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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1924件

プロフィール| 書評

No.304 7点 扉守 潮ノ道の旅人
光原百合
(2013/05/17 22:23登録)
広島の尾道がモデルの、潮の道が舞台の連作短編集。
これぞまさに珠玉の短編集と呼ぶに相応しい作品が並んでいる。
全てファンタジーだが、実に幻想味溢れる筆致で、どこか異世界にでも連れて行かれるような錯覚さえ覚える。
そして、読後に心温まるような、或いは心が洗われるような余韻を残す佳作が多いので、誰もが安心して読める作品集ではないだろうか。
個人的には第一話と最終話が特に印象深い。
もっぱらミステリ一辺倒の人も、色んなジャンルを読む人も、本書はお薦めできる逸品であろうと思う。


No.303 7点 十八の夏
光原百合
(2013/05/14 22:31登録)
日本推理作家協会賞受賞作の『十八の夏』を含めた、4編からなる連作短編集。
とは言っても、それぞれ独立した物語であり、共通するのは花をモチーフにしているということだけ。
それも、特に花にこだわりを持って描かれているわけでもないので、まあ普通の短編集と言っても良いだろう。
しかし、それぞれの作品の出来はすこぶる良く、とても丁寧に描かれているし、特に各登場人物が性格や容姿に至るまで、かなり丹念に描かれているのも評価が高い。
私のイチオシはなんといっても表題作である。途中まではなんだかドライな恋愛小説だなとの印象だったが、突如としてその様相を変化させ、それまでのストーリーの裏側を読者をあざ笑うように晒していく。
見事な切り返し技である。これでは協会賞の受賞も納得せざるを得ないではないか。
他の短編は、私の見る限りでは恋愛小説が二編、ミステリが一編といった具合である。
どちらに強く傾くこともなく、うまく均衡を保っている。
ミステリも恋愛小説も両方読みたい人にはお薦めである。


No.302 5点 影なき女
高木彬光
(2013/05/10 22:16登録)
再読です。
随分評価が高いが、私にはピンと来なかった。
昔の私はこんな(失礼)作品をありがたがって読んでいたのかと思うと、つくづく未熟者だったと今更感じ入る。
でもまあ、神津恭介が全ての作品に登場するだけでも、価値があるのかもしれない。
とにかく全体的にチープな印象が拭えない。


No.301 6点 能面殺人事件
高木彬光
(2013/05/06 22:40登録)
再読です。
ほぼ全編が手記で構成され、しかも作中に作者自身が自称日本のファイロ・ヴァンスとして探偵役で登場するという、凝った作りになっている。
結局、高木彬光なる自称名探偵は途中で退場し、その代役として記述者自身が探偵を務め、密室殺人を解決に導くのだが・・・
本作は、前年度に『不連続殺人事件』に日本探偵作家クラブ賞をさらわれた形となった『刺青殺人事件』に対するお詫びとして、ノミネートされ受賞したのではないかとの噂がある曰くつきの作品でもある。
全編に横溢するロマンティシズムが、読む者を独特の世界観へ誘う一風変わった本格ミステリだが、決して本格としての根幹をないがしろにしているわけではなく、そのスピリットは脈々と作品の根底に流れているように思われる。
また当時としては、かなり画期的だったであろうこの構成には、前年悔しい思いをした高木氏の熱い想いを感じることができる。
密室トリックは必然性こそないものの、この謎を解くことによって犯人を断定するという、なかなかスマートな仕上がり。
機械的な密室だが、それほど難解ではないので比較的好感が持てるのも評価は高い。
が、高木氏にはほかに傑作が多数あるので、点数としてはこの程度が妥当ではないかと思う。


