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ミステリの祭典

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「北斗の星」殺人事件
朝比奈耕作シリーズ

作家 吉村達也
出版日1994年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2013/08/19 22:19登録)
再読です。
ああ、吉村達也だなと思う。軽くて読みやすくて洒落た作風は間違いなくこの人の作だとつくづく思う。
吉村氏の作品も随分読んだが、一番印象に残っているのがこれである。あとがきの取材ノートを読んでいると、元気だった頃の氏の活躍ぶりが嫌でも思い出される。でも亡くなってしまったんだよね。まだ若かったのに・・・
さて本作は珍しく、名探偵朝比奈耕作シリーズでありながら、彼はホテルに缶詰にされてほとんど出番がない。
代わりに活躍するのが、いつもは事件に巻き込まれてばかりいる平田均である。まあすべて彼が解決するという訳ではないが。
内容としてはよくありがちな、吹雪で閉ざされ外部との連絡の取れなくなった、スキー教室で起こった連続殺人事件を扱ったもの。
それに心霊現象やオカルト的要素を加味しながらも、決して重くなり過ぎない作品に仕上がっている。
アッと驚くようなトリックや仕掛けはないけれど、動機は十分納得のいくものであるし、テンポよく読ませる辺りはさすがと言えよう。

No.1 5点
(2012/02/19 23:36登録)
寝台特急「北斗星」での取材旅行で始まるトラベル・ミステリー風の書き出しから、いかにもな雪の山荘タイプの事件へと話は展開していきます。悪趣味なホラーっぽいお膳立てもいかにも。その中でも自動筆記については、本当のホラーじゃないんだから当然、とバレバレなことは承知の上で、作者は話を進めていきます。怪異現象がどうも安っぽいのはいただけませんが。
それでも途中で出てくる『そして誰もいなくなった』への言及もミスリードにするなど工夫はありますし、真相は悪くないと思います。ただし作品全体の構造については、事件解決後の部分から見ると、結局何の意味があったんだという気がしてしまいました。高木編集者と一緒になって怒り出したいような。『雪と魔術と殺人と』の全面改稿版だそうですが、最初はどうなっていたんでしょう。

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