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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1924件

プロフィール| 書評

No.124 7点 赤い蟷螂
赤星香一郎
(2010/11/20 23:35登録)
「赤い蟷螂」を見た者には必ず災いが降り掛かる、というどこかで聞いたような話である。
前作同様、ホラーともミステリとも言えない、独特の作風で読ませる希少な作家の一人だといえる。
そのリーダビリティは非常に優れていて、かなり入り組んだ構成や人間関係を煩雑さを感じさせずに一気に読ませる手腕は認めざるを得ない。
中盤までの摩訶不思議な現象をどう収束させるか、その辺りがミステリ作家としての氏の腕の見せ所だが、見事に全ての謎を余すところなく解明して見せている。
ただし、肝心の「赤い蟷螂」の正体には拍子抜けの感は否めないし、それだけの理由で自殺までするか、という疑問は残る。
しかし、過去の呪いや怪奇現象などがふんだんに盛り込まれており、ホラーファン、ミステリファン、両読者を満足させるだけの面白さを十分備えているのは間違いない。


No.123 4点 依頼人は死んだ
若竹七海
(2010/11/16 23:28登録)
ほぼ女探偵、葉村晶の一人称で描かれる、主にホワイダニットを扱った連作短編集。
人間の奥底に潜む、醜さ、嫌らしさを容赦なく描写する作風は相変わらずである。
しかし、個人的には文章が心に響いてこなかったのは致命的だった。
もう若竹女史の作品を読むことはないだろう、さらば若竹七海。
この文体を許容できるファンの方には失礼かもしれないので、とりあえず謝っておこう、どうかご容赦願いたい。


No.122 5点 夢幻巡礼
西澤保彦
(2010/11/12 23:43登録)
どうも読後感がもやもやしている。
事件解決まで長かったが、それ程退屈だった訳ではない、それなりに楽しめたのは事実。
しかし、解決編はSFの趣向が入り混じって、話をややこしくしているし、どこで驚いて良いのか判然としなくて、スッキリしない。
だからといって、ストーリーに整合性がないわけではないのだが、残念ながらカタルシスには程遠かった。


No.121 4点 クール・キャンデー
若竹七海
(2010/11/06 23:53登録)
ページ数の関係もあるだろうが、全体的に希薄な印象は拭えない。
登場人物の誰にも感情移入できないのは致し方ないかもしれないが、何気に悪意に満ちているのは好き嫌いが分かれるところではないだろうか。
それがこの作者の持ち味と言えなくもないが、それにしても主人公の渚には年相応の可愛げが感じられないのは痛い。
最後の一行は確かに驚かされたが、残念ながらカタルシスは味わえなかった。


No.120 8点 幽霊人命救助隊
高野和明
(2010/11/04 23:53登録)
泣いた、笑った、感動した、簡潔に表現するとこんな感じ。
しかし、暗いテーマを描きながら、これだけ読みやすいエンターテインメントに昇華させた小説を私は他に知らない。
うつ病、いじめ、離婚、借金、病気といった社会問題を内包しているのに、読んでいて暗い気分にならない。
それどころか、爽快感さえ味わえるシーンすらある。
勧善懲悪あり、アクションあり、笑いあり、涙ありの、読者に勇気と生きる希望を与える稀有な傑作だと思う。


No.119 10点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2010/10/28 23:48登録)
久しぶりに本格ミステリと呼べる作品を読ませてもらった気がする。
若干の疵はあるものの、それを差し引いても文句のつけようのない完成度の高いミステリらしいミステリである。
因習深い寒村で起きた連続殺人事件という、横溝正史の世界観を丸ごと取り込んで、見事に反転させる手腕は賞賛に値する。
麻耶雄嵩ファンならずとも、ミステリ読者のすべてに薦めたい稀代の大傑作である。


No.118 6点 倒錯の死角−201号室の女−
折原一
(2010/10/22 23:30登録)
ダークな雰囲気、やや粘着質な文体、多重構造、叙述トリック、どれをとっても折原氏らしい作品である。
がしかし、期待通りの出来かと問われると、疑問視せざるを得ない。
また、最後の袋とじには全く必然性を感じない。
むしろ蛇足といってもよいかもしれない。


No.117 5点 なみだ特捜班におまかせ!
鯨統一郎
(2010/10/16 23:29登録)
相変わらず波田煌子のおとぼけぶりは笑えるし、前作より益々磨きがかかっている。
それに反して、特捜班での活躍は見事と言える。
迷宮入りの難事件を大した捜査もしないで、次々に犯人像を指摘していく。
しかし、そのプロファイリングは冗談半分にしか思えないし、真犯人の逮捕も偶然とし考えられないような状況である。
まあ、猟奇殺人事件を扱っている割には、ほのぼのとしていて好感は持てるが。
また、特捜班のメンバーはバラエティに富んでいて、それぞれのキャラが生き生きと描かれていて楽しめる。


No.116 5点 怪痾
雨宮淳司
(2010/10/14 23:43登録)
病院の怪談シリーズ第三弾にして完結編。
前作『怪癒』に比べると幾分トーンダウンしている感もするが、医療に従事する者のみが知りうる、実話怪談の数々は相変わらず恐ろしいものがある。
最終話は人の生死に関わる真実なので、心臓の弱い読者は避けるべきだと思う。
怖いもの見たさで興味本位に読むと後悔すること請け合い。


