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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1924件

プロフィール| 書評

No.104 6点 MISSING
本多孝好
(2010/08/25 23:52登録)
ミステリに近い作品、ホラーっぽい作品、一種の恋愛小説、文芸的作品など、非常にバラエティに富んだラインナップの短編集。
どの作品にも共通するのは、人間の心の奥には愛や優しさばかりでなく、憎しみや醜くさも同時に存在しているのだという事実を、時に儚く、時にリアルに表現した異色作であること。
特に第16回小説推理新人賞を受賞した『眠りの海』は印象深い。


No.103 6点 ミステリアス学園
鯨統一郎
(2010/08/20 23:38登録)
最終話までのメタミステリぶりは、『匣の中の失楽』ばりでなかなか面白かった。
国内外のミステリ作家や、作品が多数紹介されているのは初心者でなくても嬉しい構成だと思う。
密室やアリバイ、ダイイングメッセージの講義なども盛り込まれており、ある意味親切なミステリ入門書ともなっていて、その点は好感が持てる。
だが、あの結末だけはどうにも納得がいかずスッキリしない。


No.102 5点 舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵
歌野晶午
(2010/08/17 23:35登録)
このタイトルはどうなの、と思ってしまう。
おそらく中身を知らずに買った人は、ひとみちゃんがダンスに探偵にと、大活躍する安楽椅子少女探偵物語みたいなのを期待していたのではないだろうか。
しかし、ひとみちゃんは、ダンスも探偵もしません。
ただ、刑事である叔父の歳三にヒントとなる言動をするのみ。
警察小説としてはまずまずだと思うが、感情移入できるほど登場人物に魅力が感じられなかったのは残念である。


No.101 5点 浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 連作推理小説
鯨統一郎
(2010/08/12 23:49登録)
前作『九つの殺人メルヘン』以上に、ノリノリの昭和の懐かし話が逆に多少ウザく感じられてしまう。
また、御伽話の新説は「そうとも考えられる」程度なので、あまり真剣に受け止めるとバカバカしくなる。
肝心の殺人事件の真相も、前作に比べると今ひとつ納得できない、もやもや感が残る。
総評として前作より劣るが、まずまず楽しめる、と言ったところか。


No.100 6点 闇に用いる力学
竹本健治
(2010/08/11 23:35登録)
まあ、なんと言うか竹本氏らしく、謎のベールに包まれたような筆致は本作には似合っていたとは思う。
ミステリともSFともつかない作品だか、オカルティックな雰囲気は悪くないし、先の展開はどうなるのだろうという興味は持たせてくれる。
だが、果たして続編は書かれるのだろうか。


No.99 4点 古書店アゼリアの死体
若竹七海
(2010/08/09 23:36登録)
古書店アゼリアの女主人ばかりが目立って、他の登場人物の影が薄く個性が感じられない。
この作者はやはり長編には向いていないように思われて仕方ない。
デビュー作のような連作短編集をもっと書けば良いのにと、勝手な希望を抱いてしまう。
ラストは捻りが効いているが、事件そのものとは関係ない為あまり評価できない。
それとやはり前作同様、冗長である。


No.98 8点 悪魔が来りて笛を吹く
横溝正史
(2010/08/07 23:49登録)
天銀堂事件の真相、無駄な密室など、細かい疵はあるものの、様々な小道具を駆使しての雰囲気作りは素晴らしい。
横溝作品の中にあっては異色作かもしれないが、それだけに貴重な存在ではないかと思う。
犯人が黄金のフルートを吹く場面では嫋々たる切ない余韻を残す。
暗い話ではあるが、それなりに救いもあって印象的なラストだと思う。


No.97 6点 九つの殺人メルヘン
鯨統一郎
(2010/08/04 23:30登録)
実に軽妙で、時々笑える、とてもユニークな連作短編集。
昭和の懐かしいTV番組やCM、歌手、俳優などの昔話~メルヘンの新解釈~殺人事件のアリバイ崩し、といったパターンの繰り返し、かと思いきや、最終話では驚きの展開が・・・。
肩の凝らない軽いミステリを読みたい時には最適。
ただ、グリム童話の新解釈には、それ程新味があるようには感じられなかったのは少々残念である。


No.96 6点 被害者は誰?
貫井徳郎
(2010/08/03 23:33登録)
貫井氏にしては軽妙な短編集。
こんなのも書けますよ、とでも言いたげな作者の姿が見え隠れしているような気もする。
それにしてもこの作家も結構様々な作風の作品を物しているようだ。
私としては『妖気切断譜』の続編を一刻も早く読みたいのだが。


