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ミステリの祭典

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よもつひらさか

作家 今邑彩
出版日1999年05月
平均点6.91点
書評数11人

No.11 7点 虫暮部
(2023/07/07 12:23登録)
 どの作品も紛れも無く今邑彩の作風で、尚且つヴァリエーション豊か。短編集なら、玉石混交であっても、こういうまとめ方がいいな。

 「家に着くまで」。雰囲気モノかと思っていたら丁々発止の推理談義に。ミステリ度の高さがホラーを読んだ後には一段と効く。アレレッ?
 「遠い窓」。この絵のトリックはコロンブスの卵で驚いた。
 「生まれ変わり」。問題は主人公より叔母だ。もう十二歳にもなった甥にあんなことを言う叔母は気持悪くていいね。

 そして何故「茉莉花」だけは『盗まれて』からシレッと再収録されているのか?

No.10 8点 蟷螂の斧
(2021/03/17 20:23登録)
①見知らぬあなた 6点 「冷蔵庫より愛をこめて」(阿刀田高)を彷彿させる。結末は分かっていても魅せられる
②ささやく鏡 5点 ホラー系。未来を予知する鏡を祖母からもらったが・・・
③茉莉花 7点 茉莉花(本名)を康子(ペンネーム)にした理由は・・・意外な展開
④時を重ねて 5点 ホラー系ファンタジーでいいのかな?あなたはこの奇跡を信じますか
⑤ハーフ・アンド・ハーフ 8点 同性愛の妻と結婚した男。彼女は平等にひどく拘っていた。その結果・・・
⑥双頭の影 9点 まるで夢野久作氏の作品を読んでいるようだ。寺の天井にある双頭の影(染み)から判明したことは?オチはお気に入り
⑦家に着くまで 7点 タクシー運転手と客とのある事件の推理合戦。それで終わるかと思ったら・・・
⑧夢の中へ・・・ 7点 よくある題材(胡蝶の夢)だが、見せ方が巧い
⑨穴二つ 8点 男は女性を騙りネットで女性に近ずくが・・・どんでん返し
⑩遠い窓 9点 不思議な絵の合理的な説明に感心。ストーリーは恐ろしい
⑪生まれ変わり 6点 ファンタジーがストーカー話に?
⑫よもつひらさか 9点 基本的に純ホラー系は好みではないが、ストーリーテリングが巧み。参りました(笑)

No.9 8点 パメル
(2021/02/20 09:38登録)
12編からなる短編集で、ジャンルとしてはホラーになるのだろうが、おどろおどろしい感じではない。背筋が凍るというより、奇妙で不思議な読了感に襲われるという感じ。
狂気にとりつかれた人や、狂気にとりつかれた人に関わることになってしまった人、また少しだけ現実とは違った考えを持った人が巻き起こすヘンテコな話で、結局一番怖いのは人間だと思い知らされる話ばかり。そして、それぞれ違った不気味な雰囲気が楽しめる。
「見知らぬあなた」おぞましい事件に浮かぶ恐ろしい疑惑。戦慄の結末。
「ささやく鏡」祖母が言い残した鏡のもつ本当の恐ろしさとは。
「茉莉花」なぜ平凡なペンネームを彼女は選んだのか。
「時を重ねて」妻の浮気調査、その真相は。
「ハーフ・アンド・ハーフ」何もかも折半したがる真由子の性癖がおぞましい方向へ。
「双頭の影」骨董屋で目にした奇妙な話。なかには1本のローソクが入っていて。
「家につくまで」家への帰路で乗ったタクシーの運転手の話が半年前の事件の真相へ。
「夢の中へ......」現実を逃避して甘美な夢の世界にとどまりたいと思いを決断したこととは。
「穴二つ」懐かしいパソコン通信の時代、ネカマになって女性をゲットしようと試みるが。
「遠い窓」毎夜、姿を変える生きた絵の真相は。
「生まれ変わり」20年前に死んだ叔母とそっくりの女性にコンビニで出会い驚く。彼女の正体は。
「よもつひらさか」現世と冥界をつなぐ坂、黄泉比良坂。死者の差し出す黄泉戸喫を食べてしまえば、生者は二度と現世に戻ることは出来ないというのだが。
余談ですが「穴二つ」と「家につくまで」はフジテレビ系列のテレビドラマ「世にも奇妙な物語」で映像化されていらしい。