No.115 7点 怪癒
雨宮淳司
(2010/10/09 23:35登録)
病院及び、医療に関する怪談シリーズ第二弾。
現役の看護師である作者が蒐集した実話を基に、怪異な現象の数々を短編集に纏めた貴重な作品。
淡々とした語り口が摩訶不思議な怪談を紡ぎ出し、下手なホラーより余程怖い。
最終話の70ページに及ぶ大作『蛇の杙』は、読み応え十分で、このジャンルにおける名作と呼ぶに相応しい作品だと思う。
おそらくみなさん馴染みのない作家だと思うが、一読の価値はあると言わせてもらおう。


No.114 5点 すべての美人は名探偵である
鯨統一郎
(2010/10/06 23:53登録)
鯨氏が創作した、二人の美人探偵の共演ということで期待したのだが、桜川東子が早乙女静香の子分みたいになっているのは、ややがっかりした。
しかし、後半は東子の活躍で事件が解決されたのはファンにとっては嬉しい限りだろう。
トリックには前例があり、拍子抜けしたのは言うまでもない。
だが、ミステリとしての部分が意外としっかりと描かれていたのは流石と言ってよいのではないだろうか。
またこの作品は、映像化しても面白そうだ。


No.113 6点 赤々煉恋
朱川湊人
(2010/10/01 23:45登録)
『水銀虫』と共に、朱川氏の作品の中では異端的な扱いを受けている短編集。ノスタルジック・ホラーを得意とする作者にしては、後味の悪い作品が並んでいる。
本作では愛に執着するが故に、悲惨でありながら耽美な倒錯の世界に身を投じる人間の悲しい性が、端正な筆致で描かれている。
お薦めは『死体写真師』と『私はフランセス』。


No.112 5点 インシテミル
米澤穂信
(2010/09/24 23:31登録)
確かに前半は、特異な設定に先を読む楽しみを味わえた。
しかし、主催者が大金を叩いてまで一体何がしたかったのか、どのように監視していたのか、など疑問点が最後まで明かされなかったのはミステリとしては致命的ではないか。
各キャラの描き分けはある程度出来ていたが、細かいアラや矛盾点も目立つ。
また、状況に応じた緊迫感が欠如している気がする。
読みやすさが逆に重厚さに欠ける結果になったのも残念な要因。


No.111 6点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2010/09/17 23:32登録)
第二話までは何とか読めたが、それ以降は・・・。
情景は浮かばないは、内容は頭に入ってこないはで、非常に苦戦を強いられる事に。
原文も原文だろうが、翻訳の仕方ももう少し何とかならなかったものかと、正直思う。
一文、一文が異常に長いのも難点である。
この作品は、脳を活性化してから読まれることをお勧めする。
でないと、文章が右から左へ素通りする可能性が高い。


No.110 5点 狐罠
北森鴻
(2010/09/11 23:33登録)
正直『狐闇』よりは面白さ、スピード感において劣るのは否めない。
ただし、主人公の宇佐見陶子をはじめとして、一癖も二癖もある登場人物の描写力は流石だと言える。
見事に各キャラクターを描き分けられているのだ。
二人の刑事もいい味出してはいるのだが、陶子の目利き殺しと二つの殺人事件が有機的に繋がってこないのは、マイナス点。
骨董の世界を覗き見たい人には、もってこいの一冊かも。


No.109 5点 なみだ研究所へようこそ!
鯨統一郎
(2010/09/05 07:48登録)
波田煌子の推理は、ほとんどがこじつけで感心しない。
だが、そのキャラは天然ボケで憎めないものがあるし、逆に名探偵らしい鋭さが全く感じられないので、作品全体がほのぼのした雰囲気に包まれている。
最終話は、切ないような、胸に迫るような展開となっているのは少々意外で、嬉しい誤算とも言える。
優しく暖かい余韻を残す幕切れとなっている。


No.108 6点 天使の囀り
貴志祐介
(2010/09/01 23:52登録)
平均点が高いので期待していたのだが、やや冗長で盛り上がりに欠ける気がするのは私だけだろうか。
ホラーとしてはさして怖くない、ちょっぴり気持ち悪い描写があるのみで、これといった謎もないのでミステリとしても成立しないと思う。
ただ、リーダビリティに優れているため、最後まで飽きずに読めたが、捻りもなく文句なく面白いとは言いがたい。


No.107 8点 時計館の殺人
綾辻行人
(2010/08/29 23:44登録)
ある意味、この作品こそが『十角館の殺人』以上に「館シリーズ」の代表作かもしれない。
よく考えてみれば、至る所に伏線が張られているのに、このトリックに気が付かなかった自分が愚かしい。
島田潔が一日一本と決めていた煙草を、徹夜で推理する際に灰皿が吸殻でいっぱいになるほど、禁を破って煙草を吸ってしまうシーンが何故か印象に残っている。
とにかく本格ミステリとして立派な作品だと思う。
蛇足だが、『暗黒館の殺人』もこれくらいのボリュームなら良かったのにと強く思う。


No.106 9点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2010/08/27 23:41登録)
『刺青殺人事件』と並び称される高木彬光氏の代表作のひとつ。
「人形はなぜ殺される?」の命題のもと、披露される数々の殺人は芸術作品といっても過言ではない。
天才神津恭介が苦戦し過ぎのきらいはあるものの、事件が解明されると納得が驚愕に変わる。
特にアリバイトリックは前代未聞。


No.105 4点 ドグラ・マグラ
夢野久作
(2010/08/26 23:52登録)
確かに理解不能ではある。
だから評価の仕様がない、これを正当に評価できる人はある意味凄いと思う。
だが私の超低い読解力では持て余す他はなく・・・。
だから申し訳ないがこの点数で。

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