No.300 5点 模倣の殺意
中町信
(2013/05/02 22:23登録)
約40年前に書かれた事実を考慮すれば、確かにこのトリックは驚嘆すべきものかもしれない、いやきっとそうなのだろう。
もし当時に読んだのなら素直に驚けたであろうが、やはり今日ではややありふれたトリックとして認識されてしまっているため、ああ、そうだったのか、くらいにしか感じなかった。
現在、非常に話題になっている上、意外なほど売れ行きが好調なので読んでみる気になったのだが、期待が大きかったのも手伝って、残念ながら思ったほどの出来栄えではなかったように思える。
こうした構造にしては、緊迫感やサスペンス性が不足しているのも減点の対象となってしまいそうである。
辛辣かもしれないが、私に言わせれば、この作品を喜んで読める読者は幸せ者だと思う。
さて、私はまた再読に戻るとしよう・・・。


No.299 7点 見えない精霊
林泰広
(2013/04/28 22:26登録)
再読です。
ワン・アイディアでこれだけの謎を生み出す手腕は認めざるを得ない。
しかし、ストーリー性は全くない上に、人間が全く描けていない。登場人物がまるで記号か何かにかのようで、個性がほぼゼロ。
さらに、文章がやや稚拙なせいもあって読みづらく、情景が全く浮かんでこない。
とまあ、これだけ欠点をあげつらうのだから面白くないのかと言えば、そんなことはなく、あくまでパズラーと捉えれば十分読み物としては面白いのである。
これだけ不可能犯罪を提示して、たった一つのトリックですべての謎を一瞬にして粉砕する破壊力は見事だと思う。
だから、この小説は人間関係だの人情の機微だの、或いは犯罪の背後にある因果律だとかは、すべて無視してひたすらパズルを解く感覚で読み進めるしかない。
たまにはこんなミステリがあってもいいだろう。
ただし、本作は極めて読者を選ぶ作品だということだけは間違いないのではないだろうか。


No.298 8点 一の悲劇
法月綸太郎
(2013/04/24 22:37登録)
再読です。
もう少し落ち着いた環境の中で読みたかった、というのが正直なところ。ここ最近、私生活でいろいろあって、なかなかハイペースといかない上に、どうにも心に引っ掛かることが多すぎていまいち集中できない。
とは言え、本作は本格的な誘拐ものかと思わせておいて、実は・・・といった感じで、特に序盤はなかなかの緊迫感があり、思わず引き込まれてしまうこと請け合い。
正直、容疑者が少人数に限定されていることもあり、真犯人は簡単に予想できてしまうが。私でも分かったのだから、大抵の人は当てることが容易にできてしまうのではないだろうか。
まあ別にそれが欠点とはなり得ないが、意外性は薄れる。
タイトルの意味は、なるほどと思わせる、思わずうなるほどではないが、納得である。
何故犯人が完璧なアリバイがありながら、犯行をなし得たか、については単純でありながらよく考えられたトリックだと思う。
傑作とまではいかないが、それに準ずる評価を与えられてもおかしくない作品と言えそうである。


No.297 7点 ウロボロスの偽書
竹本健治
(2013/04/11 22:25登録)
再読です。
綾辻行人、島田荘司、新保博久、友成純一ら、著名人が続々登場する実名小説。
だが、そこはそれ、竹本健治のこと、ただの実名小説に終わるはずがない。
作家やら評論家が出演するパートと、いつの間にか本作の中に紛れ込んで殺人鬼が執筆するパート、それにバカミスで脱力するようなトリックが炸裂するトリック芸者のパートが入り乱れて、それこそ収拾のつかないカオス状態に読者を引き込んでいく。
で、最後は何ら余韻を残さず、いきなりブチッと強制終了の形となり、数々の謎を残しつつ幕を閉じる。
敢えて言えば、あとがきがその余韻の代わりの役割を果たしているのかもしれない。が、どちらにしてもスッキリとした結末は到底望めない。
それは途中に挿入されている「読者への忠告状」でも明らかにされているので、それほど落胆することはないだろう。
しかし、この作品は読者を選ぶと言うか、好き嫌いがはっきり分かれるタイプの超ミステリだと思う。
ミステリ作家のお遊びに付き合えるか、と非難するのか、その遊び心と竹本氏にしか書けない超異色作を褒め讃えるのか、二者択一を読者に迫る。大袈裟だが、そんな感じのいかにも混沌としたミステリと呼ぶのもはばかられるようなミステリである。
いずれにしても、後味すっきりの爽やかな小説を読みたい人は避けるべき作品だ。


