七つの海を照らす星 「七海学園」シリーズ |
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作家 | 七河迦南 |
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出版日 | 2008年10月 |
平均点 | 5.89点 |
書評数 | 9人 |
No.9 | 6点 | パメル | |
(2022/07/17 08:41登録) 様々な事情を抱えた子供たちが暮らす児童養護施設・七海学園で起きる、不可思議な事件の数々。七海学園に勤めて2年目になる北沢春奈の視点から描かれる7編からなる連作短編集。 「今は亡き星の光も」七海学園の葉子が、以前いた児童施設での不思議な体験について語る。急死したはずの玲弥という少女が自分の窮地を救ってくれたのだという。玲弥の人物像が、児童福祉士の海王の視点でがらりと変わるどんでん返しのお手本のようなミステリ。 「滅びの指輪」七海学園の浅田優姫は、かつて戸籍が無かった。廃屋で生活しているところを保護されたのだった。しかし優姫は思わぬ貯金を持っていた。不思議な謎、思いもよらない真相、なんとも言えない後半などインパクトが高い。 「血文字の短冊」沙羅と健人の父親・秋本譲二は、母親が家を出て育児ができないので施設に入れている。沙羅は父から嫌われているという話を春奈にする。春奈の話を聞いて大学時代の同級生・野中佳音が謎解きをする。いわゆる叙述トリックだが、意外性はなく驚くことはない。 「夏期転住」俊樹は12年前に夏期転住として田舎に行った時、小松崎直と出会い、一緒に生活し思い出を作る。しかし直の父が直を探しにきて、直は姿を消してしまう。最終的に明らかになる真相は、ある古典ミステリを想起させる。そこに加えられた捻りが興味深い。 「裏庭」七海学園の裏にある開かずの門。「開かずの門の浮姫」という七不思議をめぐる話。ミステリとしては弱い。恋愛話としては悪くない。 「暗闇の天使」女の子6人で通ると幽霊が出るというトンネルの話。ミステリとしては、真相にやや釈然としないところがある。 「七つの海を照らす星」最後の話で6つの話の「謎」が繋がる。完全な脇役かと思われていた野中佳音の過去が描かれ、物語の中心人物にすり替わる展開はかなり衝撃的。 北沢春奈をはじめとする七海学園の生徒や関係者など、魅力的なキャラクターに溢れている。個々の短編の謎に目新しさや驚きは少ないが、散りばめられた伏線を最終話で一気に回収し、各短編で残された謎がわかりスッキリする。 |
No.8 | 6点 | よん | |
(2021/09/17 15:19登録) 日常の謎に類されるが、子供がつらい状況から必死に脱出しようとする話が多いので、爽やかであっても軽い読後感ではない。 ひとつひとつの短編の謎がやや小粒で、新味が感じられない物足りなさはあるが、やがて浮かび上がる一本筋の通った小説話法は大きく評価したい。 |
No.7 | 7点 | じきる | |
(2021/06/17 12:52登録) 個々の短編は標準レベルですが、連作の仕掛けは素晴らしいと思います。 |
No.6 | 4点 | いいちこ | |
(2015/02/02 20:15登録) 児童養護施設の日常の謎を巡る連作短編集。 冒頭の何編かはまずまずの完成度であるものの、後半は徐々にトーンダウン。 トリックの実現性が高いものの、通り一遍で奇抜さに欠けるのが難点であり、後半はかなり退屈な印象。 最終話に連作短編集ならではの趣向があり、「学園七不思議」としての必然性をまとめあげるのだが、それほど驚くべき真相とも言えず、仕掛け自体にも難があり、正直小粒感は否めない。 本作の題材からすると好き嫌いはともかく、もっと社会派寄りのアプローチもあり得たと思うのだが、その面でも斬り込み切れず、問題意識の醸成や感動には至っていない。 |
No.5 | 7点 | メルカトル | |
(2013/07/21 23:09登録) 児童養護施設で起こった「学園の七不思議」と称される謎にまつわる事件を、二年目の保育士北沢春菜が児童福祉司の海王の助けを借りて解決する、連作短編集。 全体的にトリックそのものは他愛のないものが多いが、伏線もかなり張られていて好感が持てる。 やや文体が私には合わないと思う部分があったり、第5話などはミステリから乖離しており、正直この話だけは不要だと感じた。 それとそのトリックも、もしこんなのが真相だったら嫌だなと思った通りのものだったのには、はっきり言って腰砕け。 まさかの稚拙なトリックに、驚きを隠せない。 だが、そうした欠点を補って余りあるのが、最終話の衝撃。 創元社の伝統というか、お約束ではあるが、それにしても心の中でアッと叫ばずにはいられない見事な締めくくりであった。 第4話で披露される回文も実によく考えられていて感心した。 |
No.4 | 5点 | (^^) | |
(2013/02/14 21:54登録) 児童擁護施設で巻き起こる日常の謎を「学園七不思議」に準えて物語が進む。 養護施設を取り巻く環境などはよく調べられているし、登場人物は多いがそれぞれのキャラがよく立っており読みやすい。 1つ1つのトリック自体は、実はハーフで…、実は性同一性障害で…、実は幼少時に入れ替わり…など、お世辞にも褒められるモノではない。 しかし、最後の章で全てをひっくり返すような大仕掛けが待っている。まぁこの仕掛け自体にも難があるが、まさか著者の名前にまで秘密があるとは誰も気づかないのではないか。並々ならぬ意気込みを感じた。 |
No.3 | 7点 | テレキャス | |
(2009/11/09 13:22登録) 連作短編集らしい最終章でのドカーン(笑)ってのが心地良かった。個々の短編の出来は他の方が書いているように尻つぼみ感は拭えない。でもテーマが重い割には語り手の主人公の明朗さがバランスを取っていてすんなり読ませてくれたのには好感が持てた。 ペンネームの仕掛けと表紙の綺麗さで1点おまけ。 |
No.2 | 6点 | H.T | |
(2009/04/05 13:07登録) 面白かったのは面白かったのですが、「ややこしいさ」がまとわりつく感じがしました。 ただ、ラストの仕掛けには「やられた」と感じることができます(笑) |
No.1 | 5点 | abc1 | |
(2009/01/17 12:08登録) 最初の二編くらいまではかなり面白かったんですが、後半少し尻すぼみ。日常の謎系ではあるものの、その謎が少しずつ小さくなって行ってしまうのが難。最後の一編で少し盛り返してこの点数です。 |