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ミステリの祭典

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龍の寺の晒し首
海老原浩一シリーズ

作家 小島正樹
出版日2011年03月
平均点5.86点
書評数7人

No.7 6点 E-BANKER
(2022/08/21 14:27登録)
しばらく読まないでいると、また読みたくなってくる・・・そんな中毒性のある作家、小島正樹。
それはまぁ冗談ではありますが、「詰め込みすぎミステリー」の第一人者としての地位を確立したと思われるのが本作辺り(らしい)。
単行本は2011年の発表。

~群馬県北部の寒村「首ノ原」。村の名家「神月家」の長女・彩が結婚式の前日に首を切られて殺害され、首は近くの寺に置かれていた。その後、彩の幼馴染がつぎつぎと殺害される連続殺人へと発展していく。僻地の交番勤務を望みながら度重なる不運に見舞われ県警捜査一課の刑事となった浜中康平と彩の祖母から事件の解決を依頼された名探偵・海老原浩一のふたりが捜査を進める・・・

なかなか“そそる”紹介文ではありませんか・・・
今回のメインテーマは連続殺人犯というフーダニットはもちろんのこと、タイトルどおり「首切り」。
「首切り」というと、読者はどうしても「入れ替わり」を想起するわけですが、その可能性を誘引するかのような「双子」まで登場し、序盤から「顔つきが似ている幼馴染たち」や「髪の長さ」に言及する表記が多数。つまりは、最初から真犯人や被害者のミスリードを誘う展開ということで、まさに横溝や高木の作風を意識したミステリーになってます。
ただ、今回の「首切り」の理由は弱すぎでは?
「首切り」に限らず、バラバラ殺人の場合、その理由は「アリバイトリックとの連携」というものが多いけれど、今回は必然性がまったく感じられない。まぁ過去の因縁から生じた「動機」が理由にはなっているんだろうけど、ここまでのリスクと回りくどい方法をとってまでやることか!という感は拭えない。
とりわけ、第一の殺人での首の隠し場所には驚いた。まさかの・・・。誰かがちょっと上を見てしまえば間違いなく違和感を持つに違いない!(他の方もこういうところが強引だとか、絵空事という評価につながっているのだろうな・・・)

いやいや、こんなことを言ってはいけない。相手は「詰め込みすぎミステリー」なのだ。とにかく「詰め込まなければ」ならないのだ。
多少の無理矢理や違和感なんて関係ないのだ。「偶然の連続」なんて当たり前ではないか? たいがいの事件なんてちょっとした偶然が引き起こすものなのだから・・・
そういう意味では、とにかく本格ファンを楽しませようとするサービス精神に対しては賞賛を贈りたい。現代(多少遡ってはいるが)にこんな舞台設定を持ち込むこと自体多少の違和感はやむなしということだ。他の作家はこれを忌避した結果、「特殊設定」というアナザーワールドを創造する道を選んだのだから。

ただ、フーダニットはあまりに分かりやすかったかな・・・(まぁCCでの連続殺人の宿命というやつではあるけど)。最後の最後にまさかの協力者(ネタバレ?)を登場させたのは作者の意地ではないか。
海老原浩一シリーズの新作も出なくなって久しくなるけど、さすがにネタ切れなのか。いろいろと辛口を批評をしても、やはりこの「詰め込みすぎミステリー」を渇望している自分がいるのは間違いない(らしい)。

No.6 7点 nukkam
(2020/06/04 21:35登録)
(ネタバレなしです) これでもかと言わんばかりに謎とトリックを詰め込む小島の本格派推理小説が「やり過ぎミステリー」という評価が固まったのは「武家屋敷の殺人」(2009年)あたりと思われます。「四月の橋」(2010年)が(この作者としては)おとなしい部類だったのでさすがに「やり過ぎ」もそうは続かないかと少し残念な気になりましたが、2011年発表の海老原浩一シリーズ第3作(島田荘司との共著「天に還る舟」(2005年)もカウントすれば第4作)の本書でまたまた「やり過ぎ」をやってくれました。連続首切り殺人事件の謎解きがメインですが、切られた首があちこちで目撃されたり首のない死体がボートを漕いだり、挙句の果てには造り物の龍が空に舞い上がります。トリックは強引だったり偶然だったりと問題点もありますが複雑な真相に上手くはまっています。犯人当てとしては第5章の最後の説明が肩透かしモノですがどんでん返しの謎解きは十分に面白かったです。ユーモアを意識した場面を挿入するなど作者にも余裕ができたのかもしれません。エピローグのドラマは「やり過ぎ」というより「出来過ぎ」の感がありますが(笑)。

No.5 3点 ia
(2015/09/12 15:28登録)
どうでもいい謎がいっぱい出てくる。
偶然や錯覚に頼りきっていて残念。
他の著作でもその傾向は強いが、これはトップクラス。
それに探偵が気持ち悪い。表情の変え方、感情の出し方など、人間のマネするロボみたい。

No.4 4点 バックスクリーン三連発
(2014/03/26 17:01登録)
やられた感よりもそんなわけないと突っ込みたくなる
トリックに説得力が無い
まず動機が先に公開されているので誰が犯人かを捜すのに
集中できたのはよかった

No.3 6点 メルカトル
(2011/07/02 21:55登録)
ボートを漕ぐ首なし死体、天に昇る竜など魅力的な謎がこれでもかと詰め込まれているが、その真相の多くが偶然に頼ったご都合主義的なトリックであり、拍子抜け。
唯一なるほどと思わされたのが、彩の首の隠し場所である。もっともこれも現実的には無理がありそう。
その重要と思われる生首を晒す理由にはほとんど触れられていない、私の読み落しかもしれないが、どちらにしても私には理解できなかった。
全体の雰囲気は横溝正史氏というより、島田荘司氏の御手洗シリーズを髣髴とさせるものがあり、ミステリとしては楽しめると思う。

No.2 9点 smile66
(2011/05/21 14:44登録)
悪い部分:
・奇想の描写が大げさすぎるように感じる(ボートを漕ぐ首のない死体とか、空を舞う龍とか)
・それに対してトリックがいまいちこう、抜群に興奮するようなものではないかも。トリックの鮮やかさというか、そこの説得力を強く期待する人にはオススメできないかな。
・フェアでないと受け取れてしまう部分が複数あるように感じる

良い部分:
・文章が軽妙(人物描写がどーのこーのとか悪い部分にあげられるかもしれませんが、この場合は読み易さという点で良しとした)
・悪い部分が全て認めたとしても余りある本格スピリッツを感じた!途中多少の中だるみのように感じるかもしれないが、後半の怒涛の展開は抜群に面白いと感じた。

構成や伏線などが後半で華麗に結びつく手腕は本当に見事なだけに、正直トリックの説得力というか、もう一頑張りでとんでもない作品になってたと思うんだけどなー。私は新品で買って後悔はしませんでした。少し甘めの9点です。

No.1 6点 kanamori
(2011/05/05 21:30登録)
”自称名探偵”海老原シリーズの最新作。
横溝の世界観に、島荘的奇想と物理トリックを幾つも詰め込んだ通称「やりすぎミステリ」ですが、今回も怪異な現象の真相が現実味に欠ける強引さで、トリックも乱歩が好んで使うような陳腐なものがあったり、読んでいてシラケる部分があった。

それでも、終盤の怒涛のどんでん返しの連続とエピローグの処理は面白いし、狂言回し役の若手刑事などの人物描写に進歩がみられるように感じたのでこの点数にした。

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