No.296 5点 女囮捜査官 2 視姦
山田正紀
(2013/04/04 22:27登録)
再読です。
期待していたほどではなかった。
冒頭からいきなりバラバラ死体が発見されるのは、前置きが嫌いな私としてはとてもいい傾向ではある。
その後も、なかなかサスペンスフルな展開を見せて、読者を引き付けることに関してはなにも文句はない。
主人公の志穂もそこそこ活躍し、サイコサスペンス的な雰囲気もあり悪くない、周りを固める刑事達もしっかりそれぞれの役割を果たしている。
がしかし、ただ一点気に食わないのは、序盤で明かされる事実と後半で語られる事実が食い違っているところである。
一体どちらが真実なのか、とても気になるし、もし復刻でもされたなら是非その点を改稿していただきたいものだ。
まあ平均点が高いのも分からないでもないが、私には死体をバラす必然性があまり感じられなかったので、敢えてこの点数に落ち着いた。


No.295 5点 パンドラ・ケース よみがえる殺人
高橋克彦
(2013/04/01 22:54登録)
再読です。
かつて大学の仲間だったメンバーが、そのうちの一人の失踪から12年経ち、東北のある温泉旅館に集まることになった。
目的は、メンバーの誰かが死亡した場合、その13回忌の代わりに近くに埋めたタイムカプセルを掘り出すというもの。
そして、舞台は雪崩のため陸の孤島と化し、ついに仲間の一人が首なし死体となって発見される。
それだけにとどまらず、次の犠牲者も首を切断されて殺される。
事件の鍵はタイムカプセルにあると判断した名探偵の塔馬双太郎は、真相解明に乗り出すが・・・といったストーリーだが、途中昭和40年代に実際に起こった事件が絡んでくるのには驚いた。
何故犯人は首を切断したのかという理由は、もっともではあるが、どちらかと言うとありきたりな感は否めない。
事件そのものもいわゆる嵐の山荘もので、パターン化されたものを踏襲していてあまり新味が感じられない。
全体的に緊迫感がなく、事件が起こるまでが長くて多少イライラさせられる。
なんとなく退屈であっと驚くような真相でもないし、初読の際に感じた輝きは完全に失せてしまっていた。


No.294 6点 解体諸因
西澤保彦
(2013/03/28 22:19登録)
再読です。
全体の感想としては、比較的簡単なマジックを見せられて、種明かしをされ、なるほどと納得する反面、なんだかなあというあまり感心しない感情がないまぜになった感じ。
バラバラ死体や首なし死体は私の好みのジャンルだが、この作品はあまりにからりとして陰惨な雰囲気がないため、逆に面白味を覚えなかった。
あくまでパズラーに徹しているので、タイトルから想像されるような陰湿な作風を期待すると裏切られるので注意が必要である。
死体を解体する理由については、どちらかと言うと変化球でかわされた感じで、もう少し直球勝負をして欲しかった気がする。
その為、カタルシスを味わえることなく、最後まで読み終えてしまった感じで、やや消化不良気味ではあった。
特に最終話は、話が込み入っていて、若干分かり難かったきらいがあるのが残念である。