No.95 6点 ホワイトアウト
真保裕一
(2010/08/02 23:50登録)
こんな超人いないだろう、という突っ込みはなしで。
壮大なドラマはいかにも映画向きではあるけど、映画のほうはイマイチだった。
ミステリ的趣向はほとんどないに等しいが、サスペンスとしては高得点であろうと思う。


No.94 8点 ラットマン
道尾秀介
(2010/07/31 23:44登録)
これが道尾氏の実力かと思わせるに十分な力作。
途中までは作者のミスリードにまんまと乗せられて、見事に騙された。
その先に更なる驚愕の真相が待っていようとは・・・。
ただ、過去の事件も含めて、伏線が少ないような気がする、その為真相を看破するのは難しいのではないかと思う。
アンフェアとまではいかないが、その点だけがやや不満。


No.93 7点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2010/07/28 23:29登録)
哲学部分を取り除いてみれば、スッキリとした本格ミステリに様変わりする。
しかし、本作においてはその哲学が肝要であり、どちらかと言えば作者が描きたかったのは、こちらにあるのではないかとも思える。
それでも、メイントリックはまさに本格と呼べるものであり、それだけでも絶賛に値する。


No.92 3点 ヴィラ・マグノリアの殺人
若竹七海
(2010/07/27 21:43登録)
長すぎる、この内容なら短編で十分。
登場人物が多すぎて、誰が誰だか分からないし。
全体の2/3以上を占める容疑者同士の退屈な世間話を延々と読まされて、まるで拷問、挙句あの結末では・・・。
これがコージー・ミステリと呼ばれるものなら、二度と読みたくない。
しかし、姉妹編も同時購入してしまった為読まぬわけにはいかない、これには大後悔。


No.91 6点 巷説百物語
京極夏彦
(2010/07/25 23:30登録)
読み始めた時は「おおっ、これは」と確かな手応えを感じたのだが、そのワクワク感は第一話に留まってしまった。
時代小説風の文体には違和感を覚える事はなかったが、どうも何か物足りなさを感じた。
これも期待の裏返しなのかも。


No.90 8点 ハサミ男
殊能将之
(2010/07/22 23:35登録)
ネットで本作を検索していたら、いきなり見てはいけないネタバレが目に飛び込んできたという、苦い思い出のある作品。
叙述トリックの目玉を分かっていて敢えて読んだ訳だが、やはり予備知識なしで読みたかった。
そうすればもっと高得点になったはず。
でも、その他にも驚愕があったので許せた。
尚、最後の結び方はなかなか味のある結末だと思う。


No.89 5点 粘膜兄弟
飴村行
(2010/07/21 23:33登録)
「粘膜シリーズ」前二作と比較すると、冗長な感は否めない。
本作のほうが一章から三章まで有機的な繋がりははっきりしているのだが、不用と思われるエピソードが羅列されており、やや退屈である。
最終的に作者が何を伝えたかったのか、私には理解できなかった。
根底に「愛」が流れているのは間違いないが、その愛の深みも今ひとつ感じられなかったのは残念である。


No.88 6点 未明の悪夢
谺健二
(2010/07/19 23:26登録)
阪神淡路大震災直後の生々しい描写など、半端ではないポテンシャルを保持する貴重な作品ではある。
トリックは震災を実際に体験した者でなくては思いつかないものかも知れないが、ミステリをある程度読んでいる読者なら、苦もなく見破れてしまうのが残念。


No.87 6点 名探偵 木更津悠也
麻耶雄嵩
(2010/07/18 23:40登録)
本格物の短編集としては水準を超えていると思う。
ただ、木更津の扱いはちょっと可哀想な気がする。
香月は相変わらず性格が悪いな、というのが実際の感想。
ワトソン役の新型としては成功しているかもしれないが、個人的にはあまり印象が良くなかったのでこの点数。


No.86 8点 迷路館の殺人
綾辻行人
(2010/07/17 23:42登録)
これ程作中作を見事に昇華させた小説も珍しい。
叙述トリックはややアンフェアな部分もあるが、私にとっては驚愕と言えるものではあった。
鹿谷門美の「迷路館の殺人」でも十分面白かったが、さらにそれを巡っての攻防は読者サービスの精神に溢れていると思う。


No.85 7点 ひらけ!勝鬨橋
島田荘司
(2010/07/16 23:52登録)
これぞユーモアミステリの傑作ではないかと。
まあ、ミステリではないかもしれないし、どちらかと言うと私の苦手なハードボイルド風味だが、老人達の生き生きした姿をユーモアたっぷりに描かれており、とても楽しく読ませてもらった。
青春に歳は関係ないのだと教示し、改めて島田氏の作風の幅広さを見せつけられた力作である。
ゲートボールの試合のシーンでは思わず手に汗握る事請け合い。

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