が増えている。
そして薔薇姫という新たな敵キャラが登場している、が、ここではまだその正体は明かされていない。
まだ本シリーズは続きそうな予感、次回作に期待したいところである。


No.202 6点 モザイク事件帳
小林泰三
(2011/12/30 23:49登録)
7つのテーマ別にまとめられた短編集。
最も気に入ったのは、最終話の日常の謎を扱った『路上に放置されたパン屑の研究』かな。
普通の日常の謎解き物かと思わせておいて、一捻りしてあるところが心憎い。
それぞれの作品のクオリティが標準をクリアしており、本格物とユーモアの両面が楽しめるのが、優れた点ではないだろうか。
『正直者の逆説』の前半の道行きシーンも私好みで、楽しめた。ユーモアを交えながらも緊迫した道行がなんとも言えない、いい味を出している。


No.201 6点 猫柳十一弦の後悔
北山猛邦
(2011/12/26 22:52登録)
日本で唯一探偵助手を養成する大学の、名探偵の称号を持つ二人の教官と、そのゼミに所属する探偵助手見習い達が、孤島で演習を実施する。
そして台風接近のため孤立し、型どおり殺人が起こる。
勿論連続殺人に発展し、その死体には異様な装飾がなされるという、誠に正統派の孤島ミステリ。
猫柳十一弦という女探偵の造形はこれまでにない新味を出しており、シリーズ化も見越したキャラ作りは一応成功している。
一つ苦言を呈するとすれば、動機がいかにも弱いという事。
あっと驚くような展開はないが、真面目に書かれたミステリであるのは間違いないだろう。
ライトな感じで読みやすいのも好感が持てる。


No.200 7点 輝く夜
百田尚樹
(2011/12/22 22:21登録)
どこかしら不幸や不運を抱えた女性たちの、聖夜に訪れる一夜限りの奇蹟の物語を描いた短編集。
どの作品も非常にコンパクトにまとめられているが、内容は充実しており、中身がぎゅっと詰まった大人のためのメルヘンである。
心洗われるような、心が温まるような、そんな作品が目白押しで大変好感が持てる。
読んで良かったなあと実感できる、何度も読み返したくなるような作品集だと思う。
個人的にお気に入りは『猫』と『ケーキ』の2作、思わず落涙する事間違いなしの佳作に仕上がっている。


No.199 4点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2011/12/16 21:39登録)
これだけ読みにくい文章をよく書けるものだと感心するくらい読みにくい。
これが隠れた名作ですか?そうですか。
どんでん返しはどこにあるのだろう、全く想像通りの犯人は驚くに値せず、叙述トリックは一体どれなのか。
単に私の読解力の無さがなせる結果なのだろうか、おそらくそうなのだろう。
読みづらい文体に苦痛を感じる読者は、読まないほうがいいのかもしれません。
それにしても、評価が高いのが最大の謎である、私にとっては。


No.198 6点 本日、サービスデー
朱川湊人
(2011/12/14 22:13登録)
一生に一日だけ、何でも願いが叶う日が神様からサービスされるのが今日だと、あることから知ったサラリーマンの彼は一体どんな行動を取るのか。
女性の右手首だけの幽霊と、アパートの一室で奇妙な共同生活を送る男の末路とは?
など、朱川氏ならではの奇想が炸裂する、かなり風変わりな短編集。
表題作はオチが早々に読めるが、もう一捻りされているところに、作者の面目躍如が保たれている。
全体的になかなか楽しめた。


No.197 5点 迷宮
清水義範
(2011/12/10 21:42登録)
一つの猟奇殺人を、上から横から斜めから、あらゆる角度から検証し突き回して炙り出す手法は、さすが清水氏と感心させられる。
しかし、残念ながら全体がベールに覆われたような感触で、どうにもスッキリしない。
解説にある通り、再読するとまた違った面が姿を現すのかもしれないが、そこまでの気力はない。
決して嫌いな作風ではないが、最後までモヤモヤした感じが拭い去れなかったのは、己の読解力の無さゆえなのだろうか。
著者の意図が十分に汲み取れなかった自分の不甲斐なさが残念な限りである。


No.196 7点 THE QUIZ
椙本孝思
(2011/12/07 21:40登録)
優勝賞金1億円のクイズ番組の決勝大会に残った、10人の挑戦者達。
彼らは難問に挑んでいくが、間違った解答を提示した者は、一人、また一人と目の前で殺されていく。
主催者の目的は一体何なのか、なぜ最後の一人になるまで殺されなければならないのか・・・
細かい疑問点やツッコミどころはあるものの、なかなかいいテンポで物語りは展開していく。
アマゾンではかなり酷評されているが、私は面白く読めた。
特にラストで、全ての謎が明かされていく過程は、意外性十分で衝撃を受けた。
このトリックには前例があるらしいが、私はその作品を知らなかったため、驚愕の展開を堪能できた。


No.195 6点 閉鎖病棟
帚木蓬生
(2011/12/04 21:31登録)
閉鎖病棟と言ってもそれ程閉鎖されているわけではない。
精神科病棟の入院患者が主な登場人物であるが、主要人物はいたって普通で異常性はほとんど感じられない。
逆に読んでいる自分のほうが異常なのではないかと思えてくるのが不思議だ。
だからこそ小説として成り立つわけだが、本作はある意味我々よりも純粋で常識をわきまえたごく普通の患者達の様々な姿を、色んな事件や出来事を通して丹念に描いたヒューマンドラマである。
ミステリではないと思う。
しかし、話の端々に心動かされる場面が散りばめられており、最後の裁判のシーンは涙を堪えるのが精一杯だった。

2034中の書評を表示しています 1821 - 1840