No.293 8点 異邦の騎士
島田荘司
(2013/03/25 22:27登録)
再読です。
島荘の作品は本格ミステリが多いのだが、どことなく文学の香りがするんだよね。
本作はそれが如実に表れた形になっていると思う。ミステリでありながら文学作品でもあるといった具合で、ミステリ・ファンばかりでなく、一般の読者にも十分受け入れられるものと考えられる。
それにしても氏は主人公が痛めつけられるのがよほどお好きと見えて、幾度となく暴行を受けたりしている。そればかりか、ただでさえ記憶喪失なのに、精神的にもかなりのダメージを負うシーンが散見される。
御手洗もよくうつ状態に陥っているしね。
それはさておき、私は序盤の主人公と良子が仲睦まじく同棲生活をするシーンが一番好きである。
だから、その後の展開はかなりつらいものがあり、最後は結構落ち込んでしまった。まあそれだけ物語にのめり込んだということであり、そのリーダビリティはさすがだと思う。
いつもは御手洗の陰に隠れた感じであまり目立たない石岡だが、本作ではなかなか男らしいところを見せているのが、意外な感じがして、その意味でも貴重な作品と言えるのではないだろうか。
また、御手洗の「僕もひとりぼっちだ」というセリフがやけに印象に残っている。


No.292 6点 夏、19歳の肖像
島田荘司
(2013/03/22 22:25登録)
再読です。
とても詩的な部分と生々しい面とを併せ持つ、島田氏にしては珍しい青春小説。ミステリ的な要素もあるが、どちらかと言うと文芸作品に近い感じである。
だから、直木賞の候補に挙げられるのも分からないでもない。むしろ直木賞を受賞してもおかしくないような佳作となっている。
そして二度直木賞候補に選ばれながら受賞できなかったこともあり、乱歩賞も逃したりして、無冠の帝王と呼ばれ現在に至るわけである。
残念ながら、氏は賞には縁がなかったようである。
時代が彼に追いつけなかったのか、生まれるのがちょっとだけ早すぎたのか、もう少し後に生まれていたら、もっといろんな賞を受賞したいたのではないだろうか。
これだけ数々の傑作を生み出しながら、無冠だったのはまさに不運と言ってよいのではないか。


No.291 8点 八つ墓村
横溝正史
(2013/03/21 22:27登録)
横溝作品の中でそのスケールの大きさは随一と言えるのではないだろうか。
ただ本作は、本格ミステリとは言いがたく、どちらかと言うとホラーに近い作風のような気がする。ま、ホラーは大袈裟だろうが、スリラーかな?とにかくミステリとして読んだ場合、とかく不満が残るかもしれないので、あまりジャンルにこだわらないほうが無難かもしれない。
でもその雰囲気は氏の作品中でも異色と言えるほどの異様さであり、もはやそれは伝説に近いものがある。
金田一はあまり活躍しないが、その代わりいくつもの過去の因縁話が充実していて、この手の作品が好きな読者にはたまらない魅力となっている。
だからこの評価はあくまで、一小説としての点数である。


No.290 6点 嘘でもいいから殺人事件
島田荘司
(2013/03/20 22:26登録)
再読です。
肩の力を思い切り抜いて、リラックスして読めばいいと思うよ。
もうね、さすが島荘ですよ。こんなユーモア・ミステリを書いても十分面白く読ませるとは。
全編笑いのエッセンスを散りばめて、尚且つ本格ミステリとしての骨格はしっかりとしている、意外とこういった作品は名手しか書けないものかもしれないね。
まあ、トリックはそれほど目を見張るようなものではないが、当時はこんなんでも結構驚いたものである。
それにしても、読み進んで行っても、一体誰が探偵役をするのか不思議だったが、そう来たかって感じだ。
トリックに無理はないが、そこまでする必然性が今一つ感じられなかった。犯人の心情は分かるけど。


No.289 9点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2013/03/19 22:24登録)
個人的に横溝作品の中で『本陣殺人事件』に次いで好きな作品。
本作も人間関係がかなり複雑だが、それだけに読みごたえもあり、手毬唄の全容が少しずつ明かされていく辺りは、なかなかのサスペンスぶりを発揮している。
メインとなるトリック、と言うか仕掛けは単純なものであり、わざわざ金田一が神戸まで出向かなくても良いのではないかと思うが、当時としてはやむを得なかったのかもしれない。
犯人にとって動機はまさに真に迫るものであり、やむに已まれぬ事情があったわけだが、冷静に考えると、もう少し穏便にことを済ませる方法もあったのではないかとも思うのだが。
しかし、やはりこの隠された動機に繋がる裏事情は他言できるような種類のものではなかったのだろう。
それだけに、真相が明らかになった時、犯人の苦悩が浮き彫りにされて悲哀が漂う結末になっており、とても印象に残る。
多少の瑕疵はあるものの、横溝の代表作のひとつであることは間違いないであろう。