No.8 7点 E-BANKER
(2015/02/10 23:06登録)
昨年急逝した作者。
その作者が得意としたホラー風味のミステリー作品集のひとつ。

①「見知らぬあなた」=大人しい少女の文通相手は性格異常者なのか? その文通相手の周りで次々と起こる不可思議な事件。だが、最後には思わぬ事実が明らかにされる! よくある手なのだが、ウマイ!
②「ささやく鏡」=未来を映す鏡に纏わる一編。鏡の“予言”で結婚相手を選んだ主人公なのだが、それが後々恐ろしい事態を引き起こす・・・「未来なんて見なければよかった・・・」ってことだな。
③「茉莉花(まりか)」=いわゆる「ジャスミン」の和名。父親がお気に入りの「茉莉花」という名前を付けられた娘。ある一葉の手紙が長年の父親の秘密を明らかにすることに・・・
④「時を重ねて」=妻に男の影を感じ取り、私立探偵に尾行調査を依頼した男。探偵は軽井沢へ妻を尾行するのだが、妻がとった行動には明らかに異常性が! ラストにはその行動に一応の解決がつけられる。
⑤「ハーフ・アンド・ハーフ」=偽装結婚に応じた美貌の妻。自分以上に収入のある妻は、何でも折半にしないと気の済まない性格なのだが、まさかアレまでも折半すしてくるとは・・・あり得ない! けどコワっ!
⑥「双頭の影」=ある骨董屋においてある「双頭の影」という箱。購入者には骨董屋の主人から、その箱に纏わる話が聞けるという・・・。道ならぬ恋ということだろう。
⑦「家に着くまで」=たまたま乗ったタクシーで交わされる運転手との会話。しゃべりすぎる運転手が実は・・・という展開。これも既視感のあるプロットなのだが、作者なりの味付けがうまい。
⑧「夢の中へ・・・」=井上陽水の名曲をモチーフとした作品。プールへ飛び込み頭を強打した少年。意識を失った少年のその後が描かれるのだが、そこには大きな○○が!
⑨「穴二つ」=パソコン通信(古っ!)で女性を装ってメールしていた男。相手の女性も実は男だったと明らかにされ、それを妻殺しに利用しようと画策したのだが・・・
⑩「遠い窓」=子供の無邪気さが恐ろしい結末を招く・・・という一編。その無邪気さは本当の無邪気なのか“邪気”なのか?
⑪「生まれ変わり」=あまり印象に残らず。
⑫「よもつひらさか」=古事記にも登場する「黄泉比良坂(よもつひらさか)」。ひとりでこの坂を歩いていると死者に出会うことがあるという不気味な言い伝えが・・・かなり幻想的な一編。

以上12編。
玉石混交といえばそうなのだが、全体的に非常によくできた作品集に仕上がっていると思う。
長編、短編問わずどれも実に丁寧に作りこまれていると改めて認識した次第。
“早すぎる死”が惜しまれる作家のひとりだ。
(個人的ベストは⑤かな。①や⑧もブラックさ加減が好き)

No.7 5点 ボナンザ
(2014/04/07 16:03登録)
ちょっと毛色の違うホラー短編集。怖くはないが引き込まれる筆力がある。

No.6 6点 まさむね
(2013/09/01 00:06登録)
 12編からなる短編集。今邑さんの短編集の中でも,ホラー色がより強く出ている短編集かもしれませんね。
 結末が想像しやすい作品も正直あるのですが,総じて展開が巧く,終盤の捻りが効いています。読みやすい文章も良です。

No.5 6点 makomako
(2011/07/24 09:46登録)
今邑氏の作品はどれをよんでもきちんとした構成と練った内容が読み取れて面白い。私としては作者の長編物のほうが好みではあるが、短編もどれもひねりが効いている。「ささやく鏡」や「茉莉花」南下は結構好きだが、好みでないお話もあり(穴二つなんかは好きでないな)全体としての印象はまずまずといったところでした。

No.4 8点 判子
(2011/05/31 16:30登録)
ホラーとミステリーが同時に楽しめます。
短編の全てがバラエティに富んでいます。
ゾクッとしたオチが病みつきになりました。

No.3 7点 メルカトル
(2011/05/26 21:48登録)
ホラーとミステリの境界線を危うい綱渡りをしながら、どちらにも傾かず上手く平衡を保っている稀有な短編集。
ホラーにも合理的な結末が用意されているものもあり、ミステリの要素を取り入れているのは今邑女史らしいところ。
しかもそれぞれの作品が一々面白く、まさに粒揃いと言ってよいであろう。
先の展開が読めたりもするのだが、更にもう一捻り加えられていたりして、工夫がなされているのも好感が持てる。
それぞれ余韻を残す佳作が並んでいるので、読んでいて飽きる事はない。

No.2 6点 シーマスター
(2011/05/10 22:15登録)
今邑節全開のホラー&ミステリー12編からなる短編集。

この人の他の短編集と同様に実に読みやすい、というか一気に読まされてしまう。
ただしネタは驚くほど古いものが多く、読みながら「まさかアレじゃないよな」と思わせられて結局アレだったりする話が少なくないが、そのこと自体はさほど大きな欠点にはなっていないと思う。
加工が上手いし、構成が巧みで、とにかく語り口で読ませてくれる。

本書の中で個人的に最も印象に残ったのは「ささやく鏡」。
純然たるホラーだが引き込まれるストーリーで捻りも効いている。
そして何よりラスト・・・・・「それだけは勘弁してくれー!!」と叫びたくなる絶望感。

No.1 8点 パピルス
(2009/10/22 11:21登録)
ホラーと奇妙な味の短編集。
とても面白いが読みなれた人にとってはありふれた短編集となっている。ホラー小説やミステリーの初心者向けの短編集である。
この短編集に収録されている「穴二つ」、「家に着くまで」は『世にも奇妙な物語』で「穴二つ」は「ネカマな男」「家に着くまで」は「推理タクシー」というタイトルでドラマ化されている。

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