No.288 9点 犬神家の一族
横溝正史
(2013/03/18 22:25登録)
なんだか原作より映画(市川崑監督の一作目)のほうが印象深い。
とは言え、あの名作と名高い『獄門島』より中身は面白いのだから、これはまさしく歴史に残る大傑作と言えるかもしれない。
適度に複雑な人間関係、一族の忌まわしい過去、佐兵衛翁のいわくつきの遺言状など、いかにもな雰囲気満載の本作は横溝作品の白眉と呼んでも差し支えないのではないだろうか。
ただ、犯人の意外性のなさや、かなりのご都合主義はまあいつものごとくだが。
それでも、ゴムマスクで顔を隠した、謎の人物(果たして本当にスケキヨなのか?)を最大限に生かしたプロットは見事である。


No.287 6点 夜想曲(ノクターン)
依井貴裕
(2013/03/17 22:31登録)
再読です。
作中作の部分が特に読みづらかった。そう、まるで教科書を読まされた気分である。
もう少し情感を込めて描写できないものだろうか、よく言えば端正、悪く言えば文章が固すぎるのであろう。
まあ、それは置いておいて、作中作の第二章から既に違和感を覚えた。どうもおかしいなと思いながら、結局トリックは見破られなかったのが悔しいが、真相が明かされたときに最初に思ったのが、これはアリなのか?ということだった。
そうだったのかと納得できる半面、何か姑息な感じが否めなかった。
その後の仕掛けは、これは単純に驚かされた。よくあるパターンと言ってしまえばそれまでだが、こうした使い方はあまり見られないし、私としては素直に感心出来た。
前半はいささか退屈、解決篇はなかなかの出来栄え、ということで、良い点悪い点相半ばする感じの、ややアンバランスな作品だというのが正直な感想。


No.286 8点 さよならドビュッシー
中山七里
(2013/03/15 22:22登録)
『カエル男』も良かったが、本作も負けていない。
私のようなクラシック音楽の素養がない者でもそれなりに楽しめたのだから、そちら方面、特にピアノ協奏曲や練習曲に詳しい人なら更に面白く読めるに違いない。
ただ、専門用語などはそれほど出てこないが、やはり本作に登場する曲を知っていたら、と思うと少し残念な気もする。
火災で大やけどを負った少女が、ピアノ・コンクールを目指して猛特訓をこなし、いかにハンディを克服していくのかが主題の、いわば音楽スポ根ものかと思いきや、本格ミステリの部分もしっかりしており、その二つが実に上手く絡んで、見事な音楽ミステリに仕上がっている。
そして想像もしていなかった衝撃の真実には、誰しもが目を疑うだろう。
探偵役の岬も爽やかで、好感が持てる。


No.285 8点 グリーン家殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2013/03/14 22:27登録)
『僧正殺人事件』と共にヴァン・ダインの代表作とされる名作と呼んでも差し支えないのではないだろうか。
まさに古き良き時代の、端正な推理小説と言った風情である。
多くの手掛かりを列挙し、そこから事件を検証し真犯人に迫る推理法は圧巻と言えよう。そこには作者の矜持が色濃く表れているような気さえする。
しかし、ヴァン・ダインと言えばこの2作が超有名だが、残りの作品との出来の差が激しすぎるきらいがあり、読者は注意が必要だ。
なので、正直他の作品を敢えて読む必要性はかなり薄いと言わざるを得ないと思う。『僧正』と『グリーン家』が抜きんでているためであるというべきなのだろうが。

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